ジェンティルドンナのにぃに概念   作:おっき!!!

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今日は本編じゃないです。クロスオーバーです。
ついつい書いちゃいました。一先ず呪術クロスオーバーは終わりです。ウマ娘と呪術廻戦両方の原作に触れることはまず無いので、安心してください。まああと何話かありますけど、日常茶飯事な話ですのでお気になさらず。


前回の投稿時、ジェンティルのウエディングを予想し見事的中してしまった私。最早これはもう結婚しろって言われてるよね?公式からのGOサインだよね?いいんだよね?最高だよね?
実馬の引退式の時ピンクのメンコつけてたけど、あれってアスリート引退してお嫁さんになりますって意味って解釈するとジェンティルの今回の新衣装も拡大解釈が捗ってしまう……。やっぱりジェンティルも乙女なんだね。可愛いよ、だいちゅき。

でも私の二次創作的に言えば、新衣装はジェンティルではなくドンちゃん風味が強い気がする。花嫁姿に憧れるドンちゃん。にぃにの手を掴んではなそうとしないドンちゃん。お嫁さんを夢見るホーム画面での発言のドンちゃん。解釈一致だぁ……。



是非是非今回の新衣装ドンちゃんについて感想頂けると幸いです。
……公式のイベントストーリー読んで、私がやりたい今後の展開のネタバレされちゃったのは秘密ですよ?公式さんだからね、ジェンティルの供給があるのは大変助かるマダガスカル。




誤字報告感想ありがとうございます。今後もドンちゃん共々よろしくお願いします。












魔虚羅「……仕方ないマコね〜」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「━━━━━と、言うわけで急いで来たものの。結構ヤバい状況だね」

 

 

「……よくもまあそう軽く言えますわね」

 

 

ジェンティルの言葉に、包帯を目に巻いて視界を塞いでいる白髪の男は、実際事実だしと悪びれることもなく言葉を繋げた。

 

現在ジェンティルがいるのは都内の病院内。に(・)ぃ(・)に(・)と別れた後救急搬送されたと連絡があり病院に直行。呪力の残滓があるため、恐らく病気ではなく呪詛師からの横槍であるのを察したジェンティルは、こ(・)の(・)手(・)の症状を見ることに長けた人物を呼び出して現在問診中。

 

その人物がこの目隠しをした怪しげな男であることには目を瞑るとしても、その力は折り紙付きであるためそれに関しては問題無い。

問題なのは、に(・)ぃ(・)に(・)がどうしてこんな状態になっているのかである。

 

 

「……んー、マジか。呪(・)霊(・)が体内にいる。胃袋辺り」

 

「……は?呪霊が?」

 

「術(・)式(・)理解してないのに呪霊食べるとかある?お兄さんもしかして雑食?」

 

「そんな訳ないでしょう。?ちょっとお待ちください。……お兄様に術(・)式(・)があるのですか?」

 

「あるよ。使いこなせないのは分かりきってるけどね」

 

 

呪術師と一般人には明確に脳の作りに違いがある。術(・)式(・)はそんな作りの違いによって使用する事が出来る能力。一般人であるに(・)ぃ(・)に(・)に術式を扱える脳のキャパがないのだ。

 

 

「……となると、誰かから呪霊を食べさせられたってことになるね。いや〜、そんな面白可笑しいこと誰がしたんだろうね〜?」

 

「……まあ十中八九、私を狙った呪詛師の手でしょうね。魔虚羅を連れていても不意をつかれるとは……」

 

 

恐らく結界。この男の話では魔虚羅の周囲に帳(・)を降ろされたのだという。

魔虚羅のみ出入り禁止。適応能力を使えない分身体である故の欠点が顕になってしまった。ジェンティルは苦虫を噛み潰したような表情で、ベッドに寝かされたに(・)ぃ(・)に(・)の手を握る。

 

原因不明の意識消失。まだ数時間しか時間は経っていないものの、ジェンティルにとってはかなり長時間経過したと思える程の喪失感であった。

 

 

「これね。状態だけ見れば急がなきゃいけないんだけど、対処しようと思ったらおにーさんのお腹の中の呪霊をどーにかしなきゃいけないよ。いちばん手っ取り早いのは直接呪霊を掴むことだけど」

 

「それって、直接腕を突っ込むという解釈かしら?」

 

「まあそうなるね。呪霊自体は僕の眼(・)で見てるけど、さすがに生物の体内に存在してるやつをどうにかってなると物理的接触じゃなきゃどうする事も出来ないよ。文字通り、腹かっさばいて直接呪霊を引きずり出すぐらいじゃないとね」

 

「……究極そうであったとしても、それは命の危機に晒すだけでしょう?術師と違って、一般人であるお兄様にお腹に穴が空いても生きていられるほどの気力と生命力は持ち合わせていません」

 

「そう。だから慎重にやらなきゃならないんだろうけど、ちょっと時間無いかもね。呪霊が身体を乗っ取ろうとしてる。表面上に出てたら対処しようがあったけど、これやった奴上手いね。誰にも対処できないようしっかり隠蔽されてる。これ僕じゃなかったら分からなかったよ」

 

「……打つ手無し、という事?」

 

 

ジェンティルの顔が青白くなっていく。現実的に考えて、先程まで楽しく過ごしていた相手が途端に死の淵に立たされた、自分の大切な人である以上、精神的に来るものは大きい。

形容し難い負の感情が込み上げてくる。しかし、ジェンティルにそれを吐き出す気概は無い。吐いたところでどうにもならないのは理解出来ているからだ。

 

 

「……もし仮に、貴方の方法を試すとして、傷を治すには反転術式のアウトプットが必要でしょう?家(・)入(・)先生のお時間は取れませんの?」

 

「残念ながら、硝(・)子(・)も今忙しくて抜け出せなくてね。硝子の手が空くのが先かお兄さんの身体が乗っ取られるのが先かの時間の問題だね」

 

 

呪霊は人に寄生する。それぞれ呪霊には生まれた所以の理由がそれぞれある。一概に呪いと言っても、どう言った呪いが込められているかは様々。

人に取り付く呪霊は、総じて人に執着する気持ちからくる呪いが多く、例えばストーカーが命を落としたとして、死してなおストーカーしていた相手のそばに居たいという想い(呪い)から形となって寄生し始めたり、アイツに勝てないからと憎しみと嫉妬を持って呪いを吐き、相手に不幸が訪れるように無意識に呪霊を生み出してしまっていたりと様々。

 

呪霊は呪力を扱えない非術師と呼ばれる一般人達から溢れ出す嫉妬妬み嫌味嫌悪感で生み出される。

こうして、体内に居座るということは、それに由来した呪いの塊である事は明白。しかし、物理的には接触出来ないため、それを確かめることは困難となっている。

 

 

「……さて、どうするべきかな」

 

「反転術式で触ればあるいは……」

 

「そりゃアウトプット出来る前提ならいいけどね。今の状態で反転術式使ってお腹触っても呪霊に触れてなきゃ意味無いから。呪霊だけピンポイントで倒せるって術式じゃないとこれは無理だよ」

 

「……そう、ですか」

 

 

ジェンティルは縛りによって自分が反転術式を使えるようになる道を潰している。縛りを破棄すれば使えるかもしれないが、使えるかも分からない状況で自分を無防備に晒すのは、に(・)ぃ(・)に(・)をこ(・)ん(・)な(・)状(・)態(・)にした相手の手のひらの上のシナリオになるかもしれない。

下手に動けば、それこそ自分の寝首すら飛ばされる勢いの状況で、ジェンティルは深く考え込むのであった。

 

結局の所、例え本人が最強を携えている無敵の誰かだとしても、広い視野からすれば幾らでも隙は生まれるということだ。魔虚羅の最強兵器化(メインウェポン)もジェンティルにとっては判断は間違ってはいない。最強を最強に仕立てて使わないものは淘汰する。自分の長所を潰し、真正面から来る相手に対しての完全な城壁を作り出したジェンティルは、式神使いとしては正解のひとつを引き当てていると言ってもいい。自分が出来ないことを出来る誰かに任せるのは至極真っ当。

しかし、今回は正面から来る相手のみしか相手に出来ない魔虚羅の、式神使い本体を外から突っついて刺激するという姑息なやり方をされた。幾ら万能性を持つ魔虚羅とて、本体を守護する事を優先とするのであって、周辺は二の次。

手の届かない範囲は、魔虚羅にとって、ジェンティルにとって守備範囲外であった。結果、魔虚羅の分身を付けていたとはいえ、こうも容易く突破されてしまった。仕方がないとは言え、ジェンティルにとって最強と謳われる魔虚羅の力にも及ぼせない範囲があると言うことを改めて感じされられた。

 

 

「……ま、おにーさんに呪力を扱えるだけの技量があればまだなにかあったかもね」

 

「……扱えるだけの技量」

 

 

ジェンティルは考える。責任の重さ、重圧に押しつぶされそうになりながらも必死に思考を動かす。

自分には出来ないのか。そう思いずっと顕現している魔虚羅を見つめる。

そして思い出す。先程、に(・)ぃ(・)に(・)がジェンティルに説いた呪力を扱えるようになる方法。その時の会話を。

 

 

「……いえ、少しやってみたいことがあります」

 

「……へぇ、どういうの?」

 

「摩虎羅の術(・)式(・)を使った対処法ですわ」

 

 

ジェンティルの瞳はこんな状況に置いても、未だ陰りを見せてはいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

真っ黒な世界だった。何も無い、何も感じない虚無の闇。

見た時は一瞬恐怖を体感したが、どうしてこんなところにいるのか疑問に思い、そう言えばと自分の現状を何となく把握した時には暗闇への恐怖は失せていた。

 

手足の感覚は無い。しかし何故か浮遊感がある。まるで水の中に浮いているような感じだ。力の入らない手足がゆらゆらと揺られているのがわかる。

 

 

 

━━━━━ジュグジュグッ

 

 

 

 

肉を貪るような不快な音が反響する。直接耳に届くその音は、何故だか分からないが己の身に降り注ぐ厄であると感じ取った。自分の体の一部が食べられるような感覚。痛みは無い。しかし肉体と尊厳が減らされていく感覚が、動かせないはずの身体をゆっくりゆったりと全身を撫でるように伝わってくる。

 

 

不快感。嫌悪感。気色の悪い反吐を催す感覚。腹の底に蠢く得体の知れない何かは、ゆっくりと確実に俺を捕食している。

為す術無く、俺は体を動かすことが出来ないまま、その感覚を味わう事しか出来ない。

 

己の最後が得体の知れない何かに捕食されて終わるというのは、度し難い怒りと納得出来るはずのない結末に不満を抱えるしかない。

自然と腹の底から怒りが込み上げ、見えない何かに殺意を抱く。好き勝手している挙句に、恐らく何食わぬ顔で自分の食事に没頭する。腹立たしい。煮えくり返りそうだ。直接殺してやりたくて仕方がない。

 

 

だがそれも叶わないだろう。どうしようもないのだ。やりたくても、出来ないこのジレンマ。多分、こんな負(・)の(・)感(・)情(・)を抱きながら眠りにつくのだろう。受け入れることなど到底出来ないが、受け入れることしか出来ない以上、俺は怒りや不満を抱えると同時に何かを悟っていく。

 

つまらない意地ではあるが、せめて死ぬならこんなは場所ではなく誰かの前で安らかに死にたかった。あ(・)の(・)子(・)の前では流石に死んでも晒したくはないが、死ぬならせめて誰かの前で看取られたかった。

 

 

あ(・)の(・)子(・)の表情が思い浮かぶ。これが走馬灯と言うやつだろうか。

幼い頃の純真無垢な笑顔。時折見せる不満そうな頬を膨らませた顔。大粒の雫を流す涙顔。なんでも楽しそうに、全身で喜びを見せる天真爛漫なあ(・)の(・)子(・)。

成長しても変わらない。俺(・)の(・)好(・)み(・)に近付きたいと、雑誌の女性を真似始めた中学時代。それでも時折見せる幼い頃の笑顔。今では自然と身についた落ち着きのある微笑みと、淑女として何処に行っても恥ずかしくない優雅な佇まい。

 

あ(・)の(・)子(・)とはまだ夢半ば。あ(・)の(・)子(・)の夢(・)を、誰もを魅了する一番になりたいと願う幼い頃の夢を叶えてやりたいと俺は注力した。

しかしまだ始まったばかりのはずだ。一緒にスタートラインを超えたばかりな筈なのに、このまま終わってしまう。

 

悔しい。悔しくて堪らない。まだ死にたくない。あ(・)の(・)子(・)の夢を見たい。あ(・)の(・)子(・)の姿をずっと傍で見届けたい。あ(・)の(・)子(・)に魅了される人々の姿を見て、あ(・)の(・)子(・)と夢が叶ったねと言い合いたい。

 

まだ俺は、ここで終わる訳には行かない。

 

 

 

何かをすする音がした。わざとらしく音を立てて吸うような食べ方が汚い音。顔も動かせない為、何処から音がするのかは分からない。

 

しかし、何かが腹の中を蠢いている。きっと、この感覚。腹の中に何かいる。

此奴を止めることが出来れば、この不快感も消え去るはずだ。

段々と思い出してきた。俺の腹の中にいるやつの正体を。絵を失う前に見た異形の存在。あ(・)の(・)子(・)が言っていた呪(・)霊(・)と言うやつだ。呪霊が俺の腹の中にいる。俺の命を削っている。

 

対処法は分からない。呪霊は呪力を持って祓うのが基本だと言われた。しかし俺には呪力なんて使えない。今まで使った事、認知したことすらないのだ。

あ(・)の(・)子(・)は言っていた。呪力は腹で回すものだと。その時は意味がわからなかったが、今なら何となくわかる気がする。

この怒りは腹の底から来る感覚がある。つまりはそれ。呪力とは主に負の感情から成るものであると。つまり、今の怒りを呪力に変換出来れば、この腹の呪霊に対抗出来るかもしれない。

 

力が入らない腹に力を込める。呪力の練り方なんて分からない。だが、この怒りが覚める前に、この呪霊を祓う。祓ってやる。

腹に力を入れて呪力に変換出来るよう、頭(・)で考える。出来るまでやってやる。この呑気に食事をしているクソ野郎に、目にものを見せてやる。

 

 

 

 

━━━━━ッ!!ッ!?!?!?

 

 

 

 

腹の呪霊が突然暴れだした。ここで初めて痛みがやってきた。呪霊が暴れることで腹が踊り、今まで蓄積してきたような腹の痛みが急激に襲ってくる。

 

だが、同時にこれは呪霊に効いているという証明でもあった。呪力は少しずつ練れている様だ。ならば、これを続けて、このクソ野郎を引きずり出してやる。

痛みがなんだ、苦痛がなんだ。これが生きてるって証明だ。あ(・)の(・)子(・)のこれからの道に、楽な道など存在しない。常に辛く険しい道が待ち構えている。こんな痛み、あ(・)の(・)子(・)がこれから受けるであろう苦痛に比べて、蚊に刺されたような程度だ。

 

俺は更に怒りを、呪霊に対する憎悪を重ねる。腹で作り、頭で回す。より一層呪霊の動きが激しくなった。気が付けば体の自由が効くようになってきた。腕も足も感覚が戻ってきた。動かせる。俺は躊躇うことなく拳を握って呪霊がいるであろう腹に拳を振り下ろす。

何かを殴った感覚が手に伝わり、腹を殴った痛みがやってくる。俺は自然と呪(・)力(・)を(・)腕(・)に(・)流(・)し(・)、呪霊を何度も何度も殴りつける。呪霊の暴れる勢いが弱まった。同時に痛みの伝わってくる大きさも膨れ上がる。俺の意識が途切れるのが先か、呪霊が意気消沈するのが先か。ここからが根比べである。

 

負けるつもりなど毛頭ない。この体は俺のものだ。邪魔者であるお前はさっさと消えろ。俺は殴る。何度も何度も殴る。勢いがゆっくり無くなっていく。呪霊が消えていく。しかし俺にはそんな事分からない。俺は自分の意識が無くなるまで、痛みに耐えながら自分の腹を殴り続けた。

 

 

そして、気が付けば目の前にはあ(・)の(・)子(・)の顔が目の前にあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「━━━━━お兄様!!」

 

 

病棟のベッドに寝かされていたに(・)ぃ(・)に(・)の身体が身じろいだ。ゆっくりと開けられていく瞼。その下の瞳に、ジェンティルの姿が映し出された時、に(・)ぃ(・)に(・)はフッと微笑んだ。

 

 

「……ごめん、心配かけた」

 

「……全くっ。ほんと、ですわよ………っ」

 

 

涙ながらに、いつもなら見せない彼女の弱々しい姿。そんな姿にさせてしまったとに(・)ぃ(・)に(・)は深く反省するが、鉛のように重い体をなんとか起こし、ジェンティルの身体を優しく抱擁する。ジェンティルもそれに答えるように優しく、しかしその腕は離さないと言わんばかりに、に(・)ぃ(・)に(・)の身体に腕を回した。

 

に(・)ぃ(・)に(・)の腹の中に呪霊の気配は無い。上(・)手(・)く(・)行(・)っ(・)た(・)ようだ。に(・)ぃ(・)に(・)はそれに安堵し、ジェンティルも安堵する。お互いに実は対応していたとは今の段階では分かっていなかった。しかし、呪霊が消えに(・)ぃ(・)に(・)が戻ってきた。それだけでも2人には十分であった。

 

 

「━━━━━熱〜い抱擁のところ申し訳ないんだけどさ。僕のこと忘れてない?」

 

 

病室に響く第三者の声。に(・)ぃ(・)に(・)は思わず顔をはね上げた。

白髪、包帯で目隠し。に(・)ぃ(・)に(・)よりも背の高い苦笑いを浮かべた男が遠慮無くそう言葉にした。

 

誰だ、という疑問を口にする前に、ジェンティルが体を離すと男の紹介をした。

 

 

「……お兄様。こちらは呪術高専東京校の五(・)条(・)悟(・)先生。今回、お兄様のお身体に何があったのか、問診に協力して頂いたのですわ」

 

「よろ〜、おにーさん。いや〜、まさかホントに生還するなんてね〜」

 

「……お兄様と同い歳ぐらいだそうですが、かなりちゃらんぽらんなので、気軽に接していくことをオススメしますわ」

 

「……ちゃらんぽらんって、今日日聞かないな」

 

 

軽そうな笑みを浮かべる教師を見て、ジェンティルの言いたいことが何となく理解出来たに(・)ぃ(・)に(・)。五条悟という男の評価がに(・)ぃ(・)に(・)の中で決定した瞬間である。

 

 

「……えっと、まあ何とか戻ってきたわけだけど。俺の中に呪霊が居たって事であってる?」

 

「はい。その認識で構いませんわ。私が魔(・)虚(・)羅(・)を使って対処しましたが」

 

「……え?俺が殴って呪霊を倒した……んだと思ったけど」

 

「……え?」

 

 

食い違った認識に首を傾げるに(・)ぃ(・)に(・)とジェンティル。そんな光景に、五条悟はケラケラと笑いながら面白そうに口を開いた。

 

 

「2人とも誤解してるね。でも、両方正しいよ」

 

「えっと、五条さん。それはどういう?」

 

「まあまあ。まずは外側から何をやったか説明しよう。こ(・)の(・)子(・)は魔虚羅の術式を使って、君に適(・)応(・)を施したんだ」

 

「魔虚羅の力を、他人にも使えるんですか?」

 

「はい。自分の術式の解釈を拡げる。拡張術式と呼ばれるものですわ。私は縛りによってそれは出来ませんが、魔虚羅は縛りの効果で自我を持ち、基本的な呪術師となんら遜色無い存在として確立しております。そんな魔虚羅が、自分の術式を拡大解釈する事も出来るようになった。その結果が、お兄様に接触し自分の適応能力を扱える様にするという術式の解釈を施したのですわ」

 

「………成程、だから俺が殴って呪霊をボコボコに出来たのか」

 

「……多分、そういう事になると思いますわ。私も魔虚羅にはお(・)兄(・)様(・)に(・)適(・)応(・)を(・)施(・)し(・)な(・)さ(・)い(・)としか命令していないわけで、実際どういう解釈を持って魔虚羅が術式を使ったのかは分かりませんが」

 

 

病室の端で不気味にも立ち尽くす魔虚羅の姿。に(・)ぃ(・)に(・)は迷うこと無く感謝の言葉を伝える。魔虚羅はそんな言葉に顔を少し上下に動かすだけだった。

 

 

「けど一つおにーさんにとってかーなーり面倒なことになった。おにーさん、呪(・)力(・)を扱えるようになってる」

 

「え、うそっ」

 

「……現在もですの?魔虚羅に触れられていた瞬間だけなのでは?」

 

「普通はそうなんだけどね、此(・)奴(・)自分で縛(・)り(・)結んでる」

 

「は?魔虚羅、一体どういう事?」

 

 

ジェンティルは思わず立ち上がり魔虚羅に詰め寄った。しかし魔虚羅は表情を変えることはなく、ただジッと怒りを顕にする主人の顔を覗き込むだけだった。

 

魔虚羅は自我を持っているとはいえ、喋る事はない。適応において、喋ることも可能ではあるだろうが、主人であるジェンティルとの意思疎通が出来れば問題無いとの判断で喋る事は無い。

意思疎通は、ジェンティルの脳内に直接魔虚羅の声が聞こえるという感じのようだ。

 

 

「……だんまり、いえ。縛りによって他言無用にしているのね。小賢しいわ、一体何の為にこの様なことを仕出かしたのかしら?」

 

「まあまあ、ジェンティル。魔虚羅のお陰で俺は助かったんだから、それでいいじゃないか」

 

「……お兄様、楽観視し過ぎですわ。お兄様が呪力が扱えるようになったという事は、今までの生活が全て覆ると言っても過言では無いのですよ?見えないはずのものが見えてしまう。言っても誰にも信じて貰えない。そんな現実がこれから当たり前化になるのですよ?」

 

 

に(・)ぃ(・)に(・)は思い出す。そう言えば、ジェンティルはよく暗がりを怖がっていた。ふとした瞬間、何かから目を逸らすような素振りをした。ちょっと目を離した隙に、指(・)を(・)組(・)ん(・)で(・)何(・)か(・)を(・)呟(・)い(・)て(・)い(・)た(・)。

これは、ジェンティルが見(・)え(・)な(・)い(・)何(・)か(・)に対処していた行動であると、に(・)ぃ(・)に(・)は初めて気がついたのだ。

 

 

「……そうだね。ジェンティルが昔から、見えない何かに怯えて、それでも俺を守る為に術式を使って退治してたんだって思うと、俺はどうしようもなく無責任で楽観的で他人任せな人間だったと思うよ」

 

「……そんなに卑下なさらないで。見えない非術師であるお兄様を守るのは私の役目です。当たり前の事を当たり前にしただけの事ですわ」

 

「それでもだよ。見えてなかったとは言え、ジェンティルには辛い思いをさせてしまった。ジェンティルにしか見えない世界。俺は君と一緒に歩いていたと思っていたけど、ジェンティルとは同じ世界を見てなかった。……どうしようもなかったとは言え、苦しいよ。今考えると、俺だけ舞い上がっていただけだって思って、凄く辛い」

 

 

悲痛な表情を浮かべるに(・)ぃ(・)に(・)。ジェンティルはそんなに(・)ぃ(・)に(・)の両手を握りこんで言葉を紡ぐ。

 

 

「……お兄様、辞めて。それは仕方ない事なのっ。お兄様が見えないのが普通なのっ。私の方が、私たちの方が変わっているだけなのっ。だからお兄様、お願いだから苦しまないで。お兄様が私を思って思い詰めてくれることは嬉しいけれど、自分の事を悪く言うのはとても辛いわ。お願いお兄様、どうか余り深く考えないで」

 

「……あぁ。そうだね、ジェンティル。……でもこれで君と同じ世界を見えるようになった。これで俺はどうしようもない辛い現実を、これでジェンティルと共に歩めるという希望に変わったよ。ごめんジェンティル。ジェンティルが今まで俺のことを守ってくれた。でも今からは、ジェンティル。俺も君を守るよ。俺の中にあるこの力を使って、君と同じ世界を進むよ」

 

「……お兄様っ。素直に喜べないけど、嬉しいわ。お兄様とこれでようやく同じになれた。でもお兄様。守るのは私だけの特権よ?お兄様はまだまだこの世界で入口にしか立ってないのだから。長い間この世界にいる私の方が貴方を守る力と知識を持っている。そう簡単に私を守るなんて、少々烏滸がましいとは思いませんの?」

 

「ははっ、確かに時間は君の方が長いだろうけど、気持ちでは負けてないさ。大切な君を、必ず守ってみせる。約束する。だからジェンティル。君も俺の事をどうか守って欲しい」

 

「……もう、お兄様ったら。なんだか告白みたいですわよ?」

 

「……え?いや、別にそう言う意味で言った訳じゃないから!!」

 

「どうしてそこまで否定しますの?私の事、愛してくださっているじゃありませんか。これからも末永く、ということでは無いの?」

 

「あくまで兄貴分としてってことだよ。俺にはジェンティルは魅力的過ぎる。過ぎた女性だよ君は。これからもっと大きな存在になるんだ。俺ではなく、もっと相応しい男がきっと現れるよ」

 

「……はぁ。これだからお兄様は」

 

「え、なんで溜息?なんでそんなに呆れてるのさ」

 

「自分の胸に手を当てて考えて見ては?きっと分からないでしょうけど!!」

 

「えぇ………」

 

 

ジェンティルの半目で睨んでくる姿に、に(・)ぃ(・)に(・)は訳が分からんと頭を抱える。しかし数秒の後、2人で笑いあったのだった。

 

しかし、そんな2人の姿に完全に忘れ去られていたであろう人物がわざとらしく咳払いをしてその空気をぶち壊す。

 

 

「……ごほんっ。あー、君ら、僕のこと忘れてない?流石に傷付くよ?」

 

「……あぁ、五条さんまだいらっしゃったの?もう帰ったかと思いましたわ」

 

「いや辛辣。相変わらずおーにさんラブだね。うんうん。いいよいいよそう言うの。愛ほど呪いと相性がいいものは無いからね。君の愛が大きくなればなるほど、呪いも相乗的に大きくなる。魔虚羅の力も強くなる一方だから、いいこと尽くしじゃん」

 

「そこまで私の愛は重くはありません。勝手に重い女と決め付けるのはデリカシーにかけるのでは?」

 

「ははー?ごめんなんて言ったかわっかんないやー」

 

「…この男ぉっ」

 

 

あっけらかんと、ジェンティルの睨みを笑って弾き返す五条悟。に(・)ぃ(・)に(・)は何となく、五条悟は素でこんなことが出来る人物なのだと再認識した。悪い意味で。

 

 

「全く、君らがイチャイチャするもんだから、まだ話半分なんだけど?」

 

「まだなにか?魔虚羅が結んだ縛りでもわかりましたの?」

 

「あー、それね。別に視(・)れ(・)ば(・)分かるけど、本人が他言無用を貫いてる以上、それを言うのは野暮じゃない?流石に常識でしょ」

 

「……貴方に常識を問われるとは思いませんでしたわ」

 

「まあまあ、ジェンティル。それで、他に何かあるんですか?」

 

「そうそう。おにーさんの術(・)式(・)について。知りたくない?」

 

「……俺の、術(・)式(・)」

 

 

に(・)ぃ(・)に(・)は固唾をのむ。今まで生きてきて、自分の術式なんて知る由もなかった。目の前にいる五条悟という男は、そんな知らなかったモノを教えられるのか。に(・)ぃ(・)に(・)の頭の中では、ジェンティルがこの男を連れてきた事への重大さを改めて感じていた。

ジェンティルのように術式の効果なのだろうか。誰かの状態を見て判断できるというのは、まさに見る専門。に(・)ぃ(・)に(・)の問診もこの人でなければ状態が分からなかっただろう。それだけ、この人は術師にとって欠かせない存在であるのではと、に(・)ぃ(・)に(・)は考えた。

 

 

「……まずはっきりさせていただきますが、お兄様の力は私や先生の様な相(・)伝(・)術(・)式(・)に該当するのですか?」

 

「いいや?僕も正直、こんな術式見た事ないんだけど、おにーさんの気持ちを汲み取るなら、そうなるのかな?って感じの術式だし」

 

「……つまり戦闘向きでは無い、と」

 

「まあ戦闘向きでは無いけど。ちょっと厄介だよ、コレ」

 

 

戦闘向きでは無い、と判断されて安堵したのも束の間。五条悟の発言に2人は訝しむ。

 

 

「どういうことですの?扱いが困難という事?」

 

「……多分ね。実際使ってみないと分からないけど、正直使わない方が懸命かもしれない。最悪大規模な乱闘騒ぎだよコレ」

 

「……え、そんなに?」

 

「まあ説明した方が早いかな。いいかい、よく聞いて。おにーさんの術式はね━━━━━」

 

 

 

 

 

 

 

「━━━━━ウ(・)マ(・)娘(・)の(・)好(・)意(・)を(・)集(・)め(・)る(・)術式だよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2人は思わず目を点にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




魔虚羅「━━━━━ご主人様を守る気持ちはホンモノ。仕方ないマコねぇ〜、縛り結んで呪力使えるようにしてやるマコ。オラ、感謝するマコ。これでご主人様を守れマコ。……え?お前のせいでこれから修羅場?は?魔虚羅には関係ないマコ。呪力使えるようになったんだから泣き喜べマコ」
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