ジェンティルドンナのにぃに概念   作:おっき!!!

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ウマ娘5周年おめでとうございます。自慢では無いですが、周年半周年といった節目の新キャラガチャは50連以下で毎回確保出来ます。
今回もウマ娘チケット10連分で完璧で究極な胡瓜アイちゃんこと、ナッツアイちゃんをお迎え出来たので、安心してサポカを回せます。

まあ2天井してエバヤン2凸しか出来てないんですがね。



今回は学園ドンちゃんです。



※アンケート回答ありがとうございました。結果、三人称視点では、にぃにとさせていただきます。









2

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

息苦しさに意識が戻される。引っ付く瞼を開け、その息苦しさの元凶に目を向けた。

まだ朝日が昇っていない朝方の時間帯故に、寝室は真っ暗。当然目を開いても暗くて見えるものも見えない。目が慣れた頃、丁度目の前に頭があるのが分かった。誰の頭かなんて言わなくてもいいだろう。

 

腕が動かせない。何かにしっかりと固定されているらしい。足も何かが絡まって動かない。完全に抱き枕にされてしまっている。

ちらりと犯人を見てみれば、そこにはいるはずのないドンちゃんの姿があった。

 

 

おかしい。昨日は確かに布団を敷いたはずだ。ドンちゃんにはこんな薄い敷布団で寝かせるのは忍びなかったのでベッドを使ってもらったのだが。何故ドンちゃんは俺のところで寝ているのだろうか。いや、これ俺が()()()()のか。いつの間にかベッドで寝ているぞ俺。俺が寝ている間に、ドンちゃんが俺の事を運んで一緒に寝たのか。

 

流石に高校生。こちとら20代後半。そういう事に興味が無い訳では無いが、ドンちゃんは未成年。節度を持った関係を心掛けなければならないのに、これはちょっと聞いてない。やっぱり宿泊させるのは不味かった。そろそろドンちゃんも男と女という在り来りな理由で距離感というものを学んで欲しいものだ。

 

まだ熟睡中のドンちゃん。それでもご自慢の怪力はご出勤。しっかり俺の胴体と足を締め上げております。感覚が無いけど鬱血してるかもしれない。せめて抱きしめるならもう少し優しくして欲しかった。

モゾモゾと身体を少しずつ動かし、せめて間を空けようと模索する。ドンちゃんの身体の感触が伝わり、なんだか危険な香りがプンプンして背徳感がヤバい。不可抗力とはいえ、うら若き乙女の身体を触るというのは気が引けるものだ。

 

何とか腕だけは解放出来た。さああとは剥がすだけ、となったタイミングで再びギュッと抱きしめられた。今度は腕は解放されている。しかし、その分さっきよりも密着率が高い様な気がする。みぞおち辺りにムニュムニュ当たる柔らかい何かから気を逸らそうとするが、なんだか分かってやられているような気がしてならない。

俺はドンちゃんの背中に腕を回した。ぴくりと反応がある。この子、起きてるな。

 

暗闇に慣れた目が、目の前にあるドンちゃんの耳がピコピコと動いている事を視認。寝ている時は大体少し折れ曲がってあまり動かなくなる耳が、ここまでピンピンに立って跳ね動いているのを見ればひと目でわかる。伊達にドンちゃんと床を一緒にしていないのだ。深い意味は断じてない。

 

面白がって、耳を優しく触ってやる。擽ったそうに、若干身体を捩り出すドンちゃん。拘束の腕の力が弱まった気がする。

ウマ娘は耳やしっぽが敏感で、感情の起伏を表したり五感の一部を担うだけあってかなり重要な器官である。よって神経が集中している為、物理的な接触は多少触れただけでもかなり反応する。ドンちゃんには耳をあまり触らないでとは言われたが、こういう諌める時には触って気を紛らわせる事がよくあるのだ。

 

触れば触る程弱まっていく拘束。多少動けるようになったタイミングで、ドンちゃんの肩を掴んで少し離した。目の前には涙目のドンちゃんが現れる。

 

 

「……悪戯が過ぎるよ、おはよう」

 

「……こ、こちらのセリフですわ。おはよう、ございます」

 

 

ドンちゃんはわなわなと耳を両手で覆い縮こまってしまった。無防備でこうも触られてはドンちゃんも流石に羞恥心というか、度し難い感情が込み上げてくるのだろう。珍しくドンちゃんは俺に背を向けてしまった。

 

これでまた寝れると思い、俺はドンちゃんに()を向けて再び眠りにつこうとする。今更寝る場所を変えるのも面倒だ。これだけやれば、しばらくドンちゃんも大人しくなるだろう。起きた後の対応はとても面倒になっているとは思うが、今は睡眠欲が強かった。

 

瞼を閉じ、ゆっくりと息を吐こうとしたところで、背中越しにキュッと柔らかいものが押し付けられた。控えめに寝巻きの生地をつまみ、密着してそうでしてない距離感にドンちゃんが近づいてきた。

何が言いたげなドンちゃんに、俺は仕方がないとドンちゃんと向かい合う。ドンちゃんの表情は暗くて分かりづらいが、恐らく反省の色が伺えるだろう。まあ俺も勝手に触ってしまったのは罪悪感があるが。

 

 

暫く無言であったが、ドンちゃんがキュッと抱きついてきた。何かいつもと違う、というか()()()()()()()()()()()()()ドンちゃんに首を傾げるしかない。まだ脳が完全に目覚めていないからだろうか。可愛くはあるが、正直眠いが勝つ。

 

俺はドンちゃんの頭を優しく撫で、軽く腕をドンちゃんに回して眠りにつく事にした。

抱きしめるなら、1度離した意味は無いのでは?なんて、誰に言われるのか分からない正論を説きつつも、可愛いドンちゃんには敵わなかったという説得の元、仲良く二度寝をかますのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は進んで午前八時。今度は朝日の眩しさに眠気を覚まされた。

目を擦りながら瞼を開くと、目の前には未だ微睡みの中に揺れるドンちゃんの姿が。普段のドンちゃんからすればかなりのお寝坊である。

しかし今日は休日。競技者意識が高いドンちゃんには申し訳ないが、普段から気を張っているのだから、たまには気を緩めるのも必要である。トレーナーとしては改める考え方かもしれないが、心身共に成長してこその実力者。厳しい中で心が成長しても、身体がボロボロであるならばそれは成長しているとは言えない。周りからどんな事を言われようと、俺がドンちゃんの為にしてあげたいという気持ちがあれば、どんな事でも乗り越えられる自信がある。俺はドンちゃんの為に()()()に居るのだから。

 

 

まあ未成年と床を共にするなと言われると社会的にはどう頑張ってもアウト判定なので、どんな事でも乗り越えられるとは言ったが俺にも司法には逆らえない。流石に豚箱にぶち込まれるのは御免だ。ドンちゃんの為に人生を捧げると言った手前、人生を棒に振るうことなど出来ない。

だから、何故ドンちゃんが俺と一緒に寝ているのか問い質す必要がある。ドンちゃんは俺に豚箱に行ってくれと言っているのだろうか。実家とか、ドンちゃんの実家とかならまだ許されるであろう。いやグレーではあるが。流石に職場ではアウト。紛うことなきアウトである。発覚ッッ、粛清ッッ、牢獄ッッのスピード投獄である。トレーナー人生所か社会人、ひいては一人の男として終わってしまう。……まあ泊まらせた時点でスリーアウトであるので、既に俺の人生は終わっている可能性があるのだが。

 

トレセン学園は婚活会場だとか、トレーナーと担当が結ばれるのは当然だとか、よく分からない風潮があるこの学園風紀。正直社会的倫理的には終わっていると思う。火のないところから煙は上がらない。誰が言い出したか知らないが、そんな事を言い出すということは、それだけそういう事情が発生しているのだろう。トレーナーと生徒両方が認知出来る形で周知されているのだろう。

ウマ娘をこよなく愛する理事長や生徒第一の学園職員達が、その様な風潮を見て見ぬふりをするとは思えないが。

もう一人の担当ヴィルシーナ姉妹、通称ヴヴヴ三姉妹は長年この学園に在籍している。今度そのことに関して聞いてみよう。ドンちゃんは今年入学だから、生徒としてはヴヴヴ三姉妹が先輩である。俺も知らないような生徒間で伝わる話等聞けるかもしれない。ドンちゃんにもいい刺激になるだろう。

これが、後の修羅場に繋がるとは、俺は思ってもみなかったが。

 

 

 

視線の端で、ピコピコと耳が動き出すのを捉えた。とろりと目尻を下げたドンちゃんがゆっくりと瞼を開け、とろんとくすんだ紅の瞳を光の前に晒す。

 

 

「……にぃに?」

 

「……おはよう、ドンちゃん。今日はよく眠れた?」

 

「……んっ、おはよう。にぃにの匂い、心地良かった……」

 

 

色々と言いたいことはあったが、このドンちゃんを前にするとどうしても言いたいことが甘く擽ったい言葉になる。嫌という訳では無いが、こうも寒いセリフを吐ける俺自身に鳥肌が立つ。ドンちゃんを気遣うという点においては、正解なのかもしれないが。

 

ドンちゃんは未だ眠そうな雰囲気で抱きついてくる。こんなアラサーまっしぐらな男の匂いを嗅いでどういうつもりなのだろうかこの子は。普通に恥ずかしい。

 

 

「……ちょい、あんまり匂い嗅がないで。恥ずかしい」

 

「……ん〜ん、安心する匂い………。……好きっ」

 

「……複雑っ」

 

 

嬉しいけどあんまり嬉しさが無い!!可愛いから全てが許される。可愛いは正義だ。俺は年下好きとかでは無いが、可愛いものには可愛いと言ってしまうのだ。正直な人間だと言って欲しい。決してロリコンではない。

 

 

「……あのさ、とりあえず色々聞きたいことがあるんだけど」

 

「……ん〜?なぁに?」

 

 

蕩けすぎだろこの子。いつもよりなんか、色々と凄い。

 

 

「なんで俺はドンちゃんと一緒に寝てるの?」

 

「……ん〜?……ン〜、なんで、だろうね?」

 

「確信犯的誤魔化し方っ」

 

 

不思議そうに、しかしその口元は笑っている。とろんと目尻に力が入っていない蕩けドンちゃんの上目遣いからの首かしげというダブル可愛いパンチは、俺の心にダイレクトアタック。しかし俺は鋼の意思を持つトレーナー。同期に教えてもらった忍耐力と精神力を合わせて意志を強く強固にする強靭的な守りを会得しているため、ケツの青かった俺の時とは違うのだ。こんな可愛さには俺の感情は揺るがないぞ。

 

 

「……明らかにドンちゃんが運んだでしょ?いつの間に運んだんだよ……」

 

「……でも、にぃにを抱き締めると、よく眠れるよ?」

 

「……いやそういうこと聞きたいんじゃなくて。もう、反論しづらい事言いやがって。流石にさ、実家とかならいいけど、ここ職場だよ?泊まりなんてヤバいことしてるのに、一緒に寝るってそれは教育者としては終わっているというか……」

 

「でも、皆してるよ?……私の同室の子とか」

 

「……マジ?誰?」

 

「……()()()()()()さん」

 

 

その名前を聞いて俺は頭を抱えてしまった。

あぁ〜あの子かぁ。というか()()()()かぁ。すっごく否定できない例え出された。そうか、ドンちゃんの同室はブエナビスタなのか。……流石にヤバいな。ドンちゃんの教育にある意味悪影響を及ぼすなこれ。というかそれ皆と呼べるのか1人やぞ。

 

 

「……ドンちゃん、何かブエナビスタと彼女のトレーナーとの話を聞いたりしてるの?」

 

「……うん。結構お話するよ。()()()()()()、すっごくトレーナーさんのこと好きなんだって。私達みたいに、幼なじみなんだって」

 

「……それは、学園周知の話だな。もっとこう、何か二人の話とか」

 

「……気になるの?」

 

「……なんでそんなに訝しげな表情するの?」

 

 

正直()()()()()に憧れを持たれるのは困るのだ。うら若き乙女である学園生達は、噂には飛びつき食らいつき、もしも自分だったらと立場を己に置き換えて悶々とするお年頃。ドンちゃんもそういう話を聞いて、私もやってみたいなんて思われた日にゃ、俺は一体どうすればいいのだろうか。

 

そう、これは気になるのは気になるが、ドンちゃんがどのような影響を受けるのかという不安で気になって仕方ないのだ。

 

 

「……にぃにの馬鹿」

 

「なんで!?」

 

 

どうして罵倒されたのか。頬を膨らませて、明らかに不機嫌ですよという表情のドンちゃんの心情が分からない。

 

 

「……私の前で、他の女の子の事気になるって………」

 

「……うぇっ、あぁ…………そういう……」

 

「むぅーっ、そういうって。今は私と話してるのになんで他の事気になるのっ。今は私でしょっ」

 

「ちょっ、ごめんっ。ごめんなさいっ、許してっ。ドンちゃんとブエナビスタがどんな話してるのか気になっただけだからっ!!」

 

「………ほんと?」

 

「ほんとほんと。ドンちゃんが目の前にいるのに、他の女の子の事考えないからっ」

 

「でもブエナちゃんの事気になってる!!」

 

「それ振り出しに戻るよっ」

 

 

可愛らしい嫉妬ではあるが、今はそんなに可愛くない。

 

 

「……それで、どんな話をするのか教えて貰っても?」

 

「……え〜、乙女の秘密だよ?にぃにでも教えられなーい」

 

「……ん、まあ確かにそうか。女の子にも色々あるもんな」

 

 

言われてみれば、年頃の女の子達の話を聞きたがるとか控えめに言ってもヤバいやつである。娘の事を心配するお父さんが、最近どうだ最近どうだってしょっちゅう聞いてくるのと同じぐらい鬱陶しい事案である。

俺にそんな経験なんてないけど。男だし、そもそも妹おらへんし。

 

 

「……今日泊まったってのもその話の中の事なの?ブエナビスタって結構お泊まりしてるの?トレーナー寮?」

 

「……んー、私の知ってる限りじゃ週末ぐらい?学園生活始まってまだ数週間だけど、毎週末泊まってるって」

 

「……ホント学園の風紀どうなってんだ」

 

 

凡そ未成年と成人男性が置いていい距離感では無い。他人事ではないが。

 

 

「……間違いとか起きたらどーすんだよ。今度聞いてみるか……」

 

「いつもお顔真っ赤にするトレーナーさんを見れて幸せって言ってたよ」

 

「そういう事は言わない方がいいと思うな俺!?結構からかってる所あるよねソレ!?」

 

 

俺が聞いたらやぶ蛇ではないだろうか。俺もドンちゃんには色々と恥ずかしい部分を見られているから、じゃあ貴方はどうなんですかなんて返されたら死ねる自信しかない……。

ん?ちょっと待って?

 

 

「……そう言えば、この学園に入学してからやたらとドンちゃんが俺をからかってくるのって」

 

「……ふふっ。やっぱり、持つべきものは同じ志を持つ同士、ってね♡」

 

 

 

 

 

……ブ、ブエナビスタァァアア!!

 

 

おのれぇ!!おのれブエナビスタ絶対許さん!!ドンちゃんの教育にある意味これは悪影響だ!!ドンちゃんが学園の爛れた風潮に染まってしまう!!

 

俺は会ったこともないのにブエナビスタに打倒の文字を掲げる。流石にこれは頂けない。長年勉強勉強と口酸っぱくいい大学に行きなさいと言い聞かせていた親が、友達の影響で非行に走るようになってしまった思春期な子供を複雑な目で見ているような感覚だ。これは由々しき事態である。純粋無垢であったドンちゃんに、ピンク色の着色が施されているような気がしてならない。

……ある意味これはNTR(ナリタトップロード)だ。俺の与えていたご飯とは別に、横から入り込んで来たブエナビスタがご飯を与えて少しずつ引き込もうとしている。ゆ、許せん。許せんぞブエナビスタァ!!

 

 

「……ドンちゃん。こんな言葉を送ろう。よそはよそうちはうち。例えブエナビスタがトレーナーと相思相愛だったとしても、それはそれなんだ。ドンちゃんが自分に落とし込んで、俺の事を恋愛的に好きになるとかそういう事をする必要は無いんだ」

 

「でも、にぃにの事、好きだよ?」

 

「それは親愛的にだろ?」

 

「んーん、恋愛的に」

 

「……んぐっ」

 

 

そんな純粋な目で見ないで欲しい。俺は結構単純な男である。そんなこと言われてしまっては、舞い上がって調子に乗ってしまうなんて朝飯前。本気でその言葉を受け取ってしまうぞ。

 

 

「……ど、ドンちゃん。嬉しいけど……、嬉しいんだけどさ?ドンちゃんにはもっといい人がいる筈だ。いや絶対居る。実家からお見合いみたいな話あるんでしょ?俺とはあくまでも兄妹という関係。前々から思ってたけど、そろそろドンちゃんもそこら辺の事を理解しなくちゃいけないよ」

 

「……初恋、だよ?」

 

「……んんぬっ。それでも歳が離れ過ぎやしない?」

 

「今どき珍しくないと思うよ?本で読んだけど恋愛に年齢は関係無いんだって」

 

「一般論で言うと学生と付き合う大人はアウトだろ?」

 

「え、ちゃんとお付き合いのことも考えてくれてるの!?」

 

「え、いや違う違う勘違いしないで!!傍から見たらって話してあって、俺にはドンちゃんと付き合うつもりはないよ!!」

 

「黙ってれば大丈夫だよ!!ブエナちゃんも黙ってお付き合いしようって話してるらしいし!!」

 

 

 

やっぱり悪影響だなブエナビスタァァァ!!紛うことなき俺への嫌がらせじゃねぇかぁ!!

 

段々とノリノリになってくるドンちゃん。クリクリお目目が煌びやかに輝いて、その瞳から俺を逃がさないようずっと写し込んで俺をずっと見つめている。

 

最近、思春期からか、ドンちゃんの言動が少しずつ大人の様な真似事じみた発言や行動が多くなった。恋も多いこの時期、一番身近にいる俺のことをそう()()してしまっているだけで、思春期も過ぎれば俺のようなおっさんもどきなんて近所の仲のいいおじさんぐらいの認識に変わって行くだろう。

 

素敵な旦那さんと結婚して、子供を作って俺に見せに来る。そんな未来像を何度も夢で見た。俺が何故()()にいないのかなんて、そんなの()()()()()()()()が、俺はドンちゃんに幸せになって欲しいのだ。彼女が幸せであるなら、俺は喜んでこの身を捧げる事だってできる。

 

俺がドンちゃんの事を幸せに出来ると確信出来るのであれば、俺はドンちゃんの気持ちに応えてあげたいが、()では無理だ。

 

 

「……じゃあ、にぃにの気持ちを聞かせてよ」

 

「俺の気持ち?いやだから、俺はドンちゃんとは……」

 

「そういう上辺だけの言葉じゃなくて、本心」

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

その目はランランと輝いていた。獲物を前にする捕食者の目。獲物を逃がさないとする強者の視線。射殺さんとする鋭い視線が、唐突に俺の瞳を覗き込んだ。

()()()()が変わったドンちゃん、ジェンティルには嘘偽りは通用しない。本能的に、そう言うのが嫌いなのだ。

彼女は自分の性質を理解した上で、その性質を理解している俺の前に姿を現した。言い逃れはするな。本心を語れ。彼女の目がそう俺に言葉を投げかけている。

 

 

「……どうしてそんなに聞きたいの?」

 

「大好きな貴方への気持ちを贈っても、貴方は返してくださらないでしょ?私だけが本心を伝えてるだけでは、一方的な愛になってしまいますわ。お兄様が私に対し、何を思い何を感じているのか。私はしかと聞いて理解しなければならないのです」

 

「……はぁ、傲慢だな。俺の気持ちなんて俺だけが知ってればいいだろ。君が俺の事を大好きでしょうがないって気持ちは嫌という程理解してるけど、俺はそんな気持ち聞きたいとは一度も思ったことなんて無い。確かに相手の気持ちを知っているのは大切な事だけど、押し付けて教えたんだから教えろは流石に酷な話だろ?」

 

「あら、お兄様は先程か弱き乙女達の密事を探ろうとしたではありませんか。それに、私は別に押し付けてはおりませんわ。私、口にして相手に気持ちを伝える事をモットーにしておりますもの。お兄様の気持ちを聞きたいのは、あくまでもという枕詞がつきますわ。口にしてもしなくても、相手の気持ちは行動に現れる。口にしなくてもお兄様の言動で理解できてしまうのですから、今更知らない存じないなんてレベルの話では無くてよ?私は、そんなわかりやすい言動をされているお兄様に、もう潔く私に伝えてみては?と進言しているだけです」

 

「……酷い人だよ君も。俺の気持ちをわかってる上で口に出させて辱めをしたいのか?いや、違うな」

 

 

やけにジェンティルの口が饒舌だ。普段はそんなに語る事は少ない筈なのに、やけにペラペラと口が動く。

昔からジェンティル、ドンちゃんは気持ちを真っ直ぐ伝えてくれたが、俺はそんな気持ちを真っ直ぐ伝えるには踏ん張りがつかなかったから、はっきりとはしていなかった。

でも、今日のドンちゃんはそれを求めている。そこがおかしい。ブエナビスタの話に影響されてそういう気持ちになった?違うな。ドンちゃんだってブエナビスタとそのトレーナーの関係を羨ましいとは感じるが別段今までの俺達の関係と比べると大した差は無いと思う。

 

では何故ドンちゃんは、今こんなにも気持ちを知りたがっているのか。

 

 

「……()()()()()、なんか焦ってる?」

 

 

俺が導き出した答えはこうだ。ドンちゃんは焦りを覚えている。ブエナビスタに?違う。この学園に来て、ドンちゃんの心境がぐらりと揺れ動いた瞬間、それはトレーナー室でのヴヴヴ三姉妹との顔合わせの時だ。

 

ドンちゃんは少し目を見開いて驚いている。どうやら、彼女の不安の種は見つかったらしい。

 

 

「……俺が、あの3人に取られると思ったのか?」

 

「……急に何を言い出すかと思えば、そんな話に根拠等ありませんわよね。私が嫉妬?妬み?焦り?有り得ませんわ。私は淑女を目指す道半ばで得たこの志で、常に心には余裕という空白がございますもの。例えお兄様であろうと、私が今まで積上げてきた光跡を軽んじるのは、許しませんわよ?」

 

「……ほら、そこだよ。そうやって逃げてるところ、ジェンティルらしくない。俺の知ってるジェンティルは、自分が進んで来た道を振り返りはすれど、その道筋に未練なんて残さないんだ。ジェンティルは自分の道は自分で見つけ、切り開き、全てを我がものとする我儘で強欲で強かな女の子だ。反省はすれど自分のやってきた事には後悔しない。ジェンティルはそういう女の子だって、俺は知ってる」

 

「……浅はかですわ。お兄様は私の本性なんて理解出来ていないだけです」

 

「そんな本性見せられたこともないし、言われたこともないからね。でも、俺の知ってるジェンティルは、ドンちゃんは負けず嫌いで自分のモノは誰にも取られたくないって独占欲が強くて。なのに泣き虫で、寂しがり屋で、でも自分の気持ちを真っ直ぐに伝えられる芯のある女の子だって理解出来てるよ。本性だとか、本心だとか、ドンちゃんは今更違う自分が知られるのが怖いのか?違うでしょ?俺は知ってる。俺は理解している。誰も彼も知らない自分を見られるのは恥ずかしい。でも多分俺は知ってる。そうだろうなって思う。ドンちゃんが隠したい本性も何となく理解できてる。それを言えなんて言わないけど、ドンちゃんがそれを隠れ蓑にして自分の気持ちに蓋をするのはいただけないな」

 

「さっき自分の気持ちをペラペラ喋らない等とほざいておいてよくもそんな事をぬけぬけと言えましたわねお兄様!!」

 

「それはほんとにごめんよぉ!!でもドンちゃんが焦ってるのはホントでしょ?」

 

「……んっ、本当に、貴方という方は……」

 

 

ドンちゃんが体を密着させてきた。少し体温が高くなっている。汗ばんでいるのか、ドンちゃんの体臭が鼻腔に不本意だが流れてきてしまう。女の子のいい匂いだ。こんなにも強かで我の強い子でも、中身は人見知りで寂しがり屋な女の子。今まで積み上げてきた苦悩も労力も知っている。それを乗り越えるために応援こそすれど、直接手を貸すことは少なかった。でも今のドンちゃんがあるのはその積み重ねがあるからだ。

だからどんな困難でも乗り越えられる、なんてそんな甘い事は言えないが、きっとドンちゃんなら上手く乗り越えられる。そしてまた成長していくだろう。ドンちゃんはそう言う女の子なのだから。

 

 

「……()()()、どうしても私だけを見てくれないの?」

 

「……ごめん。本当は君だけを見ていたかった。でも、()()()と約束してしまったんだ」

 

 

脳裏に思い出される()()()の光景。泣きじゃくるあの子の誓いを聞き届け、それに感化されてしまったあの刹那。

それが悪かったのか、なんて後悔はない。あの子はあの子なりに苦労していたし、ドンちゃんの感覚で世話を焼いてしまっていたから、妙に縁ができてしまった。

だけど。

 

 

「約束を破るなんて、()()()()()のにぃにとしては失格だろ?」

 

「……うんっ。約束は破らない。私とにぃにの約束だもん」

 

 

幼い時のやり取り。それが今なお続く誓いとなっている。約束事には妙に感化されてしまうそんな誓い。だがそれを、鬱陶しいとかなんて思った事はない。この約束を思い出す度、俺はドンちゃんのにぃにという認識を再確認出来る。年長者である俺が破らないのだから、ドンちゃんもそれを守ろうとするだろう。

 

 

「……私ね、にぃにの事、取られちゃったかと思った」

 

「うん」

 

「にぃにが私の事、もう好きじゃなくなったかと思った」

 

「俺の気持ちは変わらないよ」

 

「うそ。だって他の子を担当してる。それって好きじゃないって事だよね」

 

「好きじゃなかったら一緒にこうやって過ごさないさ。担当だって、ドンちゃんの高みへ至る為に必要だと思ったからだよ」

 

「……にぃに酷い。それじゃあヴィルシーナさんが可哀想」

 

「言葉の綾だから。ほんとにそう思ってる訳無いじゃん。どっちも公平に見るよ。せっかく俺の元に来てくれたんだ。責任重大だしね」

 

「……いいよ。でも、にぃにがせっかく育てたヴィルシーナさん。私がボコボコに潰すから」

 

「急に物騒!?虐めとかダメだからね!!そんなことしたら二度と口聞かないから」

 

「するわけないじゃん!!レースで私が勝つって事!!」

 

「……あぁ、そういう。でもドンちゃん、そんな事言って逆の立場かもしれないよ?」

 

「……ふふっ、にぃにこそ変な事言うのね」

 

 

 

 

 

「にぃににずっと見てもらってる私の方が、強いんだからね!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「━━━━━あ、おかえりなさい、ジェンティルさん!!」

 

「ただいま戻りましたわ、ブエナさん」

 

 

週末が終わる夜更け。門限ギリギリで部屋に入ってきたジェンティルドンナに、同室であるブエナビスタが笑顔で迎える。

 

 

「今週はどうでしたか?」

 

「……ふふっ、ええ。とても有意義な時間を過ごせましたわ。学園生活はやはり肩身が強ばってしまいますもの。たまのリフレッシュは必要だと理解しましたわ」

 

「へぇ〜、どんなことしたんですか?」

 

「……ふふっ、秘密、ですわ」

 

 

口元に右手の人差し指を当て、ポーズをとるジェンティルドンナ。ブエナビスタはそんな仕草にドキッとしてしまう。

 

ジェンティルドンナが自分の割り振られたベッドの上に荷物を置いた時、ブエナビスタの鼻奥に猛烈に嗅いだことの無い匂いが届いた。

その匂いをブエナビスタが理解した瞬間、耳としっぽが思いっきりピンと重力に逆らった。

 

 

「じぇ、ジェンティルさん!?」

 

「……?どうかなさったの?」

 

「え?アレ?この週末、一体何方に!?()()()に帰られてたんですよね!?」

 

「……?……あぁ、そういう」

 

 

ジェンティルドンナは何かを理解したのか、もう一度さっきと同じようなポーズをとった。少し恥じらいを、しかし脳裏に浮かぶ愛しい誰かを想うその姿に、思わずブエナビスタは見惚れてしまった。

 

 

「━━━━━ひ・み・つ、ですわよ♡」

 

 

 

 

 

 

(……さ、流石ジェンティルさんっ。私なんかよりもよっぽど大人な女の人だっ。…わ、私も、お、お兄ちゃんと()()()()()()……っ!!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




後日、物凄い形相で見つめてくるトレーナーが現れる事を、ブエナビスタはまだ知らない。
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