ジェンティルドンナのにぃに概念   作:おっき!!!

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今日の投稿で暫く投稿出来なくなります。何とか出来上がった……。レース描写難しいですね、なんか色々詰め込んでしまった。
競馬歴6年(ニワカ)野郎のレース描写なのでダメだったら鼻で笑うかお気に入り登録外してダメ出ししてください……。


昨日投稿したネタ話が予想以上にダメだったようで、お気に入り一気に減っちゃった……。需要を満たせなかった私めを許して欲しいですが、思いついてしまったので仕方ないですよね。それが創作ですから!!


ええ、全然気にしてませんよ?ええほんとに。それはもう。泣いてなんかいません!!











3

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

選抜レース。トゥインクル・シリーズ未デビューのウマ娘達が走る最初の登竜門。ウマ娘達にとって、最も重要なレースである。

 

ヴィルシーナが先週の選抜レースで1着を勝ち取り、見事トゥインクル・シリーズへの切符を手に入れた。2着との差は現在の力量の差だと思える強い勝ち方であった。

やはりシーナにとって、ジェンティルドンナは良い刺激となっている。本格的の成長期も合わせて、予想以上にシーナが成長している。順当なら今年のウマ娘はシーナが有力候補に名前を取り上げられるはずだ。

 

 

さて、今日はジェンティルの選抜レース。学園内でのレースの為、控え室のような場所はあるにはあるが数に限りがあるため、ジェンティルは外でジッと待っている。

 

見た目だけではなんとも言えないが、彼女も彼女なりに緊張しているのだろう。普段俺が隣にいると他愛もない話をするジェンティルが、やけに今日は無口である。集中出来ているのは分かるが、ジェンティルのこんな姿は初めてなので、俺としては少し不安に感じる。

 

サブトレ時代では味わえなかったこの緊迫感。自分が育てたウマ娘がどこまで通用するのか、期待と不安が物凄い。シーナの時もそうだったが、多分この気持ちは慣れることが無いだろう。

クラシック世代では、既に()()オルフェーヴルが()()を達成している。世代最強が上の世代にいるのだ。誰もを魅了すると誓ったジェンティルの夢の舞台が、あと少しで切り開かれる。ジェンティルも俺も、大人になったものだ。

 

 

「……お兄様」

 

 

ジェンティルがふと俺を呼んだ。振り向くと、手に()()を握り締めたジェンティルが少し表情を崩して俺を見つめている。

彼女の瞳には薄暗いナニカが潜んでいる。いつもの輝きが足りない。やはり不安や緊張は払拭出来ていないようだ。気を紛らわせようと鉄球をニギニギしているのも拍車をかけている。

 

 

「……緊張、してるんだろ?」

 

「……ええ。いつも通りとは意識していますが、慣れませんわね」

 

「慣れなくていいと思うけどな。誰しも不安も、緊張も、恐怖だって。一様に抱く感情だよ。ジェンティルだけが気にし過ぎてるって訳じゃない。ただ、そこはみんな一緒なんだから、何処かでみんなよりも一歩違う自分にならなきゃならない」

 

 

俺はジェンティルが握る鉄球を優しく奪う。既に鉄球は豆鉄球と呼べるサイズに縮小しているが、不思議な事に質量は変わらない。なんだか熱を帯びてる鉄球だが、そんな事は今どうでもいい。

ジェンティルの両手を握り、彼女の瞳を覗き込んだ。()()()()赤い瞳に俺の顔が写し出される。

 

 

「緊張するよね。分かるよ、俺も緊張してる。不安もある。もっとなにか出来たんじゃないかってずっと内心考えてる。振りほどくなんて無理だ。きっとこれから続くレースでずっと帯を引かれる思いで君の前に立つことになってしまう」

 

「……ふふっ、弱気ですわね。割り切っては下さらないの?」

 

「俺は優柔不断なんだ。あーだこーだ最後まで後悔しちゃう人間なの。特に、君の事になると、俺は制御が効かなくなる」

 

「まるで私が狂わせてるみたいではなくて?全く、酷い人」

 

「正直、君より緊張と不安を抱いてる自信がある。君の代わりに不安も緊張も恐怖も俺が背負いたい。自分よりも緊張してる奴見ると、自分は大丈夫なんだって思えてこない?」

 

「心配になりますわよ、全く。……でもそうね、お兄様の気持ちも同じと分かれば、私だけじゃないって思えました。先程よりかはマシですわ」

 

 

誰しも自分より緊張とかしてる人を見ると、自分は大丈夫なんだって思えてくる。これで和らいだだろう。さあ、あとはいつものジェンティルに戻すだけだ。

 

 

「ジェンティル。いよいよ君の大舞台への道が切り開かれる。君のトレーナーとして言わせてくれ。普段通りの君なら、圧倒的な強さで1着を狙えるだろう。練習の成果を出すんだ」

 

「はい。お任せ下さい」

 

「君のファン一号として言わせてくれ。君の輝かしい強さで、レースを見てるみんなを魅了するんだ。君の輝く姿を、俺の目に焼き付けさせてくれ」

 

「ふふっ、ええ。勿論ですわ」

 

「……君の兄として言わせて欲しい。ゴールで()()()()。無事に帰っておいで」

 

「……はい、お兄様。必ず、1着で帰って参りますわ」

 

 

時間だ。招集が始まった。

俺はジェンティルの両手を離す。既に、彼女の赤い瞳はギラギラと輝いている。いつも通りのジェンティルが帰ってきたようだ。

 

不安だって緊張だって感じるのは自由だが、それで普段通りのことが出来なければ、この先のレースでは通用しなくなる。

だが悪いことかと言われるとそうでもない。確かにアスリートとしては、最大限のパフォーマンスを出来てこそ評価されるのは事実だが、緊張しないなんてロボットじゃあるまいし、完全に払拭なんてする必要が無い。

 

言ってみれば、不安や緊張を自分でプラスにすることが出来るようにすればいい。極度な緊張、それをどうやって乗り越え、これからのパフォーマンスの調味料にするか。

トレーニングでは身体を。ならば精神を鍛えるには緊張や不安と向き合う心構えを。両立し、それを成長に変えることが出来てこそ、アスリートとして完成されていく。ジェンティルもシーナも今後どのように成長していくか、とても楽しみである。

 

 

「━━━━━()()()

 

 

ふと、()()()()()から声がかかった。

()()()()()の表情は、屈託のない()()()()の残る満面な笑みであった。

 

 

「━━━━━()()()()()()!!」

 

 

フラッシュバックする光景。夏の夜空に輝く花火の元、あの時の彼女の輝きが、俺の瞳に飛び込んできた。

思わず目尻が熱くなる。しかし、俺には()()()()()の言葉に返さなければならない。

 

 

「━━━━━()()()()()()()()っ、()()()()()

 

 

走り去っていく彼女の後ろ姿を見つめながら、俺は胸の奥のざわめきを押え付ける。

感無量だ。彼女の姿を見守ることが出来る。それだけで、俺が今ここにいられる証明である。

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『━━━━━続きまして第3レース。芝・1600m。本日の芝レース場最後となります。馬場状態良好、天候も晴天。輝かしいウマ娘達の門出に最も相応しい状態となっております。出走するウマ娘は18人となります』

 

 

ざわめきが所々広がる観客席。ゴール付近最前列に並んだ俺は、ジッとその場から動けずにいた。本来ならば、レースを見に来たスカウト目的の先輩トレーナー方に挨拶でもした方がいいかもしれないが、俺の心の中はそんなに余裕が無い。シーナの時よりも物凄い緊張している。今余計な事すると吐いてしまいそうなほど緊張しているのだ。

 

シーナは三姉妹で何処かでレースを見ているのだという。俺の隣でもいいのでは?とは思ったが、「フェアじゃありません」って言われたのでよく分からなかったが了承して別々で観戦する事となった。

今思えば、シーナの判断は現在の俺にとても有難い事となっている。未来視でも出来ているのだろうか。

 

 

「━━━━━おいおい、何そんな辛気臭い顔してんだ?」

 

 

聞き覚えのある声が耳に届く。振り向くと、見覚えのあるレジェンドの姿。

 

 

()()。先生も観戦に?」

 

「……まぁ、それもあるが。一番はお前の担当したウマ娘を見に来た」

 

「先週のシーナの時はお姿をお見せになられませんでしたけど?」

 

「そりゃそうだろおめぇ。ヴィルシーナの事は知ってる。予想以上に伸びてるが、()()程興味があるって訳じゃねぇ」

 

 

言っちゃえばな。先生は顎髭を撫でながらそう仰った。

先生の口ぶりからして、レースは観戦したが俺に声をかけるまでもないレースだったって事だろう。興味というのは、多分俺がサブトレ時代から言い続けていた俺が執着しているウマ娘だからって事だろう。

 

 

「……おめぇが口を開く度あの子があの子がってほざくもんだから、一度見なきゃずっと夢ん中まで言い続けて気やがる。溜まったもんじゃねぇよ」

 

「……そ、そんなに言ってました?」

 

「ウマ娘に脳焼かれるのは結構だが、それを他人に押し付けんな。全く、おめぇみてぇなやつは長年トレーナーやってきて初めてだ」

 

「……でも、そのお陰で直接先生に俺が育てたウマ娘を見てもらえる機会が出来た。有難い話です」

 

「…けっ、まぁ弟子の腕を見るのも師の義務だ。今日はとことんダメだしさせてもらうぜ」

 

「……お手柔らかにお願いします」

 

「はっ、誰が。さぁ、レース始まんぞ。評論会は後回しだ」

 

「はいっ」

 

 

 

ジェンティル、頑張れよ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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『━━━━━各ウマ娘、順当にゲートに入っていきます。本日の3番人気2枠4番ノボリオー。上位人気が集中する中の刺客となれるのか。表情は落ち着いている様子』

『パドックでも落ち着きのある雰囲気でしたね。初出走、期待高まります』

 

『ゲート内に納まっております本日の2番人気。かなりの人気を集めております、6枠11番ジュディーソング。少し足元を気にしている様子ですが大丈夫でしょうか?』

『緊張しているのでしょう。無事に走り切ってくれることを願いますね』

 

 

『さてやって来ました本日の1番人気!!8枠16番ジェンティルドンナ!!パドックでも見せましたが、物凄い気迫とオーラを感じます!!圧倒的人気は伊達ではない!!』

『これはちょっと話が変わりますよね。彼女の醸し出すオーラ。まさに強者のソレです。既にトレーナー登録をされているだけあって、体の仕上がりは1番ですよ』

 

 

ジェンティルの姿を見るだけで会場が沸き立っている。当然だ、今の彼女は多分どのウマ娘よりも輝いているのだから。

ゲートに入ったジェンティルの表情には緊張は無い。迷いも無い。ただ静かに、レースが始まるのを待つ。

 

大外のウマ娘がゲートに入っていく。一瞬の静寂。そしてガコンッの音と共にゲートが開く。

 

 

『大外18番サウンドマンデラがゲートに入って、スタートしました選抜レースメイクデビュー戦!!各ウマ娘いいスタートをきれていますね。激しい先頭争いを制したのはなんと大外サウンドマンデラ!!』

 

『2番手にジェンティルドンナも付けましたね。外枠2人がレースを引っ張って行く形となりそうです』

 

 

まるで1つの足音の様な轟音がレース場を轟く。それ程までにウマ娘の脚力が凄まじいのだと改めて理解させられる。

大外のウマ娘が先頭に立つ。ジェンティルはゆっくりと内側に入り込み、2番手の位置を陣取った。

 

 

(予定通りですわ。人数が多ければ多いほど位置取りは難しい。先頭がレースを作るとはいえ、未熟な未デビューウマ娘に逃げの駆け引きが出来るとは思えないし、2番手で進むのが得策)

 

 

18人となると、かなりの混戦になるのは明白だった。故に最初は先団に入る様、ジェンティルは()()()から聞き、それを守って2番手に控える事が出来た。他のウマ娘達も、付け焼き刃ながらの位置取りでレースが進んでいく。

 

大外枠が前に来た影響か、先団中団がかなり詰まったレースになっている。スペースを確保したいウマ娘が団子状態で向正面を走る。

 

 

『やや詰まった状態ですが向正面を走り抜けて第3コーナー手前に入っていきます。先頭は変わらず18番、その2馬身後ろ16番ジェンティルドンナ。更にその後ろ1馬身2馬身離れて6番5番、2番7番。最後方1番キュウキョクメイトと言った形で進みますメイクデビュー戦』

 

『かなり差が拡がっていない現状、かなりの混戦になる可能性がありますよ』

 

 

耳のいいウマ娘とって、実況者の声もしっかりと耳に届く。つまりその音は現状を詳しく教えてくれる回答の面をしている。

駆け引きに慣れていない未デビューウマ娘が、そう言った情報に縋るのは分かりきっていた。後続のウマ娘達が少しずつだかジリジリと先頭に近付いてくる音をジェンティルは耳で感じ取っていた。

ジェンティルを除く全員が、少しずつ()()()気味になっているのは明白であった。ジェンティルもそれに飲み込まれないよう気を引きしめる。

 

 

(……不味いですわね、横と後ろに並ばれてますわ。横並びで並んでしまえば、外から回る方がスペースを確保出来るから有利。内に入るのは浅はかでした)

 

 

後ろから迫られるという事は、通常横から追い抜こうとしてくる。そうなると、ジェンティルは自然と内側に押し入れられる形となる。18人となるこのレース、完全に前が塞がれた場合、隙間が無い限りはその包囲網から抜け出すのは至難の業。

ジェンティルもそれを理解してはいるが、逆に真後ろにいるウマ娘が内側から入り込んでくる可能性もあり、体勢的には今の位置から更に後ろに押し下げられてしまう。

 

動くなら決断を早める。()()()がそう言っていた。一瞬の隙は誰かの思う壷である。選択肢に正解は無いが、結果は順位で出てくる。理不尽なのがレースの世界。一瞬の油断が、自分の寝首を掻く行為に早変わりする。

故に、ジェンティルは現状維持を選択した。カーブを走行中は動くことが難しい。外に流れる遠心力に身を任せると、隣のウマ娘と接触してしまう可能性があり、斜行判定を受けてしまう可能性がある。

 

だから、ジェンティルは敢えて動かず、逆転の一手を待つことにシフトした。

もしもそれで来なければ力でこじ開ければいい。今潰れるよりも、チャンスを待つべきだと、ジェンティルは判断した。

 

 

(……少々キツイですが、まだ、まだ)

 

 

コーナーに入ってから、よりウマ娘達の位置が手に取るようにジェンティルには理解出来る。それ程までに集中する事が出来ている。真っ赤に燃る闘志はあれど、頭の中は雲一つない晴天ばれ。視界はクリア。まさにジェンティルにとって、初めてであり、後に思う理想的な精神状態であった。

 

 

『第4コーナーを抜けます先頭は変わらず18番、16番ジェンティルドンナは内に控えるか。少し前が塞がってきたか内側不利な状況!!外を通りますウマ娘達が先頭集団に迫っていきます中間越えました。さぁ先頭苦しいか後続が迫って直線コース。ウマ娘達の動きが激しくなってきた!!』

 

『最後の直線勝負、見応えがありますよ!!』

 

 

後続のウマ娘達が前に、前に。コーナーを曲がりきる時点で、少し下がったジェンティルの視界には既に抜け出せるコースは空いてはいない。混戦しているからこそ、位置取りは重要となるこのレース。ジェンティルが今いる位置はかなり不安な場所であった。

 

 

(落ち着きなさいジェンティルドンナ。ここで焦っては勝ち目が無くなる。勝負は一瞬。その一瞬を見逃さず、虎視眈々と狙いなさいっ。あの人が見ているのよっ)

 

 

しかしジェンティルは焦らない。見つめる先はゴール。いた。見ていて欲しい一番の相手が。ジェンティルの口元に自然と笑みが浮かび上がる。

今のジェンティルならば、例え崖っぷちだろうと、不可能だと言われようと、それを覆すだけの力があると、己の力を最大限信じきることができる。

 

 

 

(視野を広げて。見える。見えます。隙を見つけるのよ。様子を見るのよ。ジェンティルドンナ。貴方なら見つけられる。見つけられるはず。あの人の愛バなのだから。有象無象のウマ娘との違いを分からせなさいっ)

 

 

 

(見る。前の方は少し苦しい様子。ならばこのまま下がってくる可能性はある。となると隣の方がそれを被せる為に少し位置を中に入れて来るはず。間が開かないなら外に持ち出せるだけ持ち出す。外が無理ならこのまま最内を狙って━━━━━)

 

 

 

 

よ〜い、ドンッ

 

 

 

刹那。

 

 

一瞬何かが切り替わった。ジェンティルの中で何かが切り替わった気がした。

視界が広がり、まるで上から見下ろしているような全周囲を見渡せるまでの視野にまで拡張した。

その視界に見える小さな光。空いた僅かなスペースの余白。それはまるでそこが今から空くのだと、確信させる光。ジェンティルの目には、一筋の光が自分を通してその場所に誘っているように感じた。

 

 

 

(━━━━━透き通るような世界。呼吸音が、足音が。肌を触れる空気の感触が。正確に私の頭の中に入ってくる)

 

 

 

アスリートが見せる集中力の先。自身の経験と能力が惜しみなく引き出される極地。ジェンティルは無意識に、自分の中でその極限状態に入り込んだ。

 

極限集中状態。ゾーンとも呼ばれる己だけの世界。時間の進行すら置き去りにする思考回転。ジェンティルの中で渦巻く極限状態が、まさにジェンティルを次のステップに押し上げる様に能力のギアを上げた。

 

 

 

(━━━━━ふふっ。成程。まるで私だけの世界ですわね)

 

 

 

しかし、ジェンティルは何故かそこで否定する。この極限の集中力の最中、目の前に拡がった真紅の景色。それをジェンティルは目を瞑り、真っ向から微かに押しつぶされそうな理性で抵抗する。

ジェンティルにとってその世界は理想的なのだろう。しかし、それはジェンティルが一人でレースを走る場合のみの話である。ジェンティルには、一緒に夢を見てくれる人がいる。ジェンティルは一緒に走れないその人の想いを背負って今走っている。そんなジェンティルにひとりの世界など意味など無い。彼女の隣にはいつでも彼女と共に夢を見続ける大切な人が居続けてくれるから。ずっとジェンティルの事を見守ってくれる人がいるのだから。

 

 

 

(━━━━━例え自分の本能であろうと、邪魔をするのであるならば容赦しませんわ)

 

 

 

(━━━━━孤独な世界など、私には不必要!!無価値なものを押し付けるな!!)

 

 

 

 

真っ赤に染まるその世界が、硝子を砕いた様に砕け散る。そして、張り替えられていく世界。ジェンティルの理想とする、二人だけの景色。その片鱗が今垣間見える。

 

ジェンティルにとってのその光景は、二人で一緒に歩く何気ない日常であった。幼かったジェンティルに歩幅を合わせてくれた()()()の顔を見上げながら、晴れ渡る空の下を一緒に歩く事が何より大好きであった。

優しい声が聞こえる。褒めてくれて、一緒に喜んでくれて。一緒に幸せな時間を過ごしてくれる。そんな心温まる優しい世界が、ジェンティルにとっての理想郷であった。

 

 

 

(━━━━━私の理想っ、私の夢っ。誰にも決めることなんて出来ない私だけの景色!!)

 

 

(━━━━━お退きなさい!!あの人が入り込めない世界なんて、私の世界ではありません!!)

 

 

 

 

一歩、芝を踏む感覚がダイレクトに伝わる。シューズを履いているはずの足裏から伝わる、芝の感触。ジェンティルの姿勢が次第に()()()()()()

 

 

一歩、呼吸が変わった。深く息を吸い、それを溜め込んで次の一歩で吐き出す。

 

 

光がより輝いていく。次第に開かれていく扉の先、眩しく照らす扉の奥。その先にいる大好きな人の姿。

必死になって応援している姿が見える。普段見せない必死な表情。初めて見る一面に、ジェンティルは高揚感を隠せなかった。

 

 

 

(━━━━━見えたっ)

 

 

 

世界が彩られていく。真っ赤に染る世界が、色とりどりの色を取り戻していく。足取りは軽い、今ならあの大空に飛び立つ事すら出来そうだ。

 

嬉しい(大好き)嬉しい(大好き)大好き(愛してる)。もっと応援して欲しい。もっと見て欲しい。私だけを、私だけの事を見ていて欲しい。

 

 

(━━━━━()()())

 

 

(━━━━━にぃに、にぃにっ。にぃに!!)

 

 

世界が、ジェンティルにはスローモーションのように感じた。しかし、そんなことジェンティルにとって、()()()()()にとっては関係無い。

 

頭の中にあるのは喜びと、形容し難い高揚感。胸が張り裂けそうなぐらい、心が満たされる。とめどなく溢れ出す()()()が、ジェンティルの新たな力の片鱗へと変換されていく。

 

 

(━━━━━にぃに(お兄様))

 

 

(━━━━━見てて(見ていてくださいませ))

 

 

(━━━━━にぃにと私の世界を(貴方と私の夢の舞台を)!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

固有スキル

 

 

 

 

━━━━━

 

 

 

 

 

 

 

ジェンティルの一歩が、まるで大地を揺れ動かすような衝撃を与える。周りのウマ娘が驚愕した表情でジェンティルを見る。観戦する観客達がジェンティルに一瞬で注目した。ジェンティルのトレーナー、()()()がジェンティルに叫んだ。

 

 

 

 

 

「━━━━━行けぇ!!ジェンティルゥゥ!!!」

 

 

 

 

「━━━━━うんっ、にぃに(はいっお兄様)!!」

 

 

 

 

 

 

 

固有スキル

 

 

 

あの日二人で見た夢の舞台へ

 

 

 

 

 

 

 

『━━━━━コーナーを抜けて先頭変わって5番にっ、えっ、うそっ、う、内から弾き出されたように飛び出したぞ16番ジェンティルドンナ!!間を抜けて離す離す離すっ!!止まらない止まらない差を広げていくぞ!!』

 

『そんな位置からですか!?なんという加速力ですか!?』

 

『後続粘るっ、粘るが厳しいか!?追いつくのは厳しいか!?後続のウマ娘との差は広がる広がる!!200を切ったジェンティルドンナまだまだ伸びる伸びる!!これは圧倒的っ、圧倒的な強さだァ!!』

 

 

後続の足音が遠のいていく。ジェンティルの瞳に宿る()()()。全てを薙ぎ払う紅蓮の火球が、芝上を踏み締め芝を削り、一直線に進んでいく。

 

 

『これは決まってしまうのかぁ!?100を切った最早これは独走状態!!止まらない止まらないなんてスピードだジェンティルドンナァッ!!』

 

 

ジェンティルの耳には最早声は届かない。聞こえるのは自分の息遣いと芝をふみしめる足音。そしてジェンティルを応援する()()()の声だけだ。

 

レースとはこれ程までに気持ちがいいものなのか。ジェンティルは次第に切れていく集中力の中で、微かにそう思った。

 

夢の舞台への切符。このレースの勝利はそれだけではない。初めて走ったレースへの、勝利への渇望とレース中の存在証明。ウマ娘が輝ける時間は、たった数分だけの僅かな時間。

ジェンティルは思う、このたった数分でどれだけ衝撃を与えられるウマ娘にはどうすれば良いか。勝利だけではない、圧倒的な強さと輝き。これを見せるにはどうすれば良いか。

 

ジェンティルは笑った。面白い。楽しいと。レースとはこんなにも心躍るものなのかと。

血肉沸きあがるこの感情を、どうやって満たしてみせようか。

ジェンティルはこのとき、初めて自分の夢が間違いではなかったと思う。

 

他人にどう思われようと関係無い。ジェンティルは自分の道を進むだけ。正しい正しくないなんて、誰にも決めることなんて出来やしない。

 

 

 

(━━━━━ここからが、私達の第一歩!!)

 

 

 

『━━━━━今、1着でゴォオオル!!圧倒的な強さを見せつけましたジェンティルドンナ!!差が開いて2着争いは15番11番体勢やや15番有利か!?』

 

『ははっ、笑っちゃいますねこの強さは。いや〜物凄いレースですよこれ』

 

『おぉっと!!ここでなんとなんと!!レコードッ、レコードです!!掲示板に出る赤い文字!!ジェンティルドンナレコード勝ちだぁ!!』

 

 

 

 

━━━━━1分32秒コンマ2。

 

掲示板に点滅する赤い文字が、ジェンティルドンナのタイムをたたき出していた。観戦していた人々は、その光景に固唾を飲み、歓声声を上げた。

 

 

『凄まじい強さでしたジェンティルドンナ。第4コーナー辺りで前が塞がれた時はダメかと思いましたが、一瞬の隙をついて抜け出して加速。スピードが更に乗り7馬身の差をつけての勝利となりました』

 

『あの状態でよく加速出来ましたよね。私には隙間なんて見えませんでしたが、よく抜け出しました。斜行の判定も出てませんので、……いやはや、言葉がありませんよ。彼女のポテンシャルは正直測りかねていましたが、現段階でもクラシック世代と何ら遜色ない実力ですよコレは。いや〜、私感動してしまいました』

 

 

 

 

 

ゆっくりとスピードを落としていくジェンティル。足取りはそのままゴール付近に居る最愛の()()()の方に向けられていく。

 

()()()の顔は涙でボロボロに汚れており、先程まで大号泣をしていたのは明白であった。ジェンティルはそれが可笑しくてついつい笑いを零した。

 

 

「……どうして勝った本人よりもお兄様の方がそんな有様ですの?」

 

「……っ、うるさい。ジェンティルの勝利した姿を見たらこうなっちゃったの!!」

 

「うふっ、ふふふふふっ。……あぁ、本当に貴方という方は」

 

 

ジェンティルは柵を乗り越え、()()()の前に降り立った。目線が合う。レース前のギラギラした雰囲気は無いが、何故かハート型の様な模様が浮かび上がっている気がする。

()()()は気が付かないのか、ジェンティルの両手を手に取ってギュッと優しく握りこんだ。

 

 

「おかえり、ジェンティル」

 

「ふふっ。ただいま戻りましたわ、お兄様」

 

 

自然と2人は顔を綻ばせながら抱きしめ合った。周りから驚きと黄色い声が湧き上がるが、2人にとっては些細なことであった。

 

 

『おおっと、なんという熱い抱擁か!!ジェンティルドンナの強さの秘訣はトレーナーとの愛から来るものかもしれませんね!!』

 

『学生と指導者という節度を守って欲しいですが、これはちょっと文句のつけようがないですね……』

 

 

実況からも野次のような声が聞こえるが、2人にとっては関係無い。

()()()の隣で恐らく一緒に見ていただろう初老の男性は、頭を抱えていたが、それを見たジェンティルにとっては些細な事であると見て見ぬふりをした。

 

 

晴天空が、2人の門出を祝う。雲一つない青空は、まるでこれから進む2人の道に曇りない壮大な景色が広がっている事を暗示しているようだ。

 

それとも何かあっても、きっと2人なら乗り越えられるという天からの祝福か。

 

 

ジェンティルにとって勝利の余韻に浸りながら、最愛の人に抱き締められる今の状況は、形容し難い喜びで満ち満ちている。

また次も、勝てばこの感覚を得られる。これは私だけのものだ。

 

ジェンティルの口元が、少しだけ()()()()()()歪み方をした。しかしそれも一瞬。すぐに元の笑みに戻る。

 

 

一抹の不安も無く、ジェンティルと()()()の、夢の第一歩が無事に踏み出されたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

━━━━━()()()ですわ、()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 








ドンちゃんの大人びて鍛え上げられたムチムチな体抱き締められるこの男抹消してぇ〜(嫉妬)




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