メイガンの言葉で、クチナシの頭の中ですべての点が線になって繋がった。
先ほどから感じる胸騒ぎが、いつかメイガンが言っていた魂の共鳴だ。あの青年にどこか見覚えがあるのも、彼とは初対面ではあるものの、他人ではないからだ。
見覚えなどというものではない。あの体は、元はクチナシのものだったのだ。
メイガンの言葉が言い切られたとほぼ同時に、剣士の少女が一瞬で間合いを詰めた。《身体強化》を極めて生まれた人間離れした膂力がメイガンに襲い掛かる。
メイガンが胸元へ視線を映したその先では、直刀の切っ先がすでにメイガンに真っ直ぐ向けられ、それに左手を添えるようにして構えられていた。
「へえ」
メイガンが感嘆の声を上げた刹那、剣士の鋭い突きがまっすぐ彼女の胸へと迫りくる。メイガンはそれを杖から繰り出す転換術でわずかに逸らす。剣はメイガンの左の脇腹を掠めていき、放たれた剣圧が風を巻き起こして吹き抜けていく。
メイガンが返す刀で杖を剣士に向けると、剣士は舌打ちして後方に跳んで距離を取る。その先では赤髪の魔術師が杖をこちらに向けていた。杖から派手な音をまき散らしながら炎が噴き出して、メイガンをもろとも包み込んだ。
「アイの初撃が躱されるなんて久しぶりね。それどころか反撃しようとしてくるなんて、相手もけっこうやるわね」
「全くさ。おかげでケイの援護に頼る羽目になっちゃったわ」
「なにそれ、余計なお世話だったかしら?」
「いや、感謝してるわ。ただちょっと悔しいだけ」
短く言葉を交わす剣士のアイと魔術師のケイは、燃える炎の向こうを睨みつける。
「おいおい、かかっておいでとは言ったけれど、さすがに私の家は燃やさないでおくれよ? この年で野宿する元気はないし、何よりこの家には思い出が詰まっているんだ」
アイとケイが声のする方に目をやると、そこには無傷のメイガンが杖を天に向け、ケイの転換術をいなしきっているのが見えた。
「ケイの《炎》も躱すか。なんだかおちょくられてるようで腹立つな」
「それだけじゃない。軌道を逸らして小屋に当たらないようにするだけの余裕もあったようね。どこまでできるか底が見えない」
武器を構え直す二人を前にして、メイガンはほうきに転換術をかけ、それに腰かけるとふわりと宙を舞った。空を飛ぶメイガンが地上の二人を見下ろしながら、先の攻撃を振り返る。
「茶色の髪の子の《身体強化》は見事だったよ。一瞬であの距離を詰めながら攻撃に転じられるほどの実力者は久しぶりに見た。赤髪の子の《炎》も、剣士ちゃんが反応することを織り込み済みで、よくあれだけの威力の転換術を使えた。いいチームワークじゃないか」
「敵にアドバイスとは、ずいぶん余裕じゃない」
「余計なお世話だったかな? すまないね。どうやら癖になってしまっているようだ」
言いながら、メイガンは杖をパーティに向けた。杖の先端に魔元素が溜まり始める。
「それじゃ、今度はこちらが攻撃する番だ。上手く守りなよ?」
メイガンは杖から無数の弾丸を浴びせかかった。弾丸は雨あられのようにパーティに降り注ぎ、土煙を上げながら大地を抉っていく。
メイガンが攻撃を止め、巻きあがる土煙が晴れていく。そこには半球形の透明な障壁によって、メイガンの攻撃を防ぎ切ったパーティの姿があった。
「なるほど、今まで攻撃に参加していなかったから何かあるとは思っていたけれど、水色の髪の子は守りの要というわけか」
空中で顎に手を当てて、水色の髪の魔術師――レンが張った障壁をまじまじと観察する。
「障壁の展開の早さ、強度、共に良し。いやあ、三人ともいい転換術の使い手じゃないか」
メイガンは戦いの最中であるにも関わらず、相手に敬意を込めて拍手を送った。その様子はまるで相手をおちょくっているかのよう。