鉄屑少女と空飛ぶ案山子   作:くろゐつむぎ

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6.魔王の過去語り(14/15)

「さて、それを踏まえた上で君達を攻略してみてもいいんだが……、肝心の勇者様は我関せずで傍観するだけかい? せっかくここまで来たんだ、仲間外れにするつもりはないから、かかってきなさい」

「勇者様……!」

 

 アイが勇者の顔を見て呼びかける。三人ともかなりの実力者で、実際王都でも指折りの能力者だ。それが束になって戦っているというのに、彼女に対しての攻め手がどうしても足りない。

 

 自分達の力不足に歯がゆさを覚えながら、メイガンを捉えるために勇者に頼った。

 

「分かった。みんなは下がって、後は俺に任せてくれ」

 

 勇者は空の右手に光の剣を転換させ、切っ先をメイガンに向ける。

 

「お前のお望み通り、俺も戦ってやるよ。後悔するなよ!」

 

 勇者が言い切ると同時に、メイガンの目の前に彼が握る光の剣を同じものが前触れもなく出現した。現れた剣はメイガンの胸へ目掛けて飛んでいく。それをメイガンは杖で軌道を変えていなす。軌道を逸らされあらぬ方向へと飛んでいった剣は、地上の一本の木を貫通した。まるで何もない場所を通り抜けたかのように突き抜けた剣は地面に刺さり、一呼吸遅れて木がななめにずり落ちていく。

 

 その様子を眺めていたメイガンが、初めて驚いた表情を浮かべる。

 

「剣の形をしているものだから、てっきり近接系の転換術なものと思っていたら、まさか領域型も併用していたとはね。一回でも食らえば致命傷になり得る威力が、目に見えないところから突然飛んでくるのか」

 

 さらに一本、二本と追加されていく剣をひらりひらりと躱しながら、メイガンは冷静に勇者の転換術を分析する。

 

「じゃあ、守りの方はどうだろうね?」

 

 勇者の攻撃の隙間を縫うように、メイガンは転換術で作り出した種を一粒、これ見よがしに勇者に向けて放り投げた。

 

 種は空中で作られた光の剣に撃墜されて、勇者に届くことなく爆発四散する。爆発で揺らいだ視界の先で、勇者がにやりと笑みをこぼす。

 

「ふうん……?」

「そうやって、いつまで余裕をかましているつもりだ?」

「君が本気を出すまで、かな」

「じゃあ、その余裕今この場で失くしてやるよ!」

 

 勇者が叫ぶと、突然現れた光の剣がメイガンを取り囲んだ。上下左右前後すべて、まるで球を形どるように剣が寄り集まり、その先端はすべて中心のメイガンを向いていた。一撃でも致命の一撃となり得る光の剣が、逃げ場がなくなるほどにめいっぱい転換され、メイガンを閉じ込めている。

 

「食らえ!」

 

 勇者の合図とともに、剣が一斉にメイガンに襲い掛かった!

 

「ま、こんなもんか」

 

 勇者が意識を集中させ、光の剣を一丸となってメイガンにぶつけようとしたその瞬間、メイガンを中心として突然大爆発が起き、爆風が周囲に漂わせていた剣をすべて薙ぎ払ってしまった。

 

「なっ……」

 

 渾身の一撃をなんなく防がれた勇者は少なからず驚愕した。今まであの技を切り抜けた人物はそうそういない。彼と行動を共にするアイも、ケイも、レンも、防ぎ切った頃には満身創痍になっていた。

 

 その技を、彼女は表情一つ変えずに、たったの一手で突破してみせた。

 

 そのメイガンはといえば、大層つまらなさそうな顔をして、勇者の目の前に降り立った。未だに余裕を見せつける彼女が眼前に迫り、辺りの緊張感はより一層高まっていく。

 

 ごくりとつばを飲み込み、勇者達は各々武器を構え直し――

 

「参った」

 

 メイガンはそう一言だけ呟くと、両手を上げてあさりと降伏した。明らかに余力を残したまま、不可解なほどに潔く戦意をなくした彼女に不信感を抱く勇者一行は、抵抗する気のないメイガンになおも警戒心を解かないまま睨みつけている。

 

「……なぜいきなり降参した。まだ戦えただろうが」

 

 そう言ってメイガンに詰め寄るのは、先ほどまで彼女と戦っていた勇者だった。

 

「案外そうでもないさ。今ので魔元素を使い切ってしまった。あれ以上続けていても私に勝ち目はなかったよ」

 

 その言葉を訝しむ勇者達だったが、メイガンは嘘を言ってはいない。ただ、使い切ったのが自分の魔元素ではなく、クチナシの魔元素だったというだけだ。

 

 そして、それこそが、彼女が勇者達に戦いを挑んだ最大の目的でもあった。

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