終末世界で華や散るらん   作:ランハナカマキリ

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ドラマ『ちるらん』おもしれ〜



猫の落とし物 上

道場の和室。

 

道場に一台しかないケーブルテレビに興奮を隠しきれないアナウンサーと小太りの低身長の男が映し出される。ヴィジョンコーポレーションの代表であるパールマンが秘書が用意したカンペを読みながら旧都地下鉄の改修工事について説明していた。

 

その様子をテレビの前で胡座をかいて見ているリードは尻尾を掻きながら、横に置かれた学校の課題をすらすら〜っと解き進めている。

 

「最近は市政選挙とこの手のニュースばかりっすね〜」

「おいリード、課題やんのかテレビ見んのかどっちかにしろよ」

 

庭で素振りをしていた誠音が、見るからに不真面目なリードを咎める。

 

「大丈夫っすよ〜、これは隣のクラスのルビーちゃんの分なんで。彼女に課題代行お願いされまして〜、テキトーにやってま〜す。あ、ちゃんと後で書き直すんで大丈夫っすよ〜」

「……そのルビーって子に同情するよ」

 

リードに課題代行を依頼した彼女の運の無さに同情したのちに、彼は再び素振りを続ける。

 

「師範代、只今戻りました」

「おう、蒼烈。セール品は買えたか?」

「目当ての商品は買えたのですが、某の風貌が恐ろしいと治安局の者たちに呼び止められてしまい、青衣殿のおかげで無罪放免となりました」

「そりゃスーパーの半額セールに戦闘用知能構造体が参戦したらな…青衣さんにお礼言っとくか」

「いまだに分かりませぬ。某がそこまで恐れられるのでしょうか……?」

「鏡見て来い」

 

鏡の向こうには、身長約二メートル越えの巨体。鋼鉄でできた濡羽色の胴丸風の鎧で包み、両肩にだんだら羽織をマント型にして装備している。三つ鍬形の前立を輝かせる兜の下には、蜘蛛のような複眼を備えた頭部をもつ戦闘用機械人。そして何より、目を引くのは背にある得物。

 

それは、双頭刃式双刃刀『陰陽』

 

だが、それは刀と説明するにはあまりにも大きすぎた。

大きく、分厚く、重く、そして大雑把すぎたのだ。

 

誰がどう見ても治安局通報案件である。

ていうか、コイツに買い物に行かせたツイッギーは後で締める、と誠音は決めた。

 

「……やはりリボンをつけた方が良いでしょうか?」

「いやーーもういいや」

 

ツッコむのも疲れた誠音は、再び素振りを再開しーーー「師範代!!」

 

ジョンが慌てた様子で障子を開ける。

その顔には冷や汗が浮かび、眼鏡もズレている。

 

「ジョン?一体どうしーー」

「誰かが冷蔵庫を開けっぱなしで放置していたせいで、中にあった高級アイスが全部溶けてます!!あと、リビングの照明とクーラーがつけたままになってるせいで電気代がエグいことに!?」

「おーしそうか〜、じゃあ犯人を見つけ次第、切腹させろ…!!!」

 

ジョンが去り、残された誠音は鬱憤と怒りを素振りで発散させーー

 

「ンナンナ!!(タイチョー!!)」

「またか……」

 

やってきたのはだんだら模様のポンプ。

彼の名は『アサギ』数年前にゴミ捨て場でチンピラから猫を守ってボロボロになっていたところを誠音が拾ったポンプだ。

 

「ンナナ!!ワタンナンナ!!ワタワタ!!ンナナ!!(不審者通報だ!!六分街のビデオ屋をスナイパーライフルで監視してる奴がいるって近所の婆さん連中が!!)」

「………特徴は?」

「ンナンナ!!ンナンナ!!ワタンナ!!(金髪の長髪!防衛軍の軍服!手にはアンパン!目にバイザーをつけた女!)」

「………………」

「ンナナナ!!(悪行即斬!!)」

「あ、いや、アキラに任せよう。身から出た錆だからな」

 

哀れなり、アキラ。

ひとえにテメェがあっちこっちの女に粉かけまくっているせいだが。

 

「マコさん」

「ーーーいい加減素振りさせろ!!今度は何だ!?」

 

今度はセレッソが彼を呼んだ。

 

「玄関前に猫のシリオンの女の子がいるけど、知り合い?」

 

 

「で?邪兎屋と一緒にデッドエンドホロウに行ったら、ヴィジョンによって閉じ込められた住人を見つけたと?」

「そ、そう!それからも色々あって…とにかくニコたちは今、爆破エリアにいる!」

 

ビデオ屋、アキラとリンが画面に映し出された邪兎屋のボンプ『アミリオン』の視覚データを再生している。その背後で、誠音は目の前にいる猫のシリオンの女の子ーー猫又と会話していた。

 

「にしても、俺らのことは邪兎屋に聞いたか…ニコは俺らのことをなんて?」

「えっと〜"血と金に飢えた狼みたいな剣客集団"だって……!」

「…………今回の件も含めて、請求額を上げるか」

 

哀れ、ニコ。

 

そんな会話の最中、あの怪しいAIことFairyが女性の合成音声で声を出す。

 

『マスター、ただいまニュースチャンネルにて、今回の依頼に関連しているとみられる情報が放送されています。お見逃しなく。』

 

テレビが切り替わりアナウンサーが話し出す。

 

「速報です!生中継でお送りいたします!!まもなく、ヴィジョンの最後の輸送列車が出発し、デットエンドホロウへと入ります!!!情報によると、この無人列車は自動運転モードで走行し、爆破解体に使う最後の爆薬を目的地まで輸送するとのことです。列車が到着し次第、現場の監視拠点に控えているパールマンさん自ら指示を出し、爆破解体が実施される予定でーーー」

 

「まずい!最後の列車がもう発射しちゃう!視覚記録の続きを観てる時間はないぞ!何とかして爆発を阻止しないと!ニコが埋立地の灰になっちゃう!!」

 

猫又の焦る声が部屋に響く。

 

「どうやって?みんなの前で列車を止めちゃったりなんかしたら、その場で治安局に捕まるのがオチだよ………」

「事態を通報するのが一番だけど、ニコたちがホロウレイダーをやってることもバレる…誠音、何か考えはあるかい?」

「あ〜…………レイダーたちに金を握らせて、列車を止めさせるか?パールマンを人質に、ヴィジョンから身代金巻き上げられるって言えば、話に乗る奴もいるだろ」

 

アキラとリン、猫又は沈黙し、目をそらす。

誠音は首を傾げる。この暴力的な提案により発生した空気を破ったのはFairly

 

『提案。いっそ、ホロウ内で電車を止めるのはいかがでしょうか?』

 

「そっか!外から直接ホロウの中の様子は探知できないんだから、捕まる心配もないぞ!」

「うん……今からデットエンドホロウに潜入して、列車が必ず通る道を阻むことができれば…確かに理論上は可能だ」

 

というか、さっきの誠音の提案に比べれば比較的非暴力的である。

 

「Fairy、列車の位置をリアルタイムで把握できる?」

『可能。目標車両までの安全なルートを検索しています』

 

液晶の中のFairlyが、リンの要望に応える

 

「よし、 今回は緊急事態だ。デッドエンドホロウの中で列車を止める方法を探してみよう」

「んにゃ!」

 

アキラの言葉に頷く猫又、誠音は道場に連絡する。

 

「ジョン、いるか?」

『はい、何でしょう』

「任務だ。デッドエンドホロウ内で民間人を見たって垂れ込め」

『えぇ……情報屋を何人か挟んで、妹に連絡します』

「ジェーンに直接連絡すりゃいいだろ…?」

『……いや、私が治安局を辞めたことでまだ揉めてまして」

「ーーーとっととしろ」

『あーーはい』

ジョンからセレッソに代わり、デッドエンドホロウでヴィジョンの列車を止める作戦を伝える。

『分かった。私と蒼烈はデッドエンドブッチャーを見張る。マコさんはリードと一緒に、2人を電車まで送って』

「今更だがーー本当にやるのか?勿論、防衛軍の作戦じゃねぇから"俺らが勝手に暴れた"ということになるぞ。ヴィジョンはまだしも、治安局に目をつけられるかもな」

『………そんなこと言って、一番暴れたくてウズウズしてるのは誰よ?そ、れ、に?"最強のエーテリアス"って呼ばれてるデッドエンドブッチャーと戦いたいだけーーでしょ?」

「ーーーーーバレたか」

電話越しにも分かるくらい、誠音の口はニヤリと笑っていた。

 

 

 

 

「うっわぁ……すっごい悪そうな顔してるぞアイツ!本当に連れて行くのか!?」

「ま、まぁ、あの虚狩りに一太刀入れたってのは本当だから!!」

『市川誠音が笑みを浮かべた理由を推測。1、通話相手の苦しむ声を聞いた。2、思い出し笑い。3、戦闘狂ゆえにデッドエンドブッチャーと戦うのが楽しみである』

「3、かな……誠音、今回はあくまで列車を止めに行くだけだから…」

 

 

 

 

 

「そういえばハヤテは?」

『……『鍛錬だ!!!』って昼に外出てそれっきりよ』

 

 

 

デッドアンドホロウ、新エリー都の交通網の要であった地下鉄路線を中心としたホロウである。特筆すべきは、このホロウを根城とし徘徊する、要警戒エーテリアス"デッドエンドブッチャー"である。このエーテリアスはあらゆるホロウレイダーや調査員をあの世に送っていったホロウの処刑人である。

 

そんなデッドエンドブッチャーはーーー

 

『GUOOOOOO!!!!』

「でりゃぁぁぁぁぁ!!!!」

 

壬生狼零番隊隊員、大和ハヤテと戦っていた。

 

侵蝕されて斧のようになった道路標識を、ハヤテに振り下ろす。

 

ガキャァンッ!!

 

その渾身の一撃を、両腕の籠手で弾き、パリィする。

他のエーテリアスの3倍はあろうかと言うその巨躯で、道路標識を振り回し、目の前にいる侵入者をハエのように叩き潰そうとする。だがその攻撃も全て、パリィする。

 

ガキンッ!!キィン!!ガキャァンッ!!!

 

「うぉぉぉらぁぁぁっ!!」

 

ハヤテの鍛錬ーーそれは、デッドエンドブッチャーの攻撃全てを拳でパリィすることである。

 

「まだまだ足りねぇぞ!!!!」

『GUAAAAAAAAA!!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ〜、いい汗かいたぜ」

 

死闘は10分、デッドエンドブッチャーの攻撃を全てパリィしたハヤテは懐に忍ばせていたスモークグレネードでその場を離脱。びっしょり汗をかいた顔をタオルで拭いていた。

 

その背後から、数体のエーテリアスが彼を取り囲みーーー

 

「何だよ、やんのかテメェら…?」

 

標識で殴ろうとしたエーテリアスの、懐に素早く潜り込んで、アッパー。

籠手に生えたエーテル合金の牙がエーテリアスの体を砕く。

 

その勢いのまま、飛びかかるエーテリアスたちにーー

 

「ふんっ!!」

殴打と蹴りを交互に繰り返し、敵を砕く『骸砕(がいさい)

「でいっ!!」

跳躍し、頭部に踵落としする『迅鳶(はやとび)

「とぅっ!!」

シリオン特有の筋力により、鉄筋コンクリートをも砕く突き『鬣噛(たてがみ)

 

エーテリアスが塵と化したその場に、上からファールバウティが現れ、その巨大な拳を振り下ろそうとする。ハヤテはその腕の下に潜り込み、右手の人差し指と中指を揃え、弧を描くように親指の先をくっつけ、構える。

 

「ーーー喰らいな」

 

点穿撃(うがち)

 

それは、甲冑の隙間を突いて相手の内蔵を破壊するという秘拳。

だがハヤテはその技を改良、シリオン特有の筋力と、自身の中にあるハイエナの獰猛性を利用。

 

要警戒エーテリアスを含め…この技をコアに喰らって、生き残ったものはいない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、あの…?大丈夫ですか…?」

「お?」

 

振り返ると、ツインテールのメイドがそこにいた。

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