終末世界で華や散るらん   作:ランハナカマキリ

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守銭奴と列車の中

誠音たち一行は、線路に沿って移動していた。

 

「カリンちゃん、戦闘の方もよろしく〜」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……カリンちゃん?余計なお喋りはナシって言ったけど、別に一言も喋っちゃダメとは言ってないぞ?」

「そ、そうだったのですか?すいません、勘違いしていました…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その少し後ろで、市川たち壬生狼零番隊三名は周囲を見張っていた。

誠音は呆れた目でハヤテがこのホロウで何をしていたのかを聞いていた。鱗に覆われた尻尾を掻きむしりながらリードが後に続く。

 

「そういえば、お前デッドエンドホロウで鍛錬してたのかよ…命知らずだな」

「アンタに言われたかねぇよ…師範と一緒に零号ホロウで上級エーテリアスを掃除してたらしいじゃねぇかよ…俺は、強くなりてぇんだよ」

 

グッと拳を握り締めるハヤテ。

その様子を見て、誠音は薄ら笑いを浮かべた。

 

「最初会った時は、喧嘩してばっかのチンピラ崩れだったお前がねぇ…」

「それ言ったらアンタは誰にでも勝負挑むバラガキだろ…」

「どいつもこいつも血の気が多い輩っすね………」

 

リードが目の前のバカ二人を諫めるようにため息をつく。

このバカーーというよりも、道場にいる奴らは数名を除けばバカばかり。比較的まともを自称するジョンも一皮剥けば戦闘狂。まともなのは、戦闘力が一般人に毛が生えた程度で情報・戦術担当のツイッギーと、金でしか働かない超・超守銭奴のリードだけである。

 

「そういや、リードはどうしてウチに入ったんだ?」

「先輩ってつけて欲しいんっすけど」

 

そう、この男。道場に入ったのは五歳の頃ーー今道場に残ってるメンバーの中では、誠音、蒼烈に次ぐ古株であるのだ。

 

「いや…俺今年で二十四だぜ?流石に高校生を先輩って呼べねぇよ…ていうか、質問に答えろよ」

「………金っすよ。防衛軍公認の傭兵団に入りゃ、給金もガッポガッポっすから」

 

金目的なのを何の悪気もなく言うリード、誠音は思い返すように昔のことを呟く。

 

「…相変わらず守銭奴だな。俺が入門したばかりの時、門下生から法外な受講料を毟ろうとしたせいでうちの道場から人が消えたことがあったな……ジジイは何も言わなかったけど」

「世の中は全部金っすよ。金に変えられないものには何の価値もないっすからね」

 

リードがケラケラと笑う一方で、ハヤテは誠音の耳にヒソヒソ声でリードに対する不満を言う。

 

「ーー誠音、前から思ってたんだが…なんでコイツをウチの陣営に入れたんだ?こないだの依頼も、『依頼料あげてくれないと行かねぇっす』って一人だけ道場に残って、結局最後まで救援にも来なかったと思ったら、依頼人から金奪ってウチの信用落としかけた奴だぜ?」

「…まぁ、俺もコイツを破門にしようって思ったのが一度、二度…いや百度はあったが、そこまでクズでもないんだよなぁ…」

「はぁ?いやクズだろ…ほら見てみろ」

 

ハヤテが指差す先にあったもの…

そこにはカリンにたかる金食い虫ーーいや金食いトカゲがいた。

 

「そういやアンタを道案内したらどこに案内料請求したらいいっすかね?」

「え?えっと……」

『リード…?君ねぇ……大丈夫だよ、カリン。気持ちだけで十分だよ』

 

急に金関連の話になったため当惑するカリンをフォローするアキラの姿があった。

 

「な?リードが映画の小悪役で、アキラが映画の主演俳優に見える」

「………………………でも、俺はアイツが嫌いになれねぇんだ」

 

その後、エーテリアスの群れと遭遇したり、遠くからデッドエンドブッチャーの後ろ姿を見たりしながら、何とかカリンをホロウ外に通じる裂け目の前まで案内することができた。

 

『肯定。この裂け目はホロウの外へと通じています。旅のお供、家事代行会社の従業員:カリンの依頼、達成』

「ん?パエトーン今、何か言った?」

「ううん、お客さんの目的地に着いたよって」

「ほ、本当ですか!?出口が見つかったんですね?よ、よかったぁ……!」

 

さっきまで暗かったカリンの顔がぱっと明るくなる。

 

「あの…本当に、ありがとうございました!調査員様のお力がなければ、カリンはきっとこのホロウを永遠に彷徨っていました!」

「それはお互い様だぞ!カリンちゃんのチェンソーのおかげで、こっちもだいぶ時間を短縮できたんだから!」

「その…ボ、ボンプのホロウ調査員様には初めてお会いしました!よ、よろしければお二人の名前を教えていただけませんか?今度、従業員一同でお礼に伺いたいんです!」

 

「あ、それなら上の人に案内りょーー「はい黙ろうか」ーーもごもご」

 

『それは、やめておいたほうがいいかも。この業界では、あまり深入りしないのがお互いの為だよ。縁があればまた会おう、カリン』

「バイバイ、カリンちゃん!」

「ハ、ハヤテ様、先ほどはありがとうございました!」

「いいって、またな〜」

 

カリンは深々とお辞儀しながら、裂け目に入っていった。

 

「それじゃ、急いで列車を探すぞ!」

「おぅ。じゃあ先頭は俺らが斬り開く…征くぞ!」

 

数分後、計画が実施される予定のトンネル内で、誠音たちは列車と並走していた。

 

『マスター、間もなく列車が予定地点を通過します。依頼人共々、行動できるよう準備してください』

「それじゃ、投げるぞ!」

 

イアスが宙を舞い、電車のルーフに着地する。

 

『この体、思ってたより不便だな…手が短いよ』

『落ち込まないでください。マスターの血縁者ーー助手二号は、この姿のマスターを称賛していました。曰く「小さくてとても可愛い」略してちいかわと』

『普段は可愛くなくて悪かったね…』

 

イアスがメンテナンスハッチから車内に入り込むと、中には大勢の偽治安官がいた。

一斉に銃口を向けられ、イアスは思わず手を上げる。想像するだけでほんわかしそうな光景だが、偽治安官たちは銃の引き金に指をかけーー

 

「せやっ!!」

「ぐわっ!!?」

「何ごとだ!!?」

 

電車の窓を突き破り、外にいた猫又が乱入する。

偽治安官たちが混乱している最中、猫が人混みの足元を潜り抜けるかの如く、イアスを回収して外にいたハヤテに投げ渡す。

 

『うわぁぁ!!!』

「よっと!!おい、中に治安局の武装部隊がいるぞ!?」

「数は?」

『えっと、少なくとも十数名だ!』

「アイツ一人で大丈夫か…?とりあえずビデオ屋にーーー」

 

 

ゾクっーー!!!!

 

 

 

この時、壬生狼ら三人は直感でそれを感知した。

 

「おいーー車内にとんでもねぇ"剣圧"の持ち主がいるぞ!!」

 

"剣圧”

刀で相手を攻撃する際に与える圧倒的な気迫や、間合いに入った瞬間のプレッシャーなど…

剣で死闘を繰り広げる誰もが持つ殺気ーーそれを剣圧という。

 

(ジジイや星見雅ほどじゃねぇ…だが、俺らの命を奪えうる奴が車内にいる…!!)

 

「ハヤテ、アキラを連れてホロウを出ろ。リードはセレッソたちに合りゅーー」

 

"俺がヤツの相手をする"を言う前に、リードが列車に飛び乗った。

壁にヤモリのようにくっつき、するすると車内に入っていく。

 

「なっ!?おいっ!!」

「誠音さん……この場は僕がーー!」

 

列車が過ぎ去っていく。急いで追いかけていくも、列車との距離はみるみる離れていく。

その後ろからイアスを抱っこしたハヤテが追いかけてくる。

 

「リード!!誠音、今すぐアイツをーー」

 

リードの救援に向かおうとするハヤテを制止する誠音。

 

「おい、何で止める!!」

『誠音!早く猫又とリードをーー』

 

「今はお前を連れ出すことが最優先だ!とりあえず、ホロウを出るぞ!」

(まさかアイツ…俺との”約束"を、果たす気じゃないだろうな……?)

 

 

 

 

 

「はいはい、通りますよっと」

「ぎぃあぁぁっ!!」

「何だコイツら!?列車強盗か!?」

 

列車内を悲鳴と銃声と剣閃が埋め尽くす。

両手に持ったダーダオで、滑り抜けるように偽治安官らの足を斬り、そのまま天井に張り付いて銃弾の雨を躱す。彼はトカゲのシリオンーー正確にはヤモリのシリオンである。

 

ヤモリの手には、分子間力を発生させるために微細な毛が生えている。

リードの手足はこの為に素足・素手となっているが、腰にあるウエストポーチに入っている抗侵食薬や薬剤、そして応急キットは彼のホロウ内での長時間戦闘を可能とする。

 

先に列車に飛び込んだ猫又の目の前に降りる。

 

「にゃっ!?なんでアンタが!!?」

「……決まってんじゃないっすか。僕の後ろーー前方の車両に馬鹿みてぇに強い奴がいるっすよ。アンタだけで相手したら、速攻で猫皮の三味線になっちまう」

「にゃっ!?じゃあ逃げーー」

「逃げるなら勝手にするっす。僕は残るっす」

 

常人でもわかるほどに、空気がピリつき、ドアの向こうの人影から死の気配が漂い始める。

先ほどの剣圧の主が、ここに迫っている。

 

「にゃ!!?なんで逃げないんだ!!?」

「一つは、奴からはやっばい殺気と血の匂いがします。多分逃げてもホロウの外まで追いかけてきますね」

 

「二つ目は、戦力差ですね。猫又さんも強いっすけど、僕はもっと強いんで」

 

「三つ目はーーー金っす」

 

リードが、懐に入れていたガスマスクを口に被す。

 

()()()が一人で、あのバケモンを相手にしたっていう手柄が欲しいんでゲスよ。行ってください、手柄はあっしのものでゲス』

 

口調が変わり、リードの剣圧が満ちていく。

その光景に猫又は何も言えず、ただ割れた窓から飛び降りてイアスたちのいたトンネルに戻っていく。

 

「おおぉ?テメェが俺の相棒に血を吸わせてくれるのかぁ?」

 

治安局の制服を着た、総髪の男が二本の鉈を構える。

目の前の男から発せられる格上の剣圧に、リードは額に汗を浮かべる。

 

『さて、金儲けの時間でやんす』




Q リードは山崎の子孫ですか?

A レイ・リードは、新撰組監察方の山崎烝の子孫ーーーー





ではなくーーーー




彼が生前、彼が面倒を見ていた孤児の中で、彼に一番懐いて『あっし』『ゲス』の口調がうつった少年の子孫です。
つまり山崎とは一切関係ありませんでゲス。

ちなみにガスマスクは山崎のもの。

海に漂っていたそれを佩太郎が回収、それを箱館まで持っていき、それを持ったままこの時代にやってきた。リードの戦闘スタイルと金へのがめつさが山崎と似ていたのでリードに渡しました。
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