派手な柱の地味な継子   作:理由もなく歩く人

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はじめまして、理由もなく歩く人と申します。
本作は、もし宇髄さんに対極の存在の継子がいたら?という感じの内容です。

ミスが無いか確認しながら描いていますが、間違いなどを見つけた場合はご報告ください。




祭りの神と対極の継子

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………あの、師匠。やっぱり、帰ってもいいでしょうか」

 

 

 

墨色の被り付きの羽織を着る小柄な人物が震える声で言った。

師匠、と呼ばれた筋骨隆々な白髪の男は振り返ると呆れたような表情をした。

 

「何言っているんだ、お前は。俺の継子になったんだから派手にお館様に紹介しないとだろうが」

 

「は、派手に……?」

 

「地味なお前に丁度いいだろ」

 

二人は立派な邸宅の屋敷門の前にいた。

人がいないところに作られているのか、聞こえるのは木々のざわめきと二人の会話だけだった。

 

「なに地味に突っ立ってんだ。嫌ならは早く終わらせた方が………って、どこに行くつもりだ?」

 

「……か、帰ろうかな〜と思って……え?なんで頭掴むんですか?」

 

「ほら、連れて行ってやるから、派手に行くぞ」

 

「む、無理です師匠……死んじゃいます、緊張で溶けますってぇ……」

 

ガシッ、と大きな手に頭を掴まれ、被りを被った小柄な人物は強引に引き摺られていく。

 

「嫌だぁぁぁぁぁ………」

 

情けない声が木々のざわめきにかき消されていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

邸宅の敷地内には美しい和風庭園が広がっていた。

藤の花も咲いており、美しさをさらに際立たせていた。

 

「よく来たね、天元。そして、君の隣にいる被りで顔を隠しているのが新しい継子かな?」

 

先程の二人の前には二十歳ぐらいの若い男が正座していた。

病にでも患っているのか、顔面上部の皮膚が変質している。

それでも声は聴く相手を心地よくさせていた。

 

「はい、お館様。こちらにいるのが俺の新しい継子です。

 ……おい槭、いい加減その地味な被りを脱いで自己紹介しろ」

 

天元、と呼ばれた大柄な男は隣にいる先程から震えている小柄な人物の被りを脱がす。

脱がされた被りにつられ、少し長い黒髪が舞った。

その黒髪の持ち主の少女は被りを取られたことに気づくと、目に涙を浮かべ、天元と言う男に抗議する。

 

「……ひゃっ!……な、なにするんですか!」

 

「なにをするって、……お前がいつまでも地味な被りを脱がないからだろうが!」

 

静かな部屋が騒がしくなった。

小柄な少女が被りを戻し、大柄な男が再び脱がす。

そんな光景を若い男が微笑ましく見守っていると、少女と目があった。

 

「はじめまして、私は産屋敷 耀哉だよ。そろそろ自己紹介してもらえるかな?」

 

「ひっ……お、お館さま、日不見……さ、槭です……っ!」

 

日不見 槭、と名乗った少女は、あまりの緊張に舌を噛みながらも自己紹介を終えると、逃げるように墨色の被りを深く被り直そうとする。

その手を天元が、パシッ!っと叩く。

 

「かなり地味だったが自己紹介は終わったんだ。お館様もお前の顔を見たんだから、もう被んな」

 

「は、恥ずかしいですよぉ……」

 

「槭、顔を上げて。君の顔はとても綺麗だよ。恥ずかしいなんて思えるところは一つもない。

 だから、もっと自信を持とう」

 

耀哉は槭に優しく語りかける。

彼の声はこの極度の臆病な少女を落ち着かせた。

槭はまだ少し震えてはいるが、ゆっくり顔を上げる。

 

「よくできたね、槭。それじゃあ軽く私と話そう。君の日輪刀の色を教えてくれるかな?」

 

「は、はいっ!……日輪刀の色ですね!えーっと……」

 

槭は自分の右に置いてある日輪刀を手に取り、鞘から刃を抜こうとする。

 

「ばっかやろう!お館様の前で刀を抜こうとするんじゃねぇ!」

 

「ひっ!…わっ、あっ、も、申し訳ありません!」

 

天元に制止され、槭は慌てて刀を置き、思いっきり土下座する。

 

「謝る必要はないよ、槭。君は私に刀を見せようとしてくれたんだ。

 止めないで続けていいんだよ」

 

「……わ、わかりました」

 

槭は今度はそっと刀を手に取ると、ゆっくり刃を抜く。

一般隊士の日輪刀より、わずかに短い刃が露わになった。

刃は薄い柑子色、鍔には小さく槭樹の葉の形が彫られていた。

 

「綺麗な色だね。天元の日輪刀の色に似ている。槭が使う呼吸は音かな?」

 

「はい、その通りです。かなり地味な音の呼吸ですが」

 

「相性が良さそうだね」

 

槭が刀を鞘に戻すと、耀哉は表情を引き締め、天元を見る。

 

「今日はこの後、天元の担当地区について調整をしようと思っていたんだけど、さっき新たに鬼の被害が確認されたらしくてね。

……行ってくれるかな?」

 

「もちろんです、お館様。場所はどこですか?」

 

天元の引き締まった顔を見て、耀哉は軽く頷く。

槭は心配そうな表情をして二人を見ていた。

 

「東北の山奥の村で村人が失踪した。二回、子どもたちを送ったんだけど、どちらも消息を絶った。とても強力な鬼がいるかもしれないね。

 そこで、君たちにはその村に行き、その鬼を討伐してほしい。天元、槭」

 

「御意。………槭、ド派手に行くぞ!」

 

「……え、あっ、はい!し、失礼しました!」

 

「またおいで、槭」

 

天元に引き摺られて行く槭を、耀哉は軽く手を振って見送る。

先程まであんなに騒がしかった部屋は、今は静寂を取り戻していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………し、師匠、ほ、本当にここを登るんですか……?」

 

槭が目の前に聳え立つ崖を見上げる。

 

「ここが一番の近道だ。体力が無い地味なお前に丁度いい道だろ?」

 

「普通の道にしましょうよぉ……」

 

「日が暮れるんだが…………お前はそれでいいのか?」

 

来た道を戻ろうとした槭の体がビクッと跳ねる。

それもその通りである。

槭は基本、臆病であり、夜になると宇髄邸の廊下も一人で歩けない。

天元がニヤニヤしながら話を続ける。

 

「別に俺は夜の山林を進むのは構わないが、………お前はどうかな?」

 

「……が、崖、崖を登りましょう!」

 

「よーし、そうか。なら、先に登るぞ?」

 

そう言い、天元は息を吸うと目にも止まらぬ速さで急な崖を登って行く。

 

「えっ?あ……ま、待って!置いていかないでくださいぃぃ!」

 

ジーッと見ていた槭は、自分が置いていかれたことに気づくと、目に涙を浮かべながら急いで登った。

途中、何度も落ちかけながら。

 

 

 

 

「………つ、着いたぁ………」

 

「おお!思ったより早かったな。地味だが少しずつ成長しているな!」

 

息を乱しながら地面に倒れ込む槭を、天元は感心したように見つめる。

日は、まだ傾きはじめたばかりであった。

 

「奥に少し進むと、目的地の村が見えるぞ。とりあえずそこまで頑張れ」

 

天元がまだ倒れている彼女を立たせると、森の向こうを指しながら言った。

立ち上がった槭は羽織に付いた土を落としながら、天元の後を着いて行く。

 

「……そういえば、槭はこれで任務は何回目だ?」

 

「に、任務ですか?えーっと確か……」

 

槭は指で数え始める。

覚えていないのか、何度も数え直している。

山の上から村が見えた時に槭は答えた。

 

「……7、8回目、だと思います……」

 

「7、8回か……。よし、槭。お前は一人で行ってこい」

 

「ひ、一人で!?ま、まきをさんたちに言いつけますよ!」

 

「チッ、派手に終わらせるぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二人が山を降り、村に着いた時には、雪が降りはじめていた。

 

「おい見ろ、槭。……雪が降りはじめたぞ」

 

「うわぁ、本当だぁ。今年に入って初めての雪ですね!」

 

「任務が終わったら楽しめ。まずは送られてきた隊士が最後にいた場所を探すぞ。

 ……ほら、聞き込み行ってこい」

 

「…はい?…………ひゃあっ!」

 

ボーっと雪を見ていた槭は、天元に突き飛ばされ、顔から地面に倒れ込んだ。

慌てて近くにいる村人たちが槭の元へ駆け寄ってきた。

 

「だ、大丈夫かい?お嬢さん。怪我は?」

 

「いったた……え?は、はい!だ、大丈夫です……」

 

かなりの人見知りの槭は、村人が手を伸ばしてきたことに驚いて、跳ね上がる。

後ろを振り返り、突き飛ばしてきた天元のいた方を見ると、そこには誰もいなかった。

 

し、師匠ぉ……ひどいですよぉ……」

 

「ど、どこか痛むのかい?

 ………申し訳ないね。

 医者に見せたいと思うんだけど、村にいた医者はこの前、いなくなってしまってね」

 

「いなくなった?……村人の失踪……任務……あ!」

 

任務の内容を思い出した人見知りの槭は、どうやってここに来た隊士の事を聞けばいいかわからなくなり、あわあわし始める。

その様子を村人は怪訝な顔をしながら彼女の行動を見続ける。

やがて槭は、一番手っ取り早い方法を思いついた。

 

「……か、刀を持った人が、こ、この村に来ませんでしたか?」

 

「刀を持った人……?」

 

「わ、私が着ているような服を着た人です……」

 

鬼殺隊士にしかない特徴を言ったおかげで村人は思い出したように手のひらを打つ。

 

「あー確かに来たね。背中に『滅』って書いてあった服を着て腰に刀を差していた青年が来たよ」

 

「ほ、本当ですか?でしたら、その……どこに行ったかわかりませんか……?」

 

「どこに行ったかはわからないけど、村の北にある森に入って行ったのは見たよ。

 それが最後だね」

 

「あ、ありがとうございます」

 

「ところで…………あれ?」

 

村人が北を指差し、再び槭がいた方に向くと、そこに彼女の姿は見当たらなかった。

 

 

 

 

「し、師匠!い、いきなり押すって、ど、どう言う事ですか!」

 

「お前が地味に雪を見ていたからだろ。そんなことより、場所はわかったか?」

 

半泣きになりながら抗議する槭の顔を天元は押し除ける。

その行動に彼女は拗ねたような表情になった。

 

「わかった、俺が悪かったから。な?そんな顔するなよ。

 お前に何かするとあいつらに色々言われるんだから」

 

天元は衣嚢に入ってた手拭いで槭の涙を拭き取る。

槭はジッと睨むとやっと先程、村人から聞いた事を話しはじめた。

 

「……最後に隊士を見たのは村の北にある森だそうです」

 

「北の森か……。さっき少し見てきたが、本当に地味な森だったな。

 ……よし、槭。派手に肝試しにでも行くか!」

 

肝試し、の単語に槭の肩が跳ねる。

先程まで拗ねていた顔から血の気が引き、全身が震え出した。

 

「……い、今、なんて……?」

 

「ん?派手に聞き逃してるんじゃねーよ、槭。もう一度言うぞ?」

 

宇髄はニヤリと笑うと

 

 

「今から地味な森に住む鬼を探しに行くんだよ」

 

 

日が完全に落ちると同時に槭の顔が絶望に染まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




読んでくださり、ありがとうございます。
更新ペースは週1を目標に心がけています。


主人公プロフィール

名前 日不見 槭 (ひみず さく)
年齢 13歳
身長 148cm
誕生日 10月3日
呼吸 音
階級 己
性格 極度の臆病、人見知り
外見 黒髪、墨色の被り(フード)付きの羽織を着用


宇髄さんの対極ってこんな感じであっているのだろうか……
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