善意による悪意 ークトゥルフ神話ー   作:ダンチ

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2章
1-1 異常な朝の始まり


 ゴールデンウィーク前の平日ということもあって、街は妙に浮き足立った空気が漂っている。このぼんやりとしている世間の空気を俺も一緒に纏いながら、エリート警察官北島、出勤だ。

 

 俺はいつものように神山署の最寄り駅前にあるコンビニに立ち寄った。ここで朝食を買うのが俺のルーティン。コンビニで飯を買うなんて割高ではあるが、独身貴族だからコンビニで優雅に買い物ができる。やれ、小遣いが足りないだなんだ、結婚されている方々は食事一つ自由がないようだが。俺のこの素晴らしい自由を見習うといい。

 

 行きつけのコンビニ。

 その自動ドアをくぐると、スーツ姿のサラリーマンと制服姿の学生がまばらに散らばっていた。俺は寝ぼけた頭でいつもの唐揚げ弁当を手に取り、ついでにペットボトルのお茶も掴んでレジに向かった。お、今日はチョコも買っておこうかな。コーヒーと一緒にいただくのも乙なものだし。

 

 レジ前に着くと中年の店員が妙に真剣な表情で俺を見つめている。毎日コンビニ弁当を買う俺にとっては馴染みの顔だ。愛想がよくない、しかめっ面の男。コンビニ店員と客の間柄としては居心地の良いものだ。

 

 しかし、いつもなら機械的に接客するこの男が、今日は何かが違った。目に変な熱がこもっている。前に会った時よりも、明らかに強い輝きだ。どうやら俺のほとばしるセクシーさにこの男は惚れ込んでいるようだ。仕方がないから挨拶でもしてやるか。俺って罪な男だな。

 

「おはようございます」

 

 俺はマナーの良い男であることが自慢なのだ。店員であってもきちんと挨拶をする。母親の教育の賜物と言えよう。この姿を見た諸君はどう思うだろうか。さぞかし俺が素敵なダンディに見えてきたのではないか? くだらないことを考えながらいつも通りに挨拶すると、店員は商品のバーコードをスキャンしながら口を開いた。

 

「警察の方ですよね? 権藤(ごんどう)(のぼる)のこと、ご覧になりましたか?」

 

 警察署の最寄り駅のコンビニだから、俺が警察官だってことはどこかで知ったのだろう。制服を来て、ここいらをうろついた訳ではないが、何となく職業がバレてしまうのは職業病みたいなものだ。もしくは俺があまりにも頼りがいのあるナイスガイだから警察であることが自然と分かってしまうのかもしれない。まあ、そんな冗談はさておき。

 

 権藤昇(ごんどうのぼる)? 芸能人か何かの話か?

 

「いえ、ちょっと分からないですね」

 

 俺は寝ぼけた頭で適当に答えた。朝から芸能ニュースの話をされても困る。知的な俺はテレビに明るくない。無趣味で、ただ仕事ばかりやってきたしがない男だ。せめてグラビアアイドルとかの話題を振ってくれ。

 

 しかし、警察官に対して身分確認から入ってくる住民は、だいたい面倒な話を持ち出してくる。苦情、不満、理不尽な要求。地域安全課に配属されて三年、俺はそのパターンを嫌というほど覚えていた。

 

 朝から面倒事は止めてくれよ、という気分。まだ始業の時間を迎えてはいない。だから今は警察官ではないんですよ。これが最近流行りのワークライフバランスというもんでしょうね、なんて言って逃げ出したい。

 

 だが、俺が返事をしたことで店員の顔がパッと明るくなった。まるで嬉しいニュースを共有できる相手を見つけたかのように。

 

「そうですか。でも素晴らしいニュースですよ。本当に素晴らしい」

 

 店員の声には、抑えきれない喜びが込められている。レジ打ちの手は止めずに、まるで準備していたセリフを吐き出すかのように言葉が続く。

 

「ざまあみろ!」

 

 朝のコンビニに響く大声に、俺はビクッと身を縮めた。店員の目には異様に血走っている。他の客も振り返って、何事かという顔をしていた。

 

「報いを受けたんです!」

 

 店員は語りながらも手を休めず、せっせと商品をレジ袋に詰めている。その機械的な手の動きと、熱のこもった声の温度差が不気味だった。

 

「あの悪人が、ついに裁かれたんです!」

 

 やばい、コイツは頭がおかしい。誰か、お巡りさんを呼んでほしい。早くここから逃げ出したい。こういう時は適当に同調して、さっさと立ち去るのが正解だ。

 

「そうですか、それは良かったです……」

 

 俺が曖昧(あいまい)に言葉を濁した瞬間、店員の目がさらに輝いた。まるで俺の反応を理解や賛同として解釈したかのようだ。

 

「でしょう? やっぱり警察の方も同じ気持ちですよね!」

 

 違う、そんなことは言ってない。

 

「警察の皆さんのおかげですよ! 正義が勝ったんですよ!」

 

 店員は一方的に喋り続けている。もう俺の返答など聞いていない様子だった。俺は代金を払い、レジ袋を受け取ってそそくさと店を出た。権藤昇(ごんどうのぼる)という名前に聞き覚えはないが、何か重大なことが起きたのは間違いない。ビビらされた報復に、店員に向かって朝からご苦労様でした、と皮肉の一つでも言ってやりたい気分だった。怖いからそんな事はできないが。

 

 

 店を出て外の空気を吸うと、少しだけ気分が落ち着いた。しかし、俺の受難はまだ終わっていなかった。

 駅に向かう途中、駅前広場で十人ほどの人々が円陣を組んでいるのが見えた。朝の通勤時間帯に、駅前で立ち話。トラブルでも起こすのかと思い、俺は足を止めて様子を(うかが)った。万が一殴り合いでも始めようものなら警察官として止めなければならない。だが、楽しそうに会話をしているだけだった。

 

 なんだ、新興宗教の勧誘でもしているのか? 朝から熱心なこった。そう思って通り過ぎようとした時、円陣の中から声が聞こえてきた。

 

権藤昇(ごんどうのぼる)に天罰が下った」

「正義が実現された」

「報いを受けた」

 

 全員が同じようなフレーズを、同じトーンで語っている。まるでリハーサルでもしたかのような統一感だった。一人が言い終わると、また別の誰かが同じような言葉を口にする。その繰り返し。やっぱり宗教か。コンビニの店員も同じ名前を言っていた。権藤昇(ごんどうのぼる)。なんか聞いたことある名前だな。

 

 足早にその場を離れようとした時、俺はふと足を止めた。特に深い意図はない。なんとなく、なんとなく気になって彼らの服装や顔つきをしっかりと見たくなったのだ。さっきの集団をもう一度だけ注意深く見る。

 

 よく見ると、円陣を組んでいるのは統一された服装でも何でもない。スーツ姿の中年男性、エプロン姿の主婦、学生服を着た高校生、ジャージ姿の老人。年齢も性別も服装もバラバラだ。宗教団体なら、もっと統一感があるはずだ。パンフレットを配ったり、何か勧誘の動きがあるはずだ。でも彼らは、ただそこに立って、同じ言葉を繰り返しているだけだった。誰かが誰かに話しかけているわけでもない。視線も合わせていない。まるで、それぞれが独り言を言っているのに、たまたま同じ場所に集まってしまったかのような。

 

 その瞬間、円陣の中の一人。五十代くらいの女性が俺に気づいた。

 

「あ、警察の方!」

 

 女性が俺に向かって手を振った。その声に反応して、他の九人も一斉に俺の方を向く。十対の目が、同時に俺を捉えた。何故、俺の顔を見て警察だと分かったのだろうか。まあ、地元民か。公務員の顔は覚えられやすい。名指しで苦情が来ることもある世知辛い世の中だ。

 

権藤昇(ごんどうのぼる)、ついに裁かれましたね!」

「正義が実現されました!」

「警察の皆さん、ありがとうございます!」

 

 十人が口々に叫び始める。言葉は微妙に異なっていても、根本的なメッセージは同じだった。「権藤昇」という人物に何か悪いことが起き、それを「正しいこと」として喜んでいる。宗教じゃない。これは何なんだ。

 

 俺は会釈だけして足早にその場を離れた。手が震えていた。これは尋常ではない。このまま徒歩で通勤するのは怖すぎる。せっかくだから独身貴族の力を存分に振るい、タクシーを拾って警察署までのんびりと向かうか。駅から徒歩十分ちょっとの場所に神山警察署はあるが、この際良いだろう。そこそこお金は持っているのだ。

 

 

 たまたま近くを通ったタクシーを拾い、後部座席に座ると運転手がバックミラー越しに俺を見て話しかけてきた。五十代くらいの男性で、日焼けした顔には深いしわが刻まれている。

 

「すみません。神山警察署までお願いします」

「警察の方ですか? 権藤昇、終わりましたね」

 

 またか。嘘だろ、またかよ。朝のコンボが続いている。俺の精神は画面端に追い詰められた格闘ゲームのキャラクターのような状態だ。何か俺が悪い事でもしたのだろうか。あれか、用を足した後に手を洗わないからか? だから俺はこんなひどい目にあっているのか。

 

 権藤——

 待てよ。権藤って、あの光崎家事件の犯人と同じ名字じゃないか。権藤真澄。まさか関係者か? 親戚とか?

 

「ご存知ないんですか? でも、もうすぐニュースになると思いますよ」

 

 運転手は信号待ちの間、後部座席の俺に向かって熱弁を振るい続けた。その表情は真剣そのもので、まるで人生の真理を語っているかのような熱の入りようだった。正直、うんざりだ。四十代になってから若い女の子が俺の話をつまんなそうな顔で聞くことが増えてきたが、こういう気分なんだろうな。今度からはもっとシャレオツでナウい話題を喋らなければ、なんて現実逃避をしても無駄だった。

 

「あの男が報いを受けました。これで被害者たちが報われます。悪は法によって裁かれるべきではない。正義によって裁かれるべきです」

「はあ、そうですか」

 

 独裁国家でもそこまでの思想はしないだろ、いやするのか? 現実から目を背けるために妄想に逃げながら、俺は窓の外を見て適当に相槌を打った。車の窓から朝の光が差し込み、街は美しく輝いているのに、車内の会話はどんどん物騒になっていく。この温度差が何とも言えず気持ち悪い。

 

 権藤昇、もし本当にあの事件の関係者なら——いや、同じ名字なんて珍しくない。偶然だろう。

 

「それでは六百円です」

 

 ふざけんな、金取るのかよ。目的地に到着し、お金を払う。運転手はすっきり満足そうな笑顔を浮かべていた。会話に付き合ってあげたんだからマケてくれないか? なんて言いたかったが、この男にそれを言う勇気は俺には無かった。

 

 

 ふらふらとタクシーを降り、神山警察署の建物が見えてきた時、俺はようやく安堵のため息をついた。あの重厚な灰色のコンクリート造りの建物が、今日は妙に頼もしく見える。普段は古臭い貧乏自治体の悲しい建物なんて悪態をついて申し訳ない。

 

 今の俺には強固な要塞に見える。現代のマジノ線だ。まさか迂回されることはないだろう。あの中には警察官がいっぱいいて、日本一安全なんだろうな、俺も警察官だけど。

 

 タクシーを使ったおかげで、始業より少し早く着いた。俺は神山署地域安全課の事務室に足を踏み入れた。蛍光灯の白い光に照らされた室内には、いつもの平和な空気が流れている。春野は既にデスクに座っており、例のピーポ君のぬいぐるみを両手で持ち上げて眺めていた。まるで古代の遺物でも鑑定しているかのような真剣な表情で、ピーポ君の顔を見つめている。その集中ぶりは、ある意味で感動的ですらあった。

 

 ああ、やっと正常な世界に戻った。異常な部下がいる正常な世界だ。この事務室だけは、まだ平和だ。

 

「北島さん! おはようございます!」

 

 春野の元気な声が、朝の憂鬱を少しだけ吹き飛ばしてくれる。この二十歳ちょっとの青年だけは、相変わらずで安心する。彼の屈託のない笑顔を見ていると、朝から体験した一連の出来事が嘘のように思えてくる。癒しだ、はっきりとこの若者から癒しをもらってる。ありがとう春野。

 

「はぁ、おはよう」

 

 俺は胸につかえた重いものを吐き出すようにため息をついて挨拶を返した。ため息をつくなんて良くないことだが、空気と共にストレスが抜けていく感触がたまらない。俺はデスクの引き出しからインスタントコーヒーの瓶を取り出した。今日は濃いめに作ろう。朝からの精神的ダメージを回復するには、カフェインの力が必要だ。電気ケトルに水を入れてスイッチを押しながら、朝から体験した異常な出来事を思い返していた。

 

「北島さん、見てください!」

 

 春野がピーポ君を俺の方に向けた。

 

「このピーポ君、なんか目の焦点が合ってない気がするんですよ。まるで何かに憑りつかれてるみたいな顔で……」

 

 俺はピーポ君の顔を見た。確かに、いつもより表情が険しく見える……気がした。しかし、ピーポ君の顔をまじまじと見つめて分析している春野の方が、よっぽど憑りつかれているように見える。俺を救ってくれたこの青年に対するいつもの頭痛が戻ってきた。そう、少しずつ感覚が日常に戻ってきたのだ。

 

「知らん。そんなことより、今日の巡回予定は?」

「えーっと、特に予定はないです。でも最近、住民からの変な通報が増えてますよね」

 

 春野の指摘で、俺は朝の出来事を思い出した。確かに、ここ数週間で妙な通報が目に見えて増加している。

 

「どんな内容だ?」

「『悪を討て』とか『正しい法の執行が必要』とか……具体的に何をしろって言ってるのか分からないんですけど、とにかく正しさを主張する言葉が入ってる通報ばっかりみたいです」

 

 電気ケトルからお湯がぽこぽこ沸く音が聞こえてくる中、俺は朝の出来事を整理してみた。コンビニの店員、駅前の十人、タクシーの運転手。みんな同じように熱く語っていた。そして今日は、全員が「権藤昇」という具体的な名前を連呼していた。春野が言う通報内容とも合致している。これは単なる流行ではない。何かもっと根深い現象が起きているのだろう。

 

「こういうのも時代の病理なのか……」

 

 俺が呟いた時、廊下の向こうから慌ただしい足音が聞こえてきた。普段の朝とは明らかに異なる、切迫したリズムの足音だ。複数の人間が同時に走り回っているような騒音が、廊下の向こうから響いてくる。

 

「なんだ?」

 

 俺は顔を上げて廊下の方を見た。春野もその異変に気づいたようで、ピーポ君を雑に机の上に置いて首をかしげている。ピーポ君は机の上に突っ伏す形で倒れてしまった。その姿はノックアウトされたボクサーのようだった。

 

「署内で何かあったんですかね? まさか火事とか?」

 

 春野の推測にも頷ける。これだけ慌ただしい足音が響くということは、相当な緊急事態が発生している可能性が高い。俺は耳を澄ました。廊下を駆け回る複数の足音、ひっきりなしに鳴る電話の音、そして誰かが「至急確認を!」と叫ぶ声。これは確実に重大事案が発生している。普段の朝なら、署内はもっと静かなものだ。定時に出勤した職員が、それぞれのデスクで一日の準備をする穏やかな時間帯のはず。それが今日は、まるで戦場のような喧騒に包まれている。

 

「ニュースを見てみましょう!」

 

 春野が素早くテレビのリモコンを手に取った。前回の裁判官殺人事件の際に、所内の誰も情報を共有してくれないことを覚えているのだろう。今回はさっさと諦めて最初からテレビで情報収集を開始した。

 

 ピっとついたテレビの画面には朝の情報番組が流れているが、特に緊急ニュースのテロップは出ていない。芸能人の不倫報道やら、新商品の紹介やら、平和な話題ばかりが続いている。

 

「まだ報道されてないのかな……」

 

 春野が呟いた時、事務室の前の廊下を早足で歩く斎藤警部補の姿が見えた。以前の捜査協力以降、春野に対しても若干好意的な態度を示してくれている。しかし今日の彼の表情は深刻そのもので、手には分厚い資料の束を抱えている。その歩き方からも、ドタドタとあわただしい様子だ。

 

「斎藤さん、朝からお疲れ様です!」

 

 春野が廊下に面した小窓から、斎藤に対して元気よく声をかけたが、斎藤は軽く手を振っただけで立ち止まらなかった。最近の彼なら春野に対しても必ず立ち止まって、「おはよう、今日も頑張ろうね」といった世間話をするのに。これは相当な重大事件だ。

 

「これは何か大きな事件だな。まあ、さすがに裁判官殺しよりかはマシだろうな」

 

 俺がそう呟いた時、テレビの画面が突然緊急ニュースに切り替わった。

 

 

 画面いっぱいに「緊急速報」の赤い文字が踊り、続いて女性アナウンサーの緊迫した声が響いた。

 

『緊急ニュースをお伝えします。昨夜遅く、都内の高級住宅街で権藤昇国会議員が自宅で死亡しているのが発見されました。現場の状況から他殺の可能性が高く、警視庁は殺人事件として捜査を開始しました』

 

 俺はコーヒーカップを持ったまま硬直した。

 

 権藤昇(ごんどうのぼる)

 

 その名前を聞いた瞬間、合点がいった。そうか、朝から市民が騒ぎ立てていたのはこのことだったのか。そして思い出した。光崎家一家惨殺事件の容疑者、権藤真澄(ごんどうますみ)の父親。裁判に司法介入したと噂されている男だ。

 

 画面には権藤昇の顔写真が映し出されている。六十歳近い男性で、政治家らしい作り笑いを浮かべているが、俺はその顔を見ているだけで、腹の底から何故かふつふつとした怒りが湧き上がってくるのを感じた。

 

「権藤昇って……確か光崎家事件の関係者ですよね?」

 

 春野も事件の関連性に気づいたようで、俺の方を見た。

 

『現場には何らかのメッセージが残されており、先日発生した公正忠(こうせいただし)裁判官殺害事件との関連についても捜査が進められています』

 

 この間の事件、弁護士による裁判官殺害。あの事件も光崎家事件が根底にあった。そして今度は権藤昇が標的になった。これは偶然ではない。確実に連続している。計画的に、三年前の光崎家事件の関係者が狙い撃ちされている。でも既に裁判官を殺害した犯人は逮捕されているはずだ。今度は誰が?

 

『権藤昇氏は国会議員として二十年以上にわたって政界で活動し、特に都市開発事業に深く関わっていました。現在、現場付近は封鎖され、鑑識による詳しい調査が行われています』

 

 ニュースは淡々と事実を伝えているが、俺の心は全く平静ではなかった。権藤昇を知っている俺にとって、この男は純粋な被害者ではない。むしろ、長年にわたって多くの人々を苦しめてきた加害者にすら思えるのだ。確実に司法介入しているという証拠はないはずなのだが。

 

 しかし、それでも不気味なのは朝から街の人々が熱狂的に語っていたことだ。彼らはどうやってこの情報を知ったのか。ニュースになる前から、まるで既に知っているかのように語っていた。全員が、それを「正義」「報い」「天罰」として喜んでいた。これは異常だ。最初は寝ぼけていて気づかなかった。「芸能人の話かな」程度にしか思っていなかった。

 

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