「…」
ガラガラと俺が引っ張るキャリーケースのローラーが鳴り響く。
「重…」
そう一人で呟き、月よに照らされた雪の降る夜の中、山道を一人で歩き続ける。
俺の名前は『上妻 天津(あがづま あまつ)』。本当は苗字は名乗りたくない。
俺の家は俗にいう…死んだ家だ。現代で言う毒親、そこから逃げ出したのが俺だ。
俺の夢も、俺の将来も、俺の在り方も…何もかもが俺の親が決める。
それ以外の事象は全て皆無。友と遊ぶことも、そもそも遊ぶことすら許されず、勉強もそうだ。完璧以外認めない。最高得点を取らなければ、発狂し、俺を家の外に追い出す。
…そんな家庭に嫌気がさした俺はついさっき、荷物をまとめて家を出た。
年齢も20を越え、大学もそろそろ卒業。
宿泊先はまだないが死に物狂いで貯めたバイトのお金がある。最悪、ネカフェで卒業までの残りの日数を過ごせばいい。
もう少し我慢すればよかったかもしれないが…その日まで我慢できるほど、俺は丈夫ではない。というかもう限界だった。
あんな生活はもうしたくない。
だから、逃げる。
「!!」
後ろから車の音が聞こえてくる。
俺は、キャリーケースを抱えて本来の道とはかけ離れた森の中に飛び込む。
「思ったより早いな…!」
徐行する車。
アレは…俺の親の車だ。
徐行してるってことは雪でスリップしない為と俺を探す為か。
「チッ…!」
予定ではこのまま山を下りて、駅に向かうはずだったが計画変更だ。
森の中を通って山を下る。
正直、こんな冬の時期に山を下るなんて命を捨てる行為その物かもしれないが…それくらい俺はあの家から離れたいってことだ。
「ふぅ…!!」
白い息を吐き、キャリーケースを担いで草木をかき分けながら山を下っていく。
警戒は怠るな。いつ、何が出て来てもおかしくない。
最悪、熊と巡り合うかもしれないが知ったことか。
もう…死んでもいい。
解放されるなら何でもいい…でも俺はまだ生きたい。
自由に生きたいんだ…!
今まで親に取られた俺の…俺だけの時間を取り戻すんだ!
俺自身の手で!
「…わっ!?」
草木をかき分け、雪を蹴り飛ばしながら進んでいっていると積もっていた雪が崩れ、俺も山から転がり落ちる。
全身が滅多打ちにされるがとにかく耐える。
こんなところで終わりたくない。
「…いって…!」
やがて痛みが引き、目を開ける。
「じ、神社?こんなところにあったのか…?」
そこには神社があった。
人の気配もなく、鳥居も半分崩れていて神社自体が廃れている。
外にあまり出歩けなかった俺にはこんな場所に来る機会なんてなかったが…廃れた神社は初めてみた。
あと、何故か分からないが…神秘的だと感じる。
俺は…歩みを進めて鳥居へ進み、鳥居の柱に手を触れる。
冷たい。まだ、生きてるって実感を感じる。
「はぁ…はぁ…!」
腕を見ると切り傷、擦り傷…あと内出血。
あぁ、クソ…痛い。
背負っていたリュックからシップを取り出して、内出血部位に貼り付けて包帯を巻く。
「ぐうっ!?」
予想通りだが痛い。
…まぁ動くってことは折れたとかそういうのではないだろう。
「ちょっと…休むか…」
鳥居をくぐり、拝殿の中に入らず、近くに座って身体を休めようと思い、スリ足になりながら歩く。
しかし
「天津ッ!!」
「くっ!!?」
その声に反応し後ろを振り向くと…丁度鳥居の下に俺の親が立っていた。
何でわかるんだよクソ!!
「何をしてるの!早く帰ってきなさい!!」
「黙れ!」
「親の言う事に背くの!?」
「背くに決まってるだろ!お前らのようなやつらに!」
クソ…クソ…!!
さっきの痛みで走ることが出来ない。この足であの二人を振り切るのは無理だ。
何で…何でだよ!?何で俺は自由を手に入れられない!?
俺がなにしたって言うんだよ…!
親の奴隷になって、何もできなくて…ただ一度、たった一度逃げただけだぞ!?
それだけなのに…!!
「ア”ァァァァァ!!!」
俺は世界の理不尽に怒り、咆哮をあげる。
いっその事…家族が…いや!世界が俺を…!!
「俺を…忘れればいいのによぉォッ!!!」
そう俺が叫んだ。
次の瞬間
「は?」
俺の目の空間に、ヒビが入った。
意味が分からない。
…何だ、このヒビ。
よく分からないが、こんな状況でこのヒビが気になり…手を伸ばし、ヒビに触れた。
その瞬間、俺の視界は真っ黒に染まったと同時に数多の目が俺を凝視したのを確認したと同時に俺の身体は下に落下していく。
「おぉぉぉぉぉぉおおお!?!?!」
―――
場所は変わり…幻想郷。
「それで?」
「どういう理由かわからないけど…能力の調子がおかしいのよ」
紫色のドレスを着た道行く男が全員振り向く美貌を持つ女性と紅白の色合いを持つ巫女のような恰好をした女性。
ドレスを着ているのは『八雲紫』、もう一人は『博麗霊夢』。
どうやら紫は自身の『境界を操る程度の能力』に異常が出来た事を話す。
「何で…?」
「それがわかったら相談しないわ。一旦、能力自体は落ち着いたけど…もしかしたら外来人が幻想郷に来ている可能性もあるわ。一応気を付けてね」
「はぁ…分かった。見つけたらまた『外』に戻せばいい?」
「えぇ、そうね。お願いしてもいいかしら」
と紫がお願いすると同時に
――バギャアッ!!
「「!!」」
二人の居る博麗神社の鳥居の中央にヒビが入った。
最も、ヒビが入ったのは柱にではなく空間に。
そして
「ぁぁぁぁあああ!!?!」
ドシャっと叫び声をあげながら青年とリュックとキャリーバッグが博麗神社に転がってきた。
「…紫?」
「うん…多分、あの子が外来人。何だけど…さっきのは何かしら」
「紫に分からなかったら分からないわよ…」
紫と霊夢は転がってきた青年の様子を伺う。
幻想郷に反する者なら鎮圧後、外に戻す。話が通じるなら一度話してから外に戻そうと考えた。
「…いってぇ…あぁクソ…何回怪我すればいいんだよ…!!」
痛々しそうに青年は四つん這いになってから、立ち上がる。
「…さっきの神社とは違ってこっちは綺麗だな…」
と呟き、青年は賽銭箱を視界内に捉える。
「お賽銭…投げとくか」
「!!」
その言葉を聞いた瞬間、霊夢の目がキラキラと輝く。
「…細かい小銭ねぇな。いいか、500円で」
青年はリュックから財布を取り出して、その中から500円を取り出して、それを賽銭箱に投げた。
チャリンと音が鳴って、青年はパンパンと手を叩いて願う。
「…自由が欲しい、世界が俺を――忘れてほしい。」
「忘れてほしい?」
その言葉に反応したのは紫。
幻想郷は本来、忘れ去られて幻想になった物が幻想郷に流れ着く。
しかし、あの青年は『忘れてほしい』と願った。
つまり忘れ去られた人ではなく、忘れ去られたい人であることが分かった。
とはいえ、外来人は外来人。ここはきちんと外に返さないといけない。
「霊夢、一度話を聞いてみましょう…霊夢?」
紫が霊夢にそう問いかけるが返事がない。
おかしいわね、なんて思いつつ振り返るとそこに霊夢の姿はなく。
霊夢の姿は。
「あ」
今も願っている青年の後ろにあった。
なお、青年は気が付いていない。
キャラクターとの幕間のような話を作成するのはアリ?ナシ?気軽にお願いします。
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アリ
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ナシ