忘れ去られたい青年の幻想入り   作:ohagi57

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カオスが極まる宴会

 

「んん…?」

『お前の憎悪を燃やせ』

「…」

 

頭の中で俺の声が聞こえてくる。

 

『お前の怒りを滾らせ』

「何だ…お前…!?」

『相対する敵を全て殺せ』

 

俺の声なのは分かったのだが、俺の声とは別のところから聞こえてくる。

しかも…その声は憎悪に満ちていることもわかるが、何故か他人事に片づけられない。

まるで、俺自身の心の声のようだ。

 

『お前の憎悪はお前の力となる。お前の怒りはお前の武器になる。』

「何だと?」

『怒りを御し、憎悪を宿らせろ…それこそがお前の力となる』

「…?」

『お前の能力は力だけではない…お前は』

 

『自身の憎悪を具現化させる。』

 

「はぁっ!?」

 

目を覚まし、勢いよく身体を起こす。

 

「はぁっ!?はぁっ!?なんだ…今の」

 

全身から冷や汗が出ている。

夢…なのか今のは。でも夢で片づけていい気がしない。

 

(憎悪を具現化…)

 

俺はさっきの男の事を思い出す。

咆哮を上げてから記憶がないが、フランちゃんとレミリアさんを狙ったことを思い出すと…ちょっとイラっとした。

そのまま俺の憎悪を具現化できるのなら…武器を出せるんじゃないかって。

 

「…」

 

俺は手頃な武器としてナイフを思い浮かべた。

すると

 

「!!」

 

俺の右手から紫色の炎が溢れ出し、その炎はやがて一つに集約していく。

やがてその炎を握った。

 

「な、ナイフだ…」

 

ブリップに銀色の刃。

刃を軽く触れると、俺の指からつーっと血が少し零れる。

本当にナイフを出せた。

更にこれに力を籠める。

 

「光を宿せるように成れ」

 

力を込めたと同時に、ナイフの刃がぴかーッと光り輝いた。

 

「眩し…」

 

急いで力を戻す。

すぐさま薄暗い部屋になったと同時にナイフも戻せるのかと試した。

 

「!」

 

紫色の炎が燃え上り、俺の右手に炎が戻ってきた。

 

「…マジ、なんだな」

 

俺の頭の中に聞こえてきた声は、本当だった。

憎悪を具現化する能力…多分、あの紫色の炎が俺の憎悪の姿なのか。

別に今更どうってこともないが、俺の20年間蓄積された憎悪が炎か。

…てか、ここは何処だ?と考えていたら

 

――ピシャッ!

 

「あ、目が覚めたの?」

「霊夢…さん?」

 

襖が開き、霊夢さんが中に入ってきた。

 

「ってことは事はここは博麗神社…」

「いいえ、ここは守矢神社よ」

「守矢神社…?」

「また別の神社よ、私と同じように巫女が居て神がいる」

 

そういいながら霊夢さんは俺が寝ていた布団の横に座る。

 

「…それで何がったの」

「何がって言うのは?」

「さっきの事を忘れたの?炎を纏って戦ってたじゃない」

「…」

 

その言葉を聞いたと同時に、俺の記憶が一部抜け落ちていることが分かった。

咆哮を上げた後から今に至るまで何があったのか何一つとして覚えていない。

 

「覚えてないです…」

「覚えてないの?」

「はい…あの男がフランちゃんとレミリアさんを狙った所で攻撃して戦い中に外道な事を言い始めて苛立ったと同時に咆哮を上げた後…何も覚えてないです」

「そう…」

 

霊夢さんはそこまで驚かず、俺の話に耳を傾けていた。

 

「驚かないんですか?」

「確かに驚きはしたけど、天津があんなことするとは思わないもの」

「…」

「それよりも!まだ宴会中だから行くわよ!私は天津の看病で一杯も飲めてないんだから!」

「ちょ、ちょっと!?」

 

霊夢さんが驚くよりも先に俺が驚く。

腕を掴まれ無理やり立たされたと同時に霊夢さんが走り出し、俺もそれに引きずられるかのように連れてかれる。

やがて襖を開けて霊夢さんが中にエントリーしたという事は強制的に俺も中に入れられる。

そこには

 

「うっ…!?」

 

約数名が顔が真っ赤になって倒れている。

てか、酒くせぇ…!アルコールの匂いで鼻が曲がりそうだ…!?

こ、これが宴会か…とんでもねぇな。

 

「おぉ!!天津!目が覚めたんだな!!」

「ま、魔理沙さん!?」

 

魔理沙さんが俺の身体に抱き着くという名のダイレクトアタック。

勢いが強すぎて痛い。

…魔理沙さんからアルコールの匂いがする。

飲んでるのか!?

 

「あ、天津さん…ですよね?」

「は、はい!」

 

今度は緑髪の巫女…巫女だよな?

霊夢さんとは違う巫女服だが、ほぼ一緒だぞ。

幻想郷の巫女って露出が高いのか…?

 

「先程は大丈夫でしたか?」

「ちょっと…記憶が無いですが大丈夫です」

「それは大丈夫なんですか…!?」

 

何て言いながら俺の事を心配しつつ、近くにあった焼き鳥などを含めたご飯を小皿によそい、俺の前においてくれた。

 

「ありがとうございます、えっと…?」

「東風谷早苗です。よろしくお願いしますね、天津さん?」

 

魔理沙さんに抱き着かれながら俺は早苗さんの反対側に座る。

なお、霊夢さんはいつの間にか俺の手から手を放して、一升瓶をラッパ飲みしている。

…アレは大丈夫なのか?

なんて思いつつ、早苗さんがよそってくれた焼き鳥や枝豆などを食べる。

うん、美味い。

 

「それで天津さん。私、貴方に聞きたいことがあるんです」

「?」

「ズバリ、今の外の世界ってどうなってます?車が空を飛んでますか?それとも人工知能とかそういうのが…」

「…何でそんな話を?」

「私って、元々は外の世界の住民なんですよ」

「えっ!?」

 

早苗さんの予想外の一言に俺は驚きの声を上げる。

 

「信仰が得られなくて神社と一緒に幻想郷へお引越ししたんですよ」

「す、凄いですね…」

 

なんというか引っ越しの規模が大きすぎて現実味がなさすぎる。

勿論、驚いてはいるが…どう驚けばいいのか分からない。

 

「それで今の外はどんな感じですか?」

「…あくまで俺の知る限りは話しますね。まず、車は空を飛んでないです」

「そうなんですね?」

「ただその代わりに電気で走る自動車が現れました」

「電気で?」

「はい、ガソリン車とは違いCO2とか出しませんが…まぁはいって感じです」

「なるほど~、じゃあロボットとかは?」

「人工知能が結構増えましたね。音声認識、自動運搬など色々増えました」

「かなり時代が変わったんですね…」

「早苗さんがいつに幻想郷に来たのかはわかりませんが…」

 

なんて雑談しながらご飯を食べていると

 

「あまつ~!」

「れ、霊夢さ…うっ!?」

 

一升瓶を握りしめた霊夢さんが俺の胸元にダイブしてきた。

うん、めっちゃ痛い。

 

「いつまで早苗とイチャイチャしてるのよ~!」

「い、いやイチャイチャはしてませんが!?」

「むー!構えー!!」

 

何だこの霊夢さん!?

酒癖が悪いとかそういうベクトルじゃないんだが!?

 

「また霊夢さんは…」

「またってこうなるんですか?」

「そうですね、こうなりますね…」

 

しかもまたって…霊夢さんって結構お酒を飲むことに驚きつつも俺の膝に頭をのせてきた霊夢さんの頭を優しく撫でる。

構い方が分からないので、一旦撫でるだけ撫でよう。

 

「ふふっ…」

 

霊夢さん、すっげぇ満足そうな顔してるな。

 

「そういえば、天津さんって能力あるんですか?」

「そうですね…知ったのは直近ですが」

「へぇ!どんな能力なんです?」

「『力を自由自在に操り、与え、調整する程度の能力』と『憎悪を具現化する程度の能力』です」

「ふ、二つあるんですか?というか憎悪って…?」

「あー…」

 

一応、宴会中ではあるが早苗さんに俺が幻想郷に来た理由と原因を全部話した。

 

ーーー

 

「そ、そんなことが…」

「そんなことがあって、ここにいます」

「…まだ家族を恨んでます?」

「それは『勿論』と言わせてもらいます。ただ今だけは感謝してます、幻想郷に来れましたから」

 

早苗さんは反応に困っているようだ。

まぁそりゃ困るだろうな。

 

「…そういえば、早苗さんはお酒飲まないんですか?」

「飲みたいですが…これですよ?」

 

そういいながら俺たちは左を見る。

そこには…

 

「アッハッハッハ!!」

「ほぉら飲め飲め!」

 

うん…もうね、止められないと思う。

集まった皆が皆どんちゃん騒ぎで、お酒をじゃばじゃばと飲んでいる。

 

「流石に、アレくらいは飲めないかなって」

「そうっすねぇ…」

 

俺はお酒を飲んだことはないが…仮に俺が飲んであんな大暴走したら終わりだと思ってる。

 

「んむ~…」

「れ、霊夢さん…」

 

俺の膝に頭を預けて寝転がっていた霊夢さんは身体を起こして、身体全身を使って俺に抱き着き、全体体重を俺にかけてくる。

 

「甘えん坊になりすぎでは?」

「今回は天津さんに矛先が向いたみたいですね」

「まるで毎回毎回他の人に矛先が向いてるみたいないい方ですね?」

「事実ですから、いつもは魔理沙さんに向いてますけど…今の魔理沙さんは」

「うん…」

 

魔理沙さんを見ると、うん…めっちゃ飲んでるな。

すっごい恐怖を感じる。アルコール中毒とか起きても助けられんぞ。

 

「天津さんも少し飲みますか?」

「…ちょっとだけ」

「なら私も」

 

そういいながら俺も少しお酒を飲んだ。

多分、日本酒…日本酒なのか、これ?

ある意味、幻想郷酒か。日本酒飲んだことないし、わからないが。

 

「んん…凄い不思議な味ですね」

「お酒は初めてですか?」

「そうですね…厳しく生きていたのでこういうのは初めてです」

「ふふっ…今日は楽しんじゃいましょうね?宴会ですし」

「はい」

 

これくらい話せるならまだましかな。

…何てこの時の俺は気楽に思っていた。

それからおおよそ1時間後…。

 

「天津くぅ~ん、もっと飲みましょうよ~!!」

「嫌ぁァァァァァ!?!!」

 

この場は…混沌を極めていた。

未だくっつき続ける霊夢さん、いつの間にか霊夢さんの反対側で俺の身体にしがみ付いているフランちゃん、そして一升瓶を口を俺に向けてきながら顔を赤く染めた早苗さんが俺の方へ一歩一歩足を進めてきている。

しかも少し酔っているのもそうだが、霊夢さんとフランちゃんがくっついているせいで動けん!

 

「ううん…天津~…」

「おにいさま~…」

「動けねぇ…!?」

 

振り解こうにも腕と足を拘束されているせいで動けないのもそうだが…。

 

(酔っているせいで思考がまとまらないし、能力が使えねぇ…!!)

 

身体能力を上げようとしたが、思考がブレブレで能力が使えず振りほどけない。

マズイ、マズイマズイ!!

早苗さんの握る一升瓶の口が徐々に俺の口に迫っていく。

 

「はーい天津くぅ~ん!あーん…♡」

「俺の…俺の傍に近寄るなァァァぁァァァ!!!」

 

そうして、俺の口に酒がねじ込まれると同時に俺の意識は深淵に飲まれていくのだった。




感想はいつでも待ってます~…。

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