翌日。
「うぅ…うぁぉ…」
重い瞼を開くが…頭が物凄く痛い。
昨日、何があった?
宴会に参加して早苗さんに一升瓶の口を口にねじ込まれて…そこから記憶がない。
多分、これがお酒の飲みすぎで発生する二日酔いってやつだろう。
初めての感覚だ。病気にかかった時の頭痛とは違う。嬉しいモノじゃないがな。
「ううっ…?んん?」
身体を起こそうとするが…身体がピクリと動かない。
てか、体が重い…?
「んん…」
「すぅ…すぅ…」
「うへへ…もう…のめましぇん~…」
「…そういうことか」
俺の身体の上に霊夢さん、フランちゃん、早苗さんが乗っかっていたみたいだ。
そりゃそうだ。例え女性の身体が羽毛みたいに軽くても三人分は流石に重い。
他の人は…未だに寝てる。
あれだけじゃばじゃばお酒を飲めばそりゃそうか。
とにかく、まずはこの三人をどけてきちんと姿勢で寝かせよう。俺の身体じゃただの硬い石みたいだし。
俺の身体に手を添えて呟く。
「驚異的な怪力を持つ身体と成れ」
ぐーっと身体の中に力が湧き上がってきたので三人を抱える。
女性三人を抱えても全然重さを感じない。しかもコストもそこまでかからない。
なるほど、身体全体を強化すればそれ相応のコスト。けど今回の怪力はほぼ腕だけだ。
こういう使い方もあることも考慮しておこう。
「よし」
三人を俺の身体からどかし、畳に寝かせる。
んで、枕の代わりになりそうなものが無かったので俺は上着を脱いでそれを畳み、枕代わりにした。
俺の身体が大きくてよかった。
…とりあえず畳の部屋から出ると
「おぉ…」
庭…庭でいいのか?
神社の周りは博麗神社に比べて守矢神社の方がかなり大きい。
ここは掃除に時間がかかりそうだし、少し落ち葉が散っている。
宴会で使わせていただいた場所だし、お礼代わりに掃除しておこう。
丁度、近くにあった箒を握りしめる。
…一撃で落ち葉を全部はけるのかな。
やってみるか。
「一振りで落ち葉を全部掃ける箒と成れ」
そうつぶやくと箒からガキンっと音が鳴り、箒の先端に風が集約していく。
うん、行けそうだな。
「ふぅ…」
箒を大剣を振り回すように構え、両腕に力を籠める。
「ぶっ飛べッ!!」
たまった力を一気に開放するように箒を思い切り振る。
――ビュオォォッ!!
強風が巻き起こり周囲に落ちていた落ち葉だけが上へと舞い上がっていく。
だがかなりの強風でも落ち葉以外のものはピクリとも動かない。
特定の物質だけ動かす強化っていうのもできるみたいだ。ただ…めっちゃコストをごっそり持ってかれた。此の箒一つで4割持っていかれた。
身体強化よりも持ってかれるとは思わなかった。
「ふぅ…力を返してくれ」
箒から力を返してもらうと同時に守矢神社の周りを見る。
落ち葉は一つも落ちていない。文字通り、綺麗になった。
一撃で掃ける箒、いいね。博麗神社でもやろう。
「ほぅ、やるな」
「!!」
急に後ろから声が聞こえて、びっくりしすぎて箒を持ちながら振り返り構える。
赤い衣装に身を包み、胸元に鏡が取り付けられた格好だ。
それと背中に装備されている柱…柱でいいのかアレ。注連縄だっけか、それが巻き付けられている。
そして何よりも…!
(何だこの威圧感…!?)
驚くほどの威圧感が俺を襲う。
フランちゃんとの弾幕ごっこで感じた威圧感とは違う…崇拝、いや敬愛か。
跪かないといけないような圧力を感じる。
「…身体能力強化、高質化」
出来る限り自分の身体に力を与えようとするが
「いい、別に敵意があるわけじゃない」
「そ、そうですか」
この人に止められたと同時に圧力が弱くなったので能力を使うのを止めた。
「して…随分といい根性をしている童じゃないか。お前が件の天津か?」
「は、はい…貴方は?」
「私か?私は」
と名前を名乗ろうとしたところで…
「お、おはようございます…神奈子様」
めっちゃ顔が真っ青な早苗さんが現れた。
「大丈夫ですか?」
早苗さんはいつ倒れてもおかしくないので近寄り、身体を支える。
「だ、大丈夫です…天津君は?」
「全然大丈夫ですし、最悪能力で何とかします」
「便利ですね…」
「なら早苗さんに使いますよ」
俺は早苗さんの左手に手を添えて呟く。
「一時的に肝臓が活性化させ、アセトアルデヒドを処理しやすい肉体に成れ」
二日酔いが起きる条件は主にアルコールの分解過程で生成される有害物質『アセトアルデヒド』が肝臓で処理できず、体内に残ることで頭痛や吐き気が引き起こされる。
逆にアセトアルデヒドさえ分解してしまえば二日酔いの症状は収まる。
故に…ここでやるべきなのは肝臓の活性化でアセトアルデヒドの分解が出来るようにするだけ。
「お?おぉ…!?頭痛と吐き気の症状が治まっていきます…!」
「マシにはなりました?」
「マシどころか全快です!」
「その調子なら大丈夫そうですね。力を返して」
早苗さんの左手を握り続けながら力を返してもらった。
「それが天津の能力か?」
「そうですね、力を自由自在に操り、与え、調整する程度の能力です」
「ほぉ…だからひと掃きで落ち葉を全部掃けたのか」
「え!?や、やってくれたんですか?」
「ある意味、場所を借りさせて貰ったのでそのお礼でやりました。ただそれだけです」
「ありがとうございます!」
今度は早苗さんの方から俺の手を握り、ぎゅっと握り返してくれた。
…なんというか柔らかい。
「そういえば…何故、神奈子様はこちらに?」
「いやなに、気になる行動をする奴が居てな。それを見て居ただけさ」
「天津君ですね?」
「あぁ、中々に面白いよ」
ある程度の会話で推測できるが、この人は神奈子様っていうのか。
早苗さんの立場を考えるに巫女の上って事だろ?
あれか、師匠的な立場なのか神奈子様って。
「あ、天津君。こちらの方は『八坂神奈子』様です。天津君に分かりやすく言うと元は日本の神様ですね」
「へぇ神様…え、神様?」
一瞬、早苗さんの言っていることが理解できず、聞きなおしてしまう。
「神…様?」
「はい」
「GOD?」
「はい」
「ひゅっ…!?」
全身から血の気が引いていくと同時に俺は地面に膝をついて、頭を下ろす。
「か、神様とは知らずにご無礼を…!」
「天津君!?」
「良い、気にするな」
神奈子様に言われたので頭を上げる。
か、神様なのか…ってことはさっきの威圧感は神の威光みたいなものだったのか。
そりゃ跪きたくなる。
「そういえば諏訪子様は…」
「まだ寝ているだろう」
「では掃除を」
「天津がひと振るいで終わらせていたぞ」
「…えーっと、人里に行くにしてはまだ朝早いですし…何をすれば」
「人里?」
「あぁ、人里というのは人間たちが暮らす集落みたいなものです」
おぉ、人間たちが暮らす集落があるのか。
妖怪、吸血鬼、魔女、魔法使い、悪魔、神…こっちに来てから人間よりも超越した生物しか見てないから人里があることに驚きだ。
いや…俺もかなり幻想郷に馴染んできたのかもしれない。
「あ、丁度神奈子様も居ますし…天津君」
「は、はい?」
「外の世界で神を信仰してる人っていましたか?」
「居るには居ます」
「む、居るのか」
「まぁ…」
あまりこんな言い方はしたくはないが、神を信仰している宗教関連の人たちに対して良いイメージはない。
まぁ否定はしないが、強制してくる行為は本当に嫌いだ。
「…俺のいた日本だと神を信仰する人にロクな人が居ないっていうイメージがあります」
「…ほぉ?」
「え…?」
「その神に対する信仰に付け入り金を貪りつくそうとするやつもいますし、信者たちの洗脳といった信仰心を最悪な形で使う奴が居るんです。故に神に対する信仰は難しいんです」
「う、うわぁ…一応聞きますがどんな手法を?」
「何の確証もない身に着けるだけで幸せになれる数珠とか」
「え?でもそれは」
「もしそれが信仰している宗教が売っていて、売っているのがただの数珠だとしたら?」
「あ…」
「そうやってお金を騙し取るんですよ。買って本当に幸せになれば次の購入者への情報にもなりますし、信者に売ればずっとその数珠を信じ続け、疑わない…そういう奴がいるせいでそうなってます」
「なるほどな。天津はどうなんだ?神を信じていたのか?」
「信じていた、ですかね」
俺は…解放されたかった、あの家から。
いつか解放されると信じて、神を信じたこともあった。
でも、俺はその『いつか』が来ると信じるよりも自分で行動して…幻想郷に入った。
信じた結果なのか、行動したおかげなのかはわからないが…俺を幻想郷に連れて来てくれた何かに感謝はする。
「ふむ…それと早苗」
「はい!」
「天津と弾幕ごっこをしてみたらどうだ?」
「えぇ!?」
「はいぃ!?」
脈絡のない話に俺と早苗さんは声を荒げる。
「なに、早苗の為の軽い訓練だ。天津は?」
「だ、弾幕ごっこをするのはいいんですが…弾幕が撃てないんですけど…」
「そうか、まぁ能力があるから行けるだろう」
とんでもねぇこと言ってませんかこの人!?
いやこの人は神だわ!
…だから何だよ!?と頭の中で自分のツッコミに自分でツッコむ。
「天津君…」
「は、はい…」
早苗さんがボソッと呟き、俺はその言葉に耳を傾ける。
「…す」
「す?」
「すぐに終わらせます…!」
「!?」
衝撃的なことを言われた。
すぐに終わらせるって…やる気ってことだろう。
もう少し反論してもいいんじゃないかって思ったが、早苗さんはこの守矢神社の巫女。
…巫女だよな?いや、分からない。
人間っぽく見えても実際は妖怪だの、神様だのと人の姿をした別のなにかの場合が多い。
もしかしたら巫女の姿をした神様の可能性もある。
…無駄な詮索か、ここらでやめておこう。
それに弾幕ごっこか。
現状、弾幕ごっこの相手を務めたのはフランちゃんのみ。
早苗さんはどんな弾幕を放ってくるのか。
(ちょっとワクワクしてる自分もいるんだよな…)
と、少しため息をつきながら上に飛んでいく早苗さんを見て…手を身体に添える。
まずフランちゃんとの弾幕ごっこで違う点はここは外って事だ。建物の中なら身体能力を上げた際に生じるメリットは沢山ある。
だが、今回は外。身体能力を上げても天井、壁といったオブジェクトも無い為、上方向に飛ぶしかできない。
(…試してみるか)
俺は呟く
「身体能力の向上及び空気を蹴れる脚と成れ」
そう呟いた瞬間
「ぐぅっ!?」
一気に身体から力が抜ける状態と反比例するように身体から一気に力が湧いてくる。
4.5割か…!思ったよりはだな。
「ふぅ…ふんッ!」
軽く息を吐いてから思いっきり地面を蹴りあげる。
――ドゴォッ!!
地面が凹むと同時に俺の身体は空へと舞い上がり
「…こういうやり方もあるか」
空気に着地した。
両足が空中にあるが、俺の足からは地面に着いているのと同じ感触が伝播する。
文字通り、空気を蹴れる脚だ。
「凄いですね、どんな力を自分自身にかけたんですか?」
「身体能力の向上と空気を蹴れる脚ですね」
「おぉ…言い方はアレですが天津君の能力つて考え方次第ではかなり強い部類に入りますよね」
「あー…多分世界をぶっ壊す力とかは流石に出来ないですよ。与える力にはコストがあって上限がありますし」
「なるほど~」
空中で早苗さんと話す。
「そういえば天津君は弾幕ごっこは初めてですか?」
「いやフランちゃんと2回しかやってないです」
「…昨日、霊夢さんが言ってた事は本当なんですね。それでどうやってあの猛攻を防いでいたんですか?」
「瓦礫とか燭台ですね。握って力を込めてそれで弾くみたいな感じです」
「と、とんでもないですね。でもここは空中ですし…どうしますか?」
「うーん…」
やはりと思った部分を早苗さんに指摘される。
多分、このまま弾幕ごっこをしても攻撃するタイミングが俺には来ないだろう。
代わりの武器とかが有ればいいが…。
(仕方ない…創るか)
俺は昨日のあの男のことを思い出す。
言葉一つ一つを思い出す度に、俺の中から憎悪が溢れ出していく。
そして、作り出す。
弾幕ごっこに最適な武器を、『剣』を。
「『禁忌 レーヴァテイン』」
両手から大量の紫色の炎が溢れ出し、一気に一点に集まっていく。
そして、それを俺は握る。
真っ赤で、何でもかんでも破壊できそうな…その剣を。
キャラクターとの幕間のような話を作成するのはアリ?ナシ?気軽にお願いします。
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アリ
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ナシ