「そ、それって…!?」
「弾幕ごっこに相応しい剣でしょう?」
そう。これはフランちゃんの握っていた剣だ。
禁忌:レーヴァテイン。どういう原理であの剣が現れたのかは俺にもわからない。
でも、炎で出来た剣だ。それを…紫色の炎の憎悪で塗り固めて剣にすればいい。
ただ…それだけだ。
「それと、早苗さん」
「は、はい?」
「俺は弾幕を撃つことはできません。なので、肉体で攻撃を仕掛けます。いいですか?」
「…分かりました、やりましょう天津君!」
早苗さんは御幣…だっけか、白紙を付けた棒状の奴。
それを握りしめ、なんかポーズを取りながら言い放つ。
「では現人神の力を見て考えなさい…奇跡を起こす神の力を!」
そうして…弾幕が放たれる。
フランちゃんのとは違い弾幕の密度は高くはないが…星形の弾幕が飛んでくるとは思わなかった!
「!!」
けど、今の俺の足は空気を蹴れる。
地面に立っているときと同じように横にジャンプして回避しつつ、早苗さんの動きを見る。
(…何だあれ)
弾幕を放ちつつ、早苗さんは一枚の紙を持っている。
なんだアレ、カードか?と見て居たと同時に
「『奇跡:客星の明るすぎる夜』」
「!!」
早苗さんがそう宣言すると同時に、早苗さんの横に青い球のようなものが出てそこから槍のような鋭い弾幕がこちらに放たれる。
…早苗さんの言い方的にもフランちゃんの『禁忌:レーヴァテイン』と『禁忌:クランベリートラップ』と似たような物だろう。
つまり、必殺技みたいなやつか!
「くっ…!?一気に弾幕が変わってきた…!」
早苗さんから大きめの弾幕と左右から槍のような弾幕。
でも、俺にも武器があるんだよ…!
「憎悪よ…弾幕を燃やせぇっ!!」
憎悪で作り出した、レーヴァテインを横に薙ぎ払う。
俺の剣は弾幕を破壊しながら早苗さんに炎の刃が襲い掛かるが
「甘いですよ!」
普通に避けられた。
でも、体制は崩れた!空気を踏みながら足に思いっきり力を込めて…蹴る!
瞬間的に俺の身体は加速し、早苗さんとの距離を詰めてレーヴァテインではなく、手を広げて掴みかかる!
「わっ!?」
「ダメか…!」
しかし、これも早苗さんに回避された。
「なんというか…天津君、凄いですね。弾幕の隙間を縫って接近戦を仕掛けてくるなんて」
「これくらいしかできることがないんですよ!弾幕は打てないですし、早苗さんの持つ必殺技みたいなカードも持ってないんですから!」
「…え?」
すると、早苗さんは俺の発言に何らかの疑問を持ったようだ。
「いや、天津君は持ってますよね?昨日の外来人を倒した後に」
「…え?」
俺は心当たりがない。そりゃそうだ、今の俺はそこの部分だけ記憶が抜け落ちている。
でも、そんなカードなんて…そう思いながら懐をあさる。
「!!」
俺の右ポケットに手ごたえを感じ、その手ごたえの物をポケットから取り出す。
「カードだ…!?」
そこには一枚のカード。
柄は紫色の炎の模様がびっしりと記されていて、同時に『使うな』と本能が告げてくる。
正直、何が起きるかわからない。
ただ、早苗さんやフランちゃんが言っていた必殺技の名前は俺の頭の中に入っている。
どういう原理だマジで…!
「使わないんですか?」
「使っちゃいけない気がして…」
「どういうことです?」
「俺の本能が『使うな』って告げてきます」
「…危ないスペルカードなんですかね?」
一旦、弾幕ごっこを中断し早苗さんと至近距離で話しながら俺のスペルカード?について話す。
使うなといってくる本能、使うにしてもおどろおどろしいこのカードを使っていいのか。
「使っていいと思いますよ」
「え?」
俺の考えを読み取ったかといわんばかりに返事をする早苗さん。
「天津君、そもそもの話…幻想郷に外来人が適用すること自体稀です。でも天津君はそれ相応の意思をもって幻想郷で暮らすことにした。ならまずはこういったスペルカードにも適用しないと」
「…」
「もし、危ないスペルカードだとしても幸いにも私も居ますし、下には神奈子様に諏訪子様もいらっしゃいますし、何よりも霊夢さんも含めた他の皆さんも居ますから」
「…わかり、ました」
俺は渋々、このスペルカードを使うことにした。
早苗さんから距離を取り、弾幕ごっこ再開の宣言という名の…俺のスペルカードを使用する。
…頭の中に浮かぶ名を叫ぶ。
「『憎符:積年の怨嗟の叫びは留まる所を知らず、憎悪は己すら焼き尽くす』!」
そう叫んだ瞬間、ドクンと心臓が高鳴り…俺の中で何かが変わっていく。
俺の中の枷が外れる。
能力の『力を自由自在に操り、与え、調整する程度の能力』のコストの限界値がなくなり、全身から紫色の炎が放たれ…何故かは知らないが、このタイミングで『弾幕の打ち方』を理解した。
「がアァァァァァ!!」
やがて背中から翼と尻尾が生える。最も、それがまともな物だったらよかったが。
翼には盾のような物が付けられ、その後ろにはジェットエンジンが付けられていて尻尾の先にはブレードが付いている。
まるで人工物と生命体が無理やり融合したかのような見た目をしている。
「はぁっ…はぁっ…!?」
心臓が高鳴っているせいで酸欠になりつつ、身体に疲労感が募る。
や、やばい…!?精神的にも肉体的にも消耗が激しすぎる…!
このスペルカードは必殺技にしては俺の身体を蝕みすぎじゃないか!?
「あ、天津君…?」
「大丈夫…です!暴走してるとかそういうわけじゃないんですが、肉体の消耗が…!」
「大丈夫なんですかそれ!?」
「いやいいです!一旦、このまま弾幕ごっこをお願いします…!」
「わ、分かりました…なら行きますよ!」
早苗さんはまた新しいスペルカードを取り出し、宣言する。
「『開海:モーゼの奇跡』!」
左右から一定の空間を開けながら弾幕が放たれつつ、早苗さん本人から弾幕が放たれる。
「ふぅ…!」
酸欠気味の意識を何とかつなぎとめて、その弾幕を避けつつ弾幕を放つ。
「わっ、弾幕の打ち方が分かったんですね!?」
「このタイミングで…ですがね!」
やっと弾幕ごっこらしいことが出来るようになった。
撃って撃ち返されての繰り返し。それに…この翼のお陰で自由自在に飛べるようになった。
だが本当に疲労が凄い勢いで重なる!想像以上にしんどい!
「『準備:サモンタケミナカタ』」
「くっ!?」
なんて考えている間に早苗さんの次のスペルカードが放たれる。
今度は星形の弾幕が拡散しながらこっちに向かってくる!
弾幕を放ちながら、回避に専念するが…今、準備って言ったよな!?
(早苗さんの次のスペルカードが多分、一番ヤバいかもしれない…!)
正直、必殺技で『準備』って聞くと危険なにおいしかしない。
どうする…どうする…!?
(何かないか…!?)
現状俺に出来ることは力の譲渡、憎悪での想像、翼と尻尾での攻撃、そして弾幕。
けど、弾幕の精度も何もかもが早苗さんの方が上だ。
このままじゃ次の攻撃で負ける…!
すると
「!!?」
俺が使ったスペルカード『憎符:積年の怨嗟の叫びは留まる所を知らず、憎悪は己すら焼き尽くす』。そのカードの柄が変わり、カードを見ると頭の中にあるスペルカードの名前が変わっている。
「…えぇい!これしかないんだろ!?」
得体のしれないなにかに怒りを募らせながら俺はそのスペルカードを握りしめて…早苗さんとほぼ同時に叫ぶ。
「『大奇跡:八坂の神風』!」
「『終幕:パラダイス・ロスト』!」
早苗さんの弾幕は細かい弾幕が輪を描くように周囲に放たれると同時にその細かい弾幕の間に大きめの弾幕が入ったきめ細かい弾幕。
対して俺の方は左右に紫色の炎が展開されるとともに魔法陣のようなものが浮かび、その魔法陣は俺の目の前にも展開され…花が咲くかのようにドンドン大きくなっていく。
そして…!
「無に帰せ…!」
右手を広げると同時に魔法陣から大量のレーザーが早苗さんを目掛けて放たれる。
想像以上の威力を持ったスペルカードだが…!?
「がはっ!?」
俺は早苗さんの弾幕を喰らい『ピチューン』と聞いたこともない音が聞こえると同時に、地面へ真っ逆さまに落ちていく。
終幕:パラダイス・ロスト…これを使うときは本当に本当の最終手段にしよう。
このスペルカードを発動した瞬間、俺の能力のコストの限界値まで弾幕の力を強化し、放つ。
故に…撃った瞬間、意識が吹き飛びかける。
さっきは何とか意識を取り戻したが、早苗さんの弾幕に気が付かず着弾して終い。
「だーっ…クッソ」
と悔しがりながら俺は地面に衝突した。
ーーー
「だ、大丈夫ですか?」
「大丈夫ですが痛いです…」
早苗さんに手当てされながら、さっきの事を思い出す。
俺のスペルカード…本能が使うなって言っていた理由は単純に俺の身体への負荷を察知しての事なのだろう。
ぶっちゃけ、死ぬかと思った。
「よく早苗相手に健闘したな」
「神奈子様…」
急に後ろから話しかけられ、その方向を見ると神奈子様がこちらに歩いてきていた。
「しかし、あのスペルカードはなんだ?威力だけなら私に追いつきそうな様子だったが」
「…」
神にすら追いつくほどのスペルカードか。
…そりゃ能力の限界を超えて、意識を無くしかけるほどの一撃じゃないと神に追いつけない。
つまり、『終幕:パラダイス・ロスト』は極メリット、極デメリットの二つの性質がある。
いや、もう二度と打ちたくないけど。
「…にしても天津君」
「はい?」
「こんなことを聞くのもなんですが、楽しかったですか?弾幕ごっこ」
「楽しいというより、久々に…『悔しい』って思えました」
「え?」
「俺はずっと最高得点、万年常勝でなければいけなかった。負けたらそれで怒られてお終い。だから負けてはいけない…そんな生活を繰り返していましたからこうやって悔しいって感じるのはちょっと嬉しいです」
「天津君…」
俺は心の声を吐露した。
ずっと勝ち続け、負けちゃならない。そんな生活を繰り返していると『悔しい』って思うことはなくなる。負けたとしても怒られるという恐怖しかないからな。
でも、俺は久々に悔しいって感じた。
何か、嬉しい。
「んん…?」
「あ、霊夢さん。おはようございます」
早苗さん達と話していると目をこすりながら霊夢さんが歩いてきた。
めっちゃ眠そう…。
「って天津!?その怪我は何…!?」
「あー、えーっと…」
すると霊夢さんは怪我だらけの俺の身体を見て驚きながら俺の事を見てくる。
すると
「ん”ん!」
神奈子様が急に咳払いし
「早苗がいじめた」
と淡々と告げた。
「はい!?」
「は?」
「え、えぇっ!?」
明らかに霊夢さんの声のトーンが下がったと同時に早苗さんは驚きの声を上げる。
「早苗…うちの天津になにしたの?」
「え、いや虐めてないんですが…」
「弾幕を一方的に撃っていたぞ」
「え!?い、いやそれは技量的な問題で…」
「しかも天津はさっき地面に真っ逆さまに落ちて頭を打ったしな」
「は?」
「ちょっと神奈子様!?」
霊夢さんの声の圧力が一気に増す。
「早苗」
「は、はい」
「表」
「…はい」
スペルカードを携えた霊夢さんは早苗さんの肩に手をポンと置いて明らかに怒った様子で早苗さんに外を指さす。
早苗さんは俺に助けを求めるような目線を俺に向けてくるが
「…」
肩に手をのせられているのは早苗さんだけじゃないんだ。
今、俺の肩に乗っている手は…神奈子様の何だ。
頼む、許してくれ。
そうして俺は外にずるずると引きずられている早苗さんを見守りながら…呟いた。
「恨んでもいい、怒ってもいい。ただ俺を赦さないでくれ…!」
「はっはっは、大丈夫だ早苗は丈夫だぞ」
と神奈子様は笑いながら言った。
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アリ
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ナシ