忘れ去られたい青年の幻想入り   作:ohagi57

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憎悪の叫び

空を見て早苗さんが墜落してきたところを俺が受け止めた。

早苗さんと霊夢さんの巫女巫女弾幕ごっこの対決は霊夢さんの方に軍配が上がった。

うん…何というかとんでもなかったな。

空を飛ぶ程度って聞いたけど、もう飛び方がジェット機みたいに変幻自在、自由に飛び回っていて飛んでくる弾幕や早苗さんの動きに合わせて撃ち方を変えていた。

これが霊夢さんの実力なんだろう。

二人の弾幕ごっこを見て居たときに神奈子様が言っていた『楽園の素敵な巫女』っていう霊夢さんの二つ名は伊達じゃない…ってことか。

 

「ふぅ…」

「お疲れ様です、霊夢さん」

「ん」

 

丁度降りてきた霊夢さんに声をかけると相槌は帰ってくるが…何処か様子がおかしい。

 

「どうしました?」

「いや…何でもないけど、ちょっと早めに博麗神社に戻りましょうか。天津、付いてきてもらってもいい?」

「え?分かりました?」

 

霊夢さんはどういうわけかわからないが、今すぐに博麗神社に戻りたいそうだ。

未だに夢から帰ってきていない人たちもいるが…仕方がない。

一旦、神奈子様に早苗さんを預けてから俺と霊夢さんは博麗神社に戻っていった。

霊夢さんは飛んで、俺は空気を蹴りながら。

 

ーーー

 

「…っとと」

 

博麗神社の鳥居をくぐり、地面に着地したと同時に霊夢さんは鳥居の前に立ち、構え始めた。

 

「霊夢さん?」

「なに?」

「どうしましたか?何というか焦っているように見えるというか…」

「…そうね、ちょっと焦ってるわ。それと、紫!見てるんでしょ?」

「はーい」

「うおっ!?」

 

急に紫さんに声をかけてこの場にはいないのにと思っていたら俺の真横の空間に切れ目が出来て、目がいっぱいの空間の中から紫さんが頭だけを出してきた。

マジでびっくりしたんだが…。

 

「あら、天津君も居たのね?」

「れ、霊夢さんに一緒に帰ってきて欲しいと…」

「うふふっ、霊夢も天津君の事が気に入ったの?」

「うっさい…手伝ってほしいのよ」

「て、手伝う?」

「…紫はわかるわよね?」

「そうね」

 

にこにこしていた紫さんの表情が一気に真剣な表情へと切り替わる。

 

「どうしたんです?」

「天津君は知らないと思うけど、この幻想郷の周りには『博麗大結界』という大きいな結界が張られてるのよ」

「博麗大結界…」

 

名前から聞くに霊夢さんが張った結界なのか?

もしくは紫さんが?何て考えていると

 

「その結界の一部に、ちょっとした異常が起きてるのよ」

「異常が?」

「何の理由かは分からないけど、ある場所を境にその結界の異常から幻想郷に入ろうとしている人がいるわ」

「!!」

 

ってことは俺と同じ外来人ってことか?

でもどういう理由で幻想郷に入ろうとしているんだ?俺みたいに何らかの理由があっての事か?

 

「仮にその人たちが入ってきたら面倒くさいことになるわ。外と幻想郷を繋げる道になってしまう」

「…聞く限りは言い様に聞こえますが、ダメな理由があるんですよね?」

「理解が早くて助かるわ」

 

何らかの準備を進める霊夢さんを尻目に紫さんは話し続ける。

 

「外から幻想郷に入るデメリット。それは…幻想郷のバランスを崩しかねない事。外の技術や文化、あるいは悪意がある者が入ってくるとバランスは簡単に崩れる」

 

いわば元のなわばりに外来種を蒔いたようなものか。

 

「逆に幻想郷から外に行ってしまった場合。忘れているだろうからもう一度話すけど、私はまだ友好的な妖怪…仮に人間に対して敵対している妖怪が外に行けば」

「外の被害に繋がる…」

「その通りよ。だからこそ、この異常を修復しないといけないの」

 

聞こえは良かったが繋がる道を作ったが最後、幻想郷にも外にも悪影響が出ることがよく分かった。

 

「…よし。天津、貴方の能力で私を強化してくれない?」

「分かりました。出し惜しみはしません」

 

何らかの準備を終えた霊夢さんの足元にできた魔法陣…魔法陣かこれ?勾玉とその周囲を囲む文字列の中央に霊夢さんは立っている。

うーん、理解できるわけじゃないから深く考えないようにしよう。

俺は霊夢さんの肩に手を添える。

 

「本来、持ちえる能力を完全に引き出し、潜在能力すら活かせる身体と成れ」

 

そうつぶやいた瞬間

 

「ぁ…?」

 

一気に視界が歪む。

何とか首を振り、意識を繋ぎとめる。

 

(7か…!?)

 

想像以上に持ってかれた。

もうここまでくると基準が分からない。俺は自分の能力についてもっと知るべきだろう。

 

「行けます…!」

「べ、別にいいけど天津?どうしたの…?」

「俺はいいです…出来れば俺が意識を失う前に…!」

「わ、分かったわ!」

 

霊夢さんはお祓い棒を持ち、何かを唱えている。

その唱えている一言に反応するかのように足元に張られている魔法陣が光っていく。

光っていっているが…!

 

「はぁっ…!?はぁっ…!?」

 

俺の意識が耐えられるかわからない…!

7割持っていかれたのは紅魔館の実験以来。しかも、何というか徐々に吸われて行っている気がする。

 

「…大丈夫?」

 

霊夢さんの肩に沿えている手とは逆方向の手を握られ、その方向を見ると紫さんが俺の手を握り、心配そうな顔で俺を見て居る。

心配はかけられないな。

 

「大丈夫…です!」

 

何とか自分の身体に喝を入れて、意識をもう一度繋ぎとめる。

…初めてなんだ。こんなふうに頼られるのって。

ずっと奴隷のように家で生活し、勉強、家事、しきたりに沿った古臭いくだらねぇ儀式。

もう、うんざりだった。

あの時は『頼られていた』じゃなくて『利用されていた』が正しい。

だから…今、俺は嬉しかった。

真っ当な理由で頼られたことが。

 

「封ッ!!」

 

霊夢さんがそう声を荒げると同時に、何かの波動が広がった。

そして

 

「ぁっ…!?」

 

俺の視界の全体に靄がかかったと同時に、景色が変わっていく。

博麗神社の鳥居に霊夢さんの背中、そして空しか見えなかった景色が…雪化粧の古びた神社へと切り替わっていく。

 

(これは…!?)

 

朧気に見えているが間違いない。

 

(俺が幻想郷に飛ばされた時に居た神社…!?)

 

ヒビに手を伸ばした時にいた神社が朧気に映り

 

(コイツら…!!)

 

そのヒビに手を伸ばそうとしていた俺の家族たちがいた。

…あんな家族どもを幻想郷に入れたら被害は計り知れない。どっかで野垂れ死んでほしいが、霊夢さんや他の関係者に会わせるわけにはいかない…!

 

(さっさとそのヒビから手を放しやがれ!!)

 

そう心の中で叫んだと同時に、そのヒビは消滅し

 

「はっ!?」

 

俺の視界は元の場所へと戻ってきた。

 

「よし…これで結界の異常修復は完了ね。ありだとう天津、助かっ…天津?」

「…」

 

俺の頭の中から声が木霊する。

 

『お前はどうしてそんなこともできないの!?他の子は出来ていたのに!?』

「…黙れ…!」

『どうして言う事が聞けないの!?私の子なんだから親である私の言う事を聞いてればいいのよ!』

「…黙レ…!!」

 

その言葉が頭の中に聞こえてくるたびに、身体の内から憎悪と怒りが増してくる。

 

『黙って私の言う事だけを聞いていれば』

 

「喋るなアァァァァァァ!!!」

 

俺は頭の中に木霊した声をかき消すために、喉から罵声を響かせた。

響いた罵声は博麗神社の周りに止まっていた鳥たちを驚かせ、樹を揺らし

 

「あ、天津…?」

 

その場にいた二人すらも脅かしてしまった。

 

「はぁっ…はぁっ…!!」

 

霊夢さんの肩から手を放し、その場で座り込む。

口元を振るわせながら呼吸を何とか整える。

 

「だ、大丈夫?天津」

「…大丈夫です」

 

今度は霊夢さんが俺の肩に手を添えながら心配そうに顔を覗き込んでくる。

俺はゆっくりと立ち上がり、霊夢さんに渡した力を返してもらった。

 

「…あぁ、クソ…!」

 

俺は片手で顔面を覆いながら、燃え上る憎悪を落ち着かせようとしたが…無理だ。

あんな思い出したくもない記憶を思い出したせいで憎悪は滾り、揺らいでいる。

 

「天津君」

「…はい」

 

そんななか紫さんは俺に声をかけて来て

 

「ちょっと、座って話しましょう。君に何が起きたの?」

「わかり…ました」

 

そうして社の隣にある霊夢さんの家の縁側に座った。

俺を中央としてその左右に霊夢さんと紫さんが据わる形で。

 

「ふぅ…」

 

その間も俺は呼吸を整えようとする。

しかし

 

「無理に封じ込めてもダメ。吐き出さないと」

 

紫さんは俺の左手を握り、そう優しく話しかけてくれる。

 

(…こんな、優しい人が俺の親ならな)

 

心の中で呟きながら、俺は…吐露し始めた。

何があったのかを。

 

「…霊夢さんの封という掛け声とともに視界の景色が変わったんです」

「変わったって…どういうふうに?」

「多分、結界の異常が発生した外側の風景です」

「!」

「…何が見えたの?」

 

俺の言葉に霊夢さんは驚きつつ、紫さんはどんな風景が見えたのかを聞いてきた。

 

「俺が幻想郷に来るときにいた古びた神社と、男と女が二人」

「…見えたのね、天津君にも」

「じゃあ先の景色が天津にも映った…でもさっきの罵声は?」

「その男女が俺の実の親なんですよ」

「「!!」」

「十中八九、消えた俺を取り戻しに…いや奴隷を取り戻すために博麗大結界に干渉したんでしょう」

 

俺はため息交じりにそう話した。

 

「待って、そう簡単には博麗大結界に干渉できないはず。どうやって…」

「俺が連れてこられた『ヒビ』に干渉した可能性が高いです」

「なるほどね。しかもそのヒビが今になって拡大化したところで霊夢か気が付いて封印。でも天津君の罵声の理由にはならないと思うけど」

「…昔に親に言われたことが頭の中で木霊して、それを一時的に忘れたくて叫びました」

「どんなことを言われたの?」

「細かくは言いたくないですけど…俺に言う事を聞かせるための罵詈雑言だと思ってくれればそれでいいです」

「…」

 

俺の言葉に霊夢さんと紫さんは言葉が詰まるかのように静かになった。

そりゃそうだ。結構、踏み込みずらい話だろうし…俺の表情は怒りと憎悪をぐちゃぐちゃに織り交ぜたような顔をしているだろう。

触れずらいだろうな。

 

「…天津」

「?」

 

今度は反対側の手を霊夢さんが握ってくる。

 

「大丈夫よ、もう天津を苦しめる人はここには来れない」

「!」

「少なくともここには私も居るし、他にもいっぱいいるわ。貴方は一人じゃない」

「…」

「この言葉がどう捉えられるか分からないけど、よく頑張ったわね」

「!!」

 

俺は…その言葉を聞いた瞬間、ずっと下を向いていた顔を上にあげて霊夢さんを見る。

初めてだ。俺の苦労を褒めてくれた人は。

 

「そうね、少なくともその該当者がこの幻想郷に踏み入ることはあり得ないし、踏み入ったとしても絶対に出て行かせるわ。正直、そんな人たちよりも天津君の方が良いわ」

「ありがとう…ございます」

「って、何泣いてるのよ」

「…初めてです。頼られたのも、褒められたのも」

「本当に、壮絶な人生を送っていたのね」

 

と言いながら霊夢さんは俺の頭をなでる。

頬をつたう涙を手でふき取ると共に呼吸する。

霊夢さんが撫でるたびに、俺の中で燃え上っている憎悪が少しずつ鎮火されていく。

 

「ふふっ、やっぱり天津君のことを気に入ってるのね?」

「…能力もそうだけど、こんなに人にやさしいのも稀よ。そんな優しさを無下にするほど私も堕ちてないわ」

「これが外の世界で言うツンデレというものかしら?」

 

急に紫さんの頭部に霊夢さんは勾玉を叩きつける。

…なんか『メギャア』って骨の音が聞こえた気がしたんだが。

 

「天津は気にしなくていいわ、紫は丈夫だから」

「暴力巫女~!」

「めっちゃ不服そうですけど」

「いつも通りね」

 

そうして俺を挟んでの言い争いは…どういうわけか霊夢さんが俺を撫でて、俺が紫さんを撫でるというよく分からない形で終息した。

本当に、何でこうなったんだろうな。

 

「…そういえば天津はこれからどうするの?」

「何も決めてません…予定らしい予定もないですし、前の紅魔館も魔理沙さんの付き添いでしたから」

「そうよねぇ…それに今、天津が紅魔館に行ったら当分は帰ってこれなさそうだし」

「な、何故です?」

「フランに気に入られてるし、レミリアも自分たちの為に戦った天津に対して恩を感じてると思うの。絶対に泊まらせるし、絶対に帰ってこれなくなる」

「は、はぁ…?」

 

話の内容が良くつかめないまま霊夢さんは淡々と話し続ける。

 

「なら、最初に人里に行ってみたらどうかしら」

 

紫さんが意見を出す。

人里…確か、早苗さんから聞いた情報によると人の集落って聞いたぞ。

 

「大丈夫かしら」

「あそこなら別に人間に敵対している妖怪は少ないし、最初に行く場所にしては結構丁度いいと思うけど。それに天津君は結構強いし」

「…」

 

霊夢さんも反論する意見が無いようで黙り込んでしまった。

なお、俺を撫でる手をやめていない。

とりあえず、俺の次の行く先が決まった。

人里…幻想郷にある人の集落。

いったい、どんな場所なのだろうか。

 




皆様、こんにちは。
作者の「Ohagi」です。
結構な話数を書いてきたので…一旦、アンケートの事の話をしておきます。
とりあえず個人話の追加は確定とさせていただきますが…もう少し登場人物との掛け合い及び関係が深まり次第追加という形を取りますので、個人話の投稿はもう少し先となります。申し訳ありません。
では報告はこれくらいとして、また次の話が投稿されるまで気長にお待ちください。
感想も待っています~。

キャラクターとの幕間のような話を作成するのはアリ?ナシ?気軽にお願いします。

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