忘れ去られたい青年の幻想入り   作:ohagi57

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青年は幻想郷の住民と成る

「よし」

 

お賽銭も投げたし、鐘も鳴らした。

ついでに願いも口に出したし…何とかなるだろ。

なんて思いつつ、駅に向かって歩こうと後ろを振り向いた。

 

「―――へ?」

 

そこには、巫女…いや巫女か?

なんというか恰好が、俺が知っている格好とかけ離れてるし…わ、脇が出てるんだがそういう物なのか?

てか、何でそんなに目が輝いているんだ?と様々な疑問が頭の中を襲い掛かってくる。

 

「貴方今お賽銭したわよね?」

「え、えぇ…」

「いくら」

「え」

「いくら入れたの?」

「ご、五百円ですが…」

 

そう告げるといつの間にかその巫女は賽銭箱の方に移っていた。

な、何だこの人…てか、ここ何処だ?

空は雪も降ってないし、日も出ていて夜じゃない。

てか、あっつ!!

俺はコートと手袋、ネックウォーマーを脱ぐ。

何か、色々とおかしいな。

 

「あの子はいつもあんな感じなのよ。御免なさいね?」

「え?あっはい…」

 

今度は紫色のドレスを身に着け、日傘…日傘か?

随分と立派な傘をさしている女性が現れた。雰囲気で言うならミステリアス。

その一言に尽きる。

 

「…どうしたの?」

「いえ、綺麗だな…と」

「うふふ、ありがとう。お世辞でも嬉しいわ」

 

いやお世辞でも何でもなく滅茶苦茶綺麗なんだがな。

 

「霊夢、それでどうするの?」

「本当に五百円…!」

 

霊夢っていうのかあの巫女さんは。

その霊夢って人は俺の投げた五百円玉を両手で持って掲げているが…そんなにうれしいのか。てかお賽銭って巫女の物になるのか、知らなかった。

 

「えっと、霊夢さん?」

「はっ!?ごめん…」

 

俺が声をかけると霊夢さんは正気に戻ったようで、五百円玉を懐にしまったのち俺を見た。

 

「あなたは外来人。そうね?」

「が、外来人?外来人って?」

「…まずここが何処か話した方がよさそうね」

 

その霊夢さんは一呼吸入れてからここが何なのかを話し始めた。

 

「ここは幻想郷。忘れ去られたもの達が暮らす世界、外界から隔離された忘却者たちの楽園よ」

「わ、忘れ去られた?」

「本来はね。ただ偶に結界の隙間や何らかの影響で外の世界から人が分かってくる可能性があるの。それでわたってきた人を」

「外来人って言うんですね」

「理解が早くて助かるわ」

 

なるほど。

俺は何らかの影響でこの『幻想郷』って場所に流れ着いたのか。

てか、忘れ去られたって…。

 

「とにかく、今は外に帰らせないといけないのついてき」

「嫌です!!」

「!?」

「えっ?」

「帰りたく…ないです…!」

 

俺の声に二人は驚く声をあげる。

忘れ去られた場所なら、ここに居れば俺は少なくとも安全というわけだ。

…あんな場所に帰るくらいなら、ここで忘れ去られた方がマシだ。

 

「何がアンタをそこまで…」

「でも、そうも言ってられないわ。ここは」

「危険なんですか?」

「え、えぇ。そうね」

「なら…この場で俺を殺してください」

「はぁっ!?」

「ちょ、ちょっと待って!」

「それくらい、俺は…外に戻りたくないんです」

 

あんな場所に帰るくらいなら命を落としたってかまわない。

 

「…それ相応の覚悟があるようね」

「何があったの…外で」

「あまり言える話じゃありませんが…」

 

俺は霊夢さんと紫色のドレスを着ている二人に帰りたくない理由を話した。

 

―――

 

「…そんなことが」

「しかも、親にって…」

「…言い方が悪いかもしれませんが、俺は外にも内にも生きて行けるような場所がないんです。それなら、いっその事『幻想郷』に住めばいいって思ってるんです」

 

俺の言葉に二人はうんうんと唸りながら一つの結論を出した。

 

「まず、貴方の名前は」

「天津です。苗字は言いたくありません」

「そういうレベルなのね…貴方の処遇なんだけど。一旦は幻想郷で暮らしていい事にするわ。外来人としてではなく、幻想郷の住民として」

「!」

「…というより、そもそも帰すことが出来ないのよね」

「?」

 

俺が帰すことが出来ない事を質問しようとしたが、先に紫色のドレスを着ている女性が話してくれた。

 

「信じられるかわからないけど、私には能力があるの」

「能力?」

「『境界を操る程度の能力』…いわば外と幻想郷を繋げることも出来るし、他の場所も出来る。ただ天津君が来る前に能力に一瞬のノイズが走ったの。そのせいで貴方はここに来た…もし、今ここでもう一度使っても貴方を無事に帰す事が出来るのか分からないわ」

「…不安定ってことですよね」

「その通りよ」

「次に私の方からも」

 

次に霊夢さんが話し始めた。

 

「私も幻想郷の結界を緩めて貴方だけを外に戻すことは可能だけど…ちょっと危険すぎるわ。その緩めたタイミングで他の外来人が来る可能性もある、だから帰せない」

「そういう、ことなんですね」

 

とは言いつつも聞いたこともない単語ばかりだ。

『能力』に『結界』。

あの時の生活でも聞いたこともない単語だし、結界とかってもっと昔のおとぎ話とかでしか聞いた事がない。

…そういう世界なのか、幻想郷って。

 

「今は帰せないけど、貴方は帰る気がない。そういう解釈でいいのよね?」

「…はい」

「だからこそ、幻想郷での生活を認めるわ」

「ありがとうございます…!」

 

俺は深々と二人にお辞儀をする。

 

「ちょっと、別にそこまでしなくても」

「…これくらいするくらい、嬉しいんです」

 

顔を上げると、紫色のドレスを着ている人は何か顔を若干しかめてるし、霊夢さんの方も驚いている表情をしていた。

 

「ところで、お二人の名前は?」

「あぁ自己紹介をしてなかったわね…私は博麗霊夢。この博麗神社に住まう貧乏巫女よ」

「…」

「何よ、その目は」

「あぁ、いや…」

 

俺の中にあった巫女の姿が若干崩れた。

まぁ…うん。幻想郷と外は違うよな。

 

「それで私は八雲紫よ。幻想郷の創造者であり、管理者みたいなものよ」

「す、凄いですね。まるで神様みたいな」

「神様…良いわね」

 

いいのかそれは、よく分からないが。

 

「それで…アンタはこれからどうするの?」

「…どうすれば?」

「はぁ…とりあえず、一旦はここに住みなさい」

「い、良いんですか?」

「いいけど、仕事を手伝ってもらうわよ」

「勿論です。こき使ってください」

 

俺からしたら願ったりかなったりなんだが…この博麗神社に住まわせてもらう事になった。

しかも働けるおまけつき。

お金は…出ないかもしれないけど、俺からしたら十分だ。

安心できる場所で生活できるだけで。

 

「あと天津を見たときに思ったけど」

「?」

「アンタ…デカいわね」

「え?」

 

あぁ、身長か。

もう20歳を越えてるし、身長はこれ以上伸びることはないが…俺は背が185㎝ある。

それに対して霊夢さんは160くらいか?首を下に曲げると、見える。

 

「確かにね。今の外の住民ははこれくらい大きいのかしら」

「俺より大きいのも全然いますよ」

「怖」

「何で…?」

 

俺の背の話で霊夢さんは恐怖を得たようだ。

…確かにこの人たちからしたらこんな背の大きい奴は怖いのか。

 

「それと、外から何を持ってきたの?」

「えっと、洋服に下着に、パソコンにホッカイロに菓子パンに」

「ちょ、ちょっと待って…後半が分からない」

「…」

 

あー…今、スマホを見て気が付いた。

電波外。多分、この幻想郷には電化製品がない。

神社にも、周囲にも電柱やらなんやらがない。ちょっと不便かもな。

 

「パソコンは説明が難しいですけど…ホッカイロは簡単に暖を取れる物で、菓子パンは食べ物」

「食べ物!?」

「そ、そんなに目を輝かせなくても…」

 

う、うん…さっき霊夢さんが貧乏巫女って言ってた理由を理解した。

食べ物すらなかったのか。

 

「そ、その…天津?」

「食べたいんですよね」

「うん」

「いいですよ。というか食べてもいいんですか?幻想郷じゃない世界の食べ物ですよ」

「美味しきればいいのよ」

「つ、強いっすね…」

 

何て驚きつつ、俺はリュックの中からスティックパンが6本入っている菓子パンを取り出した。

そして、封を開けて霊夢さんに手渡す。

 

「どうぞ」

「頂きます!」

 

そういって霊夢さんはパクッと菓子パンを食べた。

 

「お、おいひい…!」

「な、泣いてる…!?」

 

そして泣いた。

そこまで食ってなかったのかよ。

 

「紫さんもどうですか?」

「あら、なら頂くわ」

 

紫さんにも菓子パンを手渡し、三人で菓子パンをパクパクと食べ始めた。

うん、美味い。

味気ないかもしれないが、俺にとっては勝利の美酒ならぬ勝利の菓子パン。

この味が俺に勝利の味を教えてくれる。

 

「本当に美味しいわね」

「幻想郷にパンってないんですか?」

「パンね…もしかしたら紅魔館にあるかも」

「こ、こう…?」

「紅魔館。あそこには吸血鬼姉妹が住んでるしね」

 

吸血鬼…え、マジ?

すごいな幻想郷。危険とは聞いたけど…あの世界じゃ聞かない生命体が存在するのか。

何かもう逆にわくわくしてきた。

 

「天津?」

「なんかワクワクしてきました」

「えぇ…?」

「吸血鬼なんて物語で聞いた限りだったので、ちょっと」

「なるほどね、それなら私も妖怪よ?」

「はい!?」

 

とんでもねぇカミングアウトを紫さんから言われた。

 

「よ、妖怪…何ですか?」

「えぇ、そうよ」

「こ、こんなに綺麗な人が!?」

「あら嬉しい」

「何言ってるのよ天津…」

「外の世界でも妖怪の話とかはありましたけど、結構悍ましい姿でしか聞いたことが無いので」

「へぇ?どんなの?」

「そうですねぇ…」

 

そういって俺はリュックに入っていた菓子パンやお菓子、ついでに霊夢さんが入れてくれたお茶を飲みながら雑談をした。

といっても中身は俺の外の世界の話。

どんな世界なのか、どんなものがあるのか、この菓子パンの作り方とか。

そうやって雑談をしながら時間を潰していった。

 

(久しぶりだ。こんなに、会話が弾んで…こんなに優しい時間を噛み締められるなんて)

 

それと、霊夢さんの入れてくれたお茶はちょっぴり薄かった。

本人曰く、何回か使った後の茶葉とのこと。

…ちょっと不安になってきたがそれは秘密だ。

 

キャラクターとの幕間のような話を作成するのはアリ?ナシ?気軽にお願いします。

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