忘れ去られたい青年の幻想入り   作:ohagi57

5 / 15
フランドールとの出会い、高揚する心

地下を一人で進む。

薄暗く、妙に寒気を感じる。

壁に付いている蝋燭の火が唯一の明かりだが…逆に明かりがそれしかないせいで、恐怖心を煽られてる気がする。

…というか道が合ってない気がしてきた。

いや、もう地下に足を踏み入れた時点でそんな気はしていたが。

何なら上に戻りたいが、道が分からなくなった。

 

「ここは何処だ」

 

なんて歩いていると

 

――…~♬。

 

「ん?」

 

俺が今、歩いている方向から鼻歌が聞こえてくる。

誰か地下に居るのか?

なら話が早いな、ちょっと地下からの脱出方法を聞きたい。

俺はその鼻歌が聞こえる方に足を進める。

やがて…地下室に似合わない装飾がされている扉が現れた。

というかこの扉の周りだけ、物凄く綺麗だな。

…とりあえずノックするか。

俺はこの扉をノックする。

 

『だれ?』

「…」

 

中から少女の声が聞こえてきたが…これって名乗っていいのか?

言い方はアレかもしれないが、今の俺って不法侵入者な気がするんだが。

いや、でも名乗っておくか。

 

「最近、幻想郷入りした天津って言います」

『あまつ…』

「その、今大図書館が何処にあるのか分からなくて歩き回っているのですが…大図書館は何処に?」

『大図書館は地下にはないよ。それでなんで大図書館を探しているの?』

「魔理沙さんが大図書館に用があって、それの付き添いです」

 

と扉を挟んで会話していると扉が開き

 

「こんにちは」

「あ、あぁ…こんにちは」

 

金髪でフリフリのドレスに…背中から枝のようなものが生え、その枝に美しい結晶のようなものが付けられた翼が生えた美少女が姿を見せた。

そういえば紅魔館には吸血鬼とか悪魔がいるって聞いたけど、もしかしてこの子もその類なのか?

何て考えていると

 

「ねぇ、天津」

「ん?」

「今って暇?」

 

急に名前を呼ばれ、暇なのかと聞いてきた。

 

「暇って言っていいのか分からないが、暇と言えば暇だと思う」

「なら私と遊ぼう?」

「俺がか?」

 

この少女は俺と遊びたいらしい。

いったいどういう理由でかは分からないが…別にいいか。

 

「いいぞ。それと君の名前は?」

「フランドール・スカーレット」

 

おぉう…名前が長いな。

まぁ顔たちから思ったが日本人っぽい顔つきじゃないなとは思っていた。

 

「みんなからは何て言われてるんだ?」

「フランってよく言われてる」

「なら俺もフランちゃんって呼ぶか。それで…何して遊ぶんだ?」

 

そう聞くと

 

「弾幕ごっこで遊びたい」

 

と言われた。

 

「弾幕ごっこ?」

 

俺は聞いたことのない遊びで頭の中が混乱した。

俺が知らないだけでこんな遊びがあったのかと混乱しつつ、一旦その遊びを承諾した。

次の瞬間

 

――ドォォォォォンッ!!

 

「がはっ!?」

 

視界内が真っ赤に染まったと同時に俺の身体が吹き飛び、壁に背中から激突した後、壁をぶち破り広い場所に出ると同時に肺の中の空気が一気に外に吐き出された。

 

「いってぇ…!」

 

瓦礫を振り払い、痛みに耐えていると目の前から赤色の波動が此方に向かって迫ってくる。

それを横に回避する。

 

「わ、避けた!ってどうしたの?」

 

恐らくさっきの波動を撃ってきたフランが奥から入ってくる。

フランは心底不思議そうに聞いてきた。

 

「…いや、何でもない!」

「分かった。じゃあ次!」

 

俺はその疑問に対して何の不服が無いようにふるまいフランを見る。

フランは次の弾幕を俺を目掛けて放ってくる。赤、青、緑とまるで花火のように光線が周囲に放たれる。

見た限りでは物凄くきれいなのだが…さっきの衝撃を考えると一発で死に絶える。

…多分、これが『弾幕ごっこ』って奴なのだろう。

うん、まぁ命の危険があることは十分に分かった。

ただ、それと同時に疑問点があった。

 

(普通…死ぬよな。ここまで吹き飛んだら)

 

俺は…物凄い距離を吹き飛ばされて、背中に衝撃を味わった。

いわば高所から飛び降りて背中から落ちた時と同じような感じ。

それでも…俺の身体には傷が無かった。骨折、内出血、痣…そのどれもなく、しいて言うなら擦り傷が少々くらい。

…幻想郷に来て、俺の身体にも何らかの影響が出たと考えてもいいかもな。

 

「くっ!」

 

それにしても…すっげぇ密度の高い弾幕!

避けるのに一苦労だぞ!?

 

「アハハハッ!!すごいすごい!」

 

それに対してフランはめっちゃ喜んでいる。

喜んでいるが…!あの弾を喰らったら死ぬと考えると恐ろしい。

てか、この弾幕ごっこの終点は何!?

 

「フラン…ちゃん!」

「なぁに?」

「この弾幕ごっこの終わりってどこだ?てか、どうやって勝敗を決めるんだ!?」

「うーん…?私が満足したら!」

「わかっ…た!」

 

要は終点はまだまだ先ってことか!

それさえわかればいい!

とにかく俺はフランの放つ赤と青色の弾幕を何とか回避し続ける。

すると

 

「『禁忌:クランベリートラップ』」

「ん?」

 

フランが何かつぶやいた。

 

(いったい何を?)

 

と考えていたのも束の間。

 

「!!!?」

 

俺の周囲から別の弾幕が放たれ、それが視界一杯に広がる。

 

「しまっ!?」

 

避けられない!?

せめてダメージを減らせるように…俺は地面を蹴り上げて飛んだ。

次の瞬間

 

――ドッゴォォンッ!!

 

「…え…は!?」

 

俺の身体は…はるか上空を舞っていた。

正確にいえばフランよりも、さらに上に飛んでいた。

弾幕を喰らって吹き飛んだのか?いや違う、さっきのとはまた別の…?

 

「凄いね!私よりも上に飛ぶって」

「え、いや…」

 

よく分からないまま上空で対空しているとフランが翼を羽ばたかせ俺と目線を会うようにしてから話しかけてきた。

俺はまだ混乱してるし、なんて答えればいいのか分からない。

 

「よーし、もっと本気でやるね!」

「くっ!?」

 

混乱したまま、弾幕ごっこが再開され、俺は地面へと落下していく。

飛べるようになったと思ったが…これは浮遊ではなく、跳躍だ。

ジャンプしてこの体育館以上の大きさの部屋の天井付近まで飛んだ。

俺の身体に何らかの変化が起きているのは事実だが、何故こんなことが起きているのかが分からない。

まぁ今はこの疑問を捨てよう。

 

――ドッシィィィンッ!!

 

「あの高所から両足で落ちても折れてないのか…まぁ良いか!」

 

俺は近くにあった燭台を持ち上げて、槍を持つかのように構える。

フランの攻撃を避ける、あるいは反らすためには何らかの武器が必要だ。

生身で受けたら死ぬ。

 

「くらえっ!」

「!!」

 

フランの弾幕の雨が再開される。

俺は地面を蹴り上げて、避けるが…!

 

「!?」

 

俺が蹴り上げた地面は抉れ、想像以上の距離を移動した。

ただのステップなのに、凡そ20mくらい移動できた。

…もしかして身体能力か?

明らかに俺の肉体の変化は良い方向で変わっている。

さっきのジャンプと言いステップといい。人間じゃ出来ない距離を移動できている。

 

(一旦、俺の身体能力がとんでもないくらい強化されている事を念頭に置いて…フランの攻撃を回避し続ける。あとこの弾幕ごっこの終点はフランが『満足』すること。俺も…反撃しなきゃな!)

 

燭台を両手で握りしめる。

獲物としてはちょっと心もとないかもしれないが…あるだけで十分だ。

 

(お前が…折れぬ武器だったら嬉しいがな)

 

――ガキン!

 

「…あ?」

 

握りしめた燭台から変な音が鳴った。

今、変な所いじったか?と疑問を持った瞬間

 

「『禁忌:レーヴァテイン』!!」

「!!」

 

フランが握っていた槍…いや剣か?

恐らく剣だ。そこから赤色の刀身が現れた。

ただの刀身ならよかったが…幾らなんでも長すぎないか!?

俺の何十倍も長い!アレをくらったら流石に死ぬ!

避けるか…?いやダメだ!例え身体能力が高くてもアレを振り回し続けられたらジリ貧になってお終いだ。

なら…道は一つしかないだろ!

 

――ズオォォォォォ!!!

 

振り下ろされる赤い刀身。

俺はそれを

 

――ガキィィンッ!!

 

燭台の腹の部分で受け止めた。

 

「ぐっ!?」

 

衝撃が両腕から伝播するが…受け止められた!

想像以上にこの建物の燭台は頑丈のようだ。

あと俺の両腕はあの圧力に耐えうる両腕に変わったようだ。

正直、肉体の変化にも驚いているが…!

 

「!!」

 

燭台で赤い刀身を横に弾き、横にステップし、地面に着地したと同時に地面を蹴り上げてフランの元へ向かう。

 

「!?」

 

流石のフランも驚いた表情をしている。

俺だってそうさ、こんなに俺の身体が動くこともそうだが…!

 

(すっげぇ楽しい!)

 

こんなにも心が高揚してるなんて。

…俺の振り下ろした燭台はフランの持つ剣に受け止められた。

 

「凄いね、天津」

「ありがとう。それとフラン、もう一度聞いていいか?」

「なぁに?」

「『楽しい』か?」

「勿論!だってどれだけ弾幕を撃っても壊れないもん!」

 

俺はフランに『楽しい』のかを聞いてみた。

勿論と即答し、屈託のない満面な笑顔を見て嘘はついていないことを確信しつつ内心すこし安心した。

遊びっていうのは遊ぶ者同士が楽しくないといけないって聞いた覚えがある。

…俺には遠い話だったがな。遊ぶことも、友達も自由に決められなかった。

楽しくもない遊び、関わりたくもない人ばかりで嫌になっていたが…今ははっきりといえる。

 

「なら…良かった!」

 

命がかかわっているかもしれないが…『弾幕ごっこ』って超絶楽しいな!

今まで遊びという形式にとらわれたくだらない物ばかりだったが…これは楽しい!

もう俺は成人しているのに、童心を取り戻したかのようだ…!

自然と笑みが零れる。

 

「もっと…もぉっと遊ぼう?」

「言われるまでもない、もっと俺と遊ぼう!」

「い、いいの?」

「勿論。『壊れるまで』…は流石にやめてほしいけど、『壊れるくらいまで』なら遊んでもいい」

「!」

「それくらい俺も満足してるってことだ!」

 

燭台とレーヴァテインが火花を散らしながらぶつかり合う。

 

「分かった!なら私ももっと本気を出すね?」

「あぁ、頼む。俺も出来る限りは本気で立ち向かおう!」

 

鍔迫り合いからお互いに距離を取り、俺は地面に向かって落下しつつフランを見て居た。

 

(すっげぇ可愛い笑顔だな、まるで人形みたいだ)

 

初めて見たときの表情とは全然違う。

あの扉の向こうにいたフランはちょっと寂しそうな、つまらなそうな表情をしていた。

けど、今は違う。

俺と同じで『楽しい』と思いながら笑っている。

…その笑顔のフランが視界内に四人写ったのを見たとき一瞬ぎょっとなったが、知ったことか。

 

「上等…!人数が増えれば…楽しさはその分倍増だろうからなぁ!!」

 

俺は燭台を握りしめフランの弾幕をよけながら正面から突撃する。

そうして、改めて楽しい楽しい『弾幕ごっこ』が幕をあげた。




誤字脱字報告含め、感想をいつでも待っています…!

キャラクターとの幕間のような話を作成するのはアリ?ナシ?気軽にお願いします。

  • アリ
  • ナシ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。