忘れ去られたい青年の幻想入り   作:ohagi57

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遊び友達

「遅いわね、天津は何処に行ったのかしら」

「霊夢が置いて言ったせいだろ」

「我先にと紅魔館に突撃したのは魔理沙じゃない」

「…いい加減、無許可で紅魔館に来るのはやめてほしいのだけど?」

「どうせ暇だろ?」

「…暇だったけど」

 

紅茶を嗜みながら霊夢と魔理沙と会話する紅魔館の主『レミリア・スカーレット』。

フランドール・スカーレットの姉であり、吸血鬼。

フラン同様、背中に翼が生えており、レミリアの翼はどちらかというと蝙蝠のような感じで如何にも吸血鬼らしい見た目である。

あとカリスマ。

 

「いい加減、気になったのだけど『天津』って誰なの?」

「最近、幻想郷入りした外の世界の住民よ。凄いわよ?料理は美味しいし、働き者で」

「霊夢よりもな」

「魔理沙?」

「事実だろ」

「ふぅん?」

 

紅茶のカップを戻し、レミリアは2人の話に耳を傾ける。

 

「人間よね」

「えぇそうね、デカイけど」

「デカイ?」

「私や魔理沙よりも遥かに大きいわ。普通に見上げるくらい」

「確かに、多分咲夜と美鈴よりもデカイんじゃないか?」

「そ、そんなに大きい人間がいるの?」

 

レミリアはそんなに大きい人が幻想郷入りしたのかと思っていたら、コンコンと扉が鳴る。

 

『レミリアお嬢様、咲夜です』

「入りなさい」

「失礼します」

 

入室の許諾を与えると、扉が開き銀髪で太ももにナイフが装備されたメイドが入ってきた。

彼女は『十六夜咲夜』。紅魔館のメイド長であり、時間を操る程度の能力を持つ。

なお、人間である。

 

「紅茶のおかわりです。お入れしても?」

「えぇ、お願いするわ」

「かしこまりました」

「咲夜、私にも」

「私も」

「…貴方達はいつまでここに居るのよ。お客様というよりも侵入者よ?それに進入してから、もう陽も落ちてきているし」

 

レミリアのカップに紅茶を入れつつ、霊夢と魔理沙の対応も同時に行う。

まさに完璧なメイド。

 

「だって天津が来ないし」

「天津?」

「最近、幻想郷入りした外の世界の住民よ。多分…紅魔館の中で迷ってると思うけど」

「はぁ…なら私が探してくるわ。美鈴も寝てたしね」

「またか」

「またなのね」

 

咲夜はため息をつきつつ、霊夢と魔理沙ともう1人の天津を探しに行こうと懐中時計を取り出したと同時に、扉が開く。

 

「お姉様~!」

「フラン?」

 

レミリアの妹であるフランドール・スカーレットが現れた。

咲夜は懐中時計を1度懐にしまい、フランの対応をしようとした。

 

「あ、霊夢と魔理沙もいる!」

「フラン、珍しいわね。どうしたの?」

 

と問いかけた。

 

「ね、天津!霊夢と魔理沙が居たよ?」

「あぁ…ありがとう」

「「!!?」」

 

今度はフランの後ろから遥かに大きい大男が現れた。

その大男は身体中焦げだらけで、何故か傷一つ無い蝋燭の燭台を握り締めていた。

 

「天津、どこいってたんだよ」

「二人が俺を置いていきましたよね!?」

「そうだったかしら」

「そうでしたよ…」

 

大男こと天津は自身を置いていった霊夢と魔理沙に不満を話す。

 

「どこ行ってたんだ?」

「迷って地下に行って、このフランちゃんと弾幕ごっこを」

「「「はぁ!?」」」

「!!?」

 

天津の回答に霊夢、魔理沙、レミリアが声を上げ、咲夜は何を言ってるんだと驚いていた。

そうして天津は何があったのかを隅々まで話した。

迷って地下に行き、鼻歌が聞こえ、その方向にフランが居て、道案内をお願いした時に遊ぶ事になり、今の今までずっと弾幕ごっこをしていた事を。

 

「…よく耐えれたわね」

「この燭台と身体の変化のお陰ですけどね」

「しょ、燭台?」

「フランお嬢様、本当ですか?」

「うん!天津がいーっぱい遊んでくれて楽しかった!」

 

フランが言ったからこそ信用せざる負えないが、人間がフランの攻撃に耐えてしかも満足させるという現実とは思えない事象に流石のレミリアも驚いていた。

 

「ねぇ、天津」

「うん?」

「また今度も」

 

フランはまた天津と遊びたいことを話そうとした。

しかし

 

「ストップ」

 

天津はその言葉を止めた。

 

「え?」

「その言葉は俺から言わせて欲しい。先に誘われたのは俺だしな」

 

そう言いながら天津は膝を折り、座り込みつつフランと目線を合わせる。

 

「まずは一緒に遊んでくれてありがとう。正直…外でもこんな楽しいことが無かったからな」

「いや…天津?そこまで言わなくても」

「事実だ」

「え?」

「俺の世界にはこんなに楽しい物はなかった」

 

魔理沙が天津にお世辞は言わない方がいいと言おうとしたが、天津自身がそれを止めて否定した。

 

「ずっと親の言う事を聞かされ、友達も、遊びも全て支配されたまま生きてきたんだ。下らねぇ娯楽や全く話したくもない奴とも話してきた俺にとって弾幕ごっこは心から楽しめる遊びだった。それは事実だ、嘘偽りない」

「本当、か?」

「あぁ」

 

即答と同時に魔理沙を含め全員が天津の瞳から光りが消えたのを確認し、本当の話だと直感で理解した。

 

「私も、495年間ずっと地下に閉じこもってたから。今はそういうのは全然ないけど…」

「…うん、まぁ人間じゃないよなとは思ってたりしたけど、かなりの時間を地下で過ごしたんだな」

 

ある意味、フランと天津は似ている。

外に出たくない、出れたとしても支配されているまま。

遊べるが、管理されている。

お互いに『何のために生きているのか』が分かっていなかった。

 

「心から楽しめるのが初めてで物凄く嬉しかった。本当にありがとう、フランちゃん」

「うん!」

「だから…今度は俺から誘う」

 

天津はフランに手を伸ばす。

 

「また遊べる時が来たら、俺と遊んでくれるか?」

「!!」

「俺は弾幕ごっこの事は全然知らないが…それでも良ければ、だけどね」

 

そういいながら天津は苦笑いしながら小さく微笑む。

天津にとって、この弾幕ごっこは初めて楽しいと感じた遊びであり、今のところ一番楽しい遊びだ。同時にそれを教えてくれたフランに対しては感謝しかない。

フランにとっては弾幕ごっこが大好きで、色々な人に誘ってはいるがフランの弾幕ごっこは本気で殺しに行くレベルで危険なので誘いに答えてくれるのは紅魔館にいる一部の関係者やレミリアや咲夜、霊夢、魔理沙が殆ど。

だが今回の天津との弾幕ごっこでフランは満足した。天津は弾幕こそ撃ってこないが奇想天外な動きや想定外の動きをしてきて、距離を詰めてくる。

明らかに他とは違う動きをしてきて、楽しめる。

更に…今、目の前にいる青年はいつも遊びに誘う少女を逆に遊びに誘ってくれているのだ。

 

「いいの?」

「それは俺のセリフだぞ。俺は弾幕は撃てないし、弾幕ごっこのことも全く理解してないけど…初めてなんだ。こんな気楽に遊びに誘うとかさ。生きてて友達なんて一人も居なかったし」

「!!」

 

伸ばしていない方の手で頬をぽりぽりとかく、天津。

 

「まぁ…もう一回聞くがどうか」

 

と天津が言いかけた瞬間

 

――ドゴォッ!!

 

「ぶっっ!?」

 

フランは勢いよく天津の伸ばした手を握らず、そのまま天津の胸に飛び込みぎゅっと抱き着いた。

 

「ありがとうお兄様!」

「お、おに…?がぁぁぁぁ…!?」

 

お兄様という単語に驚く天津だったが、胸から広がった衝撃のダメージに反応が出来なかった。

そんなこともつゆ知らず、フランは天津の胸板辺りに頭をこすりつけている。

 

ーーー

 

何とかフランが天津の胸元から離れ、フランはレミリアの隣の椅子に座ったが…当の天津は未だにダメージを喰らっていた。

 

「いってぇ…!」

 

胸元に手を添えながら、何とか痛みを和らげようと摩っている。

 

「大丈夫か天津」

「ダイジョバナイ」

「ダメみたいだな」

 

魔理沙が天津に問いかけるがダメそうでもはやお手上げみたいなポーズをとった。

 

「それにしてもよく焦げたくらいで生き残ったわね。凄いわよ?フランとの弾幕ごっこで五体満足で帰ってくる人間って」

「霊夢さんも人間ですよね?」

「私は巫女だから」

「どういう事…?」

 

意味の分からない持論を展開され、天津は混乱する。

 

「どうぞ、紅茶です」

「あぁ…すみません、ありがとうございます」

 

すると、咲夜が天津用の紅茶を淹れ、天津の傍の机に置いた。

それを天津は受け取り、カップから紅茶を飲む。

 

「お…美味しい…!」

「よかったです」

「凄いですね、これ」

「ふふっ、咲夜の紅茶はいつでも美味しいから」

「…」

 

ここで初めて、天津はレミリアを見た。

フランとそっくり、翼が生えている、似ている服装。

 

「えーっと、フランちゃんの…」

「私はレミリア・スカーレット。紅魔館の主であり、フランの姉よ」

「…」

 

それを聞いた天津は急に椅子から立ち上がり、レミリアの目の前に行き、その場で座り込み。

 

「お騒がせして申し訳ありませんでした…」

「!?」

 

そのままジャパニーズ=DOGEZA☆。

これははるか昔からある日本流の謝罪のアイサツ。

古事記にもそう書いてある。

 

「何なりと罰をお与えください、ですが命だけは…!」

「…別にそこまでしなくていいわ。謝罪の気持ちは十分に伝わったから」

「…」

 

頑なに動こうとしない天津。

 

「…フランと遊んでくれただけで満足よ。良いから顔をあげて頂戴」

「はい」

「それで、貴方が天津よね」

「その通りです、レミリアさん」

 

正座しながらレミリアの話を聞く、天津。

 

「…まぁその行動で何処かの二人とは違うってことはよく分かったわ」

「は、はぁ…」

「今は…何処に住んでいるのかしら」

「今は博麗神社に住んでいます」

「えぇ、霊夢から聞いたけど本当のようね。それでなのだけれど…良かったら今日は泊まっていかないかしら」

「へ?」

 

レミリアの提案に天津は素っ頓狂な声をだし、きょとんとする。

 

「な、何故です?」

「そうね。まずはフランと遊んでくれた、そのお礼ね。最近は幻想郷は暇でフランもずっと地下で過ごしていたの。その退屈潰しのお礼よ」

「は、はぁ…」

 

天津は先程、フランと一緒に弾幕ごっこで遊んだ。

本人は楽しかったがよくよく考え直してみると…容赦ない弾幕、一撃死の弾幕、人を容易く吹き飛ばす威力。

下手したら俺死んでたんじゃ?と改めて恐怖を感じていた。

 

「もうひとつは折角だし、貴方の話を聞きたいわ」

「俺の、ですか?」

「えぇ、外の世界にはどんな物があるのかが気になるわ」

「そ、それくらいなら構いませんが…」

 

天津はレミリアに外の世界の話をすることを承諾し、同時に泊まることも承諾した。

と、同時に

 

「待って?今日の私の夕飯はどうすればいいの?」

 

霊夢が天津に問う。

忘れてはいけないのは天津が幻想郷に来てからまだ1日しか経っていないが、霊夢のご飯を作っているのは天津。

その天津が紅魔館に泊まるということは…。

 

「あー…レミリアさん?」

「何かしら」

「一旦、帰っても?」

「何故かしら」

「霊夢さんのご飯を作らないと」

「えーっ…天津、帰っちゃうの?」

「ウウッ!?」

 

天津が霊夢のご飯を作りに帰ろうとしたら、その『帰る』という単語に反応したフランが悲しそうに言う。

 

「ウウッ…ウアワァァァ…!!?」

 

それに滅茶苦茶、天津は悩みこんだ。

 

「迷ってるな」

「迷ってるわね」

「天津はどっちを取るのかしら」

 

魔理沙、咲夜、レミリアが天津の様子を見ている。

 

(どうする…!?どうする!?飯か遊びか!?)

 

頭を抱えて発狂1歩手前まで信仰している天津。

 

「…ま、魔理沙さん」

 

すると天津は魔理沙に声をかける。

 

「なんだぜ?」

「俺を2人にできません?」

「流石に無理だぜ」

「ヌアァァァァァァ!!?」

「あ、天津!?」

「アァァアァァァァア!!?」

 

天津は究極の二択を決めきれず、無事…発狂した。

結局…天津は自身の身体に目覚めた身体能力を完全に使い、紅魔館から博麗神社にぶっ飛び、大急ぎで飯を作ってから博麗神社から紅魔館に帰ってきた。

天津は汗だくで倒れた。

 

「ヒィー…コヒューコヒュー…ゴホッゲホッ…」




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