月が上に上がり切ったこの夜。
そんなわけで紅魔館で夕食を頂くことになった。
レミリアさん、フランちゃん、咲夜さん、美鈴さん…それと明らかに悪魔ですっていう角と翼の生えた女性と紫色のパジャマのような服装をした女性が集まった。
…すっげぇ場違い感がすごいんだけど俺。
だって恰好だけで言ったらドレスっぽい服×2、メイド服、中国拳法っぽい服、パジャマ、黒いセーラー服でいいのか…?の計5人。
俺なんかマジでただの私服だぞ。
ただ、時期も時期だったせいで冬服しかなく…何とか腕まくりしたり、ヒートテックを着なかったりと何とかして体温調整をしていた。
なんで幻想郷は春っぽい気温なのか。
まぁ、どうでもいいが。
「では、早速いただきましょう」
「頂きます」
「いただきまーす!」
「め、美鈴さんは大丈夫なんですか?」
俺の左隣に座っている美鈴さんの頭部にはいまだにナイフがぶっ刺さっていた。
何故、抜かない…?
「とにかく、頂いてください。食べながらでも会話は出来ますから」
「は、はい…」
その後ろにいた咲夜さんが『触れるな』と言わんばかりの圧力を放ってくる。
触らぬ神に祟りなし…まさにこの事だろう。
俺は静かに目の前に出された食事に手を付ける。
…というかめっちゃ高級料理っぽい。
これを咲夜さんが作ったという事なのだろう。どんな腕をしているんだ。
とにかく食べるか。
ナイフとフォークを持ち、ステーキを切って頂く。
「ん!」
パクッと食べた瞬間に広がる肉のジューシーな味、柔らかな食感…うん、物凄く美味い。
普通に高級店とかに全然普通に出せる。
「美味しいかしら」
「はい、とても」
「それはよかったわ、流石でしょ?私の咲夜は」
「勿体ないお言葉です」
「それと咲夜、天津の部屋の準備は?」
「既に終わっています」
「流石ね」
俺の後ろで咲夜さんが優雅にお辞儀する。
「…それとパチェ、こあ。天津に自己紹介しなさい」
「…」
「はいー」
レミリアさんがそう呼び掛けるとパジャマの女性と悪魔っぽい女性が反応した。
「パチュリー・ノーレッジ。魔法使いよ」
「魔法使いってことは魔理沙さんと同じですか」
「…えぇそうね。彼女にはいろんな意味でお世話になっているけど」
「いろんな意味で?」
「魔理沙はよく私の大図書館から本を借りていくの」
そういえば魔理沙さんは大図書館で本を借りる…じゃなくて借りパクするつもりで紅魔館に来たんだよな。
…色んな意味ってそういう事か。
「何かあるのかしら?」
「いや…今日、魔理沙さんが博麗神社に来て紅魔館の大図書館に行って本を借りてくって話を聞いてたんですが…返さないんですか?」
「そうね、返したのも片手で数え切れるくらいよ」
どんだけ借りてってるんだ魔理沙さん…俺の居た世界なら出禁だぞ。
「次に私が小悪魔です」
「…それは見てわかりますが」
文字通り自分の事を話しているのかなと疑問に思っていたら
「あー、名前のない小さな悪魔だから『小悪魔』ってことです」
「なるほど…そういうことなんですね」
「普段は紅魔館の大図書館の秘書のようなことをしているの」
つまり、小悪魔さんとパチュリーさんは同じ大図書館で働く…いや過ごしているのか?
…うん、小悪魔さんも魔理沙さんにお世話になってそうだ。
「それで貴方が天津でいいのかしら」
「そうですね。最近に幻想郷に入りました」
「歓迎するとは言わないけど、もし本を借りていくならきちんと言いなさいよ?」
「それは勿論。借りパクは流石に…」
「それが分かっているなら良いわ…それにしても」
「?」
もっきゅもっきゅと野菜を食べて飲み込んだ後、パチュリーさんは言い放った。
「貴方大きいわね」
「何回この話されるんですか俺…」
俺はまた頭を抱える。
もう何番煎じかわからねぇよ…。
「実際大きいですよね、何センチなんです?」
「185㎝です」
「え、確かに大きい…」
小悪魔さんもパチュリーさんと同じ反応をしている。
なんかもうここまでくると、目線が痛い。
「…んん、それで天津。貴方の世界の話を聞きたいのだけど」
「は、はい!」
レミリアさんが軽く咳ばらいをしてから…俺の世界の話を聞きたいと聞いてきた。
「何を聞きたいですか?俺の分かることであれば何でも答えますよ」
「そうね…やっぱりそっちの世界には吸血鬼は居る?」
「…不明、ですね」
「不明?」
「科学的には存在せず、ですが伝説では存在する。なので不明ですね」
「貴方は信じてた?」
「…信じる余裕がなかったですかね」
「ふーん?」
レミリアさんはワイングラスを軽く回してから嗜むかのように飲む。
…凄いな。めっちゃ幼女っぽい見た目でワインを飲んでいる光景。
ちょっとギョッとする。
「あ、ねぇねぇ!今度は私が聞きたい!」
今度は俺の左隣に座ったフランちゃんが手を上げて俺に聞きたいことがあるようだ。
「天津って今までどんなことしてきたの?」
「俺が、か…」
俺は軽く悩んだ。
はっきり言うと、マジで楽しくない話しか話すことが出来ない。
でもまぁ…聞かれたからには話すしかないよな。
「まず…俺が生まれてからやったことは勉強だ」
「べんきょう…?」
「うーん、本とかを読んでその本を理解するって言えばいいのかな」
「楽しくなさそう…」
「あぁ、俺にとっては全くもって楽しくなかったぞ」
軽く微笑みつつ、悪口を交えながら話す。
「基本はずっとその繰り返し、親に決められたレールを通り、脱線すれば傷をつけられ…みたいなつまらない人生を昨日に至るまでずっと繰り返した」
「それって…辛くないの?」
フランちゃんは聞きずらそうに聞いてきた。
「そうだな…俺がそのつらさを知ったのは5歳か。物心が付き始めたことに何で俺は他の人と遊べないのか、何で俺は友達を作っちゃいけないのか、何で俺はって疑問があったけどその疑問を持った瞬間、殴られ、叩かれ、挙句の果てには極寒の日に外に閉じ込められたりもした。それで気が付いたんだよ…辛いってな」
水を飲みつつ、そう話す。
フランちゃんだけではなく、レミリアさんも含めた他の人たちもドン引きしているかのような表情をしていた。
「それから15年。今の俺になって…家から逃げ出した。雪が降り、寒さが身体を刺す…そんな日に家を飛び出して…ここに来た」
「そう…なんだ」
「こんなつまらない日々を繰り返してやっと幻想郷って場所にたどり着いた。そりゃ帰りたくないでしょ?つまらない日々に、辛い日々に」
「うん、フランも嫌だ」
フランちゃんはぷんぷんと怒りながら言った。
495年間も地下で一人だった彼女は俺の気持ちがわかるのだろう。
「そんな日々を過ごしていたのね…人間は一生が短いというのに」
「そうですね。短い人生を棒に振ることもありますけど…こうやってチャンスが転がり込んでくることもありますから」
なんて呟きつつ、食事をいただいていると…。
「天津さん?」
「はい」
次は美鈴さんが話しかけてきた。
「天津さんって能力を持っているんですか?」
「…どうなんでしょうとしか言えないです」
「どういうことです?」
「身体に何らかの影響は出ているんですが、なんの能力なのかすら分かりません」
現状、今の俺の身体に出ている異常は身体能力の飛躍的な上昇。
フランちゃんとの弾幕ごっこもそうだし、紅魔館から博麗神社へ文字通りのひとっ飛び。
1回のジャンプで届く距離に博麗神社は無い。
そんな距離を飛んだんだ。人間には出来ない芸当。
「…それについて、私からもいいかしら」
「咲夜さん?」
すると咲夜さんが軽く手を挙げてから俺に言ってくる。
「貴方が使った燭台。アレなのだけど、フランお嬢様のレーヴァテインに耐えれるような耐久力はないわ。絶対に燭台が溶けます」
「え、でも…」
「はい、それで先程確認してみましたが…傷一つなく私も燭台に軽く攻撃してみましたが…傷が着くことはなく、ナイフが何本か砕けました」
「!!」
「そして…この燭台には何らかの力がつけられていることが分かりました」
咲夜さんが持ってきたのは俺がフランちゃんとの弾幕ごっこで使った燭台だ。
本当に新品かのごとく綺麗だ。
弾幕を弾いたり、飛んできた瓦礫を燭台で破壊したりした筈なのにな。
「身体能力と物に力を与える能力なのかしら」
「そう…なんですかね」
「ちょっと試してみましょうか、咲夜」
「何でしょう、お嬢様」
「天津にナイフを1本貸してみて」
咲夜さんは言われた通りに、俺にナイフを1本貸してくれた。
「それに力を込めれる?」
「これに…」
ナイフを軽く眺めながら悩む。
俺は燭台を握った時に、何を思った?
確か…折れぬ武器になってくれたら嬉しいとかそんな感じに思ったような気がする。
…似たような感じにやってみるか。
「…何でも切れる武器になれ」
そう呟き、ナイフを右手で握ると
――ガキンッ!
「!!」
あの燭台を握りしめた時と同じ音が鳴った。
「今のは?」
「燭台を握りしめた時と同じ音…」
ナイフを見ると…刃の周りに赤いオーラが見える。
「天津、好きに試していいわよ。貴方の能力の布石になるなら」
「わ、かりました」
ナイフを右手に持ち直し、左手で燭台に触れる。
もし、仮に…俺の能力が力を与える能力なら逆もできるんじゃないかって。
俺は左手で力を与えたであろう燭台に触れる。
「力を返してほしい」
そうつぶやくと
――カキン。
と小さく音が鳴り、俺の中に何かが入ってきたかのような感覚を得た。
「…!」
そしてそのままナイフの刃を燭台に軽く当てる。
次の瞬間
――スパッ!
「…は?」
その燭台は紙のごとく綺麗にスパッと切れた。
凄い、断面が綺麗だ。ギザギザに切れたとかそういうのではなく、綺麗に切れている。
「咲夜」
「はい」
「…貸したナイフは燭台すら切れるほど研いでいたの?」
「…もしかしてと思い、一番研がれていない物を渡しました」
「流石、咲夜ね」
レミリアさんと咲夜さんの話を聞くと、俺に渡されたナイフは一番研がれていないナイフだそうだ。
…いやだとしても刃こぼれ一つないんだが。
「ねぇ天津」
「は、はい!」
今度はパチュリーさんに話しかけられた。
「貴方は今、何でも切れる武器になれって言った。逆に切れ味じゃなくて属性は付けられるのかしら」
「属性…」
「例えば、炎を纏う武器になれとか」
なるほど、一理ある。
俺が与えられるのは単純に力なのか。与える力に限りはあるのか。与えられる力に種別や属性、物理のみなのかが気になってきた。
だから俺は右手で握りしめたナイフを見て、呟く。
「炎を纏うナイフと成れ」
そうつぶやくと
――ボァッ!
「わっ!?」
ナイフがみるみるうちに真っ赤に染まっていき…ナイフの周りが歪み始めるとともにナイフの刃先に炎が纏われた。
と同時に
「おっ…と?」
一瞬、視界がぐらっとした。
そのタイミングで美鈴が俺の事を支えてくれた
「ありがとうございます」
「大丈夫ですよ。それよりどうしました?」
「…なんというか、ナイフに力が吸われた気が」
「ナイフに?」
「ふむ…」
「という事は…次の工程で確定するかもね」
「次の?」
レミリア様は俺に食器のフォークを5本、俺に渡してきた。
「炎を纏ったナイフはそのままでこのフォークに力に与えてみて」
「何故…です?」
「力の限度を知る為よ。もし、この能力を知ることが出来れば貴方は幻想郷で暮らしていける力を得ることもできるし、何より弾幕を撃てるようになるかもしれないわよ?」
「弾幕を…」
「えー!お兄様やってやって!」
その弾幕という単語にフランちゃんが反応する。
弾幕ごっこをするためだろう。俺だって弾幕を撃てるようになりたいが…この力の譲渡。
下手したら倒れないか?
「倒れる気でやっていいんですか?」
「勿論よ。その為に咲夜には部屋を準備してもらったから」
最初に話していた部屋の準備っていうのはこの為でもあったってことか。
「なら…やります」
「えぇ、やってみて頂戴」
俺はレミリアさんから五本のフォークを貰い、一呼吸入れてから…呟く。
「折れぬ武器と成れ」
思いっ切りフォークたちを握りこみ、力を与えたと同時に…一気に俺の身体から力が吸われ、無理やり脱力した状態になり
「ぁ…?」
視界が一気に歪んで、前に倒れそうになるが…ギリギリ足を前に出して何とか耐える。
「はぁ…はぁ…俺に力を帰せ」
フォーク、ナイフから俺の力をすべて返してもらったと同時に俺の体力は見る見るうちに回復していき、視界の揺らぎも嘘みたいに無くなった。
「なるほどね…天津が出来るのは力の譲渡と力の回収。そしてそれには限度がある」
「…俺も、今ので確信しました」
「何か掴んだの?」
「視界が揺らいだと同時に、俺の中に…『コスト』みたいなのが浮かんだんです」
何を言っているのか分からないと思うが…俺の中にはコストのようなものがあった。
与える力には限界があり、それと同時に…『与える力が大きければ大きいほどコストが上がる』『与える対象の数が大きければ大きいほどコストが上がる』という作用を掴んだ。
「コスト…ね、今はいくつあるの?」
「今は七割残っています」
「七割?あとの三割は」
「俺の身体能力です」
俺は…フランちゃんとの弾幕ごっこで偶然にもこの力の譲渡を俺に行っていたようだ。
俺の肉体の『超人的な身体能力を得る』という強化で三割。
…いやこれで三割は軽くないか?大体こういうのって6、7割くらいじゃないのかって思うけど。
「…あー、凄いですね。能力を理解した瞬間って」
「やっぱりうれしいの?」
「それもそうだけど…なんというかスカッとしたっていうか」
「それじゃあ改めて…天津、貴方の能力は何かしら」
「俺の能力は…『力を自由自在に操り、与え、調整する程度の能力』…のはずです」
「はず?」
「何か…変に引っ掛かる所があるというか」
うん、俺の能力は力のはず…はずなんだが。
(何で妙に引っ掛かるんだ…?)
何だか変な気持ちになった。
そしてこの後、レミリアさん含めて紅魔館組の全員から外の世界についての質問攻めを受け、無事就寝した。
はずだったんだがな…。
「すぅ…すぅ…」
「どっから入ってきた…!?」
俺よりも大きなベッドで寝ていたら急に寝苦しくなり、目を開け、毛布を上げると…俺の上にフランちゃんがクマの人形を抱えながら寝息をたてながら気持ちよさそうに寝ていた。
キャラクターとの幕間のような話を作成するのはアリ?ナシ?気軽にお願いします。
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アリ
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ナシ