忘れ去られたい青年の幻想入り   作:ohagi57

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話の最後にアンケートがございますので、良かったら解答してくれると嬉しいです。


外来人と憎悪のままに

それから皆で仲良く歩き博麗神社に付こうとしたときに…。

 

「!!」

 

俺は…何かを感じ取った。

 

「天津?」

(…殺意?)

 

俺に対する殺意ではないが…ネガティブな感情を感じ取った。

それに、俺の心が反応するかのように危険信号を鳴らし、同時に…感情が溢れ出ている場所をロックオンした。

 

「…」

 

俺の残りコストはおおよそ4割。

…足りると信じるか。

 

「…俺の右目は全てを見通すことが出来る」

 

俺の右手で右目を覆い隠し、そうつぶやいた。

そして覆っていた右手を退けると…サーモグラフィーかのように周囲の熱源が見えるようになった。

俺の後ろには6人。体温が低いのも居るが…この六人は紅魔館の六人。

次に感情を感じ取った箇所を確認する。

 

(…居る!)

 

身長は俺と同じくらい、体温はやや高め。

感じられる感情は『殺意』のみ。

そして…その感情の矛先は俺ではなく、フランちゃんとレミリアさんのみに向いていることがわかる。

なんでこんな細かく分かるのかは分からないが…狙われているのは確かだ。

 

「レミリアさん」

「なにかしら」

「ちょっと申し訳ないのですが…先に博麗神社に向かってもらってもいいですか?」

「構わないけど…どうしたの?」

「ちょっと急用です。それと咲夜さん」

「はい?」

「日傘の用意を」

「…どうしてですか?」

「先程も言いましたが急用です、先に行ってください」

 

俺の言葉に咲夜さんが頷くと、日傘をさし、その下にレミリアさんとフランちゃんが入った。

それを確認した俺は二人から貸した力を返してもらう。

 

「では、後から博麗神社に向かいます」

「お、お兄様!?」

 

俺は感情が流れ込んでくる方向に向かって駆ける。

 

(…どういう理由かはわからないが、あの二人を狙うんなら容赦はしないぞ)

 

すると、俺が向かってきていることを察知した感情を流す元が逃げていく。

逃げる速度は、俺より少し早いな。身体能力は高め。

 

「身体能力を強化…!」

 

右手で俺の胸元に手を添えて、呟く。

ドクンッ!と心臓が跳ねて、一気に加速する。

 

「くっ!?」

「お前か…!」

 

俺は…感情の元をこの目で捕捉した。

全身黒いコート、帽子を深くかぶり腰辺りにはナイフや釘、後は剣か。

中世っぽい見た目をしているが、幻想郷の人っぽくない。

 

「何者だお前」

「…名を聞くのなら名乗るのが普通じゃないか」

「天津。博麗神社に住まわせてもらってる者だ、お前は?」

「はくれいじんじゃ…?」

「…」

 

今ので確定した。

コイツは幻想郷の住民じゃない。

ある程度の考察だが、レミリアさんを含めた紅魔館の人たちは俺が案内するよりも先に俺の前を歩き博麗神社に向かっていた。

それに霊夢さんは有名人っぽいし、人里で良い意味でも悪い意味でも噂になってるって本人から聞いた。となれば博麗神社の話しくらいは耳に挟んでいるはず。

そして…何よりも恰好が俺に近い。

幻想郷らしくない背丈で服装もどっちかというと現代のに近い。

…多分、コイツは俺と同じ外来人。

であるのなら帰らせる元の世界に帰らせる必要があるが…紫さんと霊夢さんは帰らせるのが難しいって聞いた。

俺と同じように暮らせばいいのかもしれないが、さっきの殺意は明らかに常人じゃ出せないタイプの殺意だ。

…拘束すればいいかもしれないが、俺がコイツを無力化する必要があるのは分かった。

レミリアさんとフランちゃんを狙ったことだ。

もう他人じゃないし、フランちゃんに関しては弾幕ごっこで遊ぶ仲だ。

そんな友達を…狙ったんだぞ、コイツは。

 

「…キール、ヴァンパイアハンターだ」

「!!」

 

コイツの名前を聞き、職業を聞いた瞬間、俺は構えた。

コイツは無力化するんじゃない…殺す。

 

「…殺意、か」

「それはお前もだろう」

「あぁ、どういうわけでここに来たかわからないが…あの姉妹はヴァンパイアなのだろう。なら殺す」

「そうかい…なら俺はそのヴァンパイアと友達だから殺させるわけにはいかないな」

「友人か。ならお前も殺す」

「一応聞くが、何故ヴァンパイアを殺す?」

「…人間ではない生き物に価値はない」

「そうか、じゃあ」

 

と俺は良い止めて、地面を蹴り上げて一気に接近し

 

「友を狙う奴に価値はない!」

 

思いっ切り蹴り上げた。

 

「がはっ!?」

 

――メキバキッ!!

 

蹴りが直撃した肺の部分から骨がきしむ音が響き、男は樹を折りながら吹き飛ぶ。

…何のためらいもなく行けたな。

俺の想像以上に…精神的に変化が起きているのかもな。

それとも…

 

「俺は怒っているのか?」

 

手のひらを見ながらそうつぶやくと

 

「!」

 

吹き飛ばした男の方から何か鋭い物が飛んで来た。

それを右手で受け止める。

 

「矢?」

 

それは矢だった。

ごく普通の矢なのだが、先端が銀色だ。

なるほど、吸血鬼の弱点の中に銀があったな。

…本物のヴァンパイアハンターか。どうしてもファンタジーな職業故に疑いはしたが…信じよう、その殺意も。

 

「ふっ!!」

「今度は剣か」

 

男の方も俺に一気に距離を詰めて来て剣を振り下ろしてくるが、それを白刃取りで受け止める。

 

「…その細身の何処にそんな力があるんだ」

「さぁな?それよりも…話している場合か?」

「!」

「主を傷つける剣と成れ!」

 

白刃取りで受け止めた剣に力を流し込む。

主を傷つける剣。その剣は握っている剣の主を傷つける。

 

「どんな魔法だ…!?」

 

男の手から剣が勝手にすっぽ抜けて、宙を舞いながら襲い掛かっていっている。

生きている剣っていうのは…偶然に見たホラー番組でしか見たことが無かったがこんなに不気味なんだな。

てか、それが出来るなら…!

俺は男が撃った矢を拾い、呟く。

 

「俺の刃と成れ」

 

そうつぶやくと矢はメキメキと音を鳴らし始め、箆の部分が太くなっていき、矢の刃がぐんぐんと伸びて行って…柄の無い剣へと姿を変えた。

…変形するのか、力を与えるって怖いな。

 

「まぁ…使えるなら何でもいいか!」

 

銀製の刃を男に向ける。

まさかヴァンパイアハンターも吸血鬼に特攻の銀の刃を向けられるとは思わなかっただろう。

 

「くっ!」

「ふん!」

 

男の周りを舞っていた剣を左手で掴んで、剣に変えた矢と一緒に切りかかるが…左腕で受け止められる。

この手ごたえ…アーマーっぽいの着こんでるな。

 

「馬鹿…力が!」

「そっちこそ…往生際が悪いな…!」

 

ギリギリと音を立てながら鍔迫り合いが起きる。

 

「もう…いっその事、ヴァンパイアハンターなんて止めればいいんじゃないか…?」

「何だと…?」

「俺だって、元はこの世界の住民じゃない。でも元の世界には帰りたいとは思えないし、こっちの世界がいいと心の底から思ったよ。前の世界の事なんて捨てて、自由に生きればいいんじゃないか?」

「…」

 

俺は男に声をかける。

殺す気で切りかかったが、いっその事ヴァンパイアハンターを辞めさせればこれ以上の傷をお互いに増やすことはない。

 

「…それにお前が狙っていた吸血鬼はそんな悪い奴じゃない。片や部下からも慕われるカリスマ、片や495年間も地下で引きこもっていた吸血鬼…これの何処が危険なんだ?」

「…」

「従者は人間だし、普通に楽しく暮らしてそうだったんだぞ?もうヴァンパイアを殺す事なんて辞めたら」

「お前は何を言ってるんだ」

「は?」

 

俺の言葉を男の声で遮られる。

 

「ヴァンパイアは殺す。絶対にな」

「何がアンタを駆り立てるんだ…?」

「殺すという衝動だ。幸せそうだ?だからなんだ、ヴァンパイアに生まれたのが悪かった、ただそれだけだ」

「生まれたから罪っていうのかお前は…!」

「そうだ…生まれたのが悪い」

「お前は…ヴァンパイアに大切な人や恋人でも殺されたのか?」

 

こういう行動にかられる奴は…何らかの理由で動いてるのが多い。

コイツは、大切な人をヴァンパイアに殺されたのかと考えた。

しかし…。

 

「いいや。ただ殺すだけだ。ヴァンパイアは人間よりも再生能力が高く、故に沢山傷つけられる…サンドバックには丁度いいだろう」

「…は?」

「幸せならそれなりに楽しめそうじゃないか」

 

予想外の発言に、俺は一瞬理解が出来なかった。

コイツは…何を言ってるんだ?

自分自身の任務や仇の為にヴァンパイアを殺していたんじゃないのか?

サンドバックって…要は自分の為か?

しかも幸せそうならそれなりに楽しめそうって…?

 

「…そうかい」

 

理解した。

コイツは…ダメだ。

ヴァンパイアを殺すクズだ。しかも幸せであればあるほど楽しめるという発言に何一つとして尊重も肯定もない。

俺の中に怒りの感情が溢れ出るとともに…『憎悪』が溢れ出す。

やがて、溢れ出した憎悪は俺の口から『紫色の炎』として溢れ出す。

 

「!」

「なら俺が刈り取ってやるよ。お前の楽しみを、お前の命を」

「お前…!?」

「お前が殺してきた分の罪のないヴァンパイアの数、切り刻んでやる」

 

そうつぶやき…俺は

 

「アァァァァァァァ!!!!」

 

咆哮を…上げた。

 

ーーー

 

場所は変わり、博麗神社…ではなく守矢神社。

本来は幻想郷の外にあった守矢神社だが、信仰を得られなかったため神社と共に湖と共に幻想郷に引っ越した。

当初は妖怪の山にある為、人間の参拝はほぼなく、山の妖怪から信仰を得ていたが…索道が完成したおかげで人間の参拝客も訪れるようになり、博麗神社よりも裕福になったらしい。

 

「まさか…ここまで集まるなんて思わなかったわ」

「霊夢さん、人気者ですしね」

「いや皆が暇すぎるだけでしょ」

 

博麗霊夢と同じ巫女である緑髪の巫女『東風谷早苗』がそう話す。

実際に宴会を開くという事を告知したと同時にその話は瞬く間に広がっていき…気が付けば人間だけではなく、妖怪、吸血鬼、魔法使い、魔女、鬼、神等々…多くの人(?)たちが集まり、ここじゃ狭いというわけで守矢神社に移動し、再度宴会はスタートした。

 

「それよりも、霊夢さん!博麗神社で暮らしている外から来た人は何処にいますか!?」

 

早苗は両目を輝かせ、霊夢に問う。

先程のにも言った通り、守矢神社含め早苗も元は外の世界の人間。 

今の外がどんなふうになっているのかは気になっているのだろう。

 

「悪いけど一緒に来たわけじゃないわ。レミリアたちと来るはずだったんだけど」

「だけど?」

「急用ができて、何処かへ走っていったのよ」

 

霊夢と早苗の反対側に座り、ワインを嗜むレミリア。

 

「その急用が分からないのよ、何があったの?」

「私たちもわからないわ」

「うん、お兄様が急にどこかに走っていったの」

「お兄様って…その天津さんって吸血鬼なんですか?」

「違うわよ。フランと弾幕ごっこしてまた遊ぼうって約束したのよ」

「す、凄いですね…はぁ、早く会いたいです」

 

早苗はフランと弾幕ごっこをして、また遊ぼうっていった天津に驚きつつもう興味津々だった。

 

「ま、私たちも飲んでれば勝手に来るわよ」

「霊夢さん、今日は飲みすぎないでくださいね?」

「無茶を言わないでよ。もう博麗神社で萃香とかが飲みまくってたのに私だけ少ししか飲めなかったのよ!?」

「一升瓶を振り回さないでください!」

 

若干、酔いつつある霊夢を何とか止めにかかる早苗。

そこへ

 

――スパンッ!

 

襖が勢いよく開き、⑨こと氷の妖精『チルノ』とそのチルノと仲の良い『大妖精』そして人食い妖怪の『ルーミア』が息を切らして入ってきた。

 

「あら、チルノ?」

「霊夢!大変だ!外で…なんか誰かが戦ってて」

「誰か?外にいるのは鬼関係の奴らじゃ」

「違かったのだー、なんか口から炎が漏れてた人間っぽい奴なのだー」

 

ルーミアの言葉に霊夢は一瞬、迷いの竹林の案内人『藤原妹紅』がちらついたのだが件の妹紅は絶賛、別の席で『蓬莱山輝夜』と言い合い中。

どっちも顔は真っ赤だ。

 

「全く…誰よ、宴会の場に水を差す奴は」

 

と霊夢が言いかけた瞬間

 

――ドゴォォォォン!!

 

襖が壊れると同時に宴会の席を破壊しながら誰かが入ってきた。

その光景を見た宴会の参加者は流石に酔いがさめる。

 

「な、なに…!?」

「早苗、構えて!敵の可能性が」

 

何て言っていると

 

「カァァァァァァ…!」

「ばけ…もの…が!?」

 

息を吐きながら血だらけの男の顔面を掴み、地面にたたきつけてる…天津の姿が。

その姿は温厚で働き者な姿とはかけ離れ、口から紫色の火が漏れ、双眸は真っ赤に染まり、赤い軌跡が映っていた。

 

「どうした…まだ両腕が折れただけだろ?立ち上がれよ…なぁ!!」

 

メキメキと天津が握る男の頭蓋骨から音が鳴る。

 

「や…めろ!」

「お前は何回その言葉を聞いて、何回無視してきた?」

「!!」

 

その言葉に男はギョッとするが、そんなことも気にせず天津は話す。

 

「ヴァンパイアハンター…聖職者でも何でもなく、己が欲を満たす為だけに殺しまわった殺戮者風情が。幸せそうなヴァンパイアを見つけて楽しめそうだったかぁ?反吐が出るぞ」

「ぐ…うぅっ!?」

「まぁそんなことはどうでもいい。俺はな…俺の友達が殺されかけたんだよ、あまつさえお前みたいなクズに…そりゃ怒るだろ。だから俺は…俺自身の忘れかけた憎悪を火種に火をつける」

 

その言葉に連鎖するようにマガツから紫色の炎があふれる。

 

「お前は…楽しみたくないのか!?」

「あ?」

「人間よりもヴァンパイアの方が耐えるんだぞ!?すぐに傷も治るしそれに…!」

 

天津に持ち上げられている男は外道らしい外道の命乞いを行う。

その行動が彼の憎悪を燃えたがらせるとは知らずに。

 

「…はぁ…仮に俺がヴァンパイアハンターだったとしても、あの二人はもってのほかだ。従者、門番、部下らしい部下に好かれるカリスマ性、地下にいたせいで何も知ることのできなかった子。何故殺す?」

「ヴァンパイアだから…」

「違う、敵じゃないからだ。種族が違くても敵じゃないのなら手を出さないのがいい…それにこの幻想郷には人間だけじゃなく、妖怪、魔女、魔法使い、吸血鬼って様々な種族がいるのに殺し合いは起きない…これがこの世界の答えだろ」

「くっ…!?」

「そして…お前は俺の敵だ。お前が殺そうとしたヴァンパイア達は片や俺の友人、片や部下に慕われるカリスマ溢れる主…お前とは世界が違うんだよッ!!」

 

天津は男を外に投げ飛ばす。

 

「だからお前に…最高に皮肉で残虐な罰を与えてやる」

「何…だと…!?」

「今までの自分が殺してきたヴァンパイア達の罰を受けろ…!」

 

そう言って右手を胸に当てて呟く。

 

「ふぅ…吸血鬼と成れ…!」

 

そう呟いた瞬間 

 

「ぐぅ…あぁぁっ!!」

 

背中が蠢き、服を突き破って枝のようなものが伸びた。

やがてその枝は蝙蝠のような翼膜を生やし、カラフルな結晶の模様が現れ、彼の歯と爪が鋭くなっていく。

 

「あぁ…これが吸血鬼か」

 

天津は両腕を横に開き、天を見上げる。

そこには日が落ち、吸血鬼の時間を始めるにはもってこいの空だった。

 

「はははっ…匂い立つな…人間のにおい、血の匂いだ…!」

 

天津の口から涎が垂れ始めると同時に表情が徐々に笑顔になる。

 

「食欲をそそるじゃないか…!」

「お、お前!?その匂い…ヴァンパイアになったのか!?」

「一時的だがな、お前を殺すのは人間じゃだめだ…ヴァンパイアじゃないとな」

 

今まで殺してきた種族に殺される。

これほど無様な死に方は無いだろう。

 

「く、くるなぁぁぁ!!?」

 

男はぶらんと下がった腕を一心不乱に動かし、天津に向かって腕を振り下ろすが。

 

「ふん!」

 

その腕は天津の爪で乖離し、血が噴き出す。

 

「あぁぁぁ!!?」

「無駄だ」

「ぐうっ…ウゥゥゥゥっ!?!」

 

その吹き出す血を抑えようとしても、男にはそもそもの腕がない。

どうしようもできない。

 

「さて、と…正直思ったのは、血をからっからに吸ってから殺そうと思ったが、気が変わった」

「なん…だと…」

 

爪を振りかざそうとした天津はその爪を下ろすのをやめて、男の身体に手を添えた。

 

「俺はフランちゃんやレミリアさんの様に血を吸えるかわからないし、俺の憎悪はまだ満ちていない。俺の身体が、心が残虐に殺せと命じてくるからな…だから、お前もその立場になったらどうだ?」

「何を言って…」

 

そうして天津は告げた。

 

「お前の身体の体質と俺の身体の体質は入れ替わる」

 

次の瞬間、天津の背中から翼が無くなり…逆に男の背中から翼が生えた。

 

「な…に!?」

「説明する。お前はヴァンパイアハンター…つまるところヴァンパイアを殺せる肉体を持っている。逆に俺の身体は吸血鬼になった。驚異的な再生速度、血を求める生命体に。そして、その身体の体質が入れ替わった。ヴァンパイアのお前と吸血鬼の俺が」

「…!!!」

 

その言葉を聞いた男から冷や汗が溢れ出す。

 

「う、うそだ…嘘だ嘘だ嘘だ!!」

「腕を見たらどうだ?」

 

天津の言葉に息が途切れ途切れになり、発狂しかけた男がゆっくりと自分の腕を見る。

そこには…無いはずの腕があった。

再生したのだ。普通の人間じゃできないはず。

つまり…

 

「アァァァァァァァ!!?!?!」

 

このヴァンパイアハンターは、成ってしまったのだ。

サンドバックだと思っていた生命体に。

その現実を受け入れられず、発狂する男。

 

「…恨むなら自分を恨めよ?俺の友人たちに手を出さなければこうはならなかったんだからな!」

 

そして天津は吸血鬼となった男の顔面に重い一撃を叩き込む。

一撃を叩き込むたびに天津の口と目から紫色の炎があふれる。

彼の怒りであり、憎悪の一撃。

その一撃が何度も何度も何度も男に叩き込まれる。

しかし、男の身体は自分の意思とは関係なしに再生していく。

無限地獄。

この状況を説明するならこの一言が一番丁度いいだろう。

 

「ぁ…うぁ…」

「…これが外道なヴァンパイアハンターの愚かな末路だ。俺の右手よ、太陽の性質を纏え」

 

空に右手を伸ばし、天津がそうつぶやくと…天津の右手は徐々に白く変色していく。

やがて真っ白になった拳を

 

「じゃあな、あの世でヴァンパイアに詫びてこい」

 

男の心臓にたたきつけた。

天津の拳は男の身体を貫くと同時に…塵となっていく。

風が吹き、塵は空へと上がっていき、夜の闇へと消えていった。

 

「うぅ…ウゥゥあぁァァァ!!!」

 

すると、今度は天津が顔を両手で押さえながら発狂し始めた。

 

「天津!」

「お兄様!」

「お嬢様!」

 

天津の行動が自分たちの為だったと理解したレミリアとフランは発狂している天津の傍に寄ると同時に咲夜、美鈴、パチュリー、小悪魔もそれに続き、天津に寄る。

 

「はぁぁぁっ!!?」

 

天津の抑える顔面から紫色の炎が溢れ出す。

 

「怨嗟の叫びは…留まる所を知らず、憎悪の思いは…己すら焼き尽くす…!」

 

そう呟くと同時に…紫色の炎が消え、顔を抑えていた天津の両腕はだらんと下にさがり、膝が折れると同時に倒れそうになったタイミングで。

 

「天津さん!」

 

美鈴がギリギリで受け止めた。

 

「天津!何が起きたの!?」

 

後から護符を持ちながら霊夢がより、天津の様子を伺う。

 

「…眠っています」

「眠っているのは良いけど、何であんな行動を…」

「分からないわ、でも…天津は私とフランの為にあの男を殺した、それが事実よ」

 

何でこんなことをしたのかは確定していないが、天津はレミリアとフランの為に動いた。

それは変えようのない事実だった。

 

「…あれ?お姉さま、アレ」

「?」

 

何かに気が付いたフランは指をさす。

その指をさした方向をレミリアたちが見ると…天津の手には一枚のカードが握られていた。

 

「スペルカード…!?」

 

それは…弾幕ごっこでいう『必殺技』。

そのカードが、天津の右手に握られていた。

 

「どういうことなの…?」

「お嬢様、とりあえず天津を寝かせませんか?こんな半分立っている状態で寝かせてもちゃんと休まらないかもしれませんし」

「そうね、一度寝かせましょうか」

 

そういう話になり、美鈴が天津を守矢神社の中に運ぼうとしたが

 

「おっも…!?」

 

担いで持っていくのは不可能と確信したので、何とか頑張って背負って行った。




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