禪院直哉成り変わりー禪院家が壊滅しないよう色々頑張ってみるー   作:AKHT‐47

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大討祓

 呪術界を1000年引っ掻き回して来た羂索が死んでから間もなくの事、「呪術御三家」「呪術高専」ひいては「アイヌ連」をも巻き込んで「呪術界」はある異常事態への対応に追われていた。

全国的な「呪霊の大量発生」である。幸いなことに呪霊の等級は殆どが2級以下の有象無象であったが…それでも慢性的に人手不足な呪術界では中々骨の折れる仕事だった。

 

 「いやあ、非術師の恐怖を煽る大災害があった訳でもないのに…」

眼下にクマを作り、頬骨が浮かぶ程やつれた「特級術師」「夏油傑」は、蛆のように湧いた雑魚呪霊共にひたすら手をかざし、「吐瀉物を拭いた雑巾」の味がするらしい球体を取り込むという現世に顕現した地獄そのものな作業に勤しみながら、呪霊の大量発生の原因に疑問を浮かべていた。

 

 「呪霊操術」は2等級以上の差がある呪霊は無条件で取り込む事が可能だ。彼が手をかざすだけで大量に湧いた呪霊が掌の中に納まっていく様はある意味壮観ではあるが…キャパオーバーで取り込み切れずにポリ袋に呪霊玉を詰めまくって肩に背負ってる特級の姿は、他者から見たら悲哀を感じずにはいられない。

 

 (羂索が死んだ途端これか…今回の騒動は羂索討伐を起因としてるんか?)

夏油が無条件で取り込めない呪霊を徒手空拳で死なない程度にボコす為に彼の隣に立っていた「一級術師」の「禪院直哉」は夏油の疑問に対する答えを自分なりに考えていた。

直哉の予想は当たっている。今回大量に出現した呪霊は羂索が1000年間コツコツと契約を結んできた「1000万体」の呪霊である。「縛り」があったが為に大人しくしていた魑魅魍魎達の一部が、契約相手の死亡に感付いて暴走を始めたというのが真相である。直哉はそこまで考えに至ってないが、死んでもなお迷惑を掛ける羂索につくづく嫌気が差した。

 

 「ここら一帯の呪霊は全て降伏させた…悟、次のエリアに飛ばしてくれ」

「………。」

この異常事態に、高専側が取った手段は「五条悟」の「無下限呪術」、「術式順転・蒼」の応用、「空間と座標の圧縮」で全国各地に夏油傑を始めとした術師を瞬間移動させ、移動時間を可能な限り短縮する事だった。この方法を使えば、五条悟が今まで訪れた場所に残したマーキングは一瞬で辿れるし、初めて訪れる地点であれば先んじて蒼の高速移動で向かい新しくワープ地点を作ってトンボ帰りすればいい。極めて効率的なやり方だ。しかし、

 

 「へっ、俺は都合のいいタクシー男扱いかよ」

五条は文句を言いつつも長距離ワープ用の陣を書いているが、今の境遇には不満が大ありなようだ。

「無下限呪術の負担が辛いのか?」

夏油は五条を心配する。甚爾が寝返った事で死の際、覚醒の契機を失った最強の一角は未だに「反転術式」を修得していない。新鮮な脳を常にお届け出来ないので無下限呪術の負担はそのまま、なので今回の大討祓において、彼は移動に専念して極力戦闘には参加しないようにと配慮されていたのだが…

 

 「ハッ、地獄の亡者みてぇな顔してる奴が、人の事心配出来る御身分かよ」

「なっ私は本気で心配して…」

「まあまあ二人共落ち着いて…」

特級術師同士がガチンコでケンカしようものなら一級では止める事は出来ない。直哉は肝が冷える気分だった。

 

 「ワープの継続的な使用くらいじゃそこまで疲れねーよ…天内護衛してた時のが辛かったわ」

「てか、薄々気付いてたけど…呪霊呑み込むの負担なんだろ?」

「「!」」

五条悟の気遣いするような言葉を聞いて、直哉と夏油は豆鉄砲を喰らった鳩のような顔をして驚いていた。直哉は前世の事前知識がある為知っていたが、五条が夏油の苦痛の一端に気付いた理由が気になった。

 

 「いつから………」「ハッ、今回の任務、何日もお前の隣にいたらどんな鈍感でも気付くわ。ここ数日だけですげぇ老けたもんなオマエ…」

五条が苛立っていたのは、便利な移動要員として使われた事ではなく、呪霊玉は不味いという事を今まで夏油がひた隠しにしていた事だろう。辛いとこは他人に見せないのが優等生か?カッコつけやがって!と更にまくしたてる。

 

 「ハハッ、」子供のようにキレる五条に、思わず夏油は笑いを零した。幾分か生気を取り戻したように見える。

「何か笑わせるような事言ったか?」「いいや、悟の言葉が嬉しくて…君の言う通りさ」

呪霊玉は吐瀉物のような味がすると、夏油は正直に話した。それを聞いた五条は、二つの意味で気色悪いとオッエーというポーズをした。一つは呪霊玉の味を想像した事で、そしてもう一つは………夏油の感謝に素直になれなかったからだ。

 

 「………もう無駄話はいいだろ?」

照れ隠しのように話を切り上げ、陣を完全に書き終えた五条は掌印を結び、最強二人とその後輩は一瞬で次の地点までワープした。

「やっぱり悟君の蒼は便利やな。移動も短縮できるし、収束を利用した移動は俺の「投射呪法」の最高速度より速いんやもん。スピードキャラの俺とパパ涙目やん」

片手間に呪霊を殴りながら、先程から拗ねていた五条の機嫌でも取ろうというのか、直哉は自分を下げながら五条の無下限呪術を褒め称える。

 

 「はっ………今のオマエに褒められてもあんまり嬉しくねぇよ」

五条は蒼で呪霊を引き寄せて夏油の吸い込みのサポートをしながら、少しだけ後ろ暗い顔をする。

「まだ機嫌治らんですか?」「はっ、機嫌を取るってのは直接相手に言うもんじゃねぇよ…」

直哉の非礼に怒りながら、五条はポツリと本音を話した。親友が隠し事を話したことで、自分も弱音を吐く気になったのだろうか?

 

 「オマエは最近「領域」習得して、俺の無下限も抜けるようになったもんな………」

「買い被らんでくださいよ。俺の領域展開はキツイ縛りないと成立せんし…まだまだ洗練が足りないんですわ」

「俺は習得すらしてないけどな………」

「俺みたいに「シン陰流」に入門したらどうです?」

「はっ、やなこった…うちの人間も言ってたけど、あそこ入ったら本家の人間相手に色々メンドクサイ縛り結ばなきゃいけないんだろ?」

「まあそうですけど、ここだけの話、寿命吸われますで」

「尚更嫌だわ」

 

 (もしかして悟君は………)直哉は五条の悩みを薄々察した。覚醒の契機を失った事で、五条悟の強さは伸び悩んでいる。術師の成長曲線は一定ではないとは言うが…直哉は自分が甚爾を寝返らせたことにも彼のくすぶりの原因の一端があると少々良心が痛んだ。

 

 「硝子みたいに「反転術式」は使えねーし、傑は今回の任務で大量に呪霊取り込んで大幅強化確定だろ?」

「俺も反転術式使えませんよ」「そんなの慰めになってねーよ…」

夏油の後ろに並んで練り歩く二人。五条悟の生き詰まりを解消する術はないか、直哉はしばし一人考え込む。

 

 「そうだ、悟君が強くなる為に、いい案ありますよ」「………本当か?」

五条は直哉の言葉にクイッと反応し目を光らせる。まるでおもちゃ屋のショーケースでも前にした子供のようだ。「星漿体護衛任務」の時に直哉の手腕を見た彼は、後輩の知恵には一定の信頼を置いていた。

 

 「悟君が強くなる方法、それは………」

ゴニョゴニョと、直哉は自分の思い付きをこれから「最強」になる男に話し始める。

「ゲッ、マジで言ってんの!?」「大マジですわ」

直哉の考えを聞いた五条は拒否感を隠さず口をゲの字に曲げた。

 

「直哉はホストに貢ぐキャバ嬢みたくアイツの事気に入ってるけどさ…俺アイツ嫌いなんだよね。今でこそ高専の人間だけど俺の事刺したし!」

「いや言い方………まあ、確かにホストとキャバ嬢みたいな関係ってのは否定できんけど」

五条悟が「現代最強の術師」になる為、「パトロン」である禪院直哉の考えとは一体………

 




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