禪院直哉成り変わりー禪院家が壊滅しないよう色々頑張ってみるー   作:AKHT‐47

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覚醒の日

 「術式順転・蒼」の応用で長距離ワープが使える「五条悟」を移動要員に、「夏油傑」で吸い込む「最強の二人」を中心とした活躍により、羂索と契約していた有象無象の「呪霊」共の鎮圧の為の日本全国練り歩きは一カ月程で収束の兆しが見えた。1000万の呪霊の内、間引かれた呪霊も少なくはないが、夏油傑は最終的にその半数近くの呪霊玉をゲットした。

 

 ちなみに「天与の暴君」が「高専登録済みの16体の特級呪霊の一体」「特級叛霊」『悪路王大嶽』を、同じく特級を冠する「呪具」、「天逆鉾」と「釈魂刀」の二刀流で瞬殺した時に「禪院直哉」が興奮のあまり熱い声を上げたりしていた。

 

 「ハァー………」

五条や直哉などに呪霊玉が「ゲロ雑巾味」がするのがバレてからと言うもの、気が軽くなったのか彼は呪霊の不味さを隠す仕草はしなくなっていた。

「お疲れ様です夏油さん!コーラの差し入れ持って来たんで元気出してください!」

高専敷地内、この世の「負の感情」の塊が詰まったポリ袋を肩に背負いながら日課の呪霊玉イーティングをしてる憐れな先輩に、気の良い後輩「灰原雄」と「七海建人」が労いと挨拶を兼ねて話し掛けに来た。

 

 「助かるよ灰原…」

ゲロ雑巾味を流すようにコーラを飲み、ゲロ雑巾を飲み、コーラで味を掻き消す、流れ作業のように夏油は繰り返した。

「夏油先輩は先日の大討祓で集めた総じて500万を超える呪霊玉の処理の為、「呪霊玉を一日100個は必ず飲み込まなければならないがその代価として呪霊玉の味が緩和される」縛りを結んだのですよね」

「そうだよ七海、それがどうかしたかい?」

「いいえ、上手い縛りの結び方で参考になりそうだと思ったので。代償を払ってるようでその実負担を減らしている…」

これが後に「黒閃連続記録保持者」となる七海健人の「時間外労働の縛り」の参考になったとかならないとか…

 

 「ハッ、褒めてくれるのは嬉しいが…残念だけどこの縛りを考えたのは私じゃないんだ」

「もしかして直哉君ですか?彼ってなんか……知恵が働きますもんね!」

「いや、それも違う………この縛りを考案したのは直哉君が妙に入れ込んでるあの「フィジカルギフテッド」…「伏黒甚爾」だ」

「ああ、「星漿体暗殺」を狙って先輩たちと敵対したが直哉君が金で懐柔して寝返ったあの………」

「直哉君は親族のよしみか随分彼を気に入っているようですが、私は彼のような人間は好きになれません」

今集まってる三人は根明、優等生、堅物と属性が分かれてるように見えて根底は真面目な人間だ。金で動き人の命を軽く扱うのは許せないであろう。色々と型破りな側面もある直哉もちょっと苦手なくらいだ。

 

 「まあそうは言っても、彼が味方になってくれて助かるのも確かだ。妙味な縛りを考案できるのも…彼は長らく「術師殺し」と呼ばれていたらしいが………その経験値あってこそなのだろうね」

「そういえば、直哉君や五条先輩はどこにいるんです?」

伏黒甚爾の話題を変えたかったのか、灰原は別の話題に切り替える。七海は呼び捨てなのに直哉は君付けなのは彼との間に距離がある証左だろう。

 

 「ああ…悟と直哉君は今…」

灰原は話題を変えるのに失敗した。二人が今一緒にいる人物こそ、伏黒甚爾張本人だったからである。

 

◇◇◇

 

 「直哉ァ、コイツと本気でやり合ったら強くなれるって本当かよ?正気で言ってんのか?」

蒸しかえる夏の暑さの中、日差しが照り返す高専敷地内のグラウンドで、五条は「天内理子」の命を狙われた事、自分のドテッ腹を刺された恨みから伏黒甚爾への恨みを隠さない。

「術師が強くなるには実戦ありきや。悟君が甚爾君に良い感じに削られたら、『反転術式』だってきっと覚えられる………」

「ハッ、天内の時の借りがあるからな?逆にボッコボコにしてやんよ!」

今回は三日三晩「無下限呪術」と「六眼」を使っていた時と違い元気ピンピン、万全状態である。五条悟は負ける気がしなかった。

 

 「直哉、五条家の坊をボコしたら億貰えるって話、二言はないな?」

「俺が甚爾君に金払わんかった事あるか?」「フッ、そうこなくっちゃな」

「オッエー、俺と闘わせる為にファイトマネーまで払うとか…どんだけソイツに入れ込んでんだよ」

というか、高専に寝返った時に8億貰ってただろと五条はツッコんだ。

 

 「ギャンブルの為には金が幾らあっても足りないからな………家族もいるし」

「甚爾君、普通順序逆とちゃう?」

直哉は甚爾がお気に入りだが、言うべきことはハッキリ言う関係だ。甚爾はうっせーと腹パンして、直哉を悶絶で黙らせたが。

 

 「キャバ嬢とホストの漫才はもう十分だから、さっさと()ろうぜ?」

五条はあくびをしながら目の前にいる二人へ呆れの感情を纏った蒼い目を向けていた。

「いいぜ」オエッと、甚爾は胃袋に収めていた「格納呪霊」を吐き出して、無下限呪術の「不可侵」を抜く為の天逆鉾を装備した。

 

 「術式は使っていいのか?」

(あの呪具………一々出して来た辺りなんかきな臭ぇ。無下限呪術の『止める力』対策か?)

五条は甚爾の携帯する武器に警戒を怠らない。

「阿保か、術式なしのオマエが俺に勝てる訳ないだろ」

「あっそ」開戦は唐突に、五条は「収束する力」で甚爾を引き寄せ、かつてのように「徒手空拳での撲殺」を試みる。

「あぶないあぶない………」

巻き込まれるのを憂いた直哉は腹の痛みはそのままに離脱する動きを作り、遠目で二人の試合ならぬ死合い(しあい)を観測しようと座り込んだ。

 

 「その程度か?」「なにっ!?」

天が与えた至高の肉体を持つ男は、その脚力だけで引き寄せる力に抗う。脚で簡単に拘束を抜けきった彼は五条の後ろに回り込むが、

「ハッ、あめーよ。オマエみたいな卑怯者は後ろから狙ってくるだろうさ」

五条悟もタダではやられない。蒼を甚爾の背後に発生させて吹き飛ばす。フィジカルギフテッドはその勢いのまま綺麗にムーンソルトして着地するが。

 

 「チッ………」

並の呪霊や呪詛師なら既に死んでいる攻撃を喰らってもピンピンとしている甚爾に五条悟は苛立ちを覚える。

「だったら………」

ポポポポポポ………

覚醒の契機を失い燻っていた五条悟も鍛錬を怠っていた訳ではない。親友と後輩との呪霊狩りの道程、彼は蒼の複数同時発動を身に付けていた。

 

 「思ったよりはやるな」「そりゃどうも!」

五条は収束する力の暴力で暴君を圧し潰そうとするが………

「だが問題はないな」

甚爾は手に持った「天逆鉾」、「発動中の術式の強制解除」を利用し見事な手さばきで瞬く間に蒼を掻き消してしまった。

 

 「本当は初撃でお前の体に穴でも空けてやろうと思ったんだがな。カウンターキメてくるのは想定外だったから不覚を取ったぜ」

ニヒルな彼にしては珍しく他者を褒め称えるが、

「だがもうタイミングは外さねぇ、オマエが蒼を使ってこようが全部打ち消す」

今度は正面から、正々堂々と近付き、

 

 (クソッ、呪力がないから感知の山勘で対応は無理だ。てか速すぎんだろ!動きが読め…)

今の五条悟では、暴君を観測するのは不可能だった。あとは成されるがまま………

グサリ………

重要な臓器は避けているが、甚爾の逆鉾が「最強の二人」、その一角を突き刺した。

 

 「グッ………あが………」

殺し合いではないのにやり過ぎだろと内心で毒付きながら、五条は大の字に倒れ込んだ。呪力強化で出血を抑えようとするが、上手くいかない。

 

 「直哉、反転術式のアウトプットが使えるあの女を呼んで来い。臓器は傷付けてないが、一歩間違えれば出血多量で死ぬって事も………」

「待って。もうちょい様子見てみようや………」

クソッ、俺の強くなりたいって我儘を自分なりに聞いてくれた直哉はともかく、甚爾って男はやっぱり気に食わねぇ。俺は呪力の強化をやめ、出血で頭がグラングランとする中、依然未踏の反転術式の獲得に集中する。

 

 「本当にこれで五条家の坊は強くなるのか?全く手応え感じなかったが」

「まあ見とき、術師の成長曲線は一定やないからなあ。まあ甚爾君は産まれつき完成されとるけど………およっ?」

甚爾越しに五条が視界に入っていた直哉はキョトンとしたような顔をする。そのツラを見て、甚爾も何が起きたかを察しながら後ろを振り向く。

 

 「硝子の奴は呼ばなくていいぞ直哉」

「………マジか」

「大マジ!怪我も完治して元気ピンピンだよ!」

「流石悟君、アンタなら必ずやってくれると信じてたで」

動揺してる自分とは対照的にすました顔でにんまりする直哉にどことなく苛立ちを覚える甚爾。

 

 「硝子の奴はひゅーっとやってひょいとかふざけた事しか抜かさなかったからな。俺も今まで出来たことねーよ。初めてオマエに感謝したくなったね」

「コイツ……」五条悟は覚醒の歓喜から脳内麻薬がドバドバと分泌され、完全にハイになっていた。

 

 「だがアンタにドテッ腹に風穴開けられ、朦朧とした意識の中掴んだ……呪力の核心!!」

五条悟のトークは終わらない。

「はいはい、悟君は反転術式を、甚爾君は俺からの謝礼を、お互い目的は達したんやからそろそろお開きに…」

「何言ってんだ直哉。勝負はこれからだろ

「ちょっ………」覚醒した五条に呼応してしまったのか、甚爾のやる気スイッチも入ってしまい逆鉾片手に五条へと襲い掛かる。

 

 「なっ」

蒼の収束を上向きに発動する事により自由自在に滑空する五条は先程の意趣返しのように甚爾の後ろに回り込み………

 

 術式反転・赫!!

「生得術式」に反転した呪力を流し込む事で、「術式効果」は裏返る。収束する力の反転、「弾く力」、その斥力が暴君を襲う。

ドンッ

逆鉾での術式解除が間に合わなかった甚爾は大きく吹き飛ばされ、グラウンドから高専敷地内の森まで吹き飛ばされ、独り言つ。

「ハッ…バケモンが………」

 

 「ヒエーッ、やりすぎやで二人共…」

赫に巻き込まれるのを恐れた直哉は亜音速で遠くまで逃げたが、双眼鏡越しに木々がなぎ倒される様を見て、環境破壊は良くないと内心ごねいた。

 

 (骨はいってねぇーな?)

最早直哉から貰える金など関係なく、無性に最強となった五条悟を倒したい。その衝動に駆られていた甚爾は格納呪霊から別の「特級呪具」「万里の鎖」を取り出し逆鉾と括り付けた。

止める力、ニュートラルな無下限呪術。引き寄せる力、強化した無下限呪術。弾く力、奴が覚醒して身に付けた術式反転…

全て問題なし

止める力と引き寄せる力は元より、弾く力もタイミングさえ合わせれば掻き消せる。空を飛ぶアイツにもリーチを確保する「万里の鎖」と「空気の面を捉えた跳躍」があれば大したことはない。

 

 「殺さねー程度に殺す!!」

暴君は今までにない本気を出し、最強となった男へ刃を向ける。五条が撃ち込んでくる弾く力をある時は空気を蹴って、またある時は逆鉾で防ぎ、鎖でリーチを伸ばした逆鉾で五条を貫こうとする。

(貰ったッ)逆鉾の軌道は既に五条へと乗っていた。空気の面もしっかりと補足している為、五条が赫か蒼で反撃してきても避けられる。逆鉾さえ刺してしまえば、反転も回せなくなる。暴君は勝ちを確信する。

 

 (相伝のメリットは取説があること。だが当然の帰結として、術式の概要が漏れやすいというデメリットがある。)

(だがこの術は五条家の中でも極一部の人間しか知らない…秘伝中の秘伝)

「おいおい嘘やろ悟君!?いくらハイになったからって、高専敷地内でその術を………」

五条悟は手で指向性を定め、無下限呪術の極致を放とうとしていた。それを双眼鏡で補足していた直哉は焦りに焦る。

 

虚式………むら………

「ストーップ!!」

ここに来て乱入者が、覚悟を決めた直哉、決死の調停に乗り出す。父「直毘人」もよく使っていた「投射呪法」の「拡張術式」、物質にまで「フリーズ」を適用する事で可能となる空中歩行で五条に迫る。そして…

 

 (重い縛りは必要やけど俺は「領域展開」を修得してる………だったらあの技も!)

領域展開が檻だとすればその結界は「身に纏う水」術式を付与していない領域で身体を包み込む…

領域展延!!

直哉は未だ結界術が発展途上、であるが為に、展延を両の手にのみ纏う縛りで無理矢理成立させた。術式を中和する拳で不可侵を貫く、そのまま眼にも止まらぬ徒手空拳で、虚式「茈」の指向性を妨害し、術を不発に終わらせる。

 

 「直哉!邪魔すんじゃねぇ、これは男のたた………」

グサリ………「あっ、」

逆鉾は五条へと向かう最中だった。当然、五条悟の胴体に再度穴を開ける。

五条の術式は解除され、空中浮遊も使えなくなるが、直哉はしっかりと最強をお姫様抱っこし、地面へと飛び降りた。

 

 「あかんあかんあかん………一体どうすれば………」

「直哉、さっさと逆鉾を抜け。それが刺さってると反転が使えねぇ」

五条とガチンコの死闘を繰り広げた張本人が、即座に二人の落下地点までやってくる。直哉は甚爾のアドバイス通り逆鉾を抜いた。物凄い量の血が飛び出たので心配になったが、五条は覚えたての反転術式でその傷すら治癒した。

 

 「イテテ………おい直哉!意地をかけた闘いを邪魔すんじゃねぇ」

「悟君!俺はこれ以上高専が更地になるのん止めよう思って………」

「今回ばかりは俺も同意見だな。オマエの横槍が入っちゃ勝った気がしねぇよ」

現代最強と天与の暴君の怒気で直哉は縮こまる。

 

 「オマエマジビンタな」「戦いに水差した慰謝料、報酬は倍貰う」

「人の心とかないんか………?」

五条悟の覚醒を促す為に直哉が用意したマッチアップは、直哉の一人損で終わった。

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