禪院直哉成り変わりー禪院家が壊滅しないよう色々頑張ってみるー 作:AKHT‐47
悟君が覚醒してから年をまたぎ、俺と七海君や灰原君は二年生に、最強の先輩たちは三年生になった年…俺、「禪院直哉」の今度の目標は「特級術師」「夏油傑」の闇落ちフラグを徹底的に潰す事だった。既に理子ちゃんと黒井さんの死という一番あかんイベントは折ったし、呪霊玉の不味さも悟君が気付いた事で周知されてる。あとは…
「直哉君、前から言おうと思ってたけど、今年に入ってからの任務、いっつも俺達に同行してない?」
「灰原の言う通り、呪術界は慢性的な人手不足ですよ。一ヶ所に固まるのは大きな損失かと…」
原作で灰原君が殉職し、七海君が一時的に呪術界を離れ、傑君の闇落ちにも大きく影響する「等級詐称事件(俺が勝手に命名した)」、「一級案件」の「
当然、難色を示すのは彼らだけではない。先輩たちには同級生を甘やかしすぎだと言われたし、「補助監督」も任務の割り当てに支障が出ると言ってきたが、金握らせて「一級術師」の圧で黙らせた。俺からしてみたら傑君が闇落ちするのが一番の損失なんじゃ!と叫びたかったが、そこは転生者の辛い所、周囲に原作知識の事は話せない。一応俺が抜ける分は甚爾君に回してくれとだけ言っておいた。
高専二年目の初夏くらいに、そのイベントは訪れた。
「産土神信仰…クソッ、あれは土地神、一級案件だ」
「いやあ、等級詐欺はちょっと勘弁してほしいよね」
文句を垂れる七海君の隣には…灰原君もいた。原作改変成功である。まあ俺は一級術師だし?呪霊と術師の等級システム上勝てるのは当たり前だった。ここ一年くらいの鍛錬で「領域展開」も縛りなしで使用可能なレベルまでは結界術を洗練させて「シン陰流」からもめでたく卒業したし…一級呪霊相手に領域を使う事はなかったけど。まあ、「最強に成った悟君」の最強領域「無量空処」には絶対押し負けるだろうが。
「今回ばかりは、あなたが付きっ切りでいてくれて助かりましたよ」
「うん、ありがとう」「気にせんといて、術師はチームワークやろ?皆の至らぬ所を埋めるのが俺の役割や」
ずーっと付き纏われていた事に怪訝な顔をしていた二人にも、今回ばかりは感謝された。これで一つ、傑君が気に病む事もなくなったわ。
「あー、二人に残念なお知らせがあるんやけど」
俺は、今まで補助監督に迷惑掛けた事を反省したという体で、今後は単独でも任務に動くようにすると告げて去ることにした。まあ二人にとっても残念かどうかは知らんけど。
「あっ、待って直哉君!」
「なに?」「えっと、今度からさ、直哉って呼び捨てにしてもいいかな?」
今まで七海君は呼び捨てなのに俺の事は君付けしてた灰原君が別れ際にそんな事を言ってきた。まあ気にしてなかったって言えば嘘になるけど?彼との距離が縮まった事は素直に嬉しかった。
「ええよ灰原君」
「水臭いなあ、俺の事も呼び捨てにしてよ。七海もそれでいいよね?」
「………いいですよ」
「じゃあ、灰原、七海」
あかん、今まで原作直哉のようにちゃんや君付けばかりしてきたから違和感凄いわ。まあ悪くないけど。
「ほな、またな。今回みたいな事態に備えて、鍛錬は怠らん方がええよ?呪具とか必要やったら俺が金あげるから」
気恥ずかしかった俺は投射を重ねてそそくさと去った。
◇◇◇
灰原と七海に付き纏うのに並行して俺が行っていた事、それは………
「なーんで呪術界ってのはこうも腐ったミカンばかりなんやろなあ。甚爾君」
「ああ、クソだな」
俺は傑君が周囲にいるタイミングを見計らって、呪術界のネガキャンを聞こえよがしにするという作戦に打って出た。裏で彼に日本銀行券を握らせながら。
「上層部は汚職ばっかやし、御三家…特に禪院家はチョー酷い!甚爾君、俺が産まれる前に呪霊飼ってる懲罰房部屋に投げ込まれたんやろ?何も悪い事してへんのに、なあ?そもそもそんな部屋がある事自体不健全や、俺が当主になったらあんな部屋即解体や」
「………そうだな」
甚爾君は過去の事を思い出して鬱屈としたような顔をする。
「安心して甚爾君、昔禪院家に散々虐められたんや。今度は禪院家から俺越しに金むしり取ったればええねん」
俺が禪院家から勝手に金を持ち出すのは既に常習化してるが、パパが甘いのと実力の高さから周囲は苦渋の気持ちで黙認しているのが現状である。
「………ああ」
さっきから返答が面倒くさくなったのか、甚爾は適当な返事しかしない。そろそろ猿芝居にも飽きたようだ猿だけに(この蔑称考えた奴は首括って死んだらええ)
「じゃあな直哉。ガキ共が待ってるから、俺はもう帰るぞ。今日は寿司でも頼もうか?」
甚爾君は贅沢気質な為、頻繁に豪華な食事をとっている。今の時間帯は夕暮れ時の放課後、俺もそろそろ帰らんとな…俺は近くの席で参考書を読んでる優等生を片目に立ち上がり、今日自炊する料理は何にしようかなんて事を考えていた。
「………直哉君」
「えっ?」意外も意外、傑君の前を通り過ぎようとした矢先、彼の方から声を掛けて来た。
「なんか用?もしかして、さっきの話うるさかった?ごめんちゃい」
俺は軽く謝って許しを乞うが、
「いや、話が気になったのは事実だけど、私が気にしたのは話の内容の方で………」
「あー、上層部や禪院家がクソって話?」
「ああ………」
傑君は正直に本音を曝け出し始める。こういう所は呪霊玉の不味さを共有できるようになったのが彼を良い方向に変えたのかもしれない。
「私は………正直言うと、あの伏黒甚爾という男が嫌いだったんだ。例え可愛い後輩である君が気に入っていたとしてもね」
「うん………気持ちはわかるで」
甚爾君はイイ男やけど金の為に女子中学生を殺そうとする、子供をネグレクト、元プロヒモとトリプル役満のクズなのは事実だ。俺は幼少期に脳焼かれてるからあんま気にならんけど…
「私は、認識を改めなければいけないかもしれない。彼が幼少期にそのような非道な扱いを受けていたのなら、今の彼を形作ったのはその環境なんじゃないかと」
「うん………」
否定は出来ない、というか呪術廻戦って環境で歪んだキャラ多いしなあ…その筆頭が原作の君なんやけど。
「今度、彼と親睦を深める為に、そばでも一緒に………」
「傑君は優等生やね…ちなみに甚爾君の一番の好物はモツやで。モツのセットがある蕎麦屋行けばええと思うよ」
これは………作戦は想像以上に成功したようだ。傑君の方から非術師や術師の是非について、価値観を変容させるなんて。
「ほな、また明日」
俺はその日、術式でスキップの動きを作りながら寮へ帰った。
◇◇◇
「寿司の特上三人前、食べ盛りの子供がいるんで」
ガラケーで常連の寿司屋に出前を頼みながら帰路に立つ暴君。その男を見据える金髪、長身の女が一人…
「………誰だ。後ろに立たれるのは好きじゃねぇんだ」
天与呪縛で五感が強化されてる甚爾はすぐに気付いた。自分を追っている者へキツイ視線を向ける。
「アンタは………」
甚爾はその女に見覚えがあった。まだ「術師殺し」をしていた頃に一度接触を図られた事がある………
「特級術師の九十九由紀………だったか?」
男の名は親友の孔時雨や腐れ縁のある親戚のガキである直哉、不覚を取った五条悟などを除いて基本覚えない彼だが、会った女の名前は基本忘れない。
「覚えててくれたんだね!嬉しい事この上ないよ」
自称「呪霊のいない世界を目指すしがない美女」、以前その目的の為に「呪力を全く持たない」為に呪霊を産み出す事はない甚爾の「天与呪縛」の研究目当てに接触を図ったが、初対面で女のタイプを聞いてくるなど変わった言動の数々で引かれてフラれたという関係性である。
「ウッぜーなあ………俺は呪霊のいない世界なんぞに興味ねーよ。これから子供達と寿司食うんだ。寿司は鮮度が大事なんだよ…」
「私の目的も覚えてくれるなんて!………今は家族と住んでるのかい?」
前に会った時とは随分と変わったねと言った彼女に、甚爾はフッと笑みをこぼした。
甚爾が存命した事で、九十九の興味関心は天与の暴君一本となり、夏油傑と「呪霊のいない世界」を作る方法を語り合うイベントも潰えた。直哉のいない所で、嬉しい誤算が起きていた。
◇◇◇
記録 2007年9月
■■県■■市(旧■■村)
任務概要
村落内での神隠し、変死、その原因と思われる呪霊の祓除
「これはなんですか?」
夏油の目の前にいるのは、片方は金髪、もう片方は黒髪の双子、何度も殴られたのだろう、体中が腫れあがっており、プルプルと震えていた。
「■■…?■■■■!?」(なにとは?この二人が事件の元凶でしょう!?)
「違います」
「■■■■!!」(この二人は頭がおかしい!不思議な力で度々村人を襲うのです!)
「事件の原因はもう私が取り除きました」
「■■■!!」(私の孫もこの二人に殺されかけたことがあります!!)
「それはあっちが………」
「■■■!!」(黙りなさいバケモノめ!!)
「■■■!!」(あなた達の親もそうだった!!)
「■■■!!」(やはり赤子のうちに殺しておくべきだった!!)
村人たちは言い訳を許さない。まあ呪術のじゅの字も知らない非術師だから勘違いするの仕方のない側面もあるのだが………夏油と双子、村人たちの会話は平行線だ。
『ワシも小さい頃は…呪術を扱えぬ周りに酷い扱いを受けたのォ…そんなワシにも優しくしてくれたのは………太助とあの坊主だけだった』
目の前に広がる醜悪な差別を前に、星漿体護衛任務を機に高専に鞍替えしたお爺さんの言葉を思い出す。
(ブレるな………)
怒りから思わず我を忘れそうになる夏油は自分を抑える。
(呪術上層部と禪院家はクソって話?)
無知な非術師への怒りを抑える為に、術師にも腐った連中は大勢いると言っていた後輩の言葉を思い出し、深呼吸する。
『た゛い゛じょ゛う゛ふ゛』
夏油は双子を安心させる為、「呪霊操術」で小さな低級呪霊に、二人を安心させるような言葉を発しろと命令を掛けた。村人には見えない、三人だけのメッセージ………
「皆さん、一旦外に出ましょうか?」
始末書
・担当者夏油傑が旧■■■村の住民へ暴行、傷害を与える
・現場に残穢は残っておらず、呪術を用いていない犯行と断定
・呪術規定9条には該当せず、裁量は■■■市管轄の警察に委任する
「いやあ、ひどいやらかしたなあ傑君。未成年だから、お咎めなしで釈放されて良かったやん」
数日の勾留の後、ニヤニヤと笑いながら彼を迎えに来たのは直哉だった。先輩がやらかしたというのに、どこか嬉しそうである。
「悟君は今別の任務やから、暇な俺が迎えに来たんや…あっ、あの双子は高専が保護したで?」
「そうか………」
直哉の言葉を聞いた夏油は、ただ俯くだけだった。それは2つの安堵からくるものだった。一つはあの双子が助けられたという事、
「傑君、2週間謹慎やって。呪術使ってたらもっと重くなってたやろし、踏みとどまれて良かったやん」
「ああ…」もう一つの安堵は、自分が踏みとどまれた事への安堵だった。
(本当はあの夜、俺も心配になってこっそり着いてきたんや。内緒やけど)
もし夏油が道を踏み外しそうになったら、全力で阻止するつもりだった。が、
「さ、帰ろ帰ろ。あの双子、美々子ちゃんと菜々子ちゃんって言うんやって。恩人である傑君に会いたがってるで」
夏油が自らの意思で踏みとどまった事、直哉はそれが心から嬉しかった。
「………直哉君」「なに?」
「………ありがとう」「………俺、感謝されるような事したんか?」
術師にも非術師に負けず劣らずクソな奴がいるという擦り込みをしようと立ち回ってたのは自覚してるが、ここまで感謝されるとは意外でもあり、気恥ずかしくもあった。