禪院直哉成り変わりー禪院家が壊滅しないよう色々頑張ってみるー   作:AKHT‐47

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また時系列がグッチャグチャ………星漿体護衛任務直前の話だけど、次に書きたい話の布石になるから必要なんだ。ごめんちゃい♡


無限回廊

 東京都郊外某所の小山の上に建てられた廃墟。立派な造形は元の持ち主が金回りの良い人物だった事を如実に表しているが…辺り一面雑草が生い茂り、廃墟と化してる今となってはそれは過去の栄光に過ぎないのだろう。いつの世も、盛者必衰ということか。

 

 一年程前までは、地元では盛んの焼き肉チェーン店のオーナー一家が住んでいたのだが、食中毒問題を機に客足は遠のき、壊滅的な被害を受けた。一家は借金を苦に無理心中を図り、今では近所の大学生、フリーター、ひいては県外からも暇人が集まり、死んだ一家が出てくるぞなどと噂が噂を呼び、立派な心霊スポットと化している。

 

 まあ呪術の素養がある人間が呪力によらない死因を迎えた時、怨霊化するケースはなくはないが………非術師の一家の霊など出てくるはずも無い。しかし心霊スポットへの恐れ、「負の感情」が積み重なり、「呪霊」という非術師が想像するものとは別のバケモノが闊歩する、ある意味では本当の心霊スポットが完成してしまった。呪霊が心霊スポットに訪れた人間を喰らう事が原因の神隠し、行方不明事件が相次ぎ、高専にヘルプが寄せられるに相成る。

 

 「呪術高専京都校」所属の「二級術師」の「庵歌姫」は、「補助監督」の運転する車に揺られながら、重苦しい顔立ちで今回の任務の資料を眺め、フリーランスの術師である「冥冥一級術師」に内容を共有していた。彼女は術師の中ではかなり真面目、まとも寄りな人格である為、任務に臨む時はいつもこんな感じだ。

 

 「心霊スポットの類は、特に噂が噂を呼びやすいからねぇ………特に今の時代は、インターネットの普及によってウイルスの速度で恐怖が伝染していく………あっ、先の一家の食中毒問題とかけた訳じゃないよ?ただ、術師は慢性的に人手不足だというのに、昔に比べて呪霊被害が増えているというのは、利便性とは裏腹に世知辛い世の中だね」

 

 「はあ………」

 歌姫は冥冥が価値観の大部分を金に寄せているという事は知っているが、どこか冷淡でドライな喋り方をする彼女は掴み処がなく、少し苦手だった。今回は被害者の数もかなり多い為、一級の力が必要かもしれないと同伴する事になったのだが………

 

 「他にも、学校帰りに行方不明になった小学生が三人、見回りに行ったその親族、事態を重く見て突入した警官………全てあの心霊スポットで消息を絶っている。一刻も早く元を断たないと………」

歌姫は被害者の概要を真面目に列挙していき、これ以上被害が出ないよう呪霊を祓う事への責務で身を引き締める。

 

 「総監部もそう判断したから、私にもお鉢が回って来たんだろうね。決して安くはないギャラを払ってね………」

「………また上の人間相手に吹っ掛けたんですか?」

「人聞きが悪いね。交渉したと言ってくれ」

やはりこの人は、ほんの少し苦手だ………というのが歌姫の心境だった。

 

 「………着きました」

「運転ありがとう。じゃあ、行こうか」

間の良い事に、丁度目的地に到着し、金に関する会話が途切れた。補助監督への感謝を告げ、冥冥と共に車中から降りる。

 

◇◇◇

 

 到着してすぐ、歌姫は非術師から呪術を隠す為に、隠蔽機能に特化した結界である「帳」を下ろそうとした。

「闇より出でて闇より黒く、その穢れを………」

トンッ しかし、詠唱の途中、冥冥の肩ポンで止められる。

 

 「帳は必要ないよ」「………え?」

帳を張るのは任務に殉ずる術師のセオリーなのだが、何か間違えただろうか?と歌姫は考えを巡らせる。

「外に呪いの気配が感じられないからね。十中八九、原因は建物の中にある。それにここは山中、今は立て続けに起きた事件を契機に封鎖されているし、人目は気にする必要ないよ。帳を張るのは、外から叩く方法に出た時で良い。」

「はあ………」

確かに、筋は通っている。長年術師をやっている経験の差もあるのだろう。一抹の不安はあるが、彼女の方が立場は上なので、歌姫は従い、後ろを着いて建物に入って行く。

 

 「げっ………なんだこれ………」

中には菓子やコンビニで売っているようなパンやおにぎり類などを食べた後のゴミなどが詰まったポリ袋が大量にある。恐らく好奇心から心霊スポットに訪れた者や、捜索に訪れた者達の唯一の遺品なのだろうが………死んだ時に残したのがゴミだけなんて余りにも無情だ。

 

 「いるね………それも大量に。今は隠れているが………」

呪霊の気配よりゴミを気にするのかと、可愛い後輩に内心思ったが言葉には出さないという配慮をした冥冥は、警戒を怠らないように暗に指摘する。歌姫は夜眼に慣れてないだろうと懐中電灯を渡しながら。

 

 「私はいらないけど、君にはあった方がいいだろう?」

「あ、ありがとうございます………」

歌姫の苦手意識とは裏腹に、冥冥は別に全く他人に憚らないというタイプではなかった。歌姫は光源の電源を入れ、先輩の後ろを着いていく。

 

 「取り敢えず、手分けして建物を捜索しよう。私はこのフロアを、歌姫は二階を頼めるかな?」

「えっ………一人で、ですか」

「何か問題でも?」「いえ………」

歌姫は今年で20、術師の等級は二級にもなっているというのに、未だに呪霊や呪詛師を討伐する任務への恐れが抜けきらないタイプだった。感性がまとも寄りな何よりの証左、しかし、冥冥は何から何まで面倒は見切れないと、二手に分かれるという案を少しばかり強引に飲ませた。

 

「………」「ハッ」「ほっ」「せいっ」「どやあっ………」

二階にある部屋という部屋を開けて中を確認して回った歌姫は、恐怖を吹き飛ばす為に、ドアを開ける度に声を張り上げるという、それなりに高い階級にいる術師としては情けない方法で散策を続けていた。途中、一家が首吊りに使ったであろう縄や、刀傷で飛び散ったであろう血痕がそのままの状態で放置されているのを見てヒッと小さい悲鳴を上げたりした。この女はここまで臆病なのになぜ術師になったのだろう………彼女のストレス源、生意気な後輩である五条悟が見たら心底大笑いすること間違いなしだ。

 

 ポン………本日二度目の肩ポン

「いやあああああああああああ………」

「ハァ………次の叫びの女王(スクリーム・クイーン)になれるよ、きっと」

肩を叩いたのが一階の捜索を終えたであろう冥冥であることに安心すると同時に、今の醜態を見られた羞恥心で歌姫はちょっと死にたくなった。

 

 「もう、脅かさないでくださいよ………」

「フッ、肩を叩いたのが呪霊だったとしても、歌姫の叫び声におののいて隙を作れたかもしれないね」

「………一階の捜索、終わったんですね」

質の悪い冗談、まあ術師なのに怖がりな自分も悪いのだが、冥冥に事実確認をする歌姫。だったが、

「フム?私は一階から動いてない………」

「………えっ?私は階段を登って突き当りの廊下から入った………筈?」

辺りを見回し、元いた階段を探そうとしたが、いつの間にか、廊下の前方も後方も先が見えなくなっていた。二人共、既に呪霊の術中に嵌まっていたようだ。

「私達は、既に呪霊の腹の中、みたいだね」

「えーーーーー………マジスか」

 

◇◇◇

 

 「この屋敷にいる呪霊の術式かな。被害者が遺したお菓子の箱、ポテトチップスの袋、空き缶、リュックサック………そして私が付けた呪力のマーキング、既に三回はこれを見ている。名付けるなら、無限回廊?」

「どこまで続くのよこの廊下………もう30分は歩いてる」

「歩いた距離は、ざっと4キロくらいかな」

 

 「生得領域………じゃないですよね?」

「正解、あれは心象風景を具現化するものだ。今回のこれはそれよりスケールが下がる………」

「ただの結界術?」

「そうだね、被害者達もこの無限に続く廊下でゆっくりと衰弱していき、取り込まれたのだろうね。しかし、悪い事ばかりじゃない。このような回りくどい手段を取るという事は、呪霊そのものは非力な部類の筈、結界さえ何とかしてしまえば、後は煮るなり焼くなりこちらのターンだ」

最も、その結界をどうするかというのが一番の問題なのだが………

 

 「そこで歌姫に課題だ。この結界、どう突破する?」

「………私は最初、この結界はドーナツ型に続くものだと思っていました。しかし、冥さんが遺した印を歩数で数えた所、どうやらそれは違うみたいで………」

呪力のマーキングと別れてから再び再会するまでにかかる歩数は、毎回バラバラだった。 

 

 「つまりこの家の呪霊は、結界を継ぎ接ぎ上にし、私達が移動する傍から、手作業で結界同士を繋ぎ合わせ、疑似的に無限の廊下を再現していると考えられる………つまり、」

二人が猛スピードで移動すれば、結界の構築が間に合わなくなり、生じる綻びから脱出できる可能性が高い。

 

 「う~ん90点」「あ、あとの10点は!?」

ドヤ顔をしながら完璧だと思った回答をしたところに減点をくらい、ズコーっと内心転げた歌姫だったが………

「結界を崩壊させるなら、左右二手に分かれて、」

「なるほど、その方がより効率よく、結界を壊せますね!」

「正解、今度こそ100点あげよう」

 

 

 「へぇ、スピードタイプの俺にピッタリな攻略法やな」

「だ、誰!?………って、東京校の直哉か………」

「驚かせてごめんちゃい歌姫先輩」

「全く、多少は呪力纏うくらいしてよ!?呪力感知出来なくてビビるじゃん!」

呪術界でも評判の悪い「禪院家」出身だから最初こそ不信感を抱いていたが、出自の割には素直で、年上はある程度敬う気質の彼は、東京校二年のクズコンビ(歌姫や硝子はそう呼んでる)よりはまだ好感が持てる。まあ実家から勝手に持ち出した金で色々解決しようとする姿勢だけはどうかと思うが………

 

 「助けに来てくれたのかい直哉君」

「ええ、外には俺が帳張ったし、悟君と傑君もいますよ?お二人が任務に出てからかれこれ二日は音沙汰なかったんで俺達も呼ばれたんですわ」

げっ、あの二人もいるのか………って、私達がこの屋敷来てから、まだ30分くらいしか経ってないけど、」

「結界の中と外界との時間の流れが違う事は往々にしてあるものだよ………と言う事は、実働時間は二日分………」

(まだ吹っ掛ける気なんだ………)

冥冥は経験則からそう説明し、直哉が来てくれたのは非常に心強いと、さっさと作戦を済ませてしまおうと言う。

 

 「なんなら、直哉君一人で走った方がいいかもしれないね?左右に走って、結界が壊れる前に鉢合わせて衝突するような事があったら危険だし。君の「投射呪法」を使って」

「最高速まで出すと、ソニックブームで建物ごと壊れかねませんよ?ま、時速100㎞くらい出せばええかな」

トントンと上に飛んで投射の準備運動、重ね掛けを終えた後、直哉は眼にも止まらぬ速さで走り出した。

 

 (あれが一級………)

冥冥の手引きで廊下の端に寄った歌姫は、二級の自分とは住む世界の違う後輩に固唾を呑み込む。しかも彼は既に「シン陰流」の習いの元「簡易領域」も習得してると聞く。自分では一生辿り着けなそうな格に溜息をつきそうになる。

 

 ミシッミシッギシッギシッ

「………兆候が出たね」

直哉が高速道路を走る自動車程度のスピードで駆けたからか、建物が鈍い音を立て、壊れる予兆を見せる。

 

 ガラッ………ガシャンッ

「えっ………ちょっ………」

しかし、ただ結界が壊れるにしては、些か不穏な音がし始める。

「キャーーーーーーーー」

壊れていく建造物と共に、上に引っ張られていく。これは、この引っ張る力の正体には身に覚えがある。

 

 「助けに来たよー歌姫ェ………って、え?」

直哉が二人の救出に向かうと言ったので一先ず任せたが、待つのが嫌になった傲岸不遜な「最強」の一角が、「術式順転・蒼」で建物ごと呪霊の結界を壊し、救出を試みたのだが………術式操作が大雑把すぎたのか、

「ありゃりゃ、このままだと彼女、収束する力に押しつぶされるね」

冥冥は一級のフィジカルにものを言わせて早々に離脱したが、二級の歌姫にそんな芸当出来る訳がなく………

 

 「ご、五条ォ!!あんた………」

「はいはい術式解除解除っと………」

収束する力に押しつぶされる心配がなくなったのも束の間に、今度は地面に落下し、引き寄せられた瓦礫に押しつぶされる心配が出てきた。

 

 (ま、不味い。地面に接触する前に呪力で肉体を強化しなきゃ………)

二級術師であっても、呪力を身に纏えば建物の崩落くらいではまず死なない。しかし、自身の上空にある大量の瓦礫、下敷きになったら、引き出されるまでに随分と手間がかかりそうだ………

 

 「ほっ」

軽い声と共に、彼女を助けたのは禪院家の金満坊主だった。空気をフリーズさせて足場にする「拡張術式」を使い、難なく空中の彼女片手に捕えて救出する。

 

ガラガラガラガラ………

「な、直哉………アンタはやっぱいい子だわ………」

「あっ、歌姫泣いてる?術式に巻き込みそうになったのはごめーん」

「ご、五条ゥ………」

歌姫は謝罪の意など毛頭もないだろうふざけた御免の言葉に青筋を立て、拳を握りしめる。

 

「ひどいなぁ悟君。ここまで大袈裟な事しなくても、」

先輩を離してから、大規模な破壊を行った最強の先輩に直哉は苦言を呈する。

「うるせー、オマエが突入してからかれこれ二時間くらいは経ったし、待ちくたびれたんだよ」

「私も直哉君に同意見かな。帳を張ってるとはいえ、ここまでの破壊となると、補助監督達の負担が、」

ありきたりなガス爆発とでも説明するのだろうか?と、冥冥は直哉の苦言に賛同する。

 

 「五条!!アンタはねェ!!同じ御三家として、ちょっとは直哉君をみなら、」

『ブルァアアアアアアア』

歌姫がキレかけた最中、並んで立っていた直哉と歌姫の背後に、結界を構築していたであろう呪霊が襲い掛かる。術式を駄目にされた事で、なりふり構わなくなったのだろう。しかし、その攻撃もすぐ無為に終わる。

ガブリ………

胴体の長い巨大な蛇のような呪霊が、丸呑みにしてしまったからだ。

 

 「飲み込むなよ?後で取り込む………悟、後輩と弱い者を虐めるのは良くないよ」

「呪霊操術」で異形の軍隊を束ねる「夏油傑」だ。配下の呪霊に命令を出しながら、行き過ぎた五条をたしなめる。

「ハッ、強い奴虐める馬鹿がどこにいんだよ?」

「君の方がナチュラルに煽ってるよ夏油君」「あっ………」

歌姫の怒りは、もう一人のクズ後輩にも向かっていく。アホくさと、喧騒に巻き込まれたくなかった直哉は、持ち前のスピードで既にトンズラこいていた。

 

 「歌姫せんぱーい。無事ですかー?」

「あっ、硝子ォ!!!!」

クズ二人と同級生ながら唯一自分にも敬意を払ってくれる二年生の良心こと「家入硝子」。彼女の登場に涙が溢れ始め、思わず抱き着きに行く。

「硝子ォ、あんたはあの二人みたいになっちゃ駄目よ!?」

「ハハッ、なりませんよ。あんなクズ共」

 

 紆余曲折あったが、無限回廊を作り出す呪霊の討伐は一応の終息を見せた。しかし、建造物の破壊が行き過ぎた為か、五条は結局担任である「夜蛾正道」の鉄拳制裁を喰らった。

 

  

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