禪院直哉成り変わりー禪院家が壊滅しないよう色々頑張ってみるー   作:AKHT‐47

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評価感想、励みになります。今までにない伸びにプレッシャー凄いですが精進します。


羂索討伐

 念願かなって甚爾君を高専側に引き込めた。今の彼は俺が報酬を払う形で高専で教師や術師の真似事をしている。元々自分の為に金を使う事は一切なく、全て高専や禪院家の環境改善に尽力してきたとはいえ、甚爾君のギャンブル中毒振りには泣かされる日々である。パパへの借用は増すばかり………

 

 だが泣き言は言ってられない。そんな俺には次の目標があった。それは………

「やっと見つけた。呪術界の不幸の渦、その中心にいる………」

俺は呪力感知を警戒して一切の呪力防御を解きながら、双眼鏡を使い数百メートル離れた「額に縫い目のある」女を見据えていた。

 

 「羂索」、今は「虎杖悠仁」の母親「虎杖香織」の死体を操り潜伏している「呪詛師」。このまま彼若しくは彼女を放置しておくと「渋谷事変」や「死滅回遊」などの呪術テロを引き起こし呪術界は混沌に陥ってしまう。

 

 理子ちゃんや最強の先輩たちの選択により「天元様」と「星漿体」の同化は成されず、天元様は原作通り進化を果たしてしまった。いつか傑君の肉体を狙い、本格的に動き出すともしれない。その前に全力で潰す。

 

 彼女を探し出すのには結構骨が折れた。善は急げとも言う、甚爾君の一件が終わって俺はすぐ動いた。まず手始めに裏社会の人脈(甚爾君の友達兼仕事仲間の時雨さんとか)を使い「岩手県在住の虎杖香織」を徹底的に洗い出した。一時は彼女と生活を共にしていた「虎杖家」に辿り着くのにそう時間は掛からなかったが、数年前に夫である「虎杖仁」諸共消息を絶っていた。

 

 しかしそれで諦める俺ではない。他にも当てがない訳ではなかった。腐ったミカンこと「呪術界上層部」、羂索と蜜月関係の腐敗した一派がいるのは知っていた。俺は上層部に金で取り入り、羂索と定期的に接触していた幹部から現在彼女が身を潜めている場所をある程度聞き出す事が出来た。元々体制側でありながら呪詛師に与するような人格なので、金で靡かせれば裏切らせるのは容易かったが、こんなクズ共を手駒にしようとしていた羂索を少しだけ憐れに思った。

 

 「甚爾君、一つ頼みたい仕事があるんやけど、一枚噛んでくれへん?」

俺は羂索討祓に甚爾君を引き込むことにした。人数が多い方が良いだろうか?とも考えたが、今の所羂索は呪術的な罪を犯した証拠がない。そんな在野の人間を殺すなんて依頼に乗ってくれるのは彼くらいだろうと考えた。金さえ積めば甚爾君は何でもしてくれる、出費はデカいが味方になるとこんなにも頼もしい。

 

 「何で俺がこの女を殺したいのか…理由はメンドクサイから聞かんで欲しい」

依頼や結構日時など概要を説明する俺に甚爾は少しばかり怪訝そうな顔をする。

「フッ、御三家のいいとこの坊が、こんな依頼していいのか?もしかしてこの女と痴情のもつれ………いや、昔っから女っけのないお前に限ってそれはないか」

一般人に呪術で危害を加えるのは立派な「呪術規定違反」だ。露見すれば俺達は呪詛師…まあ甚爾君は元々呪詛師みたいなもんだったけど。

 

 「安心して、呪術犯罪なんてもん、金さえ積めばいくらでも覆い隠せるんよ」

「お前も悪くなったな………誰に似たんだか」

この世界に生まれ変わって、ちょっとでも呪術界を良くしようと鍛錬は欠かさなかったが、俺が強くなるのには限界があった。そんな俺も大金を動かせるという環境には恵まれたから、こういう手段を取るに至ったのだが。

 

 「けんど、甚爾君は金払いさえ良ければ動いてくれるやろ?」

俺の言葉に反応し、天与の暴君はニヤリと笑う。

「最低でも億は貰う」「ハッ、成功したら倍は払うで」

交渉はあっけなく成功した。

 

◇◇◇

 

 暗殺決行の日、昼と夜の狭間、空も街も橙に染まる夕暮れ時。一見するとどこにでもいるような主婦にしか見えないが、その内にはどす黒い呪いを内に秘める女…その呪いを刈り取る為に、対照的に全ての呪いを捨て去った男が音もなく近付く。

 

 グサリ

 呪いは一切込められていない通常の得物で彼女の心臓を貫く。横に動かし致命傷を与えようとしたが、呪力で強化されたのかそれは失敗した。

「いきなり女性を後ろから刺すだなんて………」 

産まれてこの方、何かに臆するなんて経験など殆どなかった甚爾は暗殺されかかっているというこの状況でもあっけらかんとしている女に気味の悪さを覚えた。

 

 (いつの間にか帳が張られている、あと一人は協力者がいるようだね。最近になって私の周りをコソコソと探っていた何者か…その内の一人がまさか、)

「呪力を一切持たない『フィジカルギフテッド』か…呪術戦においてここまで不意打ちに適した存在はいないが、完全無欠という訳じゃない」

一番の欠点は「呪具」を使った不意打ちは出来ないという事。呪具の呪力を感知されて折角のステルス性が台無しだ。

 

 女は蘊蓄を垂れながら両手を裏拍手のような形に結び…

(俺相手に領域を展開するつもりか)

直哉が態々俺に依頼を頼んで来たということはそれなりに出来る相手だろうと予想していたが、まさかそのステージの術師だったとは少し驚きだ。

 

(フン、領域使いは俺にとっちゃネギしょった鴨みたいなもんだ。今まで呪術戦の極致が使えると慢心した輩は何度も殺してきた。このまま領域を無駄打ちさせて消耗した所を狩る)

呪術的には建造物などのような「無機物」である彼は通常の領域では閉じ込める事は出来ず、結界に付与された術式の「必中効果」も無機物を捉えることはない。”通常の領域”では………

 

 領域展開 胎蔵遍野

夥しい怨嗟の顔とそれを囲むように並べられた首を落とされた妊婦というオブジェは羂索が1000年間積み重ねて来た業を如実に表している。

 

 「うぐっ!?」

不覚、天与の暴君の肉体に強烈な重力が課せられる。甚爾のセオリーや判断が間違っていたわけではない、相手が更に一枚上手の使い手だった。

羂索の使う領域は外殻で空間を分断しない、正に神業。現実世界にそのまま広げられる結界は無機物すら捉え、必中術式の対象とする。

 

 「呪力感知が通用しない君に逃げられると面倒だからね。このまま潰れて貰うよ」

羂索は胸に突き刺さった剣を抜き、「反転術式」で負傷を治した。かなり無理のある運用だがやろううと思えばもう一度領域を展開する事も出来なくはない。フィジギフを殺した後、帳を張った術師も同じように殺してやればいい。

 

 (直哉、俺達はどうやら誘い込まれたらしい…)

この一見主婦にしか見えない女は、甚爾と直哉を返り討ちにするだけの力量を有している。そして自身を嗅ぎまわってくる連中を一網打尽にする為、上層部越しに自身の居場所を敢えて漏らすよう手引きしていた。

 

 「甚爾君ッ」

天与の暴君にまずは任せようと静観していた直哉だったが、尊敬する男が潰れていく様を黙って見ていられる訳もなく………

「自ら出てくるなんてね、探す手間が省けたよ」

羂索は領域範囲を広げて彼も圧し潰そうとするが…

「何の対策もなく領域使いに雁首揃えて出てくると思うたか?」

禪院家、ひいては呪術界をより良くする為に、直哉の意地が花開く。

 

領域展開 時胞月宮殿

伎芸天印を結び、羂索の領域範囲をそのまま呑み込むように展開される直哉の領域展開。真っ黒な空間に大きな目玉のついた子宮が浮かぶ気色の悪い領域。

(寿命吸われるのは嫌やったけど…シン陰流に入門しといて良かったわ。)

 

 「首謀者は君だったか。禪院家の…一応領域使える段階には至ってたんだね。」

「でもそれも長くは続かないだろう?何個か即席の縛りを結んでようやく押し合いを成立させてるね」

羂索の結界術の腕前は神業の域、そんな相手と必中効果の相殺を成立させる為には「その場から足を動かさない」「掌印を結び続ける」などのキツイ縛りを結ばなければ限界だった。これでは「投射呪法」の強みである最高亜音速に達する徒手空拳や「フリーズ」などは使えない…

 

 虎杖香織の生得術式「反重力機構(アンチグラビティシステム)」を「術式反転」した重力場、手動で使う場合の術式範囲は2~3m。領域に付与した必中術式は止まっているが、羂索はマニュアルで直哉を捕えトドメを刺そうと近付いていく。

 

 「まあ、頑張り賞ってとこかな」

「ハッ、俺は捨て駒やからな………」「なっ」

グサリ…

本日二度目、背中から心臓を刺される羂索。術師の常套手段、「勝ちを確信した者への急襲」

重力を喰らった負傷もそのままに、暴君は血を滴らせながら、再び1000年呪いを振りまいた女の心臓を貫いた。

 

 直哉は最初から領域で勝負しようなど考えていない。必中の重力を消して甚爾が不意を突く為の時間さえ作れれば、それでいい。

(反転術式が回せない…!!結界の維持も………)

「特級呪具・天逆鉾」付与された術式効果は、「発動中の術式の強制解除」術式の解除は呪力の流れを乱す事を起因とする為、「反転術式」の使用にも影響を及ぼす。本来は五条悟を殺す為に用意した呪具だ。

 

 「ハッ、ガラじゃねぇけど、こっちはチームプレイってやつなんだ。ツメが甘いんだよクソ女」

グサグサグサッ

心臓の次は首、そして脳を突き刺す。羂索の領域が崩壊する。

「くっ…」

泣きっ面に蜂とは正にこのことだろう。天逆鉾で全身に風穴を開けられて既に満身創痍な所に時胞月宮殿の領域効果が襲い掛かる。

 

 「俺の術式は、自他共に視界を画格とし一秒間を24分割した24fpsの動きを強制するんやけど、領域で強化されると術式対象が細胞単位までより細分化されるんや。敵限定でな…ああ、甚爾君は捕らえられないんやけど」

直哉の「術式の開示」が乗った必中術式を喰らった羂索は全身から血を噴き出して倒れ込んだ、いくら反転術式が使えようともう助からないだろう。

 

 「あーあ、千年間頑張って来たのに………こんなところで………」

面白さを探求する為、千年と生きてきた術師は志半ばで死ぬ無念という呪いの言葉を残して死んでいった。

「お、終わった…」直哉は一気に気が抜けて領域を解除し、その場に四つん這いで膝をつく。これでこの後に起こる呪術界の悲劇諸々は起こらない筈だ…

 

 「ったく、野良の呪詛師にしては偉い強かったな。とりあえず死体は俺の呪霊に格納させとくが………」

一仕事終わった甚爾は直哉に何か物言いたそうだ。

「………なに?」「いや、お前の領域………子宮は流石に、」

「………傷付くからそれ以上は言わんといて」

 




羂索倒すのは引っ張るか迷いましたが原作の不幸を知ってる転生者がほっとく訳ないよな………って思ったのでこの展開にしました。
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