禪院直哉成り変わりー禪院家が壊滅しないよう色々頑張ってみるー   作:AKHT‐47

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評価感想お気に入りありがとうございます。「三度目」というタイトルの意味に気付いてくれた方のコメント読んだ時はガッツポーズしたい気分でした。


変身

 「史上最強の呪いの王」が四歳の子供に受肉するという珍事から早数日…かつて食い殺した「片割れ」と「純粋な子供」、そして「現代食」に毒気を抜かれたのか、はたまた何か目論見でもあるのか、今の「両面宿儺」はビックリする程大人しくしていた。器の「虎杖悠仁」からしたら、食事の度に主導権を譲れと言ってくるがめつい奴でしかなかったが…彼は優しいので半分だけ譲るという約束、「縛り」?のようなものを結んで己の中にいるもう一人の自分の要求を受け入れていた。

 

 ほんの気まぐれだった。虎杖悠仁はいつも、二人暮らししている祖父の「虎杖倭助」の帰りを待つという生活を送っていたが…退屈からかごく稀に魔が差して一人で勝手に公園や河川敷に遊びに行くという悪癖があった。今日も椅子を使いドアのカギを開け、出歩こうとしていたのだが…

 

 「おい小僧、倭助の奴が仕事で留守にしている間は絶対に出歩くなと言っていたではないか」

宿儺は悠仁の中でボーっとしている時、戯れに彼の記憶を閲覧し、己が受肉する少し前に同じ理由で怒られていたのを知っていた。

 

 「盗人にでも入られたら、奴にどのツラ下げて責任を取るつもりだ?」

「ぬすっと…?せきにん…?大丈夫だって!爺ちゃんが帰るのはもっと空がオレンジ色になってからだし…この前怒られたのは珍しく早く帰って来ただけだから」

「フン…俺は知らんぞ」

言葉の意味を一々説明するのも面倒だ。宿儺は説得を諦めてまた「生得領域」の中でボーッとしようとでも思ったが…

 

 「宿儺、お前って俺には嫌な感じなのに爺ちゃんの言う事はちゃんと聞いて良い子にするよな」

「黙れ、そんな事は…」「嘘吐け、絶対俺に対する態度と違うぞ!なんでだ?」

子供の好奇心というのは留まる事を知らない。虎杖悠仁の質問攻めは止まらない。こうなっては答えなくては静かにならないだろう…

 

 「ハァー…ダル………倭助の奴には借り…恩…ようは助けられたみたいな意味だ。分かるな?それだけだ」

「それって俺の飯をいつも半分かっさらうこと?」

「違う!………いや、今飯にありつけてるのも確かに恩かもしれないが………1000年前に、」

宿儺はそこで言葉に詰まった。

 

 「1000年前ってチョー昔の事だろ?その時に助けられたって、爺ちゃんってそんなに長生きなの?」

「………」

宿儺は何も言わなかった、いや、言えなかったという表現の方が適切かもしれない。俺はオマエの爺ちゃんを食い殺して生きながらえたなど、さながら子供が読む絵本の悪役そのものではないか。

 

 「まあいいや、いってきまーす」

悠仁の興味は宿儺の身の上話から外の自然や美味しい空気、公園の遊具に移ってしまった。

 

◇◇◇

 

 「悠仁君こんにちは」「こんにちはおばさん!」

「また一人で出歩いてるのかい?倭助さんにどやされるよ」

「ヤッベ…爺ちゃんには内緒にしといて!」

悠仁は気さくな性格と家庭環境の問題も相まって、近所の人達にはよく気に掛けられていた。公園に向かう途中、住宅街の大人達と挨拶し合う。

 

 (これが奴の教えの賜物なのか…)

同じ魂、同じ血筋を持つ者同士だというのに余りにも対照的、宿儺はそんな様子を心の中から消化し辛い感情と共に眺めていた。

 

 「あっ………」

突如、住宅街を歩く虎杖悠仁は足を止めて、ある一点を愕然と眺める。その視線の先にいる者とは………

『グルルルルルルル』

この世の醜悪さを全て集めて作ったような醜い生物?のようなもの、虎杖悠仁は知らないが、それは「呪霊」と呼ばれる人間の「負の感情」の代謝が寄せ集まって出来た産物だ。人が多い居住地に雑魚呪霊が沸くのはよくあることである。悠仁は宿儺の受肉を契機に「脳の構造」が呪力を扱える「呪術師」のものに変っている。呪霊を目視できるのは自然の道理だ。

 

 「ねぇ宿儺、あれって何て生き物…?」

呪霊の知識がない虎杖は自分が知らない生物だとでも思ったのだろう、自分より物事をよく知っている宿儺に答えを求めた。しかし、幼子ながらどこかあれ(・・)は危険だという確信がどこかにあった。

「小僧、あれと目を合わせるな」

宿儺の返答は説明ではなく警告だった。それは淡々としたものだったが……

 

 『!!み゛つ゛け゛た゛ああああああああああ』

呪霊は負の感情の産物という特徴からすべからく人間を害するという本能を持っている。その中には積極的に人を襲うもの、消極的で誕生した場所から基本動かないものなど多種多様だが、共通して己を目視できる人間には自分から攻撃しに行くという傾向がある。それは呪術的素養がある人間を喰らった方がより強くなれるからなのだが…虎杖悠仁は言うなれば「宿儺の指」を宿すという絶好の馳走だ。宿儺の警告は間に合わなかった。

 

 「小僧!今はひたすら逃げろ!」

宿儺の掛け声とともに、虎杖悠仁は全力疾走した。子供ながらに恐ろしい脚力に宿儺は少々面食らった。

「へっこれでも近所では一番足早い子供で有名なんだぜ」

命の危機だと言うのに自慢を始める悠仁に宿儺は呆れるが…

 

 (羂索の奴は当てにならなそうだからここで死んだら再受肉は期待できないだろう。飯にありつけなくなるのは困る)

(しつこく質問を繰り返す小僧の事は気に食わんが………小僧が死んだら「片割れ」に顔向け出来ん)

宿儺は内心虎杖に助言や忠告をする自分に驚いたが、その自問自答にはそれらしい理屈付けをして納得した。

 

 「このまま家に帰ればいい?」

「駄目だ、あの様子では、俺達に追い付くまで奴は追跡を止めない。家が壊されては困るだろう?」

「じゃあどうすれば…」

「………俺に考えがない事もない」

宿儺は虎杖に指示した。この近所で、なるべく人目につかない人の少ないとこにいけと。

 

 「うーん、俺がよく虫取りとかして遊んでる森にでも行けばいいかな?そんなとこに逃げ込んでなんとかなるの?」

「無駄口叩く暇があったら足を動かせ」

虎杖は駆ける、馴染みの森林へ。

 

◇◇◇

 

 虎杖は子供ながら将来オリンピックを総なめ出来るだろう運動神経を以てして瞬く間に人気のない森へと辿り着いた。そこは木々が太陽を覆い隠し、日中でも薄暗く閑散としている場所なのだが。

 

 「ここまで逃げ込めば………」

『み゛つ゛け゛た゛ああああああああああ!』

「駄目じゃん!追い付かれちゃったよ!」

宿儺の指示通りにしたというのに普通に捕捉されていたという事実に虎杖は文句を言う。

 

 「小僧、俺の目的は逃げることじゃない、奴を倒す」

「倒すならなんで態々ここまで逃げたの?」

「人目を避けたかったからだな。倭助の奴、俺の世話を見ると決めた時に言っていただろう?」

 

『宿儺、お前も悠仁と同じように育てるとワシは腹を括ったが…それには条件がある。人目に付くような事はするな。迷惑を掛けるようなことするな。この約束を守るなら、これからも腹いっぱい食わせてやる』

 

 「オマエって案外爺ちゃんっ子?」「黙れ」

走りながら揶揄してくる虎杖に怒声を浴びせながら、宿儺は奴を倒すまでの一時、自分に体を貸せと言った。

「良いけど…あんなデカイバケモノに子供がどうするの?」

「それについては考えがある」

両者合意の元入れ替わった宿儺は、猿のような身のこなしで木に登り、身に付けていた服を脱ぎだした。

 

 「ちょっ何してんの!?恥ずかしいんだけど…」

「ハッ、命の危機に気にする事か?」宿儺は虎杖を嘲笑しながら脱いだ服を木の枝に掛け、靴をポイと遠くに落とした。呪霊は今にも木を無理矢理よじ登ってきそうだ。

 

 「フン、」宿儺は裸一貫で呪霊に向かって飛び降りる。

『!い゛た゛た゛き゛ま゛あ゛す゛!!』

呪霊は自ら餌がやってきたと大口を開けるが………

 

グシャ……次の瞬間、呪霊は押しつぶされ、消滅した。瞬殺である。

「………。」二対の眼、四本の腕、腹に口、顔の左半分が突起している身長2mを超える異形の大男が、呪霊の消失反応の煙と共に立ち上がった。

 

 子供の肉体ではあの宿儺であろうと呪術をまともには扱えない。しかし宿儺には、一つだけその問題を解決する方法があった。

 

”受肉による変身の再開である”

「すっげぇ………」中から一部始終を見ていた虎杖は感嘆の声を漏らす。まるでテレビのヒーローショーではないかと。宿儺が現れてから、面白い事ばかり起こると興奮している。

 

 「………あれ、でもこの体、テレビみたいに元に戻るの?」

「案ずるな。俺が肉体の主導権を得るのは先の雑魚を倒すまでだ、お前に主導権が戻れば…」

「おお………」

宿儺の肉体がまた蒸気を上げ、掻き消えた時には元の幼い虎杖悠仁に戻っていた。フルちんではあったが。

 

 「すげぇ、マジでヒーローみたいじゃん!これってどういう仕組みなの?」

「”肉体”と”魂”には密接な関係があり相互に作用しあっている。あれが本来の俺の姿、強引にではあるが、俺に器を使う”魂”の主導権がある状態で無理矢理「受肉」を進め、肉体を俺の形に整えたのだ。反面小僧の魂に主導権がある時は肉体も小僧のものに引っ張られる。元が四歳児だからかなり無理のある運用だが、変身する時間を短くする即席の縛りを結んで成立させた。あの程度の有象無象を倒すくらいならそれで事足りる………」

「ごめん、よく分かんないや」

幼子に呪術の理論など分かる筈もないかと、宿儺も納得し、それっきり説明をやめた。宿儺は呪術オタクな気質があるので一度喋り出すと結構話し込んでしまう所がある。

 

 (呪いの王だった俺が英雄(ヒーロー)だと?皮肉なものだな)

虎杖の興奮を見て宿儺はかつての人生を思い返し自嘲する。

 

 「いきなり服脱いだ時は何してんの!?って思ったけどさ、破れないように気を遣ってくれた?ありがとうな」

「………勘違いするなよ、オマエの為ではない、倭助の奴に色々言われたくなかっただけだ」

「やっぱりお前爺ちゃんっ子…」「黙れ、これに懲りたら勝手に外出するなよ。次また同じ事を繰り返し、呪霊に襲われても今度は助けん」

「ごめん………」虎杖は木に登り服を回収して帰路に就いた。

 

◇◇◇

 

 「ご近所さんから聞いたぞ………また勝手に出歩いたとな」

「………ごめんなさい」

「全く、宿儺も何か一言言ってやれなかったのか?」

「何故俺まで怒られねばならん。俺はオマエに免じてやめておけと忠告した」

結局、虎杖が挨拶していた近隣住民の忠告でしっかりとバレた。これに懲りた悠仁は、金輪際勝手に出歩く事はなくなり、呪霊と安易に目を合わせる事もなくなった。




二話連続直哉出番なし………良いんやろか。
宿儺が原作より大人しいのは爺ちゃんがいるからかなあって思ってます。
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