「……中継ドローン、ロストしました」
遠くで乾いた炸裂音が聞こえた直後、中継端末の画面が砂嵐へと切り替わる。撮られることが余程お気に召さなかったのか、RABBIT小隊の対空装備で見事に撃ち落とされたらしい。
「ヴァルキューレの物じゃないと分かっているだろうに、それでも攻撃するか……」
「エリートの名が汚れますね」
公共施設を勝手に占拠し、警察組織を返り討ちにしている時点で既に手遅れなのだが、探索者はやれやれと首を振った。
「雑な奴らだな……どうしてあんな奴らがSRTに入学出来たんだ?」
「雑ですけど、銃器の扱いはピカイチですからね」
「ぐっ」
「逆に言えばそれ以外がお粗末」
"……元気な子たちだね"
先生の呑気な言葉に、カンナは厳しい目つきのまま即座に否定を入れる。
「……御冗談を、バカの間違いでしょう」
「完璧に同意です。これはテロです」
探索者が呆れ顔でカンナの毒舌に深く頷く。
「単なるバカならまだしも、やたら力を持ったバカです。会話もしにくく厄介な事この上無い」
「対話しろよマジで……んで先生、どーします?」
先生へ視線を移すと、当の本人はどこかゆったりとした態度を崩さずに微笑んでいた。
"……任せて、多分大丈夫"
「……先生を信用していない訳ではないですが、本当に大丈夫ですか?」
"任せて。探索者さん、切り込める?そしたらこっちで捕らえるよ"
「まぁ、なんとか」
その軽快な二人のやり取りに、跳ね上がったのは周りの面々だ。
「はい! ……はい!?」
「じょ、冗談でしょ……? 相手はSRTだよ!?」
目を丸くするキリノとフブキに対し、カンナも険しい表情を深めて先生へと語りかける。
「……すみませんが先生、彼女たちは基本的に戦闘員ではなく、平和ボケした生活安全局の所属です。警備局でも公安局でも太刀打ち出来なかったんです。彼女たちも戦力に入れて制圧出来るとお思いですか?」
"大丈夫だよカンナ。私からしたらSRTも生活安全局も関係ない。皆、生徒に変わりはないよ"
揺るぎない眼差しで言いきられたカンナは、一瞬言葉を詰まらせた後、ふっと静かに息を吐いた。
「……そうですか」
"探索者さん、あの門出せる?"
「無理っすねぇ……なんせこの場所には来たことがないので」
門の創造は、一度訪れた場所にしか使えない。探索者は肩をすくめて断念してみせたが、すぐに口角を悪辣に吊り上げた。
「まぁでも、囮ぐらいにならなれますよ」
「冗談でしょ? 地雷原をどう突破するの?」
呆れ顔で突っ込むフブキに対し、探索者は事も無げにと言ってのけた。
「空から飛んでエントリーします」
「……は?」
フブキが理解の追いつかない顔で固まるのを横目に、探索者は手首を軽く回しながらくるりと背を向けた。
「ちょっと待っててくださいねー」
そう言うと、探索者は軽快なステップで駆け足になり、そのまま公園の周囲を囲む高層ビル街の闇の中へとあっさりと消え去っていった。
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「お待たせしました〜」
数分後、探索者はある大型の物体をガラガラと重々しい音を立てて引きずりながら戻ってきた。
それは太く無骨な筒状の構造物であり、車輪と頑丈な脚を備えた……まぁ、一般的に言えばどう見ても「大砲」だった。
"……それは?"
完全に予想の外側を突かれたといった表情で、先生がぽかんと口を開けて尋ねる。
「幸福なポットです」
"どう見ても大砲だよ!?"
探索者が真顔で事も無げに言い放ち、すかさず先生のツッコミが飛んだ。
「? どう見ても幸福なポットでしょう。大砲に見えるのは貴方の反逆的な認識が原因ですね」
「ってか……幸福なポットってなに?」
フブキの当然すぎる疑問に対しても、探索者は平然としたまま胸を張る。
「幸福なポットを知らないとは……さてはコミーか貴様!」
「コミーって何!?」
フブキが困惑の声を上げるが、探索者はそれを意にも介さず不敵に笑った。
「まぁいいだろう。コンピュータ様は寛大だ、説明しよう」
そう言うと、探索者は芝居がかった仕草で大砲の筒を指し示した。
「幸福なポットとは、我々アルファコンプレックスが移動のために使用する乗り物で、ブリーフィングルームへと移動するために使う」
探索者は胸を張り、一切の不都合を隠すこともなく堂々と宣誓した。あまりにも当然のような顔で放たれたその単語に、先生の眉間には深くシワが刻まれる。
"……危ない思想すぎない?"
先生のごもっともすぎるツッコミに対し、探索者は完全にスルーを決め込んでいた。気にしないのではない、聞こえてすらいないのだ。彼はさらにノリノリで言葉を続ける。
「ちなみにこれを使用して移動すると、ブリーフィングルームへと確実につけるが、クローンが送られてくるぞ!!」
「……つまり?」
不穏すぎるワードの登場に、先生の頭痛は増すばかりだった。探索者は人畜無害な笑顔を浮かべ、親切丁寧にその言葉の意味を噛み砕く。
「確実に死ぬ代わりに、目的に着くアホの移動手段ですね」
「ダメじゃん!?」
移動手段の定義を根底から覆す悪夢のようなシステムに、思わず全否定の叫びが跳ねた。命を消費して目的地へ着く乗り物など、移動ではなくただの処刑装置である。
思わず胃を押さえ、重く長い息を吐き出すカンナ。
「……はぁ……」
しかし、その疲れ果てた仕草すらも、この荒唐無稽な世界においては重大な違反行為だったらしい。探索者はビシッとカンナを指差し、厳しく指弾した。
「貴様! ため息とは完璧で幸福でないな!」
「そろそろふざけてないで説明しろ探索者」
カンナの冷ややかな視線と、一切の容赦のない静かな一言。一瞬で空気が凍りつき、先ほどまで調子に乗っていた探索者の背筋がピンと伸びる。
「……さーせんした……」
先ほどまでの威勢はどこへやら、探索者はしおしおと萎縮しながら、ようやくまともな説明を始めるのだった。
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「まぁどこぞの頭がマジのお菓子な連中が作り出した移動手段を私が改造した物です。私以外が乗ったら多分歩けなくなりますが、私なら問題ありません」
「……最初からそう言え……ッ!」
額の青筋をぴくぴくと震わせ、カンナが怒号を落とす。その眼光は、公安局長の名に恥じぬ恐ろしさで探索者を射抜いていた。
「まぁまぁカンナさん、落ち着いてください。要するに、低弾道で空から中央へ直接乗り込むっていう寸法ですよ」
探索者は喉元をゴクリと鳴らしつつも、ちゃっかり大砲の筒の中へ足を滑り込ませ、内側から顔だけをひょっこりと覗かせた。
「地雷原もトラップも、空を飛んでいけば全部ただの地面ですからね。私が上で大派手に暴れて視線を引きつけます。先生と皆さんは、その隙に周囲から詰めて網を張ってください」
「それって……ヘリじゃダメなんですか?」
キリノから珍しく鋭い質問が飛ぶ。しかし、それを受けた探索者は深々と、これ見よがしな溜息をついて首を振った。
「中務さん。私はまだ生きてますよ? 誰が好き好んで『空飛ぶ棺桶』に乗りたがるんですか?」
「か、棺桶!?」
「私が乗る乗り物…特に空飛ぶ乗り物は8割強で落ちますからね。いつもカプコン製じゃないか確認してるのに」
「カプコン製って?」
首をかしげるフブキに、探索者は大真面目な顔で説きふせるように言いはなった。
「すぐに堕ちる脆いヘリの事です。乗った時点で死が確定しますよ」
「どんなメーカーなんですかそれ!? 恐ろしすぎますよ!」
「ヘリっていうのはね、物語の登場人物が乗り込んだ瞬間に完成する悪魔の乗り物なんです。その点、この幸福なポットなら自力で打ち出されるだけですからね! 墜落ではなくただの『着地』です!」
「……言い方の問題じゃない気がするんだけどなぁ」
半目で呆れるフブキのツッコミを背に、探索者は「さてさて!」と手際よく中にある火薬の量、空気の流れ、風の向き、自身の足の調整を終えた。
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「……ん?」
「どうしたの? 何かあった?」
子ウサギ公園の中心、陣地を固めていた空井サキと風倉モエの二人は、ふと耳を澄ませた。
「いや……なんか音がなってない?」
「そお?」
モエが首をかしげた次の瞬間、公園の外から、地面すれすれを何かが猛烈な勢いで飛び込み、ドカンッ!! と豪快な土煙が二人の目と鼻の先に上がった。
地雷原も罠も全てを完璧にスルーして舞い降りたその人影は、煙の中から何事もなかったかのようにすくっと立ち上がり、パンパンと服の塵を払う。
「前回のクローンは幸福なポットで死んでしまう幸福になれない愚か者でしたが今回は完璧で幸福です。ふぅ、ここが今回のブリーフィングルームか」
「誰だ!?」
突如現れた侵入者に、サキが一瞬でヘルメットを下げ、アサルトライフルを構える。しかし、降ってきた不審者は警戒するサキの銃口をまるで見えていないかのように、親しげな笑みを浮かべて歩み寄ってきた。
「おお、貴方が今回の任務にあたる同志ですか。随分とお早いご到着で」
「任務……?」
「はぁ? コンピュータ様から招集がかかったでしょう? 我々アルファコンプレックスのトラブルシューティングメンバーとして」
「何言ってんのこの人……!?」
支離滅裂な単語の連続に、モエが目を丸くして後退る。
「トラブルシューターだと……!? どこから侵入した! 応答しろ!」
「どこからって…幸福なポット以外にありますか?」
「幸福な……ポット?」
サキがわかるほどの強烈な困惑に対し、探索者は親切丁寧に、そして一切の悪びれもなく大砲を指し示した。
「ええ、あの機能的で完璧な移動手段です。空から一直線にブリーフィングルームへ着弾する、実に合理的かつ幸福なシステムでしょう?」
「空から着弾……さっきの爆音と煙、まさか人間を大砲で打ち出したっていうの……!?」
「はぁ?幸福なポットは当たり前の移動手段でしょう?」
「貴様……何者だ!!」
怒りと困惑を限界まで爆発させたサキが銃頭を突きつけるが、探索者はまったく意に介さず、悠然と胸を張ってみせた。
「何者って……アルファコンプレックス所属の一般市民です。階級はブルー。貴方の階級は……ブルーですかね」
「はぁ!? アルファ……ブルー……!? 何をわけのわからないことを言っている!」
「訳がわからない……? なぜです? 完璧で幸福な市民なら全員知っているはず……さては貴様コミーか!!」
「コミーとは何だ!」
「我々アルファコンプレックスに楯突く完璧で幸福でない人たちの事です。……しかし、我々の名前を聞いても敵対の意思を見せないということは……コミーではない?」
サキの怒号に対し、探索者は顎に手を当てて「ふーむ」と一人で勝手に納得の表情を浮かべた。
「おい……サキ、こいつマジで会話になってないよ。思考回路が未知数すぎる」
モエが困惑を抱え直し、警戒の眼差しを強める。サキはこめかみに青筋を立て、引き金にかかった指にさらに力を込めた。
「理由はどうあれ、我々の陣地に勝手に着弾した侵入者だ! 問答無用で制圧する!」
「おっと、市民同士の戦闘はウルトラバイオレット様に厳罰されますよ。ZAP対象です。やめておきませんか?」
「ZAP……? 何を言ってやがる!!」
「まぁまぁ、落ち着いて。私もコンピュータ様に従属する一員として、むやみな戦闘はしたくないんですよ」
探索者は両手をひらひらと振って降参のポーズをとってみせるが、その表情には余裕すら漂っていた。サキは不審感を露わにし、怒声を飛ばす。
「ふざけるな! どこの誰かも分からない奴と仲良くおしゃべりするつもりはない! モエ、こいつの足を撃ち抜け!」
「や゛め゛ま゛し゛ょ゛う゛よ゛ぉ゛!!クローンが勿゛体゛無゛い゛!我々は同じ完璧で幸福を分かち合う市民でしょう?」
探索者が喉を絞り出すような情けない悲鳴を上げ、オーバーに頭を抱えてのけぞる。あまりの狂演ぶりに、引き金に指をかけていたモエの手が一瞬ピタリと止まった。
「……ねぇサキ、なんかこいつ、撃ったら撃ったで面倒なことになりそうなんだけど」
「惑わされるな! クローンとか意味のわからないことを言って引き伸ばしているだけだ!」
サキが激昂して銃口を突きつけ直すが、探索者は「命ばかりはお助けを〜!」と言わんばかりに必死の形相で手を振り回した。
「命は大切ですよ市民! 予備のクローンはあと5体しか残っていません! こんなところで無駄遣いしたら、次のブリーフィングでトラブルシューター失格としてクソ上司からZAPが飛んできますよ!?」
「知るかそんな理不尽なルール!! そもそもここはアルファなんとかでもブリーフィングルームでもない!!」
ついにサキのツッコミが炸裂する。しかし、その怒号の直後──
「そこまでだ、RABBIT小隊!」
重厚で容赦のない声が公園内に響き渡り、周囲の藪や遮蔽物の陰から一斉にヴァルキューレ警察学校の隊員たちが姿を現した。
「くっ……!? いつ間にこれほどの数が……!」
「遅いですよ。ZAPされても文句言えないレベルです」
サキが弾かれたように周囲へ銃口を巡らせる。だが、カンナの銃口はすでにサキのすぐ後ろまで迫っており、モエの後ろにもキリノが引き締まった表情で銃を構えていた。完全に退路は絶たれている。
そこへ、ゆったりとした足取りで先生が歩み寄ってきた。
"ごめんごめん。ちょっと手間取っちゃった"
「先生……こちとら命懸けなんですけど」
"君なら生き残れるでしょ"
「雑じゃないっすか?」
軽口を叩き合う二人の横で、カンナが冷ややかな視線をサキへと注ぐ。
「動くな。SRTの精鋭といえど、この距離で囲まれては勝ち目はないぞ」
「くっ……」
悔しそうに歯噛みするサキに対し、探索者は事も無げに肩をすくめると、煽るようにサキの目の前へと歩み寄った。
「いくらSRT、特別対応チームといってもまだまだアマちゃんですねぇ……イミフの発言してる頭がおかしい人が突然現れたのなら即拘束でしょう。頭抜かれててもおかしくはなかったですが……まぁそうなったらなんとかしてましたけど」
「なっ……!? 貴様演技か!!」
激高するサキに対し、探索者は心外だと言わんばかりにひらひらと手を振る。
「せめてロールプレイと言ってください」
"でも……頭が狂ったのかと思ったよ"
呆れ半分で呟いた先生の言葉に、探索者は大げさにショックを受けたポーズをとってみせた。
「酷いですね……まぁこっちは狂ってしまった人間はよく見てますから、その演技ぐらいならチョチョイですよ」
「本物の狂人を基準にするな!!」
サキの鋭いツッコミが子ウサギ公園に響き渡る。
「でも狂人と常人の見分けがつかなかったのは貴方達の落ち度ですよ。私は見破れるようにエサはちゃんと撒きましたし、特殊作戦群を名乗るのならその程度は見破らないと」
「エサ…?」
「最後の方。クソ上司と言った場面です。コンピュータ様だのウルトラバイオレット様だの、目上にはやたらと敬意を払う狂人が、急に『クソ上司』なんて言うはずがないでしょう。そういう所から読み解くんですよ」
探索者は悪辣な笑みを浮かべ、人指し指をチッチッと横に振った。挑発的なその言動に、サキの額にはくっきりと青筋が浮かび上がる。
「なっ……! 貴様、 SRTの教育課程をバカにしているのか!?」
「いいえ? 単に『あり得ない異常事態』に遭遇したときの柔軟性が足りないと言っているんです。銃を構える前に『事態の異常さ』そのものを疑うべきでしたね」
「……ぐ、ぬぬっ……!」
ぐうの音も出ない正論と煽りを混ぜ込まれ、サキは悔しそうに拳を握りしめた。その横でモエが「まあ、確かに『人間が大砲で飛んでくる』なんて状況、マニュアルにも載ってないからなぁ……」と半目で呟く。
「はいそこ、負け惜しみは取調室で聞く! 2人とも、大人しく銃を置け!」
カンナの厳格な声が響き、サキとモエは苦々しい表情で武器を地面へと下ろした。
"……なんかよく知ってるみたいだね"
状況が一段落したのを見届け、先生が探索者へとなにげなく問いかける。
「えぇまぁ。廃校になるって言われた時にスポンサー契約を結ぼうとしまして、その時に色々調べました」
"は?"
先生の素の疑問に対し、探索者は事も無げに、あたかも当然のことであるかのように答えた。サキとモエも「スポンサー……?」と呆然とした顔で探索者を凝視している。
"いやいや、ちょっと待って。スポンサーってなに? SRTを買い取ろうとしたの!?"
先生が思わず身を乗り出してツッコミを入れると、探索者はやれやれと肩をすくめて見せた。
「まぁ、有り体に言えばそうですね。丁度その頃は私兵が欲しかった所なので。特殊訓練を受けているのなら、コストも浮きますし」
探索者は事も無げに言ってのけ、指先で顎をさすりながら満足げに頷いた。
"私兵って……君、普段一体何と戦ってるの?"
先生が引きつった笑顔で額を押さえる横で、拘束されたサキの目が限界まで見開かれる。
「冗談じゃない! 私たちはSRT特殊学園の生徒だ! 誰かの私兵になるために訓練を受けてきたわけじゃない!」
「おや、威勢がいいですね。ですが『廃校』という現実に直面した組織が選べる道なんて、どこかの犬になるか、路頭に迷うかの二つに一つでしょう? そこで救いの手を差し伸べようとした私の優しさを、どうか理解してほしいものですねぇ」
「救いの手どころか邪悪な悪魔の誘いだろうが!!」
サキの怒号が子ウサギ公園に響き渡る。その隣でモエが「……でも、もし契約してたらご飯は毎日食べられたのかなぁ」と呑気に呟き、すかさずサキから「モエ!!」と怒鳴られていた。
「まぁ…こっちは歩み寄ったはずなんですけど、論外と言わんばかりに投げ捨てられましてね。空井さんにも一応面識ありますよ。まぁほぼ顔も見ずに追い出されたので覚えてないと思いますが」
探索者は昔を懐かしむような遠い目をして、やれやれと肩をすくめて見せた。
「はぁ!? 私がアンタと面識……!?」
サキは驚愕で目を見開いたあと、必死に過去の記憶を掘り起こそうと眉間にシワを寄せた。
「……記憶に無い」
「でしょうね。まあ、私は食うこともできないプライドなら、そのへんの犬にでも食わせたほうがいいとは思いましたけどね」
「……言い方が酷すぎる」
「事実でしょう? 腹は膨れないし、銃弾も防いでくれない。SRTを名乗る資格がどうこう言ってる間に、学校そのものが消えるんですよ」
正論と毒を含んだ探索者の言葉に、サキはぐっと言葉を詰まらせ、悔しそうに視線を落とした。公園を包む空気が、一瞬だけ重く冷ややかに沈む。
「ま、私が言いたいのはそれだけですよ」
探索者が冷めた口調で吐き捨てるように告げている間に、先生によって捕らえられたRABBIT小隊の面々がヴァルキューレ警察学校の車両へと連行されていく。気まずい空気を和らげるように、先生は苦笑いを浮かべながら彼女たちへと声をかけた。
"えーっと……ごめんね? 初めまして。SRT特殊学園の生徒達……だよね?"
穏やかな問いかけに対する答えは、激しい拒絶の暴風だった。
「お前と話す事なんて一つも無い!」
「何なに、冷やかし? それともバカにしに来たの?」
サキとモエが相次いで吐き捨てるなか、小隊長のミヤコだけが静かに先生を射抜くような視線で見つめ返す。
「……貴方があの生活安全局を指揮した大人ですか?」
"うん、そうだよ"
落ち着いた言葉を返した先生に対し、ミヤコは心底冷ややかな声を響かせた。
「……そうですか。貴方があの多くの生徒達の悩みを解決し、生徒達から信頼されている超法規的捜査権を持ったシャーレの先生……先生、私達は貴方のような大人が一番大嫌いです」
「地獄に落ちろ」
「もう二度と会わないだろうね」
罵詈雑言を残し、RABBIT小隊の面々はヴァルキューレの隊員たちに連れられてその場を去っていった。遠ざかる彼女たちの背中を見送りながら、先生はぽつりと呟く。
"うーん、元気だ"
「ボロクソで草。威勢のいい声が響いてますねぇ~~~!! なんと言ってるかは暗号みたいで聞き取れませんけど」
探索者は呆れたように肩をすくめると、小さく笑い声を漏らした。