巡る探索者、青き青春の果てを見る   作:抹茶3939

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黄衣の王と自称平凡

 

 

 

ハフッハフッ

 

ズズズッ

 

 

 

 

「へぇ…この人が先生かぁ…イケメンだなぁこの人」

 

そんな事を呟き、戦場を駆け回る1人の大人…の画面をカップ麺を啜りながら、見続ける

どうやら先生は連邦生徒会が秘密裏に作っていたサンクトゥムタワーとやらに用事があるようなのだが…なぜか不良生徒…いわゆるヘルメット団が占領しており、その対処に明け暮れていた

 

 

「……しっかし、マジで銃弾を食らっても損傷どころか出血もしないなんて…どうなってんだ?ここのオナゴ?」

 

 

驚くべきは生徒たちの頑強さだけではない。先生の指揮能力は、もはや「異能」の域に達していた。

 

「……ありゃヤベーな。特殊部隊でも扱ってたのか? あの人の視界だけTPS視点じゃねーとおかしいだろ背中に目をつける人(ニュータイプ)だったりするんか?」

 

 

「そろそろバレそうだし、少し離れとくか」

 

 

そう思い、箸からコントローラーへと手を伸ばす

すると画面が動き出し、先生に見つからないように建物の陰へと場所を移す。

 

 

「…自動追跡モードにしてっと…」

 

 

先生がタワーの奥へ消えていくのを確認し、探索者は「本格的な仕事」の準備に取り掛かる。懐から取り出したのは、青と黒の彩色が施された、禍々しい「鬼」のマスク

それを顔に当てた瞬間、室内にメキメキと骨が軋む音が響いた。

 

(……何度やってもこの感覚は慣れねぇな……身体が粘土みたいにこねくり回される……)

 

数秒後、そこに立っていたのは「男の探索者」ではない。どこにでもいるような、しかしどこか人を寄せ付けない冷徹な美しさを備えた「少女」の姿だった。

 

 

「あーあー!…声大丈夫そうやな」

 

 

 

高く澄んだ、しかし芯の通った女性の声、骨格ごと作り変えるアーティファクトの効果を確認し、探索者は重厚な自室の扉を開けた。

廊下に出ると、そこでは休憩中であろうバニー姿の生徒たちが、ドーナツやコンビニ弁当を囲んで談笑していた。

 

 

「あっ!支配人、お疲れ様です」

 

「おつかれー大丈夫?困り事とかあったらすぐ言ってね?」

 

「給料上げてくださーい」

 

「それはカイザーに言ってくれ」

 

「休憩も業務時間に追加してください」

 

「さすがに勘弁してくれ…」

 

「あと、足は大丈夫?バニー姿も嫌になったらすぐ言ってね」

 

「大丈夫でーす!支配人が作ってくれたヒールめっちゃ足疲れないんで!」

 

「ホント凄いよね!スニーカー履いてるのとほぼ変わりないし」

 

「しかもバニー手当も付けてくれるとかマジで神!」

 

「基本給は上げれないけど手当なら付けれるからね」

 

「その調子でお客さんから金巻き上げたらボーナスください」

 

「じゃあ負けたら減給な?」

 

「それはマジ勘弁ー!」

 

 

 

 

 

 

探索者は苦笑しつつ、二枚の写真を取り出してテーブルに置いた。先ほど観測した「先生」と、あの不気味な「黒服」だ。

 

 

「いいか、ボディガードにも伝えておくが、私以外の大人……特にこの二人が来たらすぐに私に伝えてくれ。私を嗅ぎ回っている連中だ。注意しろよ?」

 

「は~い。……でも支配人、このイケメンさんは? まさか一目惚れですかぁ!?」

 

「ちげーよ。そこの芳醇な恋の香り、とか言ってる奴!一週間トイレ掃除な」

 

「「「ごめんなさーい!!」」」

 

 

軽い冗談で場を締め、探索者は裏口の扉に手をかけた。

 

 

「じゃあ私は少し出かけてくるから」

 

「あっ!じゃあスイーツ買ってきてくださーい」

 

「給料から天引きな」

 

「えぇーケチ!守銭奴!ワーカーホリック!」

 

「最後のは違うでしょ」

 

「最後に家に帰ったのっていつですかー」

 

「ここが私の家だ」

 

「それがワーカーホリックっていうんですよ」

 

「そうだそうだー!ゆっくり休めー!私たちがサボれないだろ

ー」

 

「本人が居るのに堂々とサボり宣言ですか、よし一週間トイレ掃除ね」

 

「ごめんなさーい!!」

 

 

 

 

背後から聞こえる生徒たちの笑い声を背に、探索者は闇の中へと足を進めた。

 

 

 

──────────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

ブラックマーケット特有の、湿った鉄と油の匂いに混じっていってラム酒の、甘くも鼻を刺すような匂いが漂ってくる。

 

 

 

 

少女の姿に変装した探索者は、ブラックマーケットの入り組んだ路地を、慣れた足取りで進んでいた。辿り着いたのは、何の変哲もない、むしろ周囲に溶け込みすぎて不気味なほどの店構え。

 

 

 

「よっ!暇か?」

 

「ラム酒の匂いがすると思ったらやっぱりアンタか」

 

 

 

店主のロボットが、ガシャガシャと金属音を立てて出てくる。こいつはキヴォトスでも重罪とされる「酒の密造」に手を染める犯罪者だ。本来なら関わりたくない人種だが、探索者からすれば裏社会の情報とアーティファクトの回収には欠かせない協力者(デコイ)でもあった。

 

「お前が来るってことは酒が切れたのか?」

 

「いいや、まだあるが…もう少し買おうかな」

 

「おっ!毎度ありぃ!

 

 

 

 

んで?会いに来たホントの理由は?」

 

「とぼけんな……あるんだろ」

 

「さっすが!最近仕入れた極上の呪物だよ」

 

「やっぱか…最近噂になってたからな」

 

 

「ちょっと待ってくれよ…確かぁ…この辺に」ゴソゴソ

 

 

ロボットは棚の奥をゴソゴソと探り始めた。その間、探索者は何気ない風を装って情報を引き出す。

 

「…なぁ、少し聞きたいんだが」

 

「ん?」

 

「カイザーの動きはどうだ?」

 

探索者の疑問にロボットは頼んでおいたものを探しながら平然と答える。

 

 

「いつも通り真っ黒、アビドス高校から限りなく黒い利子で金をバリバリ回収してるよ?もうちょいしたらお目当ての遺物を回収するためにバカ高い利子をいちゃもんつけて吹っ掛けて土地を回収しようとするだろうね」

 

「…そうか、あと最近のホットな話題は?」

 

「よくぞ聞いてくれました!最近のホットな話題といえばやっぱ

り連邦から新しく作られるという部署「超法的機関 連邦捜査部S.C.H.A.L.E」の先生でしょ」

 

「ま、そうなるよな」

 

「とりあえずこの辺じゃ珍しい大人の牡である事ぐらいしか情報がなくて、みんなソワソワしてるぜ」

 

「そういうお前は落ち着いてるな」

 

「まぁな、とりあえずうちの家業に影響でないことを祈るぐらいしかやること無いし」

 

「確実に影響は出るだろ」

 

「そーとも限らんよ?俺には(賄賂)があるからな」

 

 

「ほい!お目当ての呪物だよ」

 

 

ロボットはニヤリと笑い、厚手の手袋をはめた手で、棚の奥から一冊の本を取り出した。ボロボロの麻縄でまとめられた羊皮紙。触れた瞬間、探索者の脳内に冷たい泥が流れ込むような、吐き気をもよおす唄が響き渡った。

 

(この程度の呪物ならまだマシだな…前に行った世界じゃ、街一つが生贄になった)

 

 

「これは…黄衣の王か」

 

「あいも変わらず、こいつを素手で触れるとかヤベーな。普通は正気を失うか、発狂して踊りだすもんだが」

 

「慣れているんでな……中身は?」

 

「言われた通り、覗いてないよ」

 

 

探索者は代金をチップ込みで支払い、魔導書を受け取った。

 

 

「…あぁそうだ、前に依頼されたベアトリーチェ、引いてはアリウス地区の情報なんだが…もう少し時間がかかりそうだ」

 

「……理由は?」

 

「………ここだけの話なんだがな、調査している場面で警備が特に厚い場所があってな、そこを調べるのに時間がかかってる」

 

「……分かった、良い情報なら追加報酬を渡すよ」

 

「さっすが!分かってるねぇ旦那は!」

 

 

(コイツにはを()握らせておけば、割と何でもしてくれるからな、良いカモ(お客様)を演じて危なそうな所(特にカルト集団)に突っ込ませよう)

 

 

「じゃあ、そろそろ行くわ」

 

「また何か掘り出し物なんかがあったら連絡するんで」

 

「分かった、ありがとう」

 

「まいど〜」

 

 

探索者はその場からすぐに離れ、思考を巡らせる

 

 

 

(嫌な予感がしたから、急いで来てみたが………まさかとは思っていたが、やはり魔導書も紛れ込んでいるんか……これは…また色々と警戒しなくちゃあいけないな。……最悪のシナリオは………宗教団体(カス共)が出来ること、それだけは阻止しなければ…まぁでも、まだマシなヤツで良かったかな…これがネクロノミコン(六法全書)だったらこの辺り一体を調べなきゃいけなくなるからなぁ……流石に面倒過ぎる)

 

 

 

 

探索者はそんな事を思いながら、指輪にその魔導書を押し込むすると、その魔導書はズブズブと音を立てて小さな時計のなかに沈んでいく

 

 

 

(本当は燃やしても良いが、雑に燃やすとボヤ騒ぎになって風紀委員会とか正実のお世話になるからなぁ(2敗))

 

 

ドン!

 

 

「おっと!」

「キャッ!」

 

思考の海に沈んでいた探索者は、正面から歩いてきた少女に気づかず、肩をぶつけてしまった。

 

 

(しくったなぁ……慰謝料代わりに喧嘩ふっかけられるか? この街の女子高生は挨拶代わりに銃をぶっ放すからな、怖いわ……)

 

 

「すまない、少し考え事をしていたので」

「い、いえいえ、こちらこそすいません!」

 

 

慌てて頭を下げる少女、探索者は少女の姿に変装したまま、冷徹な観察眼で彼女を値踏みした。

 

 

ボロボロの制服を着た自分の「社員」たちとは違う、清潔で整った制服。育ちの良さを感じさせる、どこかお嬢様っぽい歩き方。

 

 

(ミレニアムの小金持ちか、あるいは……ちょっくらカマでもかけてみっか)

 

 

「それにしても珍しいですね。んな場所にイイトコのお嬢様がいらっしゃるなんて」

 

「ち…違いますよ!トリニティ所属なだけで平凡な女子高生です!」

 

「へぇ、でもトリニティの人ははこんな暗い場所には来ないじゃあない?」

 

「そ…それは……最近新しいペロロ様のぬいぐるみがこの辺に出回っているって噂を聞いて」

 

「ペロロ様っていうと………あれか、モモフレンズとかいうやつ?」

 

「そうです!私!ペロロ様の大ファンで!」

「あぁ…そういう事ね」

 

 

(あぁ、あのキモ……いや、独特なデザインの『モモフレンズ』とかいうやつの鳥か。バニーの子たちに『景品に入れたら絶対客来ます!』って押し切られて、カジノの目玉景品に置いたやつだ。まさかこんなところにまでファンがいるとはな)

 

 

 

少女の瞳は、およそこの無法地帯には似つかわしくないほど、純粋な熱意に燃えていた。探索者は内心でニヤリと唇を吊り上げる。

 

 

 

「それだったらここを突き当たりを左にいって真っすぐいくと、カイザーカジノっていうのが左側に出てくるから、そこのカジノ景品として売ってた気がする」

 

「ほ…本当ですか!?ありがとうございます!」

 

「後、下手にトリニティとかって言わない方が良いよ?チンピラにカツアゲされるのが関の山だし」

 

「あ……」

 

少女はしまったという表情を浮かべ探索者はクスリと笑った

 

「ま、次からは気をつけな?この辺は特にいい人ばかりじゃないからね」

 

「はい!ありがとうございます!」

 

 

 

(ミレニアムのお嬢様かと思ったら、トリニティか。あそこを平凡と言い切れるあたり、あの子も相当ズレてんな……ま、ウチのカジノでせいぜい沢山金を落としてくれよ? 「平凡」な軍資金が尽きるまでな)

 

目的地に向かって歩き出す探索者の足取りは、先ほどまでの重々しさが嘘のように軽やかだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




アーティファクト:青鬼の面
とある街で出会ったある男が付けていた仮面、ブルーベリーの甘く懐かしい香りがする。
装着者の肉体を再構築し、性別・年齢・骨格・容貌に至るまで、任意の外見へと変化させる。

声質、仕草、無意識の癖といった要素は変わらない為、場合によっては違和感になる。
また、変身の際には骨格および肉体構造が粘土のように歪められるため、装着者には強い異物感と痛覚が伴う。

――これは“なりたい自分”になるための仮面ではない。
“そう見られる自分”へと、現実を歪めるための仮面である
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