巡る探索者、青き青春の果てを見る   作:抹茶3939

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そこに3つの封筒があるじゃろ?

 

 

 

 

 

(今のこの子たちが、そんな“綺麗事”だけで納得できるほど、状況は甘くないか)

 

探索者が予想した通り、ゲーム開発部のメンバーは納得していないようだった。

 

「そ、そんな筈はない! きっと何かエラーが……!」

 

「ファイルの損傷も、修正パッチも見当たらない。最後の転送情報、ファイルサイズ、データ構成……すべて正常。エラーなんてどこにもないよ」

 

ミドリの淡々とした報告が、逆に残酷な真実を浮き彫りにする。

 

「そ、それじゃあ本当に……」

「こ、これで終わり!? 嘘でしょ!?」

「お姉ちゃん……私達、何か悪い夢でも見てるんじゃ……」

 

「終わりだああぁぁぁぁぁあああ!!」

 

モモイが頭を抱えて絶叫する。

 

「知ってた! 世界にはそんな、それ一つで全部が変わって上手く行くような便利な方法なんか無いってことぐらい! でも、期待ぐらいしたっていいじゃん! うわああぁぁぁんっ!」

 

「……煩いですねぇ」

 

淡々とした声が、部室の過熱した空気を冷ややかに叩く。

 

「真理っていうのは、いつだって思い上がった者に対して、“正しい絶望”を突きつけるために現れるものですよ」

 

探索者は椅子に深く背を預けたまま、瞳の奥でで少女たちを射抜く。

 

「今回のそれが、たまたま『ゲームを愛しなさい』という、あまりにも当たり前な言葉だった。ただそれだけの話です」

 

「酷い!!」

「ごめんね、アリスちゃん……」

 

誰かが、消え入りそうな声で呟いた。

 

「私達は……G.Bible無しじゃ、良いゲームは作れない……」

 

その言葉に、部室の空気は底の見えない暗闇へと沈み込む。

探索者はそれを見て、わずかに目を細めた。

 

「……別に、作れないわけじゃないでしょう」

 

静かな、けれど確信に満ちた声だった。

 

「ただ、“何を良いと思うか”を決めるのに、少し遠回りをしているだけです……それに」

 

探索者はそう言いながら、コートの懐から三通の封筒を取り出し、テーブルの上へ静かに滑らせた。

 

「もう、手札は揃っていますよ……あとは、貴方たちが『それ』をどう使うかだけだ」

 

「……手紙?」

 

涙を拭い、モモイが恐る恐るその封筒に手を伸ばす。

そこに書かれていた名は――

 

『ハイパー無慈悲』

『ゥ!!』

『クソゲーハンター』

 

「…誰?」

 

「この前ゲームデータを送った奴らからの回答書です」

 

「あっ!あのエナドリで呼吸する人たちの!?」

 

「…まぁそんな感じです」

 

「この手紙にはこのクソみたいな聖書よりも詳しく、貴方たちが作ったゲーム。テイルズ・サガ・クロニクル1の感想が書かれています」

 

「予想ですが、書いてある言葉はとても厳しいです。それでもヒントを得るためにボロクソに書かれているレビューを見る勇気はありますか?」

 

探索者の問いかけにゲーム開発部全員の首がゆっくりと縦に頷く

 

「ならよしです。さて…どれから観ますか?一番容赦がないのは“ゥ!!”ですけど」

 

「どうせ全部見るんでしょ! アリス、選んで!」

 

天童アリスは少しだけ迷うように封筒を見つめて――

 

「では……これで!」

 

アリスの指が示したのは、『ハイパー無慈悲』

 

「んじゃあ開きますよ」

 

探索者が封筒を切り、中の書類をテーブルに広げる。

そこには、整然とした、それでいてどこか優しさを感じる筆致で言葉が並んでいた。

 

 

──────────────────────────

 

      プレイレポートの共有について

 

探索者さんへ

ゲーム、最後までプレイさせてもらいました。

 

まず最初に伝えたいのは「確かに粗は多いけど、すごく“伝わるものがある作品”だと思います」

 

全体的にバランスはまだ荒くて、 特にチュートリアルと実際の挙動にズレがあるのは気になりました。 プレイヤーが混乱してしまうポイントも多いです。

 

でも、その中でも――

・このシステムを作りたかったんだな、とか

・この展開を見せたかったんだな、とか

 

そういう“作り手の意図”がちゃんと伝わってきました。それって、ゲームとしてすごく大事なことだと思います。

 

あと、ボス戦なんですけど、 難しいというより「理不尽に感じる瞬間」が多かったです。 プレイヤーが“納得して負けられる設計”にできると、 もっと良くなると思います。

 

厳しいことも言いましたけど、 このゲームはちゃんと磨けば、もっとプレイヤーを笑顔にできる面白い作品になります。

 

ゲーム作りは、一度のミスで終わるものじゃありません。バグがあっても、直せばいいんです。何度コンティニューしたって構いません。

 

もし、どうしても行き詰まってしまった時は、一人で抱え込まずに誰かと「協力プレイ」してみてくださいね。

 

だから…ゲームオーバーになっても諦めないでください。最高のエンディング楽しみにしてます。

 

あ、でもクリエイターのライフがゼロにならないように、ちゃんと休むことも忘れずに!

 

完成、楽しみにしてます。

 

天才ゲーマーM

 

 

 

 

 

 

──────────────────────────

 

 

 

それは「評価」でも「称賛」でもなく――ただの“プレイ後の真剣な対話”だった。

 

読み終えた部室に、沈黙が流れる

それは絶望の沈黙ではなく、自分たちの「意図」が、画面の向こう側の誰かに正しく届いていたという事実に、胸を打たれた静寂だった。

 

 

「……事務員さん」

 

ユズが、潤んだ瞳で探索者を見つめる。

 

「この人……『天才ゲーマーM』さんは、本当に私たちのゲームを楽しんでくれたんですね?」

 

「少なくとも、“適当に遊んだだけの評価”ではありませんよ。次はどうします? 自称『神』の、もっと心臓に悪いやつにしますか?」

 

「……行く! この勢いのまま、全部読み切ってやる!」

 

モモイが力強く顔を上げ、次の封筒へと手を伸ばした。

 

 

 

──────────────────────────

 

         神からの審判

 

フハハハハハハハハ!!

 

探索者ァ!! 貴様、これを“ゲーム”と呼称したかァ!?

笑止!!極めて不愉快!

 

まず第一に――チュートリアルが虚偽を含んでいる。論外だぁ!

チュートリアルとは何か?

それはプレイヤーに“ルール”を与える、神の宣告である!!

 

それを裏切るとは何事だ!?許されるのは世界観上の演出のみ!!

システムにおいて嘘をつくなァ!!!

 

……とはいえ、例外が存在しないわけではない。

貴様のそれは『HUNTER TALE』あのチュートリアルのオマージュのつもりかァ?

 

フハッ……笑わせるな

 

あれは特例中の特例だ!!

 

プレイヤーを物語へ引きずり込むために、全てが計算された上での“意図的な裏切り”だ!!

 

ルールを騙すことで、世界観を成立させている!

だが貴様はどうだ!?

 

システムの整合性も取れていない状態で、ただプレイヤーに誤情報を与えているだけではないか!!

それは演出ではない。ただの設計ミスだァ!!!

 

問おう!!

貴様のゲームにおいて――チュートリアルで嘘を教えることは、

本当に“必要な行為”なのか!?

 

答えられぬのなら、今すぐやめろォ!!

「意味のない嘘」は、ゲームを壊すだけだぁ!!

 

さらに――

 

序盤の難易度設計が破綻している。

プレイヤーは“学習”する前に叩き潰される!

理解なき死は、絶望ですらない。ただの拒絶だぁ!

 

そして貴様は履き違えている!!

 

『古き良きゲーム』と『黎明期の理不尽ゲーム』は違う!!

 

前者は制約の中で研ぎ澄まされた設計!!後者はただの未熟と調整不足だァ!!!

 

貴様のそれはどちらだ!?

さらに言おう――

 

ゲームとは“絶望”を与える装置ではない。“乗り越えられる絶望”を設計する装置だぁ!

 

・ゲーム下手なプレイヤーでも攻略可能な突破口が存在するか

・トライアンドエラーのストレスを最小限に抑えているか

・その上で、いかにプレイヤーを絶望させるか

 

この順序だ!!

順序を間違えるなァ!!!

貴様のゲームは――

 

・ゲームバランスは未調整

・報酬設計は破綻

・快楽設計は皆無

 

何もかもが不完全だ!!

 

だが――

 

……フハハ。

 

いいだろう。

 

その“未完成”その“破綻”その“暴走”……

 

実に創造主として未熟で、美しいではないか!!

この私が直々に言ってやる。

 

作り続けろ。完成させろ。その時初めて――

 

貴様のゲームは「神の足元にある」

 

 

──────────────────────────

 

 

「……な、なにこれ。怒られてるの? 褒められてるの!?」

 

「両方ですね。あいつ……『神』にとって、未熟な設計ミスは万死に値する罪ですが、そこに宿る『創造への熱量』だけは唯一肯定の対象になるんです」

 

部室に、わずかな沈黙が落ちる。

その中で、探索者はもう一度手紙へ視線を落とした。

 

(……)

 

さっきまで感じていた“引っかかり”が、ほんの少しだけ輪郭を持つ。

 

理屈としては正しい。

内容も、いつものあいつの断罪そのものだ。

 

それなのに――どこかだけ、いつもより“整いすぎている”

いつもならもう少し荒く、極端で、断言だけで押し切るはずの箇所に、わずかな“説明の癖”が混ざっている。まるで、相手が「理解すること」を前提に、あえて言葉を選んでいるかのような――そんな“錯覚”を覚える

 

(……気のせいか。あるいは、あいつも丸くなったのか?)

 

かつて、孤独な独裁を謳歌していたあいつの隣で、自分が語った「世界の広さ」や「旅の不完全さ」。そんな、神のロジックからすればゴミのような価値観を、あいつなりに咀嚼し、こうして教え子の窮地へと「教育」の形で反映させたのだとしたら。

 

(……いや、ないな。相手はあの『神』だ。ありえねぇ)

 

探索者は小さく息を吐き、その違和感をいったん脇に置いた

 

 

「まぁ、要するに」

 

視線を上げる。

 

「怒っているし、褒めてもいます。どちらも本音です」

 

「なにそれ最悪じゃん!!」

 

モモイの叫びが、部室の沈黙を吹き飛ばすように響く。

探索者は、その耳をつんざく騒音を遮ることもなく、静かに肩をすくめた

 

「神というのは、だいたいそういう生き物ですから。人間が理解できてたら聖書は作られてませんよ」

 

その言葉は、モニターに映る“G.Bible”の、あまりにも簡潔すぎた答えへの皮肉のようでもあった。

 

「さて、一通目は『心』二通目は『技』……では、最後の一通、開けますよ」

 

 

 

──────────────────────────

 

 

 

 

どうもっす、普通に最後までやりました。

 

結論から言うとクソゲーではないっすね。普通に遊べます

 

 

ただまあ、色々言うと

 

・チュートリアルに嘘あり

・ゲームバランス崩壊気味

・シナリオとシステムが喧嘩してる

って感じで、 “見切り発車で全部詰め込んだゲーム”って印象

これは「未完成」じゃなくて、“どっちにもなりきれなかった残骸”だな。

 

で、ボスなんすけど

 

パターン3つしかないのに誘導分かりにくいっすね。 覚えゲーにするなら、もうちょいヒントが欲しい。

あと罠。 気づけるのはいいんすけど、回避しても気持ちよくない

ここはかなり損してます。

 

 

――で、ここからが本題なんすけど

 

このバグ、消さないでください

多分これ、 詰めるとショートカットできます。 TA勢めちゃくちゃ喜びます。

 

……というか、ぶっちゃけ、フェアクソとかの、あの底なしの絶望感と比べると、圧倒的に狂気が足りなさすぎる。

 

プレイヤーを本気で発狂させるような

 

・セーブポイントの直前にノーモーション即死トラップ

・1%のドロップ率を要求する必須イベントアイテム

・唐突に始まる、操作性が最悪なシューティングミニゲーム

 

……みたいな、『作者、寝てないのか?』ってレベルの殺意が少なすぎる。

丁寧に作られすぎてて、ストレスはあるけど『納得』できちゃうんすよ。だから、これはクソゲーじゃない。

良くも悪くも『普通に遊べる良心的なRPG』の枠を出ていない。

 

 

 

結局のところ、このゲーム……『どっちかに振り切れてない』んすよ。

 

もし、万人に遊んでもらって、ユーザーの笑顔を見たいっていうを目指すなら、今すぐその『理不尽な罠』と『不親切なチュートリアル』を全部ゴミ箱に捨てて、徹底的にストレスフリーな介護RPGに作り直すべきだな。

 

逆に

 

俺みたいな狂人を本気で発狂させて、攻略後にコントローラーを握りつぶさせるような、『クソゲー』を目指すなら……

 

 

もっとプレイヤーの神経を逆撫でして、

『作者は人の心がないのか?』って罵倒されるレベルの殺意を、

1ピクセル単位で詰め込みなさいよ。

 

中途半端に『いい子』でいようとするから、システムとシナリオが喧嘩して、『ただの調整不足な良ゲー』止まりになってしまう。

 

 

あと総評っすね。

世の中、神ゲー1に対してクソゲー1000あるんすよ。 でもその中に“良いクソゲー”ってのがある。

 

条件は2つ。

 

・何か一つ尖ってること

・作者の熱意があること

 

このゲーム、 熱意だけなら神ゲー級、マジで

だから伸びるか死ぬかは、ここからっすね

今はまだ「普通にクリアできる良ゲー」。 でも“狂人が遊ぶ余地”はある。

そこ伸ばせば化けます

 

以上

 

──────────────────────────

 

 

 

探索者は、クソゲーハンターからのレポートを読み終え、再び眉間に深い皺を刻んだ。

 

(……わざわざ「どう直すべきか」の二択まで提示してやるなんて、らしくないな)

 

本来、あいつにとっての評価とは「快」か「不快」か、その二値で完結するはずのものだ。

それが今回は違う。開発側の迷いを見抜き、その上で“進むべき方向”まで示唆している。

 

(……選び方が、少しだけ丁寧すぎる)

 

断言できるほどの変化ではない。だが、見過ごすにはあまりに座りの悪い違和感だ。

壊すか、褒めるか。刺すか、見限るか。

そのどちらかに振り切れていたはずの剥き出しの刃が、ほんのわずか――誰かを導くために角度を変えている。

 

探索者は、ふと視線を横へ滑らせた。

机の上に置かれた、最初の一通――『ハイパー無慈悲』の手紙

それを手に取り、もう一度、最初から読み直す。

 

(……)

 

言葉をなぞり、意図を拾い上げる。

 

(……やっぱり、か)

 

露骨な違いはない。口調も、論調も、あいつのままだ。

だが、ほんの僅かに――“届かせようとする癖”が混ざっている。

 

探索者は、三通の手紙へとゆっくり視線を巡らせる

『ハイパー無慈悲』『ゥ!!』そして『クソゲーハンター』

 

どれも、よく知っている。思考のアルゴリズムも、判断基準も――間違いなく“本人”のものだ。

だが、その“選び方”だけが、わずかにこちらの計算と噛み合わない

 

(……妙だな)

 

違和感は一つではない。三通すべてに、同じような“ズレ”が混ざっている

本来なら切り捨てるはずの部分で言葉を足し、本来なら見捨てるはずの局面で、あえて選択肢を残している

 

理解はできる。思考も読める

だが、その「導き方」の輪郭に、探索者は覚えのある既視感を覚えた。

 

相手の思考の“隙”を先回りし、逃げ場を塞ぐのではなく、あえて「問い」を置くような――その、どこか事務的で、どこかお節介な手口

 

(……まさかな)

 

探索者は小さく息を吐き、自嘲気味にその疑念を振り払った。

 

自分が関わった程度で、あの怪物たちの在り方が変わるなど――そんな都合のいい話があるはずもない。かつて語った「不完全な旅」の話など、あいつらにとっては一時の退屈しのぎに過ぎなかったはずだ。

 

 

(……考えすぎだな)

 

 

「……探索者さん? 固まっちゃって、どうしたんですか?」

 

ユズの不安げな声が、探索者の意識を現実へと引き戻す。

 

「いえ。……少しばかり、手紙の味付けが気になっただけです」

 

「あじつけ?」

 

「ええ。送り主たちの『お節介』という名の、余計な味付けですよ……本来は、そんなもの必要ない連中なんですがね」

 

探索者は三通の手紙を無造作にまとめ、テーブルの中央へ放り出した。

 

部室に、ほんの一瞬の静寂が落ちる。

『心』を揺さぶられ、『技』を叩き潰され、『執念』を突きつけられた――三通の手紙が放つ圧力が、まだ空気に色濃く残っていた。

 

「……よし」

 

最初に口を開いたのは、モモイだった。

彼女は鼻の頭を赤くしながらも、ぐっと拳を握りしめ、弾かれたように立ち上がる。

 

「やろう……ここまで言われたら、もうやるしかないじゃん!」

 

「お姉ちゃん……」

 

「直してやるよ、全部! チュートリアルの嘘も、ガバガバな判定も、矛盾しているシナリオも、中途半端な殺意も! あいつらに『文句のつけようがない神ゲー』だって言わせてやるんだから!」

 

モモイの瞳に、絶望を焼き尽くすような真っ赤な火が灯る。

それに呼応するように、ユズも、ミドリも、静かに、しかし決然と顔を上げた。

 

「……うん」

 

ユズが、モニターに映る自分たちの「残骸」を真っ直ぐに見つめる。

 

「ちゃんと、向き合いたい。このゲームと……私たちが本当に作りたかったものに」

 

「…アリスもこのゲームは、まだ良くなると思います」

「だから――直しましょう」

 

探索者は、その様子を一歩引いた位置から眺めていた。

 

(……いい流れだ)

(文句のつけようもない)

 

手紙という毒は、彼女たちにとっての薬となり折れかけていた芯を焼き、かつてない強度の「覚悟」へと鍛え直した。もはや、彼女たちが筆を置くことはないだろう。

 

だが。

 

(……これ以上、深く関わるべきではないな) 

 

「一応言っておきますが…これ以上は、そこまで力にはなれませんよ」

 

一歩、明確な距離を置くように告げる。

その声は、熱狂に沸く部室の空気を切るように冷たかった。

 

「こういうものは、本来――当事者だけでやるべきものですから。余所者が手を出せば、それは君たちの作品ではなくなってしまう」

 

「は?何言ってんの?」

 

「……聞こえませんでしたか? 私はあくまで外部の「探索者さんの力が必要なのっ!」」

 

一切の迷いもなく、叫ぶような断言。

その言葉の圧力に、探索者の思考が、精巧な時計仕掛けが狂ったように一瞬だけ停止した。

 

「……何を。私はただの事務員ですよ。開発についてはほぼ素人同然、そんなやつが口を出せば、間違いなくゲームの進捗は滞る」

 

理屈を並べる。どこまでも正しく、反論の余地のない論理。

 

「関係ないって言ってんの!」

 

だが──モモイは、まったく引かない。

 

「上手いとか下手とか、そんなのどうでもいいの!」

「必要だから言ってんの!」

 

言葉が、視線が、探索者の胸にまっすぐに突き刺さる。

 

 

「……」

 

(……いつぶりだろうな)

 

(こんな風に、“理由抜きで”必要だと言われたのは)

 

 

その言葉には利害でも、打算でもない。ただ、それだけの理由で

「貴方が必要だ」という一点のみで、世界を繋ぎ止めてしまうような。

そんな、あまりにも身勝手で、あまりにも純粋な暴力。

 

 

 

(…少し懐かしい)

 

 

 

 

「……仕方ありませんね」

 

「少しだけ、ですよ」

 

探索者は諦めたように肩の力を抜き、彼の中にあった境界線を引き直した。

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