Fate/stay night―Innocent 作:Saika
◆〈第三話〉
Side魅音
「な何っ!?」
私の目の前でアビスは緋色に光る剣で魔術を相殺したサーヴァントの突進を受け止めていた。
「下がれマスター!」
吉烈に叫ぶ私のサーヴァント。
「…何者です、あなたは?」
アビスに自分の突進を止められている相手のサーヴァント――金髪の華奢な美少女が見えない『何か』とアビスの剣ごしにこちらに話しかけてくる。
「愚問だろう鎧のサーヴァント、貴様に攻撃したのだから敵と言う関係でしかない」
「本当にそうか?…あなたからは殺気が感じられないのだが?」
アビスはふと苦笑して――
「それは済まないな…では行こうか――」
刹那、私は身体の総身が震えるのを感じた。空気が一瞬で零下まで引下げられたように感じる程の悪寒だった。
「っつ!!」
鎧を着たサーヴァントはこちらから見ても凄まじい勢いで後ろへ跳んだ。
「どうした?なぜ自分から優位の状態からひいた?」
「…」
サーヴァントは黙ったままだ。
「(言える訳がない…私が彼を一瞬でも恐れたなど…)」
アビスは剣を構え直して――
「仕切り直しだ、行くぞ――!」
叫んだと共にまたアビスが私の視界から消えた。そしてサーヴァントの真横に残像を引きずりながら一瞬で移動している。
「っシー!」
空中に描かれる緋色の斬撃の軌跡――
ガッギンッ!
「ッツ!」
見えない何かでアビスの斬撃を受けるサーヴァント、そしてあちらもまた何かを切り返しての斬撃――
しかし、それは完全に空を斬る。あいての斬撃はアビスの黒い残像をすり抜けるだけ。
「遅い――」
まるでイラつくようにつぶやくアビス。
再度走る斬撃その数は一瞬で、四。
相手のサーヴァントはなんとか受け切るも四撃目を受けきれず後退した。
「…凄い」
アビスの戦闘力は私の想像以上だった。この速さなら速度がAなのも頷ける。
しかし、アビスの顔は晴れない。
「貴様の武器は剣だな?全長は1m20センチか30センチ程か…見えない剣か成程、他の武器の使い手なら相当にやりにくいだろうな」
「(見破るのが速い!…しかし何故?武器が剣?)」
サーヴァントは少しの沈黙の後、口を開いた、
「あなたは何のサーヴァントなのだ?」
「俺か…俺はセイバーのサーヴァントだが?」
「なに?しかし私もセイバーのサーヴァントだが」
――ッ、どういうこと?セイバーのサーヴァントが二人?そんな馬鹿な!聖杯戦争に召喚されるサーバントは各クラス一騎ずつのはず、なのになんでセイバーのサーヴァントが二人も?
「(どういうことだ?何故、同クラスのサーヴァントが?)」
アビスは少し黙っていたが――
「まあいいさ、それは貴様を消してから考えるさ――行くぞ」
考えること後回しにして構える。
また瞬転、アビスの体が霞み実像が残像へ変わる。
私の前の残像が陽炎のように揺らめき消える。
――直後に響き渡る金属音、アビスは消えてから一秒に満たない間に接近し剣戟を交わしている。
打ち合わされる緋色の剣と見えない剣、もはや私の目にはその刀身が見えない。私に見えるのはその剣が描き出す緋色の奇跡とアビスの後背に引きずられる残像だけだ。
「…速い」
鎧のサーヴァント――セイバーの顔には驚愕が浮かんでいる。
「ッ!速い!…あなたは相当の修練を積んでいますね!」
セイバーの口から出るのは賞賛。しかし、アビスは相手を見つめたままただ一言、『喋るな』と言い返した。
二人の剣戟は速度と手数を増していく。
――、一合、五合、十合、二十合、さらに加速する――
そして五十を越えようかとゆう時、ついにアビスの剣がセイバーの片口を浅く切り裂く。
「っく!」
セイバーはステップを駆使して後ろへ飛ぶ――しかし、アビスはまるで吸い付くかのようにセイバーに追走する。
そして一閃、セイバーは見えない剣で受けるが即座に返された二撃目に反応――できない。深紅の軌跡がセイバーの首に迫り――
「――っつ!」
弾かれたようにアビスは真横に跳んだ。直後、今までアビスが居たところに何かが突き刺さりアビスの残像をかき消した。
「何アレ?…剣?」
地面にはまるで剣のような形をした長細い物が突き刺さっている。
矢といえば可能性はひとつしかない、教会にはもう一人サーヴァントが居る。それが遠距離を得意とするサーヴァント――アーチャーだったのだ!
「離れろマスター!」
私を真横から衝撃が襲い私は横に倒れ込んだ――そこに今まで私の頭があった場所を『何かが』高速で擦過していった。
「…危な」
矢が地面に突き刺さったことでようやく自分が戦場にいると再認識する。
「…身を伏せて隠れてろ、相手は2000m以上先から弓で狙撃してきてる。つ立っていたらただの的だ」
アビスが私をかばうように前に立った、今まで頼りなっかた背中が今は大きく見える。
「伏せろ!」
いきなりのアビスの声に困惑しながらも私は身を低くした。アビスが腰だめに構えた剣を刀身が消えるほどの速度で振り切った。刹那、私の目の前で火花と轟音が響き渡った。
私の眼前に落ちる綺麗に切断された剣矢、アビスはあろう事か視認すらできない矢を正確に叩き切ったのだ。
ビュン!と今頃になって風切り音が私の耳に届く。このことから先ほどの居合が音速を2回り程凌駕していたことが伺える。
現在、9時42分。深夜の戦いはまだ深まっていく――。
第四話に続きます、お楽しみに!
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