Fate/stay night―Innocent 作:Saika
◆〈第四話〉
Sideアビス
俺はマスターに向けられる殺気を感じマスターの前に体を挟み込みます、自分が使う剣――自らの異能力の結晶から作り出された刃を持ち、
片刃で軽く湾曲した剣、コードネーム『デュランダル』を腰溜めに構える。
眼を閉じ感覚を研ぎ澄ます。音速を超えて飛来する物体を目視するのは実際問題、困難なので要らない視界はあえて切り捨てる。
――マスターから俺へと移される殺気。距離が2000m超えてなお俺にはそれが感じられる。
剣を握る腕から力を抜く、肩から余分な力を捨てる、これを0.4秒で行う。
剣を振るうに一番最適な姿勢へと瞬時に自分を変革する。腕は身体の延長に、腰はそれを支える支柱へ。
裂帛の気合と共にマスターに叫ぶ――
「伏せろ!」
マスターが姿勢を下げるのと同時に消失する殺気――それと同時に俺は身体の正中線を斜めにズレるように振るう――
響き渡る轟音、手首へ軽く衝撃が来る。
俺の後ろに落ちる矢、と思われる物。よく見るとそれは剣のようだ。その剣は切っ先から綺麗に切断されている。
俺は矢が放たれた方角へと視線をやる。しかし、そこには先程まで放たれていた殺気も存在感も無かった。
恐らく矢が迎撃されたのを確認した直後に狙撃場所を離れたのだろう。
「逃げたか…。マスター?もういいぞ」
そう言うとマスターは顔を上げた。その顔には驚愕と恐怖が浮かんでいた。
「……アビス、今のアーチャーの狙撃よね?どこに居るか分かる?」
「分かるには分かるがどうするつもりだ?」
いくらマスターが魔術師だろうとあのサーヴァント達は別格だ。普通の人間の身体能力しか持たない弥音では相手にするとしたら無理がある。
「マスター。あんたではサーヴァントの相手は無理があるし下手に動けばまたあのアーチャーに狙撃されるだけだぞ」
弥音は顔をしかめたがすぐに戻しこういった。
「あんたまだあのアーチャーがまだ射ってくると思う?」
「いや、もう殺気は感じないし俺がマスターから離れなければ打てこないだろうとは思うが。けど俺とあのセイバーがまたやり合い始めれば
俺を撃ってくるかもな」
「うーん…いけるかな?…」
マスターは何か思案してるようだ。しかし、そんな時間を悠長にくれるほど敵は待ってくれない。さっきから最初よりさらに大きい闘氣が前方から
叩きつけられている。
切られて燃えているんだろうか?あのサーヴァントの顔がやけに輝いているのは。
「マスター?考えるのはあとにしろ。相手は待ってはくれない。それと今から『異能(ちから)』使うから少し頭伏せてどっか分厚い壁のとこ見つけて
隠れててくれ。俺に近づくなよ?文字どうり腕なんかが消えるかもしれないから」
「やっと?さっきまで剣しか使って無かったのに」
「いや、使うのは剣だけどこれじゃない」
と、右手に握る紅い剣を持ち上げるアビス。
さらに怪訝な顔になる弥音。
「どういうこと?その異能ってやつは魔術みたいに形のないものじゃ無いの?」
弥音はてっきりそれは魔術みたいに固形化しないものだと思っていた。
「まあ最初の能力が発現しただけなら形はあんまり無いんだけど――まあ見てれば分かる。それに俺のステータスを監視してるといい。多分わからないって
言っていた部分がわかるから」
「それってあの位階なんとかってやつ?」
「ああ。マスターそろそろ隠れろよ、敵がご立腹だ」
アビスの肩ごしに見える金髪の少女の顔は怒っているのかすねているのか不機嫌そうだ。
「で、とにかくやるんならしっかりやってよ?」
アビスはそれに『ああ』とだけ答えて振り返らない。
「まず邪魔だし仕舞うか――
アビスは剣を握っている方とは逆側の手を開きそこにMDBSの特殊閉鎖領域に繋がるゲートを展開する。
左手に奇怪な数字の羅列が光とともに収束し、それは直径30cm程の円を形成する。
彼は右手の剣を持ち上げ左手に形成されている円に切っ先から剣を突っ込んだ。傍から見れば手のひらに剣を突き立てているようにしか見えないだろう。
しかし、本来手に刺さる剣は彼の手を一切傷つけず円の中に消えて行く。
そして最後に残った柄頭を両手を合掌するようにして押し込んだ。
弥音は現代科学の相当上を行く科学を見て一言、
「ほんとに便利ねあれも一個ないかしら?」と呟いていた。
戦場の空気が皆無である。
しかし、そんな事を言われているとはいざ知らず彼は律儀に待ってくれている
「
その形に制限は無い。武器、防具、生物とそれは人の思いの形だけ存在する。
「――
異能によって形をなされた
次回には戦いを収束「させます」。
未熟ですが感想があればお願いします。