個性社会のシャドウサイド   作:あとか

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怪奇案件File Re:start
No,0 絆の復活


 21世紀に入って十年ほどした頃、中国のある街に”光る赤ん坊”が生まれた。

 

その後、”普通でない能力を持つ子供たち”があちこちで生まれ、その能力は”個性”として世間に定着していった。そして22世紀にもなると、”個性”を持つ人が世界人口の8割を占めるようになり、特にこの世代に生まれてくる子供たちはほぼ何かしらの”個性”を持つようになっていた。そしてそれが一種のステータスにもなり、個性の強い弱いで揶揄われたり虐められたりする事態になっている。

 

しかし、それでも例外は存在する。

 

 

 

”あれ、無個性の天野さんじゃない?”

”学校の成績がいいだけじゃダメなのに”

”性格も愛想もいいけれど、無個性じゃ魅力半減だな”

 

 あちこちからひそひそと聞こえてくる噂話に、彼女はため息を吐いた。

噂は本当である。

 

この超常現象が”個性”として定着している中で珍しい”普通の人間”。

 

それが彼女だった。

 

彼女の両親は共に一般企業に勤める一般人で、二人ともこの時代の人らしく”個性”を持っているけれど、それが生活に役立つものでもない。

 こんなにボロクソ言われるくらいなら、どちらかの”個性”でも引き継げばよかったと思うことは何度かあるけれど、”個性”のせいでいくら努力しても平均値に収まってしまうのも嫌だし、人には視えない存在が視えたからってどうしたらいいのか分からない。

 

個性なんか無くたって世の中やっていける。

 

幼稚園から小学校、中学校と同じことを言われ続けてきた彼女は、そう結論付けていた。

 

 

彼女は一人で下校する。

 

すっかり当たり前になってしまった光景ではあるが、”個性”があるのが当たり前の世の中で”]個性”のない彼女にわざわざ付き添う”普通の人”はいなかった。

 

 

「明日、誕生日だな。もうナツメも13歳かぁ。」

「もう、お父さんったら。勿論、私も嬉しいわよ。

せっかくの誕生日だし、ケーキでも買いましょう?何ケーキがいいかしら?」

 

 彼女が玄関を開けると、弟の声の他に今この時間帯に聞こえるはずのない声がした。

 彼女は慌てて手洗いを済ませリビングに向かうと、明日の誕生日のためにわざわざ半休を取って彼女の帰りを待っていた両親がいた。心無い言葉を無視することにすら最早抵抗を感じなくなっていた彼女は、年甲斐なく二人の腕の中に飛び込んだ。

 

 そんな彼女を優しく抱きしめて笑いかける二人は、”無個性だから”と冷たい扱いを受ける彼女にとってかなりの癒しだった。

 

「ケーキもプレゼントもいらない。

私はお父さんとお母さんそしてケースケがいれば十分だから。」

 

腕の中でそう呟いた娘に向かって、二人は嬉しさの余り少し強めに抱きしめてしまった。それは彼女が苦しそうにしていることを確認した弟が、二人を宥めるまで続いたのだった。

 

 

 

 

その夜。まさに草木も眠る丑三つ時。彼女の体が一瞬朱く発光した。

しかし、そのことに気付いたのは”誰も”いなかった。

 

 

 

 

 翌朝。彼女は目を覚ますと、涙をさめざめと流した。

今まで忘れていた、摩訶不思議でけれど大切な記憶を思い出したからだ。

 中々リビングに来ない彼女を不審に思って部屋に駆け付けた両親も弟も、その様子に驚きを隠せない。が、父親は一瞬驚いた後、納得した表情を浮かべ彼女の頭を優しく撫でた。

 

 

「ナツメも思い出したんだね。」

 

 その言葉と共に彼女の目に映ったのは、どこか物寂しげに笑う父の顔だった。




【今回の登場人物記録】
天野ナツメ
記憶を取り戻した中学1年生。父親譲りの行動力と勇気を持ち合わせている。前世のことを思い出したため、無個性であることへのコンプレックスは吹き飛んだ。


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