個性社会のシャドウサイド   作:あとか

12 / 17
囚われの妖姫、最終話。文字数が足りなくなってしまったので、pixivには入れてない小話を後ろにちょこっと追加。


事件はあの世に隠される

「待ってくれ!」

 呆然としているヒーロー達と未だ意識の戻らない多くの被害者を背にして帰ろうとしたナツメたちを、ヒーローたちが引き留める。

 

正直状況がコロコロと変わるせいで全く理解できていないのだ。

今回の一件が、どこかに文字通り飛んで行った少女の個性事故であったことはなんとなく理解できたものの、事件解決に至るまでの過程を全く理解できない。

 

この世界におけるヒーローとは国家資格持ちの公務員。それ故警察などに報告する義務がある。

 

しかし、こんな訳の分からない状況では報告のしようがない。いくら事実とはいえバカ真面目に事実を書けばバッシングに遭うことくらい想像に容易い。上手くごまかすにしても、辻褄を合わせるにしても現状把握が欠かせなかった。

 

「えっと……すまないけれど、状況を説明してもらえるかな?

私達には報告する義務があるんだ。」

 

オールマイトが三人に向かって言うも、ナツメたちは無言を貫く。戦闘中にトウマが説明を渋ったのと同じ理由だ。

 

本当に文字通り死後の世界の出来事であり、ヒーローであろうとも関わることのない世界。

 

しかもいくら”普通でないことが普通になった世界”でも、人ならざるモノは空想上の存在。そんなものを生真面目に報告すれば、精神に異常を来したと見られ最悪職を失いかねない。

 

ナツメたちは答えず目くばせをすると、天野姉弟はぼそりと呟いた。

 

「メゾン・ドワスレ。」

 ヒーローたちが三人の声を聴いたのは、それが最後だった。

 

 

 

 

 翌日、メディアは有名俳優連続失踪事件について一言も触れることはなかった。

 

それだけではない。

 

あれだけ世間を騒がせていたこの事件は、”元から発生していなかったかのように”住民たちの話題にも上がることはなかった。

 



 

案件解決後の夜、ナツメとケースケは両親と共にすき焼きを堪能していた。

その途中、ナツメが父・ケータに聞いた。

 

「なんでお父さん、私達が解決したって分かったの?」

 あの緊迫した状況で、メールなど打つ暇などなかった。なのに、現場から離れていた父親が知っていることに疑問を抱くのは当然のことだった。

 

「だって、ナツメフウ2(おれ)()んだでしょ?」

ケータのあっけらかんとしたその発言に、ナツメだけでなくケースケも唖然とする。

 

フウ2(アレ)()ばれると、少し意識が引っ張られるんだ。だから現場の様子、少し見てたし。それに、ナツメ達なら解決できるって信じてたよ。前だって解決できたんでしょ?」

 

今まで聞かれてなかったこともあるが、あっさりと暴露したケータに姉弟は顔を見合わせる。そして、諦めたようにため息を吐いた。

 

心の中で、意見は一致していた。

((お父さん/父さんには敵わないわ/や。))




【今回の妖怪大辞典】
メゾン・ドワスレ
忘れん帽の進化形。進化したことでワンルーム並に巨大化し、相手が持つ記憶を全部食べて忘れさせてしまえるようになってしまった。

フウ2
ごく普通の少年がごく普通に死んで生まれた妖怪。取り憑いた相手を”普通”にしてしまう。強力な個性持ちも”普通”にしてしまう、この個性社会においてある意味恐ろしい存在。
ややこしいことになるが、ごく普通の少年はごく普通の青年となり、ごく普通の父親として生きている。今のフウ2は、彼の思いの残渣から作られた存在である。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。