ハーメルンでは色々変更していくため、タイトルを変更しました。
事件の終着と新たな火種
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「迷惑かけてごめんなさい!」
姉ちゃんたちと女郎蜘蛛を封印してから数日。
目の前には正座して深々とおじぎをする、姉ちゃんの友達。
女郎蜘蛛暴走案件で渦中にいた、アヤメさんだ。
その謝罪には俺たちも素直に受け止める。
というか受け止めるしかできない。
俳優連続失踪事件から起こったあの事件は、アヤメさんの中にある力が暴走した故の出来事でアヤメさん自身も被害者だから。姉ちゃんたちもあまりにもペコペコしているアヤメさんに困ってるし。
まぁ途中で入ってきたアキノリの両親のおかげで何とかなったけどさ。
とりあえずお互いの事情をすり合わせ、妖怪探偵団も復活していると言えば二言返事でまた入るといってくれた。
それと同時に、完全に覚醒した妖の力を鍛えたいとオババさんに弟子入りすることに。
完全に構図が前と同じだ。
けれど、今のメンツなら何があっても大丈夫な気がする。
俺たちが前世の記憶を持っているっていうのもそうだけど、”普通”なのに妖怪関係じゃベテランの父さんだって付いてるから。
今度こそ、絶対にミスはしない。
完全に同窓会の雰囲気でわちゃわちゃやっているのを横目で見て、俺はそう思った。
・”普通の子”と普通の大人(ケータside)
ナツメがまた、出久くんを連れてきた。
今日は暴力沙汰になる寸前に、朱夏の気配で現場を凍り憑かせたらしい。
流石、元妖魔王の力。そんな力を使いこなせるナツメも凄い。
それはともかく。いじめとは関係なしにボロボロな出久くんの手当てのために家に上げる。
ホントはいじめの首謀者である勝己くんを出久くんから引き離したいところだけれど、出久くん本人が勝己くんから離れないのだから仕方がない。
毎度毎度のことで出久くんは申し訳なさそうにしているけれど、どうしても理不尽なことや道理に合わないことを見てしまったら放っておけないのは、ヒーローとか以前に僕達天野家特有の気質みたいなものだ。
「やっぱり僕にヒーローなんて向いてないのかな……。」
僕が手当てしている最中、出久くんが呟いた。
「そうは思わないよ。」
僕は正直に言う。
実際、出久くんは困っている人を見かけたら手を差し伸べるし、お節介も欠かさない。それが悪い方向へ行ってしまったことも確かにあるけれど。そんな出久くんを”ヒーロー失格”だとは思わない。寧ろ、出久くんらしさがあるとも言えると思う。
「でも、僕、無個性だし。」
「無個性だからってあきらめる必要はないと思うよ?確かにヒーローとして力は必要。だけれど力が全てじゃないだろう?ヒーローにとって大切なことは、”誰かを助けたい”って思いなんじゃない?」
「”誰かを助けたい”思い……。」
僕なりの考えを出久くんに伝える。
僕にとってヒーローはただの仕事の一種で憧れたことはない。
けれど、彼らが働く現場は何度か目にする。どんな戦い方であろうとも、彼が思っていることはきっと一つだろう。
"誰かを助けたい"という、究極のおせっかい精神。
出久くんはソレを既に持っている。ナツメと出逢った時の出来事が正にソレだ。いじめられることが分かっているにも関わらず、小さい子を身を挺して庇ったんだから。
「既に出久くんは持ってるんだよ、ヒーローとして大切な事。それさえ見失わないで努力すれば、きっと結果はついてくるさ。」
出久くんの頭を撫でる。
彼にとっては気休めにもならないかもしれないけれど、僕なりに精一杯の言葉をかける。願わくは彼の夢が叶ってほしい。
僕にとって出久くんは、もう一人の息子みたいなものだから。
・むかつく姉弟(勝己side)
最近やけにデクに絡む奴がいる。フツーの女とその弟だ。
デクが無意識だろうがポロポロ漏らす情報によれば、女は無個性で弟は日常生活にも役立たないような没個性。おまけにその両親もほぼ無個性ときた。無個性のデクとお似合いだと嗤ってはいるが、何処か納得いかない。
しかもデクが強かになってることに一番苛立つ。相変わらず力はねぇし無個性の癖に相変わらずヒーローを目指してやがる。
無個性でヒーローなんてなれっこねぇ。そう言ってるのにも関わらず、最近デクにはその言葉は全く響いちゃいねぇ。それどころか”ヒーローになる”なんていう夢物語をしっかり将来の目標にして、無駄な努力を続けてやがる。無個性がヒーローになったらあっさり死ぬに決まってんだろうが。
学校終わり。
デクの奴はルンルンで学校を出やがった。恐らくあの姉弟に会うからだろう。むかつく。
無個性の癖にヒーローを目指すデクも、デクがヒーローになりたいと思っていることに賛同している姉弟も。何もかもがむかつく。なんでてめぇらみてぇな奴らがヒーローを目指すんだ。無個性なら無個性らしくさっさと諦めりゃいいじゃねぇかよ!
デクを焚きつけてる二人の顔を見たいと思い、俺はデクの後をつけた。
ついた先は至って普通の公園。デクの奴はワクワクを隠しきれてねぇ。その顔を見て更に苛立つ。無個性同士が傷のなめ合いして何が楽しんだよ。
何故か苛立つ自分に不快感を感じながら、物陰で待つこと数分。フツーな無個性女が弟を連れてやってきた。その瞬間、デクの表情が変わる。なんで無個性女にあんな笑顔も向けてるんだ。フツーなガキになんでそんなに優しく構ってるんだ。フツーに意味分かんねぇ。
フツーな無個性女もデクと触れ合う内に表情が変わっていきやがった。今まで見たことがねぇ顔だ。俺には向けたことがねぇ顔。デクの野郎、フツーな無個性女にまであんな顔をさせやがって。フツーにムカついてムカついてムカついて、俺は思わず飛び出した。
「おいデク!てめぇ、何してんだ!」
「か、かっちゃん!?」
急に飛び出したせいで驚かせたようだが、そんなの関係ねぇ。そして個性を使おうとして、妙な違和感で動きを止めた。
……なんで出ねぇんだよ。なんで”爆破”しねぇんだ!!
しかも俺のムカつきとは反対に、デクの野郎とフツー野郎は驚いてるし無個性女は納得した表情を浮かべてやがる。意味がわかんねぇ。
「とりあえず、今日のところは下がってくれない?これ以上暴れられると私も困るんだけど。」
どうなってるのか理解できずにいると、無個性女はそんなこと言いやがった。
下がれるわけがねぇだろうが‼理由が分かんなきゃ納得できねぇに決まってんだろ!
「ふざけてんじゃねぇ!!理由教えろよ!」
そう叫んだ時だった、さっきよりも違和感を感じたのは。
秋と言ってもそんな寒く無い筈だ。なのに、寒気が、冷や汗が止まらない。無個性女の方を見ると、無表情でこっちを睨んでいた。感情が読み取れないそれに、何故か腕が足が体が震える。
……どう考えたって普通じゃねぇ。
なんで俺が無個性女に……怯えてるんだ。個性ある方が圧倒的に強い筈なのに。
「姉ちゃん、やりすぎ。」
俺のことが眼中にないのか、フツー野郎は無個性女に声を掛けた。と言っても、その言葉の節々に呆れも滲む辺り余計に苛立つ。
「そうかなぁ……。」
無個性女はホントに分かってなさそうに首を傾げると、相変わらずの表情でこっちを向いた。腕は震えが止まらないし足も動かない。
「まぁ、いいや。ケースケ、帰ろう。出久くんも。」
無個性女は俺のことを気にせず、フツー野郎とデクに声を掛けてその場を去りやがった。フツー野郎も俺のことを気にしてねぇ。辛うじて気にしてるのがあのデクだけという事実に余計ムカつく。
帰ってから俺は荒れに荒れた。
無個性女に負けた。個性を使わない、存在感だけで。フツー野郎も何もやってこなかったが、無個性女を止めなかったから同類だろう。
なんでだ……。なんでだ……!
まるで俺が格下に見られてるようなモンじゃねぇかよ……!!
「クソが……!!」
力任せに机を叩いたことでコップが倒れた。
そのコップの水がフローリングに染み込んでいくのを、俺はただ黙って見ることしか出来ねぇ。
「クソが……!!」
もう一度そう呟く。
その呟きは誰に届くこともなく、俺の中に深く深く染み込んでいった。
【今回の妖怪大辞典】
エンマの一族・ミカド族が妖魔界を支配するよりも昔に妖魔界を統治していた鬼族のトップだった鬼姫。アニメ版ではとある敵を倒すためにナツメに転生していた。本作では朱夏は既に成仏しており、その力をナツメが受け継いでいる。
【今回の登場人物記録】
姫乃アヤメ
1000年以上昔に女郎蜘蛛(”囚われの妖姫”に登場した方)を封印した霊媒師の末裔。前回の騒動で記憶を完全に取り戻し、前作同様妖術師としておばばの元で修行することに。見た目は可憐な少女だが、空手黒帯の実力者。今後の妖術発動に、空手の動きが組み込まれるかも?