個性社会のシャドウサイド   作:あとか

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pixiv版第7話「死後の世界で夢への再起動」
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=23447150
の修正版。立ち直るまでの時間を取ることにした。


閻魔の審判

[出久side] 

 目が覚めると、僕は知らない場所にいた。僕の知っている場所じゃないし、あの時死を覚悟して飛び降りたから”死後の世界”って奴なのかな……。なんていうか、今までいた世界とは違って不気味だし、理由は良く分からないけれど鳥肌が立っている。

 なんてことを考えていると、目の前にイケメン二人が現れた。一人はこの真っ赤な空間と同じくらい赤い服を着て金髪。もう一人は青い目に青い髪色で、何処か影があるような感じ。

まるで太陽と月みたいだ。

 二人とも人っぽいのに、出てる雰囲気が人間じゃない。こんな呑気に分析しているけれど、冷や汗は止まらない。今までで一番の圧を感じてしまい、自然と頭が下を向いた。下を向かないといけないって、何故か思った。

 

「今から審判を始める。」

そんな中、銀?白?色の髪を長く伸ばして赤い服の人の傍に立つ人がそう宣言した。その声につられてふと顔を上げた。審判って何?!混乱で何も言えずにいる間に、話は進んでいく。

 

「緑谷出久、田等院在住折寺中学2年男子。

本日5時、度重なるいじめから来るストレス及び将来への絶望により廃ビルより飛び降りを実行。地蔵菩薩の一柱・天野景助に救出され、精神安定を目的に同じく地蔵菩薩の一柱である天野夏芽によって妖魔界に足を踏み入れた。

……どうします、エンマ様。」

「そうだな……ケータの一家が目を掛けてるんだ、死なせはしない。ただ聞いておきたい――なぜ、死のうと思った?」

 長髪の人がすらすらと僕の現状を読み上げて驚きで固まってしまった。その中に、聞き馴染みのある名前が会ったことには気づいたけれど、突っ込むことはできなかった。白髪の人と何やら話してたエンマ様と呼ばれた金髪の人が、目を鋭くしてこっちを見る。

……怖い。けれど、答えないと更に怖い気がする。けれど無言の圧力に押されて堪えられない。

 

「えっと、その……。」

「正直に言え。」

「……もういる意味はないと感じたから。無個性(ぼく)なんて、誰にも認めてもらえないただの石っころで、木偶の棒だ。」

 何とか絞り出すように言った。けれどそのタイミングで前からため息が聞こた。そして呆れたような言葉が降ってきた。僕の覚悟が無駄であると告げるように。なんでそんなことを言うの?だって仕方がないじゃないか。憧れの相手にさえ、夢を否定されたんだ。

”来世に期待して、ワンチャンダイブ!”

”個性がなくてもできるとは、到底言えないな。”

二人の言葉が、簡単に再生出来てしまう。ヒーローになる、それがあったから今まで生きてこられてたのに。それを否定されたんだ、生きる理由がなくなったんだ。このまま、ここで消えたいと思うくらいにやる気も何も湧いてこない。

 

「この俺を前にしてまだ嘘を吐くというのか。」

「え……?」

 僕はその言葉で、顔を上げた。目の前にはエンマ様と呼ばれた人が、今までよりも険しい表情を浮かべていた。長髪の人も、青髪の人も同じような表情を浮かべている。なんで、そんな表情をしているの?

「本当に夢を捨てたのか?」

「……。」

そう問われて、言葉が詰まる。

捨てたい、忘れたい。でも、それをしてしまうと、”僕”が僕じゃなくなる気がして。けれどかっちゃんのあのセリフとオールマイトの反応を見てしまったからこそ、今までのように大々的に言う勇気はなくて。

いつもの癖で、俯いてしまう。……いっそのこと、ケー君*1くらいの勇気があれば。なっちゃん*2くらいの根性があれば。きっと今までのこと全部取っ払ってでも何かしら言えたと思うけれど、今の僕にはできそうにない。

 

「……仕方ない。ぬらり、彼をヒキコウモリの元に連れて行け。」

「よろしいのですか?」

僕が意見を出せない中で、エンマ様(?)が白髪の人に声を掛けた。

「今までの経験が足枷になっているんだ、このまま待ってても答えは出てこない。なら、妖魔界(ここ)を見て頭冷やした方がいい。カイラもそう思うだろ?」

「そうだな。自殺者など何人もいるが、ここまで過酷な環境に居つつ夢を諦めない狂気持ちは、コイツだけだ。この気質はどんな道であれ活躍する人の特徴だ、死なせるには惜しい。」

 エンマ様(?)が青髪の人(多分、カイラって名前だと思う)に確認を取る。カイラさん(?)は静かに頷いた。僕は全く展開が分からなくて、僕のことを指しているはずなのに呆然とそのやり取りを見ていた。

 

 ぼーっとしていると、エンマ様(?)が近づいてきて屈んだ。顔が目の前にあるせいで、物凄い圧を感じてしまう。

「7日猶予を取る。その間に、さっきの質問に対する答えを出せ。その答えの返答次第で、お前の処遇は決定する。いいか、”心を偽るな”。この俺、閻魔の前で嘘を吐くなど、本来は極刑ものだ。」

その言葉に、背筋が凍り体が震えて言葉も出ない。けれどそれに追い打ちをかけるように、カイラさん(?)が冷たく言い放った。

「お前が天野夏芽・天野景助、ひいては天野一家と縁ある者だからこそ、この猶予がある。その幸運を忘れるな。天野家と縁が無かったら、お前は死に、地獄で苦行を受けているはずなのだからな。」

その言葉が重く感じる。

なんでここまでなっちゃん達が重要視されているのかは分からない。けれど、僕は静かに頷いた。

*1
(ケースケのこと)

*2
(ナツメのこと)




【今回の妖怪大辞典】
エンマ大王
真名(まな)は閻魔煌炎(こうえん)であり、妖魔界の統治者の一人。120年強前の”紫炎の一件”で死亡した少年の魂が、紫炎の善の心と融合して誕生した。もう一人の妖魔界の統治者であるカイラとは家同士の確執はあれど、今はライバル関係。白髪の美丈夫・ぬらりことぬらりひょんを部下に持つ。閻魔の一族、ミカド族の特性として嘘を見抜くことが出来る。服装は一族の伝統に則り赤い服を着ている。

蛇王カイラ
エンマと並ぶ、妖魔界の統治者の一人。妖魔界でも五指に入る名家・イザナ族の当主でもある。蒼眼蒼髪の陰のある美丈夫。人間と妖怪のハーフ、つまり半妖であるため周囲から蔑まれてきたが、それを努力で跳ね返してきた。今の地位にいるのはエンマに推し負けたから。エンマとは家同士の確執はあれど今はライバル関係であり、統治者に推薦されたことに不満はない。部下に、乳母的な好々爺・ウーラと、フウくん/風神・ライちゃん/雷神がいる。

ぬらりひょん
エンマの祖父・先代閻魔大王(真名は閻魔業炎)の世代から側近兼妖怪評議会議長として務める妖怪。紫炎の一件後の人間界妖魔界双方の混乱を抑えるため、妖怪関係者の人間界撤退を決め一時的に人間界と妖魔界の交流を断った。
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