個性社会のシャドウサイド   作:あとか

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突発的に妖ウォssのノリ。


No,1 亡霊番長

[ナツメside]

 

「やっぱり、再開すべきよね。」

 

 私は、”前”の経験を参考に立ち上げた懐かしのサイト・”うすらぬら”を見てそう呟いた。

 うすらぬらに書き込まれる出来事は、”普通”ではありえないこと。世界全体に”個性”とかいうものが浸透しているからこそ、前世よりも無視されがちな怪奇案件。その中には放っておいては危険な事になりそうなものや、既に冗談じゃない被害が出ているものもいくつか見受けられる。

 

「お父さんから”友達”を託された。”昔”のことを明確に思い出したし、朱夏にも力を貸してもらっている。周りを助けられる私が助けに出ないなんて、お父さんの後を継ぐウォッチ使いは名乗れないわ。トウマ達が覚えてなくてもいい。絶対ここに書かれている怪奇案件は解決してみせるんだから!」

 

 私は数多くの”ヘルプメッセージ”を見て、決意を新たにした。

 

 

[数日後・ケースケside]

 

 最近、また姉ちゃんがこそこそやってる。何やってるのかは、”前”のことがあるから丸わかりだ。

 だって、前世で見覚えのあるサイト・”うすらぬら”を立ち上げてるし、俺が”覚えてない”って油断して”友達”と部屋でしゃべってるし、父さんが俺や姉ちゃんと”同じ”だったことや母さんが分かっていることを知っているせいか、前よりも隠す気配もないし。

 あの正義感の強い姉ちゃんのことだ、トウマやアキノリがいなくても問題を解決しようとするに決まってる。

 

「俺だって。功績は姉ちゃんや父さんには及ばないけれど、ウォッチ使いなんだ。姉ちゃんにだけ任せるわけにはいかない。」

 

 恐怖は、やっぱりまだ感じる。けれど姉ちゃんが無茶して怪我したり、”前みたいなこと”になる方がもっと嫌だ。

 記憶と共に得た”この力”だって、姉ちゃん程うまく使える自信はない。けれど、家族や親しい人を護るためになら、どんな危険な事にだって立ち向かっていける。

 

だから。

 

 

「姉ちゃん!」

 一人で”既視感ののある出来事”に挑もうとしている姉ちゃんを、俺は引き留めた。

 

 

 

 予想通りかなり驚いていた姉ちゃんだったけれど、今は状況が状況。”昔よく見た表情”をしている姉ちゃんを見て、俺も気を引き締める。

 

 姉ちゃんが今回一人で挑もうとしてる怪奇案件は、”亡霊番長”。

 俺が”前”で妖怪達と関わるきっかけとなったもの。

 

 今回は亡霊番長を止めるつもりはない。書き込まれている内容だって正直言ってざまぁって感じだし。

けれど監視には入る。

人も行き過ぎることはあるけれど、妖怪の場合行き過ぎたら猶更危ない。

 

妖怪たちの力は人間と比べて明らかに強い。たとえ俺が戦闘向きな強い個性を持ってたとしても、妖怪たちには逆立ちしたって敵わない。

それくらい強い。

 

だからこそ、この怪奇案件に首を突っ込むんだ。

 

 

 問題解決のために参加すると決めたものの、そう簡単にいじめっ子やいじめられっ子を見つけることはできなかった。参考程度に”前”のことを聞くと、アキノリがいじめる側を・トウマがいじめられる側を演じて釣ろうとしたらしい。けれど演技を始めた直後に悲鳴が聞こえて駆けつけたらドンピシャだったらしい。

………多分俺、”前”この現場を目撃したんだよなぁ。

 

今となっては懐かしく感じるけど。それは置いといて。

 とはいえ、今同じ手法を使うわけには行かない。俺と姉ちゃんは姉弟だし、何より”いじめを演じる理由”が全くない。寧ろ俺と姉ちゃんは揃って"いじめられる側"だ。

 

 どうやって問題を解決するか姉ちゃんと考えながら歩いていると、姉ちゃんと同い年くらいの緑髪の男の子が、金髪の男の子から俺よりも小さい子を庇っていた。

 

 

「かっちゃん!ダメ!」

「ああ?デクの分際で俺に指図してんじゃねーよ!」

 

 そう叫んだ男の子は、個性を発動して緑髪の子に攻撃を加えていた。

 

周りの人も止めようとしない。この状況で、俺と姉ちゃんは察する。

 緑髪の子は姉ちゃんと同じ無個性で、金髪で目つきの悪いの子は見た感じ爆破だから強い個性持ち。しかもその子の方が発言力が強いらしく、どんだけ緑髪の子が正論言っても封じられてる。

 どうすれば………と思っていると、懐かしい空気がその場を覆った。

 

爆破の子の後ろに立ちふさがったのは、3メートルは優に越す、学ランを着て険しい表情を浮かべた大男。けれど顔色や肌色は人間のそれじゃなくて、右腕には見覚えのあるミサンガ。

………やっぱり来るよね、ケンちゃん。

 

「な、なんだよこのバケモン?!」

「こ、こっちくんなぁぁぁ!!!」

 

 本気で怒っているケンちゃん基亡霊番長の威圧感に押されて、爆破の子にくっついていた子供たちは恐怖のあまり叫んだり逃げ出したりしている。

 

 

「ケッ、あのデカブツくれぇ倒してやらぁ!」

 

 そんな中、爆破の子は腕を大きくしてケンちゃんに殴りかかろうとしていた。さすがに見過ごせないので俺と姉ちゃんは駆け出す。そしてアイコンタクトを取ってから、俺は久しぶりにあの言葉を口にした。

 

「俺の友達!出てこい、ジバニャン・コマさん!」

最近現れた力・召喚。言ったらエルダの機能と同じ。あの子がピンチだから、助けて!懐かしの言葉を言いながら、そう願った。

 

「シャー!」

「ガルルルル……」

俺の想いが通じたのか、二人ともシャドウサイドで登場した。

 

二人とも俺と姉ちゃんの方をちらりと振り返ると、前を向いて爆破の子と亡霊番長の戦闘の場に飛び込んでいった。けれど、やっぱり強い個性は凄い。亡霊番長に対して、生身の人間がかすり傷少々程度で善戦できるから。

 

個性だけじゃなくて体の動きもいい。多分ああいう子が”ヒーロー”になるんだと思う。まぁジバニャンたちが入ったことで、爆破の子の方が押され気味だけど。

 

今、爆破の子にジバニャンとコマさんは見えていない。

基本、妖怪たちは自ら姿を現そうとしない限り、または余程相手に心を許していない限り、霊感などを持たない人たちには視えないから。

 

「ケンちゃん!ジバニャン!コマさん!それ以上はダメ!幾ら個性持ちの相手でも、やりすぎだって!」

 闘いが過激化する中、ジバニャンとコマさん、それに加えてケンちゃんまで必殺技を繰り出しそうとして、俺は慌てて三人を止めた。

 いくらあの子が善戦できるからと言って、生身の人間に妖怪の必殺技はダメージが大きすぎる。ジバニャンは渋々と言った感じでライトサイドに戻って去っていき、コマさんは小さく頷いてから姿を消した。

 

 

 俺はそんな二人の様子が懐かしくてちょっと笑って、”また”妖怪となっている親友に向き合った。生まれ変わっても妖怪になっても正義感が強いケンちゃん。俺のことを必死に庇ってくれたことは、今でも覚えてる。

 

「久しぶりだね、ケンちゃん。」

そう亡霊番長に声を掛けると、今の俺と同じくらいの男の子が姿を現した。

 

生前の亡霊番長の姿―ケンちゃんだ。俺が何の抵抗もなく仲間を喚んだことに驚いてたけれど、少し話しただけで納得の表情を浮かべた。まぁ分かるよね、雰囲気で。

お互い経験したことを語り合って、最後は安定のグータッチ。今はアークが存在しないけれど、そのグータッチの間から、見慣れた光が現れた。

これがきっとアークの代わりだ。

 

 

「ありがとう、ケンちゃん」

俺は周りに聞こえないように小さく呟いた。

 

[出久side]

 今日もやっぱりいつも通りだった。

 

幼馴染のかっちゃんが、年下の子に暴力を振るおうとして咄嗟に庇った。けれどその何かが気に入らないみたいで、”個性”を使って攻撃してきた。

 

僕は何も対処できない。

だって、”無個性”だから。

必死でその子を庇って次の攻撃に備えていたけれど、今日は来なかった。

 

なぜなら、いつの間にかかっちゃんの後ろに大きな人が立っていたから。

 

一瞬巨大化の個性かなと思ったけれど顔色が人間のものじゃないし、かっちゃんにくっついてくる子たちはその威圧感にビビって逃げ出しちゃった。かっちゃんだけは立ち向かっていくけれど、かっちゃんの手が震えているのが目に入った。

 

 

「ケッ、あのデカブツくれぇ倒してやらぁ!」

 

 そう言ってかっちゃんが個性を使って攻撃したけれど、まるで効いていなかった。

 

かっちゃんが敵わないなんて……。

そう思い青ざめたと同時に、前から噂で聞いたいたことを思いだした。

 

それは”学ランを着た大男がいじめっ子を成敗して回っている”というもの。

 

出没範囲は日本全国で、被害者の中には病院に入院せざるを得なくなった人もいるらしい。

 

今は”個性”を誰もが持っている時代。

だから、皆巨大化の個性を持った人間がヴィジランテとして活動しているのだと思ってたし、僕も思っていた。

 

けれど今日このタイミングで、どこからともなく現れかっちゃんの攻撃を躱している様子を見れば、”人間じゃない”と分かる。

………僕を助けに来てくれたのかな?

 

助けに来てくれたのはありがたいけれど、戦闘が続くにつれて劣勢になってくかっちゃんを見てやり過ぎなんじゃないかなって思った。

 

確かにいじめられることは何度もあったけれどもう慣れてるし、かっちゃんはかっちゃんなりの考えがあっての行動だと思うから。

 

……止めなきゃ。

けど僕が出来るかな。

個性を持ってない、無個性の僕が。

 

 そんなことを考えていると、僕より少し年下っぽい男の子が目に入った。

 

僕はその子があの現場に飛びいるんじゃないかとヒヤヒヤしていたけれど、その子は個性を使って何かを召喚した。けれど召喚したモノは僕には見えなかった。そしてそっからかっちゃんが益々不利になった。どうしていいか分からず数分が経った時。

 

「ケンちゃん!ジバニャン!コマさん!それ以上はダメ!幾ら個性持ちの相手でも、やりすぎだって!」

 

 

 視えないナニカに向かって、その子は声を張り上げた。すると大男はかっちゃんから離れていった。

 

かっちゃんは長期の戦いで疲れたのか、地面にへたり込んでた。

かっちゃんをここまで追い詰めるなんて....。

 

かっちゃんには珍しく尻尾を巻いて逃げていく様子を呆然と眺めていた。

 

 

 

「大丈夫だった?」

「う、うん。ありがとう。」

 

 ナニカを召喚した男の子じゃなくて、僕と同い年くらいのおさげの女の子が僕に声を掛けてきた。

余り似てはないけれど雰囲気がさっきの男の子と同じで、すぐに姉弟だと分かった。

 

ぼーっとしていたところを気を取り直して、返事をする。

するとその子は笑って声を掛けてくれた。

 

……驚きだった。

僕が”無個性”だと分かった時から、いつも傍にいたかっちゃんは僕をいじめるようになった。

 

周りにいた友達も、かっちゃんが怖くていつの間にはいなくなっていた。

だから、こんな風に声を掛けてくれる子は久しぶりで。

 

「な、なんで声を掛けてくれたの?僕、無個性だからあんまり近くにいると……。」

 

気付いたらその言葉が出ていた。

目の前の子は一瞬驚いたけれど、すぐに笑顔を浮かべて言った。

 

「人として正しいことをしている人を、見過ごすわけないじゃない。それに、個性なんて関係ないわ。それ言ったら私だって無個性よ。年下の子をあの爆破の子から守ってたんでしょ、しっかりヒーローだったわよ。」

 

 そう言ってまた彼女は笑った。

初対面の僕にヒーローだったって言ってくれるなんて……。

ずっとかっちゃんにバカにされてたけど、間違いじゃなかったんだ。

 

 

気付いたら、僕は泣き出していた。

そんな僕を優しく慰めてくれる彼女。

いつの間にか合流していた弟君も、そんな僕をバカにしなかった。

 

その優しさが嬉しくて、中々涙が止まらなかった。




【今回の妖怪大辞典】
・バンチョ―/亡霊番長
弱いものいじめをしていると現れいじめっ子を成敗し、地獄へと連れて行ってしまう番長妖怪。いじめられっ子の味方だが、いじめっ子や危害を加える大人に対しては容赦がない。
本作では病院送りになる程度で済ませている。
ケースケの幼稚園時代の親友・ケンジが個性事故で死んで妖怪になった。正義感の強さが、妖怪としての言動に現れた形。

・ジバニャン
とある少年が成長した後、彼の傍を離れ流浪の旅に出た猫妖怪。旅の途中で培った経験により、戦闘能力が上がっている。自分の過去はしっかりと覚えており、とある少年が築いた家庭をすぐ近くで見守っている。

・コマさん
ある神社の狛犬の下敷きになって亡くなった、犬の妖怪。温厚柔和な性格をしており、生前暮らしていた神社で過ごしている。血は繋がらない弟がいる。
とある少年の友達だった妖怪とは同名の別妖怪。

[今回の登場人物記録]
・天野ケースケ
ナツメの弟で、ビビりがち。だが勇気は人並みかそれ以上はあり、姉やその友達が危険にさらされるなら関わりに行く。幼稚園時代は弱っちいということでいじめられていたが、ケンちゃんことケンジ君に助けてもらっていたため、大事にはならなかった。小学校に上がってからは”普通”であることが影響して、学校生活を問題なく過ごせている。

・緑谷出久
僕のヒーローアカデミアにて、主人公である少年。”無個性”であることにコンプレックスを抱いているが、誰かを助けたいというヒーローとしてあるべき心を既に持っている。

・爆豪勝己
僕のヒーローアカデミアの登場人物で、緑谷出久の幼馴染。個性が強いことでプライドをこじらせ、この度亡霊番長の成敗対象となった。


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