個性社会のシャドウサイド   作:あとか

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決まらぬ覚悟と優しい寄り道

  三人の反応から何を言われたのか全く分からなくて、僕は呆然と立ち尽くしていた。そんな様子に気付いて、三人が慌てて謝ってきた。

「あぁ、すまない。実は、試させてもらっていたんだ。君に、”追加機能”を使う素質があるかどうか。僕達にとっては、結構重要なことだったからね。」

そう言うマーク達に、僕は疑問を投げかけていた。

「追加機能って?」

........妖怪と絆を繋ぎ、それで以て妖怪(とも)を呼び出し共闘する。基本的に絆に関わる妖怪に認められなければ使えない、特別な力。その再現だよ。」

 マークさんが静かにそう告げたことも相まって、僕は何も返事が出来ずただ唾を飲み込んだ。

 

「絶滅した種族と、とある少年。それぞれが”人間と妖怪が縁を結ぶこと”を祈って作りだした、神秘的なアイテム。

現代(いま)は色々な経緯で姿を消してしまったけれど、同じ役割を果たすその力を妖怪(ぼくたち)はこう呼んでいる。

”妖怪ウォッチ”。

人間と僕達を繋ぐ、不思議な腕時計だって。」

「”妖怪ウォッチ”……。」

 僕は目の前に差し出されたYフォンModel.Iを手に取って、マークさんの言葉を復唱した。そのタイミングだった。何も弄っていないはずなのに、Yフォンから淡い白い光が漏れた。そしてその光は、僕の周辺を覆うように広がって、数秒続いた。どこか神秘的で神々しいその光景に言葉が出なくて、ただ眺めていると光は自然と治まっていった。

「これは……。」

 何とも言えない感覚に、僕は戸惑いながら呟いた。違和感はあるものの、嫌な感じはしない。まるで、

「まるで、歓迎してるみたいだ」

君が認められた証拠だよ。妖怪ウォッチの使い手、”ウォッチ使い”としてね。

「でも、認められたからには覚悟してください。先ほど述べた決意を(ないがし)ろにし、礼節を欠いた態度で妖怪(私達)を使おうとすれば........分かりますよね?」

 ヒキコウモリさんの真剣で感情の籠ってない声に、手が震え冷や汗が至る所から出る。”違う世界の存在”だと、体が理解している。逃げたくなるような得体の知れない不気味さがあるのに、体が恐怖で動かない。でも、ただ”怖いだけの存在”じゃないことも理解している。だから、彼らを理解したいと思ったんだ。

 僕はその圧に呑まれながら、ゆっくりと首を縦に振った。

 

 

 僕はヒキコウモリさんに促されるまま、またリムジンに乗り込んだ。静かに動き出したのには気づきつつ、僕は手元にある機械—YフォンModel.Iを見つめる。

 マークさんとジョーズさんが、僕のために作ってくれたアイテム。普段のYフォンを知らないけれど、あの話し方からして元の世界のスマホのようなものだと思う。でも、あの二人は僕を信じて特別な機能を追加してくれた。

”妖怪ウォッチ”

 人間とヨウカイの絆を繋ぎ、いざという時に呼び出して共闘する。信頼関係が大切なのは、あの話を聞いて良く分かった。でも、あのように宣言したとはいっても、まだ不安だ。

 あの言葉は勢いで行ってしまった部分が大きくて、まだ僕の中で落ち着いて彼らの存在を受け入れられているわけじゃない。そんな状態の僕に、本当にYフォンを”妖怪ウォッチ”を使う資格があるのか。もし上手く使えなかったら……。もし使い方を間違えて、彼らの反感を買ってしまったら……。そう思うと、”妖怪ウォッチ(この力)”を素直に受け入れることが出来ない。もう一度Yフォンに視線を落とすと、Yフォンは震えていてその振動は持っている僕の手から伝わっていた。

 

 数分経った時、リムジンがゆっくりと停車した。そしてヒキコウモリさんがこっちに近づいてきた。覚悟が出来ていないことを責められるんじゃないか、とビクビクしていたけれど、ヒキコウモリさんはそんなことをすることなく僕の隣に座って手を取った。

「出久様、あなたが不安になるのも無理はありません。”力ある者は何か為すべき”という価値観で育ってきたのですから。ですが、私たちが求めているのは、命を賭して闘い一人で全てを背負う”『超能力戦闘者(ヒーロー)』の覚悟”ではないのです。」

 僕はヒキコウモリさんの言葉に、首を傾げてしまった。でもそれを想定していたのか、ヒキコウモリさんは続けて言った。

「とはいっても、想像がつかないことでしょう。少し寄り道になりますが、見ていきましょう。妖怪ウォッチの使い手、”ウォッチ使い”の先輩を。」

 


 

 車は再び動き出したけれど、僕の不安に寄り添うようにヒキコウモリさんはずっと傍にいた。そのおかげで少しは落ち着くことが出来た。そして十数分走った車は、余り人通り?ヨウカイ通り?の少ない場所に止まった。僕はヒキコウモリさんに手を引かれてリムジンを降りると、目の前にはヨップル社程ではないけれどそれなりに大きい建物が視界に映った。

「魔導鏡使用者功績記念館?」

 何一つ意味を取れない看板に、僕は首を傾げる。使用者、功績、記念館。単語だけなら意味は取れる。でもこう続けられると、何を示しているのか分からない。疑問符を浮かべて立ち止まってしまったけれど、ヒキコウモリさんはそんな僕の様子を気にすることなく建物の中に引きずり込んだ。

 

 中は至って普通な、”何処にでもありそうな博物館”という雰囲気が全体から漂っていた。でも、”ヨウカイだけの世界”であることを知っているからこそ、どこか不気味に思ってしまった。僕は待合のソファーに座り、ヒキコウモリさんの行動をぼーっと見ていた。ヒキコウモリさんは受付に行くとカウンターの人に何かを伝えていて、わざわざ何を伝えたんだろう?と疑問に思った。入場料を払う程度ならそんなことする必要ないのに。

 数分して、チケットを持ったヒキコウモリさんと館員らしいヒト?が僕の元に寄ってきた。

「緑谷出久さん、ですよね。」

「は、はい。」

 僕は少し緊張しながらそう返した。相手は僕のことをジッと観察した後、納得したように頷いて表情を緩めた。な、なんだったんだろう?

「なるほど。認められるだけある人材ですね。」

 相手はそんなことを呟いた。僕は困惑してヒキコウモリさんに助けの視線を送ったけれど、ヒキコウモリさんもまた同じ反応をしていて、どうしたらいいのか分からなかった。

「ご案内いたしますよ。」

 一体どうなっているのか分からないまま、僕はヒキコウモリと館員さんの後をついて行った。




【今回の妖怪広辞苑】
妖怪ウォッチ
本作においては、”妖怪と絆を結び召喚して共闘する力”を指す言葉。由来はエルダ魔導鏡及びケイゾウ作の零式を大本とする妖怪ウォッチ系統から。本作の現代軸において”妖怪ウォッチ”及び”エルダ魔導鏡”は存在しないが、その力を持った人物が”天野家メンバー”だったこともあり呼称だけ現存することとなった。

ウォッチ使い
魔導鏡使いと同義。基本的には皆こっちで呼ぶことの方が多い。ウォッチャーとも言う。

魔導鏡使用者功績記念館
本作オリジナル設定。魔導鏡使用者=ウォッチ使いが行い、妖魔界に多大な影響を及ぼした出来事をまとめた記念館。今なおリアルタイムで更新中。また前世の出来事(妖ウォ・妖ウォssの内容)も、許可を取れば閲覧可能。
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