個性社会のシャドウサイド   作:あとか

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アニメ版妖怪ウォッチシャドウサイド2話「死者の乗る自転車」を、本作用にアレンジしました。
本作の設定として、妖ウォ側は妖怪を含め”個性のない世界”(=妖ウォアニメ)の記憶があります。(鮮明度は人それぞれで異なる)


No,2 死者の乗る自転車

アキノリとも再会した、その翌日。特に取り決めもしていなかったのだが、全員アキノリの家に集合していた。それも、プレハブ小屋のアキノリの部屋に。そこは"妖怪探偵団"としてあちこち動き回っていた彼ららしいところである。

「この自転車、かっこいいね。」

「だよね。僕は子供サイズしか持ってないから、この際だから買おうかなって。両親も許可してくれたし。」

「妖怪探偵団として駆け回るなら、自転車いるかも。………お父さんに点検してもらおうかな。」

 しかし、集まっているからと言って、事件のことだけを話しているわけではない。アキノリが飲み物を取りに行っている間、三人は自転車のことで盛り上がっていた。それはアキノリが戻ってくるまで続き、ナツメたちは指摘されるまで集まった理由を忘れていたのだった。

 

「何やってんだ、全員集合しての記念すべき第一回だってのに雑談で盛り上がって………。自転車って言ったら、こっちだろ?」

雑談で盛り上がっていたナツメ達に呆れつつ、アキノリはあるサイトの画面を表示した。

 

怪奇案件投稿サイト・うすらぬら

 

今世ではナツメが立ち上げたサイトであり、妖怪探偵団にとって貴重な情報収集源。

”個性”の影響もあり、無視されがちな怪奇案件がいくつか投稿されている。まぁその多くは荒らし目的のデマやヴィランの仕業による本物の事件なのだが、その中には間違いなく”本物”が紛れ込んでいる。

 

 

その中の、一件。タイトルはデマのものにありがちなホラーじみたもの。

 

”死者の乗る自転車”

 

だが、ナツメたちはハッとして顔を見合わせる。

そう、これはナツメ達にとって”懐かしい”もの。前世(まえ)でもあった、”本物の怪奇案件”。慌てて内容を確認してみれば、前世のものと被るようで被らない。

 

[O中学2年女子の投稿]

これは私が実際に体験した話。作り話じゃないし、特定とかやめてほしい。

 

一昨日塾から家に帰ってた時なんだけど、なんかずっと人に見られてる感じがしてて。スマホ見ながら歩いてたから気のせいかなって思ってた。で、ふと気になって振り返ったんだけど、誰もいない。住宅街だし、時間もまだ8時前で人が消える時間じゃないのに。でも、また歩き出すと「……いる」って感じがして。しかも何故か分からないけど、白いシュシュを付けた腕をじぃって見られている感じがして、しかもそれおzが何十mってずっと。

さすがに怖くなって小走りしたら、”チリンチリン”っていう自転車のベルがどこからともなくなり始めたの。しかも、その音は私を追ってくる。でも振り返っても、やっぱり何もいない。

気味悪すぎて全力で走った。でも信号で止まらなきゃいけなくて、赤になった瞬間、音が真後ろで止まった。逃げ場なくて固まってたら、耳元で、性別も何も分からない背筋が凍りつくような不気味声でこう言われた。

「オマエじゃない」って。

 

え?って思って振り返ったけど、誰もいない。自転車も、影も、気配もない。ただ、背中だけがゾワッてしてて、空気が一瞬だけ冷たくなった感じがした。早くその場から離れたくて、青になる前から無理やり走り出した。そのあと、急に全部消えた。音も、気配も。家に着いてからも怖くて、親には言えなくて、ここに書いてる。

 

[N小学5年男子の投稿]

まーじで、最悪!!

今日、友達と公園で遊んでたんだけど、急に何かに襲われたんだ!徒手空拳ヒーロー・フィストのコスチュームを真似たアイテムをお互いに見せ合ってたんだけど、急に後ろから”オマエじゃない、オマエじゃなぁい‼”って不気味な声で言われてさ。しかもそのことに、周りにいる友達、だれも気付いてねぇの!気味悪くて逃げ出したけれど、まだしつこく追ってきてさ。けれど、勇気出して振り返ると誰もいなくて。流石に不気味過ぎて、今日明日は家から出たくない。

 

「腕に白いものをしていた、小学5年生の男の子と中学二年生の女の子……。これ、チャーリーも前世(まえ)のこと覚えてるんじゃない?」

「多分朧げな感じなんだと思う。だから、今”エルダがない”ことを理解できてない。」

「向こうの目的がナツメとケースケへの接触なら、会った方がいいな。無駄に犠牲者を増やすわけにはいかねぇし。」

全員が頷き合った。妖怪の暴走程、止められないものはない。暴走する原因と存在が分かっているなら、ナツメたちが関わらないわけがない。

「チャーリーを捕まえるぞ!」

「「「オー!」」」

アキノリの音頭の後に三人の元気な声が、霧立神社の空に響いた。

 


 

夕暮れ時。

”逢魔が時”とも呼ばれ、この世とあの世の境が曖昧になると言われる時間帯。二人の姉弟が、人通りの少ない道を歩いていた。至って何ともない、特筆すべき点のない普通の姉弟。だがその二人の様子を、じっと見ている存在がいた。しかし、それに気づいた人はだれもいない。

 

じわりじわりと、その存在は姉弟に迫っていく。呑気な事に、姉弟は気付いてない。

5m

3m

2m

1m

50cm

30cm

20cm

10cm

あと5㎝というところで、その存在は横から急激な力に押されて吹き飛ばされた。

 

 急激な力の出所は、霧立神社の跡継ぎであり妖術師の中でも名声のある有星家の末席、アキノリ。その後ろには、数人の妖怪を侍らせ圧を掛ける、天野家の子供。その姿は、先ほどの姉弟と瓜二つであった。それに加え静かに、だが確実に攻撃を仕掛けようとしているトウマ。妖怪探偵団が揃って、その存在—”死者の乗る自転車”ことゴーストサイクルに向かっていた。

邪魔されたことに苛立ちを感じ、彼らに襲い掛かる。しかし、相手は妖怪関連では右に出る者がいない人達の集合である妖怪探偵団。あれほどうすらぬらで騒がれていた”死者の乗る自転車”は、赤い化け猫の一撃であっさりと地に伏した。

 

その後目を覚ましたゴーストサイクルつまりチャーリーは、記憶を取り戻しナツメたちに平謝りをした。そもそもチャーリーの目的を分かっていて囮作戦を決行した手前、ナツメたちにチャーリーを責める選択肢などない。素直に受け入れ、チャーリーは前世と同じく霧立神社つまり有星家に暮らすことになった。

 

[ナツメside]

チャーリーの一件が解決したはいいものの、時間が大分遅くなってしまったから、お父さんに許可を取って霧立神社に泊ることになった。トウマは両親が忙しいせいで、そもそも許可取る必要ないし。夕飯をご馳走になって、お風呂も頂いて。後は寝るだけの特にやることがない状態のせいか、トウマは電子書籍を読み始めてケースケは疲れもあるのか、寝ちゃってた。

 ケースケが寝たことを理解して、アキノリが話しかけてきた。

 

「そう言えば、ナツメ。あのナツメとケースケのそっくりはどうやったんだ?まだジュニアもいないだろ?」

「あぁ、アレ?お父さんの友達妖怪よ。身代わりで化けてもらったの。チャーリーが声かけてきても、私やケースケらしく答えてもくれるわ。」

 私はさらっと答えた。だって、それ以外言いようがないんだもの。

 

 でも本当、お父さんの友達妖怪はずる過ぎる。

 なんていうか、”こういう事したい”を叶えてくれちゃう妖怪が多いんだよね。思い出すのを助けてくれる妖怪、掃除を手伝ってくれる妖怪、眠気を覚ましてくれる妖怪、姿そのままに仕草さえも完璧に化けてくれる妖怪etc. しかも一つ一つが簡単な能力に見えるからこそ、侮っちゃいけない。それこそ”忘れさせる妖怪”なんて逆に恐怖心を生むし、下手したら社会的に死ぬ取り憑き効果を持つ妖怪だっている。物理的攻撃力という面では余り期待できないかもしれないけど、精神的攻撃にはもってこいな妖怪が揃いすぎてる。そんな妖怪に好かれるお父さんが変わってるってことなんだよね。普段は本当に本当に”フツーな父親”なのにね。

 友達妖怪を託された時、その数の多さと取り憑き効果のえげつなさに悲鳴を上げてしまったくらいだもの。ホント、”フツーなのにフツーじゃない”。

 

そんなことを思いながらアキノリの方を見ると、呆然としていた。……何かあった?

「はぁ?!」

「ちょっと、声大きい!」

「ん~なんかあったの、あきのりぃ……。」

「ほら!!」

声が大きくなってしまったせいで、ケースケが起きてしまった。すぐにまた夢の世界へ旅立ったから、一安心したけれど。私は、小さな声でアキノリに囁いた。

「その件は、またあとで。今日はもう寝よう?」

「....気になること、多すぎるけどな。」

「僕も。」

聞いてないようでしっかり聞いていたトウマも反応したけれど、お互い今日の疲れがたまっていたせいか、そのまま寝てしまった。




【今回の妖怪大辞典】
チャーリー/ゴーストサイクル
自分を置いて何処かに行ってしまった持ち主のマサキを探しているうちに、彼に会いたいという気持ちが暴走し、マサキと同じ靴を履いている子供を襲っては顔にバツ印のブレーキ痕をつけていた。本作では、エルダを持つ少年少女(つまり天野姉弟)を探して、腕に白いものを付けている小5男子と中2女子を襲い、天野姉弟かを確かめていた。
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