[ナツメside]
翌朝割とすんなりと起きれた私は、秋江さん*1が用意してくれた朝ご飯を頂いた。アキノリは妖術師としても修行が入っているせいか、起きた時にはもういなかった。こういうところを見ると、”見習いなんだ”って実感する。因みにトウマとケースケはおばばさんにたたき起こされていた。トウマもケースケも、朝に弱いから仕方ないわね。
「ナツメ!ケースケ!」
全員の準備が終わってそろそろ霧立神社を出ようとしたタイミングで、お父さんに声を掛けられた。昨日今日と休みだから、お父さんも私服。普段なら青系だけれど、なぜか今日は赤だった。
「どうしたの、お父さん」
「迎えに来たつもりだったんだけど…………ちょうど、ナツメたち案件っぽいことがあったから、直接言おうかなって思ってさ。幾らお互い知ってても、家じゃ話ずらいし。」
「妖怪マスターなのに、何遠慮してるの……。まぁ確かにここなら話しやすいけどさ。」
ケースケがそう言うと、お父さんは笑いながら言った。
「妖怪探偵団として活動しているなら、トウマ君たちもいる環境のほうが良いでしょ?ここにいれば、有星家の人からも助言貰える可能性あるし、何より友達が守ってくれるだろ?」
お父さんの言葉にみんなが驚く。それはそうだ。私はともかく、お父さんは一般人なんだからわかるはずないのに……。そんな私の心情を察したのか、お父さんは言った。
「ナツメ、忘れてない?
「…………そう言えば、そうだったわね」
「じゃなきゃ、あんなに沢山の妖怪と友達にならないよね。多すぎて、俺気絶したし。」
お父さんのカミングアウトに、私はふと思い返して納得する。私が記憶を思い出した数日後、”友達をお願い”と託された数えきれないほどの妖怪のことを。普段がフツー過ぎて、すっかり忘れてたわ。
さっきまで話していたはずなのに、すっかり静かになってしまったのに違和感を感じてみんなの方を振り返ると、全員の呆然とした顔が目に入った。……何に驚いているんだろう?その驚き様にこっちが驚いてしまって、ケースケやお父さんと顔を見合わせてしまった。そんな様子を見て数秒してから、霧立神社に数人の悲鳴が響いた。
「まさか、ナツメの父さんが”妖怪マスター”だったなんてな。道理で妖怪に詳しいわけだ。」
お父さんが一通り説明し終えると、アキノリはそう言って大きくため息を吐いた。さっきの言い方からも分かるように、お父さんは
それはそれとして。
「最近会社を出てから家に着くまでの間、誰かに尾けられてるんだ。信号で待っているタイミングに急に近づいてきて、興奮した声色でケースケの名前で呼んでくる。大抵人目があって返事をするわけにも振り返るわけにも行かないから、無視しちゃうんだけどね。でも、その声はケースケくらいの子のもので、敵意はなさそうなんだ。”ケースケに会いたい”って気持ちが良く伝わってくるんだよ。」
お父さんは困った顔で、それでも優しげに微笑みながらそう言った。明らかに普通じゃない出来事が起きてるのに、平然としているお父さんに、またアキノリやトウマが固まった。……お父さんの中の”普通の基準”がバグってるのに、それに一切気付いていないんだよね。私とケースケはそんなお父さんに呆れることしかできない。私はため息を吐きながら言った。
「……それで、”私達に言ったほうが良い”って思ったってことは、妖怪絡みってことだよね?お父さん。」
「うん、そう。懐かしい気配だったから、今日もついつい昔みたいな服着ちゃったしね。それはともかく。ケースケのことを探してる子は、きっと幼いよ。必死にケースケのことを探してるだけ。多分生まれてからそんなに年数経ってないんじゃないかな?俺が初めて会った時のジバニャンよりも子供っぽいもん。」
「幼い妖怪……。ケースケ、心当たりある?」
「うーん。……あ!もしかして!」
お父さんの言葉に、ケースケが何かを思い出したかのように声を上げた。そして少し考えてから、言った。
「もしかして、ジュニアじゃない?
「確かに。人間で言ったら2~3歳の子供って感じだよね。」
ケースケの言葉に、トウマが頷き続けた。
確かに、ジュニアは
「そう言えば
アキノリが頭を抱えてそう言った。推定ジュニアは、ケースケの名前を興奮した様子で呼んでいた。つまり、
「……お菓子で釣ってみる?ジュニア、チョコボー好きだったし。」
「完全に子供にやる方法だね。」
「チョコボーかぁ。買いに行かなきゃねぇぞ。」
若干遠慮気味にケースケがそう言うと、トウマが乗った。アキノリも渋々って感じ。でも、それくらいしかできることないよね。
「ケースケ、買って来て。きっとその方が早く会えるよ。」
「えぇ~。まぁでも俺を探してるなら、理にかなってるか。行ってくるよ。」
ケースケが少しめんどくさがりながらも、霧立神社の鳥居を抜けようとした。そのタイミングで、私達が声を掛ける。
「私達の分のチョコボーもお願いね~。」
「僕はチョコアイス。」
「俺はガリガリ君な!」
「シレっとパシリにしないで?!と、とにかく行ってくるから!」
あっ、からかい過ぎたかも。ケースケは私達から逃げるように駆け出して行った。今回は昨日のチャーリーの件みたいな危険はないはず。お父さんが感じた件を踏まえると、きっとジュニアは
あとはケースケが無事にジュニアを連れてくるだけ。無事かなんて、祈る必要もきっとない。待ってるからね、ケースケ。
[ケースケside]
俺はからかいから避けるように、近くのコンビニに逃げ込んだ。そして言われたお菓子をかごの中に入れていく。チョコボー12本に、チョコアイス1個、ガリガリ君1個。これ絶対、小学5年生が買うお菓子の量じゃないって。
「ったく、姉ちゃんたち色々頼みすぎ……。お金、絶対に貰お。」
思ったより高くついたからそう思って、コンビニを出る。あとはこのまま帰るだけなんだけど……。本当にジュニアが見つかるのかな?正直囮にされるのはやだったけど。
少し文句を言いながら、アキノリん家がある坂を上がる。その途中だった、懐かしい赤いキャップを被った子が声を掛けてきた。
「ケースケ!ケースケ!」
大分馴れ馴れしい態度。この服、この帽子。間違いない、ジュニアだ。
「久しぶり、チョコボー食べる?」
さっき買ったばかりのチョコボーを見せながらそう言う。するとジュニアは化けるのを辞めて、あの赤い風船状態ですり寄ってきた。
近い、近い!!父さんに無視されてたうっぷんなのか、引っ付き虫状態だし!!髪弄るのやめて!!化けるのやめてるから、周りに見えないのに!!周りから違和感持たれるじゃん!!小声でそう言っても、興奮しすぎてて聞く耳持ってくれない……。ホント、ちっちゃい子供を扱ってる気分……。
はぁ、ジュニア見つけられたのはいいけど、俺に負担大きすぎるよ……。お金マジで姉ちゃんに払ってもらおう。少しやけっぱちになりながら、ジュニアに髪を顔を弄られながら、俺は坂を上って行った。
案の定というか、ジュニアに弄られまくった俺はウィスパー達に盛大に笑われた。散々な目に遭ったからイラついて、ジバニャンに伸してもらった。ウィスパーは止めて欲しそうに父さんの方を見てたけど、今父さんに妖怪視えてないこと忘れてるよね?
まぁ俺は散々な目に遭ったけど、ジュニアが仲間になって良かった。ジュニアがいるとより一層騒がしくなるけど、この騒がしさが"妖怪探偵団"って感じがするんだよなぁ。
……それはそれとして、姉ちゃんお金払って?
【今回の妖怪大辞典】
ジュニア(ジーたん)/バーニングドラゴン
ある妖怪と深い関係がある、赤いネコのような風船妖怪。自分が見たものそっくりに変身する能力を持っており、シャドウサイドとしての姿もその能力で変身したもの。チョコボー大好きで、見た目のわりに辛辣な事を言う。”ジーたん”はあだ名で、ジュニアと呼ばれるよりも好き。二語文や三語文を話し、語尾に”ダゼ!”を付ける。アニメにおいては、親しい駄菓子屋の御婆ちゃんに亡くなった愛犬の姿を見せたくて、流行っているTCGのレアキャラ・ブリザードウルフを狙って子供たちを襲っていた。本作ではただただケースケに逢いたくて、ケースケと顔立ちの似ているケータを尾けていた。
【今回の登場人物記録】
天野ケータ
かつてごく普通の少年だった彼は、ごく普通の二児の父親として成長した。ごく普通のサラリーマンとして会社で働き、家族を養っている。怪異的な事は信じるが、目視することはできない。
妖魔界では、数多の友達妖怪(600体を超えている)と共に妖魔界の混乱を治めた英雄。だが、そう持て囃されていることを一切知らない。またその時の行動が人間界においてとある都市伝説となっていることも、知らない。彼の友達妖怪は丸々子供たちに託された。