翌朝。目が覚めると世の中は大混乱に陥っていた。
どんな個性を持っていようとも、
その光景を目撃したナツメ・ケースケ・アキノリ・トウマは悔しさで歯を食いしばった。
行動が遅かった。これでは完全にあの悪夢の再来だ。
しかも今世の人間の大半は個性という特殊能力を保有している。
前世で人間の魂を吸い上げ復活していた女郎蜘蛛。
そんな女郎蜘蛛が人間の異変に気付かないなんてことはあるのか。
いや、ない。
そうなれば、被害はあの時の比にならない。
ナツメとケースケは慌てて身支度を済ませ、玄関を出ようとした。その時だった。彼らの父・ケータが二人を呼び止めた。
「ナツメ、ケースケ。………気を付けて。」
たった一言。
しかしその言葉に込められた想いをしっかり受け取った二人は、覚悟を決めた顔で返事した。
いつもどおり、”いってきます”と。
その後ろ姿が見えなくなるまで眺めていたケータは、二人に聞こえないと分かっていて呟いた。
「本当に気を付けて。………二人を宜しく頼むよ、
切実に祈るようにこぼれた言葉を、彼の妻であるフミカは一言一句聞き逃すことはなかった。
ヒーローたちは異様な光景に息を吞むことしかできなかった。
辺りは色褪せ街に活気はなく、夏休みに入っているというのに人っ子一人どころか生き物の気配を感じない。
そこらに生えている名のない雑草ですら、生命活動をしているようには見えない。まるで時が止まったかのような、不気味な空間である。
しかも何の予兆もなく、一瞬で光景が変わったのだから驚きを隠せないのも無理はない。
本当に予兆がなかったわけではない。しかし俳優連続失踪事件がこの事態に繋がるなど、
明らかな個性犯罪であるはずなのに、彼らが気づかなかった訳。それは妖怪特有の雰囲気に、個性から来る残渣が飲み込まれていたからだ。
妖怪の妖気は、ナツメのような特殊な状況下にある者や血縁故妖怪との親和性が高い者・偶発的に霊感を得た者以外認知することはできない。
個性社会という超常現象が生活の一部になった今でも、それは変わらない。
つまり、ヒーローたちは戦闘向きの個性を持っていようとも
明らかな個性犯罪であると認知している彼らは、知りうる知識を使い状況を理解しようと努める。
しかし、現代の常識に固まっているようでは現状把握は無理である。
その証拠に、誰一人として次に何をすべきか分からない。
緊急事態だというのに動けないもどかしさを抱えていたヒーローたちは、ふと見た景色に驚愕することとなった。
なぜなら、この不気味な空間を真剣な表情で駆け抜ける子供たちの姿を見たからだった。
この状況下で動けるなんて"普通"じゃない。
何かを持っていると直感したヒーロー達は、子供達の後を追いかけた。