個性社会のシャドウサイド   作:あとか

9 / 17
人間(ひと)妖怪(あやかし)

 ナツメたちがビルの中を捜索している最中。ビルの外にはやっとこさ追いついたヒーローたちの姿があった。

 

この事件(ヤマ)はやはりおかしい。このビルにいるはずの子供たちも人質に取られる可能性があるため、周囲を警戒しつつ瞬時の解決が望まれる。お互い情報を共有したうえで、ビルの中に突入した。が、目の前に広がっているのは個性事故が連発したような、とてもじゃないが安全な足場を確保するのが難しいほどに荒れた部屋だけであった。

 

このことにより警戒を高める。なぜなら、複数の個性が暴発したような有様であるのに、それを行ったと思える存在がいないのだから。

 

 この現場を見れば、これを引き起こしたのが一人や二人の単位ではないことは一目瞭然である。

なのに、誰もいない。ということは、厄介な事にヴィランは人質を取っていることになる。しかも、数十いや数百といった単位の人間を。

 これは凶悪と言ってもいい。一瞬不吉な文字を思い浮かべ、必死に振り払った。

 

 

 人質となっている人を探し始めて数分。急に空気が変わったのを感じた。とはいっても、なぜ変わったのかは説明できないものが大半ではあるのだが。

 しかし、確実に空気が変わり、ようやくヴィランの雰囲気を感じることが出来た。その雰囲気を追ってとある部屋に入ると、バケモノがそこにいた。

 

超常現象を日常にしている現代。最早オカルトなど、”無個性”以上の絶滅危惧種。

それ故100年前までは様々な手法で伝え聞いてきた妖怪の情報など、無であった。

 

「あらぁ、イケメンがいっぱい♡その魂、頂戴な。」

開けているはずの場所の前面を覆い、悠々自適にそう言うバケモノ基女郎蜘蛛。ヒーローたちはその道筋の分からぬ言葉に混乱しつつも、相手に攻撃しようと行動に出た。

 

 しかし、女郎蜘蛛相手にそれは悪手。それぞれの足から紐を伸ばし、攻撃してこうとしてきたヒーロー、特に男性ヒーローを次々と捕捉していった。しかも捕らえてすぐ、力―魂を吸い取ろうとする。

 必死に抗うが、所詮は特殊能力を持つだけの人間。正しい知識もないままに妖怪に挑むなど、死にに行くようなものだ。

 

 かなり警戒して大人数で向かったはずなのに、ほんの数分で、戦えるヒーローたちは片手で足りる程になってしまった。捕まらなかったものの、女郎蜘蛛の執拗な攻撃で女性ヒーローたちはその場で立っていることが精一杯。

 

とてもじゃないが、人質を助け出すことなど出来ない。

誰か助けてくれ。

 

ヒーローという人を助ける立場にある筈の人間が、こんなことを言ってはヒーロー失格だな。

肩で呼吸しながら、ミルコは内心自分を嗤った。

 

 

「そこまでよ!女郎蜘蛛!」

そんな時だった。

若い、いや幼いともいえる声が部屋中に響き渡った。

 

なんとか目だけ声のした方に向けると、三つ編みおさげの女子が仁王立ちで男性ヒーローたちを捕えている相手を睨みつけていた。

 




【今回の妖怪大辞典】
女郎蜘蛛
かつて1000年以上前に悪行の限りを尽くし、姫乃の術師に封印された巨大な女蜘蛛の妖怪。イケメンや男の生命力を主食とし、イケメンを狩りながら封印解除を狙っていた。今回、生命力あふれる男性ヒーローもターゲットに入れた模様。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。