聖戦士シャーロイル~名探偵になりたかったのに、何故かヒーローになってしまった~   作:XX(旧山川海のすけ)

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第101話 金目当てのヤベー奴

★★★藍沢市子視点です★★★

 

 

 マーシアハ教会の東京支部に着いた私は、ホールのど真ん中で床に大の字になって寝転がっていた。

 冷たい大理石の感触が背中に伝わる。

 その冷たさよりさらに冷たい視線が気になるけど、気にしてられない。

 

 私は手帳を握ったまま、わざと大声で喚き散らす。

 

「天京光莉を連れて来てって言ってるでしょ!」

 

 周りの信者たちがざわついてる。

 私に対し、冷たさや恐れを感じる視線が突き刺さるけど、あえて無視する。

 

「14才のジュニアアイドルみたいな、食べ頃の可愛い男の子の信者を私の結婚相手として連れて来なさい! マーシアハ教会の信者の数多いんだから、いるでしょ!?」

 

 目を吊り上げて大声で。

 恥ずかしげもなく。

 

 そしてさっき信者に渡されたミニ羊羹のパックを放り投げ

 

「こんなコンビニで買える羊羹で私を誤魔化せると思うなよ!」

 

 完全にヤベーやつだ。

 私、今すっごいヤベーやつになってる。

 

 でも、これが法王バイルをおびき出すための作戦だ。

 贅沢三昧を求めて聖戦士を裏切ったクズを演じるって決めたんだから、徹底的にやらないと意味がない。

 

 信者たちが困惑した顔でこっちを見てる中、私はさらに声を張り上げた。

 

「たいがーやの最高級羊羹を寄越せェ! おやつは1日5回が最低ラインだからね!」

 

 バタバタ暴れながら。

 しばらく喚いてると、上位っぽい信者の人が近づいてきた。

 白いローブを着た、ちょっと偉そうな感じの男性。

 

「巫女様がお会いになるそうです。どうぞこちらに」

 

 落ち着いた声でそう言われた瞬間、心の中で小さく叫んだ。

 

(来た!)

 

 やっとだ。法王バイル──天京光莉が動き出した。

 

 でも、ここで素直に従うわけにはいかない。

 私は寝転がったまま、笑顔で訊いた。

 

「ここに来るってこと?」

 

 だけどそこで、男が少し戸惑った顔で答える。

 

「いえ、別施設に」

 

「そんなことを言って、警察に連れて行くつもりね!? そうはいかないんだから!」

 

 ゴロゴロ転がりバタバタ暴れて。

 私はごねた。

 ごねて、ごねて、ごねまくった。

 

「何!? 別施設って怪しすぎるでしょ! 私を騙してブタ箱に放り込む気ね!?」

 

 男性信者を睨みつけ、大声で喚く。

 

「天京光莉が来ないなら入信しないよ! 約束が違うじゃない!」

 

 信者が「落ち着いてください」とか「巫女様は多忙で」とか言い訳するたびに、私はさらに喚いて抵抗した。

 するととうとう、その男性信者に他の信者が駆け寄ってきて

 

 そこで

 

「この施設の会議室にいらっしゃるそうです」

 

 その言葉を聞いた瞬間、私は内心でガッツポーズした。

 

(よし、これでOK!)

 

 でも、表面上はまだ不満そうな顔で、「ふーん、ならいいけど」とぶっきらぼうに返した。

 そして立ち上がって、埃を払いながら

 

「化粧セットをちょうだい。身支度するから」

 

 信者が慌てて「はい、すぐ用意します」と走り去る。

 

 時間を稼がないと。

 

 ……実は御幸君が10分毎に私を念写しているんだよね。

 で、今の発言が事実かどうかを確かめてくれてる。

 

 そのためのメイク。

 

 数分後、信者が簡単なメイクセットを持って来た。

 

 私は「こんな安いのしかないの?」なんてぶつくさ文句を言いながら

 

 持参した鞄をこっそり開けて中身を見る。

 

 鞄の内ポケットに忍ばせていた「2枚1セットの護符」……双影(そうえい)の護符。

 それを確認。

 

 片方を破ると、もう片方も連動して破れる護符なんだよね。

 御幸君が持ってるもう片方と繋がってる。

 

 すると

 

「……破れてる」

 

 護符の端がちぎれてるのを見て、私は思わず唇の端を持ち上げる。

 

 ということは、御幸君が今の発言──「この施設の会議室に来る」を確認して、それが「嘘じゃないことが分かった」ってことだ。

 

 なので私は「まぁいいわ。これで我慢してあげるから有難く思いなさいよね」と尊大な感じで言い

 

 私は御幸君たちが動く時間を稼ぐために、不自然にならない程度に丁寧なメイクを開始したんだ。

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