聖戦士シャーロイル~名探偵になりたかったのに、何故かヒーローになってしまった~   作:XX(旧山川海のすけ)

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第104話 バイルの矜持

「勝負ありだ。腐った化け物」

 

 俺がそう宣告した瞬間、俺の足の下の法王バイルの目が光った気がした。

 その化け物の顔に浮かんだ笑み。

 それを感じ取った瞬間、奴は最終手段に出たようだ。

 

 一瞬にして、猫とヒキガエルの中間みたいな醜い姿が消え、人間体──天京光莉に戻った。

 長い紫色の髪、美形の顔。不敵な笑みを浮かべて、俺を見据える。

 

「やれるものならやってみなさい」

 

 光莉の声で、挑発的に呟いた。

 美しい女を殺せるのか? とでも言いたいらしい。

 

 その態度に、俺はヒトへの侮りを感じた。

 人間を虫けらみたいに見下してるこの化け物が、俺が躊躇うと踏んでいるのか。

 

 ……ふざけるな!

 

「グギャアアアアアア!」

 

 俺は躊躇わずに右手の手刀……メギドセイバーを振り下ろし、バイルの右腕を切断した。

 紫色の光の刃が肉を裂き、吹っ飛んだ腕が市子の目の前に転がり。

 

 次の瞬間、塵になって消滅した。

 

 市子が悲鳴を飲み込む気配が背後から伝わってくる。

 

「……寸刻みにしてやる。お前が侮り、踏みつけにしてきた犠牲者たちの苦しみを思い知れ」

 

 俺はそう吐き捨てて、今度は左手首を狙った。

 メギドセイバーが一閃し、斬り飛ばされた手首もまた塵に変わる。

 切断面から青黒い液体が溢れるが、思ったほど量は多くない。

 

 切り刻まれていこうとしている。

 そんな状態で脂汗を浮かべながら、バイルが壮絶な笑みを浮かべた。

 

「……食物以上の価値のないくだらない生物が、一丁前に恨むのですね」

 

 その言葉に、俺の血がさらに沸騰した。

 だが、奴は止まらない。

 

「おめでたいあなたに教えてあげますよ。ワタクシは自分を崇めた人間を奴隷にする力を授かっています……ですが、ワタクシに従う人間全てが、その力の影響下には無いんですよね」

 

 覚悟を決めた笑みを浮かべ、バイルは

 

「むしろ、このマーシアハ教会の中枢の人間は、ほぼ全てまっさらで、全てを知って居ながらワタクシの協力者に望んで成ったのですよ!」

 

 このマーシアハ教会の真実を語る。

 このマーシアハ教会は、天魔王シャイタン降臨に必要なプシュケーを蓄積するために立ち上げた宗教団体で。

 中枢にいるのは、自分さえ良ければ他人がどうなっても、世界がどうなっても良いと考える人間ばかり。

 

 全て承知の上で法王バイルの軍門に下った奴ばかりであると。

 

「笑わせる! お前たちの感じている愛情も! 友情も! 絆も! 忠誠心も! 全て紛い物! 嘘の中で生きている、クズが粋がるな!」

 

 バイルは大声で嘲笑いながら、俺に宣言する。

 お前たちはゴミなのだ、と。

 

 そしてこう言った。

 

「ワタクシを殺したいなら殺しなさい! 拷問したいならすればいい! ですがそれはお前たちの敗北ですね!」

 

 バイルは本気で言ってる。

 自分の命を可能な限り守ろうとしているが、一切媚びない。

 外道だが、ナラッカとしては上等な覚悟なのかもしれない……。

 

 その挑発に、俺の頭が冷えた。

 こいつを殺すのは簡単だ。

 

 だが、こいつの言葉が心に刺さる。

 洗脳されていない人間が、望んでこいつに協力した。

 

 そんなことが──

 

「御幸君、これ以上の会話は……」

 

 そのとき後ろから市子が口を挟んだ。

 こいつと言葉をぶつけ合っても、傷を深めるだけで意味がないって意味だろう。

 

 彼女の声に、俺はハッと我に返った。

 そうだ。こいつの言葉に耳を貸す必要はない。

 惨劇を止めることが重要なんだ。

 

 産まれて1年少しで殺されるという、あんな悲惨な生を受ける子供たちを二度と出さない。

 そのために、こいつを殺して。

 

 それで、終わりだ。

 

 ……だが、その時だった。

 

『……ご苦労だった。もう、耐える必要はないぞバイルよ』

 

 突如。

 厳かな響きを持つ、少女の声が会議室に響き渡ったんだ。

 

「……何!?」

 

 俺はメギドセイバーを維持したまま、周囲を見回した。

 ガルザムとゼルノスも一瞬で戦闘態勢に入る。

 市子が「御幸君!」と叫び

 

 バイルは

 

「陛下……!」

 

 その声が、震えてた。

 喜びに……!

 

 陛下……?

 

 と言うことは……

 

 この声は、天魔王シャイタンの声か……!?

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