聖戦士シャーロイル~名探偵になりたかったのに、何故かヒーローになってしまった~ 作:XX(旧山川海のすけ)
「勝負ありだ。腐った化け物」
俺がそう宣告した瞬間、俺の足の下の法王バイルの目が光った気がした。
その化け物の顔に浮かんだ笑み。
それを感じ取った瞬間、奴は最終手段に出たようだ。
一瞬にして、猫とヒキガエルの中間みたいな醜い姿が消え、人間体──天京光莉に戻った。
長い紫色の髪、美形の顔。不敵な笑みを浮かべて、俺を見据える。
「やれるものならやってみなさい」
光莉の声で、挑発的に呟いた。
美しい女を殺せるのか? とでも言いたいらしい。
その態度に、俺はヒトへの侮りを感じた。
人間を虫けらみたいに見下してるこの化け物が、俺が躊躇うと踏んでいるのか。
……ふざけるな!
「グギャアアアアアア!」
俺は躊躇わずに右手の手刀……メギドセイバーを振り下ろし、バイルの右腕を切断した。
紫色の光の刃が肉を裂き、吹っ飛んだ腕が市子の目の前に転がり。
次の瞬間、塵になって消滅した。
市子が悲鳴を飲み込む気配が背後から伝わってくる。
「……寸刻みにしてやる。お前が侮り、踏みつけにしてきた犠牲者たちの苦しみを思い知れ」
俺はそう吐き捨てて、今度は左手首を狙った。
メギドセイバーが一閃し、斬り飛ばされた手首もまた塵に変わる。
切断面から青黒い液体が溢れるが、思ったほど量は多くない。
切り刻まれていこうとしている。
そんな状態で脂汗を浮かべながら、バイルが壮絶な笑みを浮かべた。
「……食物以上の価値のないくだらない生物が、一丁前に恨むのですね」
その言葉に、俺の血がさらに沸騰した。
だが、奴は止まらない。
「おめでたいあなたに教えてあげますよ。ワタクシは自分を崇めた人間を奴隷にする力を授かっています……ですが、ワタクシに従う人間全てが、その力の影響下には無いんですよね」
覚悟を決めた笑みを浮かべ、バイルは
「むしろ、このマーシアハ教会の中枢の人間は、ほぼ全てまっさらで、全てを知って居ながらワタクシの協力者に望んで成ったのですよ!」
このマーシアハ教会の真実を語る。
このマーシアハ教会は、天魔王シャイタン降臨に必要なプシュケーを蓄積するために立ち上げた宗教団体で。
中枢にいるのは、自分さえ良ければ他人がどうなっても、世界がどうなっても良いと考える人間ばかり。
全て承知の上で法王バイルの軍門に下った奴ばかりであると。
「笑わせる! お前たちの感じている愛情も! 友情も! 絆も! 忠誠心も! 全て紛い物! 嘘の中で生きている、クズが粋がるな!」
バイルは大声で嘲笑いながら、俺に宣言する。
お前たちはゴミなのだ、と。
そしてこう言った。
「ワタクシを殺したいなら殺しなさい! 拷問したいならすればいい! ですがそれはお前たちの敗北ですね!」
バイルは本気で言ってる。
自分の命を可能な限り守ろうとしているが、一切媚びない。
外道だが、ナラッカとしては上等な覚悟なのかもしれない……。
その挑発に、俺の頭が冷えた。
こいつを殺すのは簡単だ。
だが、こいつの言葉が心に刺さる。
洗脳されていない人間が、望んでこいつに協力した。
そんなことが──
「御幸君、これ以上の会話は……」
そのとき後ろから市子が口を挟んだ。
こいつと言葉をぶつけ合っても、傷を深めるだけで意味がないって意味だろう。
彼女の声に、俺はハッと我に返った。
そうだ。こいつの言葉に耳を貸す必要はない。
惨劇を止めることが重要なんだ。
産まれて1年少しで殺されるという、あんな悲惨な生を受ける子供たちを二度と出さない。
そのために、こいつを殺して。
それで、終わりだ。
……だが、その時だった。
『……ご苦労だった。もう、耐える必要はないぞバイルよ』
突如。
厳かな響きを持つ、少女の声が会議室に響き渡ったんだ。
「……何!?」
俺はメギドセイバーを維持したまま、周囲を見回した。
ガルザムとゼルノスも一瞬で戦闘態勢に入る。
市子が「御幸君!」と叫び
バイルは
「陛下……!」
その声が、震えてた。
喜びに……!
陛下……?
と言うことは……
この声は、天魔王シャイタンの声か……!?