聖戦士シャーロイル~名探偵になりたかったのに、何故かヒーローになってしまった~ 作:XX(旧山川海のすけ)
第106話 天魔王の実力は
「人間を舐めるな天魔王!」
俺はメギドセイバーの手刀を構え直し、跳躍。
シャイタンに飛びかかった。紫色の手刀を振り上げ、一気に距離を詰める。
だが──
シャイタンが俺に向けて右手を突き出し、ギュッと握る仕草をした。
その瞬間
「……何!?」
俺の体が急に動かなくなったんだ。
見えない力が俺を押さえ付け、俺は空中でピタリと停止させられる。
――まさか
シャイタンの目が赤く輝き、その腕を横に振った。
それに連動して、俺は吹っ飛び壁に叩きつけられた。
「ぐああっ!」
間違いない……!
念動力だ。
俺は馬力が1キロあるかないかなのに、コイツは一体どれだけ……!
射程も俺とは比べようがない……!
自分とのあまりにも大きすぎる差を見せつけられ戦慄。
そのまま俺は会議室の壁に叩きつけられ、コンクリートが砕けた。
腕や背中に激痛が走り、呼吸が止まる。
そして、それで終わりじゃなかった。
壁に思い切り叩きつけられた直後、俺は再び宙に浮かされ、今度は反対側の壁に投げつけられた。
ドゴォ! とすごい音がして。
壁がぶち破られた。
建材塗れの姿で俺は投げ出された。
前にベルゼブと最初に戦ったときの再現……!
体が軋んでいる。
やばい。多分あちこちイカれている……!
戦闘不能寸前だ……!
「今の我は完全ではないが……帝王である。帝王に刃を向けるなど、不遜である。身の程を知るがいい……」
シャイタンの声は平然としてる。
不完全な召喚だとしても、こいつの力は桁違いだってことか……!
ガルザムが「くらえ!」と叫び、蛇腹剣の一撃を繰り出した。だが、その刃もシャイタンの念動力で止められる。剣が空中でピタリと静止し、ガルザムの腕が震える。
ゼルノスが「これならどうだ!」と弓を引き絞り、メギドブラストの矢を連射した。
紫色の炎の矢がシャイタンに迫るが──
シャイタンが片手を軽く振ると、凄まじい紫色の光の奔流……おそらく奴の魔光波が放たれ、矢を全て搔き消した。
ほぼノーチャージの魔光波でそれをするのか……!
戦慄する俺たちに。
シャイタンは底冷えする目を向けて
「……我が忠臣ベルゼブとバイルの仇を討たせてもらうぞ。かつての我が姉メギドの手先ども」
凄まじい怒りが込められた言葉。
その言葉に、俺は歯を食いしばった。
体が動かない。ボロボロだ。
ガルザムとゼルノスも手詰まりだ。
シャイタンが俺を見下ろし、右手をゆっくり上げた。
紫色の光が集中していく。
魔光波のエネルギーがその掌に集まり始める。
――トドメだ。
だが──
「……?」
何故か、シャイタンが一瞬躊躇った。
魔光波が放たれる寸前で、手が止まったんだ。
その隙を見逃すわけにはいかない。
「御幸君、逃げるよ!」
市子が叫びながら俺に駆け寄った。
彼女の手が俺の腕を掴み、力を込めて引っ張る。
俺は最後の気合で立ち上がり
「離脱するぞ!」
俺は残った力を振り絞り、市子と一緒に会議室の出口へ向かった。
ガルザムとゼルノスがそれに続く。
シャイタンは動かない。
何故だ……?
だが、確認している暇はない。
ここを逃すと命が無くなる。
そして命が無くなったら、そこで終わりだ……!
脱出の間、俺はずっとシャイタンの冷たい視線を感じた。
だけど、ヤツは襲ってはこなかった。
本当に一体何故……?
何にしろ、助かった。
けれども……
「くそっ……完全召喚でなくてもこの強さ……絶望的だろ……!」
俺はボロボロの状態で走りつつ呟いた。
でもアイツに勝たないと……
この世界が終わってしまう……!