聖戦士シャーロイル~名探偵になりたかったのに、何故かヒーローになってしまった~ 作:XX(旧山川海のすけ)
俺たちはなんとかアジトの古い館まで逃げてきた。
廊下を抜け、広間にたどり着いたときには、体が限界だった。
「御幸君、しっかりして!」
市子が俺を支えながら、広間のソファに座らせてくれた。
右腕が折れてる。肋骨も何本かやられてる感覚がある。
シャイタンの念動力で壁に叩きつけられたダメージが、体中に残ってる。
ガルザムが「瀬名さん、エリクサーです」と薬瓶を差し出して来た。
小瓶に入った青い液体・霊薬エリクサー。
負傷は全て治るけど、負傷の程度によって寿命が縮む危険な薬。
確か骨折で約3カ月だったっけ。
俺は
「分かった」
そう短く答え。
ガルザムから受け取ったその霊薬を飲み干した。
苦くて、胃や喉が焼けるみたいだった。
だが、数秒後、熱が体中に広がり、骨の
折れた腕が元に戻って行くのが理解できた。
「……ふう。楽になった」
寿命が削れるのは嫌だけど、今はゆっくり治療をしている時間が無い。
止むを得ない決断だろ。
落ち着いた俺は、仲間たちに顔を向ける。
「あの念動力をなんとかしないと、戦いにならないぞ」
シャイタンの力が脳裏に焼き付いてる。
あの見えない力に近づくことすらできなかった。
お話にならない。捕まって投げ飛ばされて終わりだ。
「対策はどうするの?」
市子が心配そうに訊いてくる。俺は首を振った。
「……浮かばない」
ガルザムもゼルノスもだんまりだった。
時間だけが過ぎていく。対策が浮かばないまま、俺たちは沈黙した。
その間、外ではとんでもないことが起きてた。
広間にあったテレビをつけると、緊急ニュースが流れてきた。
『国会議事堂が正体不明の存在に占拠されました!』
画面には、シャイタンの姿。
カメラによって長い純白の髪と6枚の翼を持つ薄絹を纏った美少女が映し出された。
ナラッカの帝王は、堂々とした態度で国会議事堂の上で足を組んで鎮座している。
『テロ対策の機動隊が差し向けられましたが、全滅したようです。政府は自衛隊の出動を閣議決定……』
アナウンサーの声が震えてる。
その数時間後
『じ、自衛隊の特選部隊が全滅したとのことです! たった今政府から発表がありました!』
世間は騒然となった。
その後、アメリカに協力要請が飛び、戦後はじめて、日米安保条約が生きていることを証明する事態になり……
その結果は、ある意味予想通りだった。
同じことの繰り返しだったんだ。
「……無理だ」
一部始終を見て俺は呟いた。
あの力に普通の人間の軍が勝てるわけがない。
そして、ニュースが新たな情報を伝えた。
『占拠した存在から政府に要求が伝えられました。以下はその声明です──』
我が名は天魔王シャイタン。ナラッカの帝王なり。
喜べ人間ども。この国を未来永劫我々ナラッカが守護してやる。
お前たちはその代償として、我らにプシュケーを差し出せ――
画面が静まり返り、アナウンサーが「政府は対応を協議中です」と続ける。
「プシュケーを差し出せ……? 生贄を出せってこと……?」
市子が真っ青になって呟く。
俺は拳を握りしめた。
俺は呻くように呟く。
「バイルがやったことを俺たちに自発的にやれと言ってるのか……? ふざけるな……!」