聖戦士シャーロイル~名探偵になりたかったのに、何故かヒーローになってしまった~   作:XX(旧山川海のすけ)

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第111話 崩れていく世界

★★★藍沢市子視点です★★★

 

 

 日に日に、外の世界がどんどんおかしくなってる。

 

 ある日、芸能界で有名な芸能人がテレビで衝撃的なカミングアウトをした。

 

「実は僕、ナラッカです」

 

 笑顔でそう言った彼に、スタジオが一瞬静まり返った。

 

 隠す必要がなくなったからだろう。

 シャイタンが実質的に国を支配し、ナラッカが「国の守護者」として受け入れられつつある今、彼が正体を明かすのは自然なのかもしれない。

 

 彼自身は大物で、昔はアイドルをやってた気がする。

 芸能界は良くも悪くも過去を問わない部分があるから、ナラッカが日の当たる場所に潜伏するにはうってつけの場所なのかもしれないね。

 そして彼は笑顔でこう言ったんだ。

 

「でも、あまり怖がらないで下さいね。僕は臣下の礼をわきまえていますから。敬愛する天魔王陛下に対して恥ずかしいことはしません」

 

 そんな彼の言葉にたくさんのコメントがついた。

 

『かっこいい!』

 

『日本を守ってくれてるシャイタン様の臣下なら安心!』

 

『変わらず応援します!』

 

 ……カミングアウトで恐怖の対象になって人が離れるどころか、逆に人気が出てる。

 

 私はタブレットを握る手に力が入った。

 

 シャイタンが受け入れられてる? 

 死刑囚を全てプシュケーとして差し出した後。

 その後、何も理不尽なことを言ったりしなかったからって? 

 

 機動隊や自衛隊を全滅させたことすら、「先に手を出したのはこっちでは?」なんて言う人間が現れてる。

 SNSのタイムラインがそんな声で埋まっていく。

 

『シャイタン様は悪人を掃除してくれてるだけだよ』

 

『シャイタン様がいるから、日本はもう未来永劫国防を考えなくて良いんだぞ?』

 

『いいことづくめ。それに超可愛いし。俺もシャイタン様のお世話がしたいなぁ』

 

『もっとシャイタン様の報道を増やせ』

 

 そしてそんな声を批判する声が上がると、すぐに叩かれる。

 

『お前のような偽善者は、シャイタン様の贄になればいいんじゃない?』

 

『お前について開示請求出したから。逆らったらシャイタン様に逆らったも同じですよという忠告付きでな』

 

 そんな投稿が当たり前になって、批判する者はどんどん減っていった。

 やがて、誰も現状を批判しなくなった。

 

 代わりに、こんな投稿が目立つようになった。

 

『悪者を知り合いのナラッカに教えたら、始末してくれたよ! シャイタン様ありがとう!』

 

『近所の迷惑な奴をナラッカに報告。次の日にはいなくなってた。最高!』

 

 笑顔の絵文字付きで、そんな感謝の言葉が並んでいた。

 

「……何!?」

 

 私はタブレットを膝に落としそうになった。

 

 始末してくれた?

 ナラッカに告げ口して、人を消してる?

 それが日常になってるの?

 

 この人たち、自分が変わらず無関係だと思ってる。

 自分がその「悪者」にされない保証なんてないのに。

 

 誰かの気分次第で「贄」にされるかもしれないのに。

 私は立ち上がって、窓の外を見た。御幸君がずっと休まず修行を続けている。

 

「御幸君……私たちが戦ってる意味が、どんどん消えてくよ……」

 

 シャイタンが受け入れられて、ナラッカが日常になってる。

 死刑囚を消しただけで安心して、機動隊や自衛隊、米軍の死を忘却して、密告で人を消すことを歓迎している。

 

 ……狂ってる。

 

 でも、この人たちは気づかない。シャイタンを「可愛い」とか「陛下」とか呼んで、盲信してる。

 どんどん、私の世界が絶望で染まって行く……。

 

 ……私は駆け出した。

 

 でも、諦めたくない!

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