聖戦士シャーロイル~名探偵になりたかったのに、何故かヒーローになってしまった~   作:XX(旧山川海のすけ)

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第113話 ゼイモンの苦悩

★★★闇闘士ゼイモン視点です★★★

 

 

 僕は事務所のデスクに座って、目の前の書類を確認していた。

 もう何年も続けてきている弁護士の仕事だ。

 

 今も依頼の内容……とある企業の契約書のチェックの仕事をしている。

 僕は弁護士としてはオールラウンダーだから、色々するんだよね。

 

 この世界での僕は……

 弁護士として価値ある人間を救い、そして救いようのないクズをナラッカとして闇に消す。

 これが、この世界に来てからの僕の生き方だった。

 これは車の両輪のようなもの。

 

 どちらも欠けてはいけない大切な仕事だ。

 

 

 

 天魔王シャイタン陛下が召喚されたあの日。

 テレビの報道を見ながら内心で狂喜したよ。

 

 あのお美しい姿。

 そして人間軍相手に無双するお元気なご様子。

 魔界では日々お辛そうだったから、本当に嬉しかった。

 

 あとでアスタルから訊いたが、バイルの奴が自己犠牲の末に実現したらしいな。

 僕は弱いくせにピーピー喚くアイツが嫌いだったが、その話を聞いたときアイツを心から尊敬した。

 

 なんという見事な献身。

 最終手段でそこまでやったのか。

 

 見事だ。

 生前、辛く当たって悪かった。

 認めるよ……

 

 アイツの尊い自己犠牲の結果。

 不完全とはいえ、この世界で無双するには十分な力を取り戻した陛下をお呼びできた。

 

 それで十分だ。

 陛下の完全な力の回復は、これから生き残ったノーブルクラス……

 

 僕とアスタルで考えていこう。

 

 

 

 陛下のこの世界への御動座を報道で知ったとき。

 僕はすぐさまアスタルに電話をかけた。

 

 そして今は政治家・垂井明日花に成り代わってるアイツに、こう提案したんだ。

 

「プシュケーは人間基準で憎まれている悪人から奪え。そうすれば人間たちの抵抗が弱まり、むしろ感謝するようになる」

 

 ってね。

 

 アスタルは否定する理由もないって同意してくれた。

 

 だから政府が陛下に死刑囚を差し出すと発表したときは、胸を撫でおろしたよ。

 もし「老人」や「劣等生」なんてターゲットを選んでたら、人間たちは狂ったように抵抗に舵を切っただろう。

 

 人間という種族は、自分たちの価値観に反する理不尽にはいつまでも我慢していない。

 必ず打ち壊そうと立ち上がる者が出て来る。

 

 だから避けるべきなんだ。

 人間は侮ってはいけない存在なのだから。

 

 僕は椅子の背にもたれて、ふと思い出す。

 

 この世界にやって来てすぐの頃、興味本位で屋台でたい焼きを買ったときのことだ。

 

 初めて食べたたい焼き。

 餡の甘さ、皮の固さ香ばしさが絶妙でさ。

 1万年前の地球にはなかった味わいだった。

 

 腹は膨れないけど、味だけで言えばこれほど美味いものはないって感動したんだ。

 それ以来、人間の作ったものに興奮するようになった。

 そして人間を知り、敬意を持った。

 

 彼らは価値ある種族だ。腹が空いたからって無差別に食い散らかしていい存在じゃない。

 

 でも……これからどうするか。

 

 死刑囚の在庫はゼロだ。

 次は暴力団や半グレでも狩って陛下に召し上がっていただくか?

 

 陛下には魔界でとてつもない恩を受けた。

 空腹で気が狂いそうだった僕の苦しみを、陛下が引き受けてくださったんだ。

 

 返し切れない大きな恩。

 だからこそ、こちらにおいでになった以上、もうあの方を飢えさせるわけにはいかない……。

 

「しかし、SNSが酷いですね。死刑囚を生贄に差し出したことをゴミ掃除なんて」

 

 秘書の三波さんが、自分のデスクでタブレットを手に呟いた。

 

 彼女は冷静で、知的で、理性的だ。

 法律に関わる仕事をしてるんだから当然だけど、法に依らず死刑囚が生贄に出されたことに怒っている。

 僕は表の顔が弁護士だから、頷いて同意を示した。

 

「……そうだね。もっと法の精神というものを、皆理解すべきだ。先人が発明したこの偉大な精神を」

 

 内心は別だけどね。

 僕に人の法は関係無いもの。

 

 三波さんが悲観した声で続ける。

 

「……これからこの国はどうなっていくんでしょうか?」

 

 彼女は陛下がこの国に神として君臨しつつあるこの状況が怖いらしい。

 ナラッカの僕は別に問題には思って無いが、賢い彼女なら当然の反応だな。

 いくらかは楽にしてあげたい気はする。できるならね。

 

 そのときだった。

 僕にとって、恐れていたその出来事が起きたのは……!

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