聖戦士シャーロイル~名探偵になりたかったのに、何故かヒーローになってしまった~   作:XX(旧山川海のすけ)

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第116話 我々の陛下

★★★賢者アスタル視点です★★★

 

 

「陛下! ご機嫌麗しゅうございますか?」

 

「陛下! こちらへの御動座お祝い致します!」

 

 この議場に訪問者があった。

 男と女数人だ。

 

 だが、ここに来る以上彼らの正体は……

 

 その場で彼らは正体を現した。

 ナラッカの姿を。

 

 彼らは陛下の前に進み出て、膝を折る。

 人型じゃ無い者は、丸まった。

 

 そこに陛下は玉座たる机からお降りになり、悠然と彼らの前に進み出られる。

 

 そして

 

「よくぞ来てくれた。我は嬉しい」

 

 そしてひとりひとりの身体にその御手を触れられた。

 

 ……陛下が、彼らの飢餓をお引き受けになったのだ。

 

「陛下、ありがとうございます!」

 

「感謝致します!」

 

 陛下の御恩を受けたナラッカたちは心からの感謝を口にして、最大限の礼を示し。

 そして退出していった。

 

 臣民たちの謁見を終えた陛下は再び玉座に戻り、ポケットからスマホを取り出し。

 何かの動画をご覧になりはじめた。

 

『今回ご紹介する泥ママは……』

 

 ……この国の政府に降伏させた後。

 陛下はずっとこの御調子でいらっしゃる。

 

 この国会議事堂を居城とされ。

 ナラッカたちが挨拶に来れば、空腹を取り除く。

 

 ……ノーマルクラスたちには、周囲の人間に「コイツは殺して構わない」と思われている人間以外食うなと厳命してる関係上。

 プシュケーを摂取できずに空腹で苦しんでいる者がどうしても出て来る。

 

 陛下はその者の苦しみを取り除くことに専念しておられる。

 我々の帝王として、あまりにも尊い行為を続けておられるのだ。

 

 我は

 

「ところで陛下」

 

 ……この話を切り出した。

 絶対に確認しておかないといけないことを。

 

「何だアスタル?」

 

 陛下がスマホから御目を外す。

 我は

 

「空腹ではございませんか? もしそうであるなら、死刑囚の在庫はもうございませんので、無期懲役犯か、逮捕歴の多い犯罪常習者を献上しようと考えております。どちらがよろしいですか? いつでもおっしゃってください」

 

 ……これを確認しに来た。

 陛下をまた飢えさせるなんて、絶対にあってはならない。

 この方は、我々ナラッカが空腹で狂うことをその身で防いで来た尊い御方だ。

 

 我々の帝王は、これから飢えることは絶対にあってはならないのだ……!

 

 ……1万年……!

 1万年だぞ……?

 

 我の言葉をお聞きになり。

 陛下はスマホを横に置いた後、以前献上した500ミリのペットボトルのひとつから紅茶をコップにお注ぎになられ。

 一口飲み、御答えになられた。

 

「……別に良い。何故か腹が減らぬのだ。摘む命は少ない方が良い故、まあ当分良いぞ」

 

 ……なんという!

 

 我の目が、思わず潤む。

 

「陛下の高潔さに、ただただ感服いたします」

 

 震えてしまう……!

 我々の帝王は、まさしく神……!

 

 故に、今の状況もあるんだと納得する。

 

 ……なんと、我々の管理下にあると言って差し支えない人間たちが、陛下を歓迎しているのだ。

 

 シャイタン様、シャイタン様、と。

 来てくださってありがとうと言う者すら居た。

 

 だから我は思わず奏上した。

 

「陛下、この国の人間たちの大半はすでに陛下を認めています。ご降臨を感謝し、歓迎しております」

 

 ……奏上しながら我は興奮していた。

 こんな偉大な神を帝王に戴いている我々は幸福である。

 その喜びを噛み締めながら。

 

「これからは無敵の天魔王陛下がいらっしゃるから、外敵からの侵略の恐怖にもう怯えなくていいと喜んでおりますよ!」

 

 奏上を続けながら、もうひとつ、ここに持参したものを献上する。

 それは……

 

「……見てください、陛下の団扇(うちわ)やアクスタというグッズ類を作る者すら現れました」

 

 天魔王陛下のファンアイテム……!

 人間たちお手製の、心が籠ったものだ……!

 

 陛下の御姿が描かれた色鮮やかな団扇と、陛下の御姿を模したアクリル製の小さな人形……。

 陛下の美しい純白の髪と六枚の翼が見事に再現されている。

 

「ほう、これは……」

 

 陛下はそれらを手に取り、お喜びのようだった。

 

「人間たちは、面白いことを考えるものだな……」

 

 1万年前は怯えて逃げるだけの存在であったのに。

 変わるものだ。

 

 陛下の呟きに、我はここに至るまでの苦難を思い再び涙をし……

 

 そのときだった。

 

「陛下!」

 

 議場の扉が勢いよく開き、警備兵の役割を買って出ているナラッカ数人が慌てて駆け込んで来たのだ。

 

 その声は、恐怖と焦りに染まっている。

 その理由は……

 

「聖戦士がそこまで乗り込んできています!」

 

 ……何だと……?

 まだ抗うというのか……?

 

 警備兵のナラッカは続けた。

 

「数は3人ですが、恐ろしい強さです! 我々では止められません!」

 

 ……許せない。

 

 やっと、1万年ぶりに……

 

 我々の楽園がここに完成したというのに……!

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