聖戦士シャーロイル~名探偵になりたかったのに、何故かヒーローになってしまった~ 作:XX(旧山川海のすけ)
俺はライトバンの後部座席に座り、窓の外を流れる景色を睨んでいた。
ガルザムが運転席でハンドルを握り、ゼルノスが助手席で地図を確認してる。
永田町に向かう道は、まるで死に絶えたみたいに静かだった。
……ここは本来、天魔王シャイタンが出現する前は日本の心臓だったはずだ。
政治家や官僚が忙しく走り回って、国を動かしてた場所。
……でも今はゴーストタウンだ。
事前にネットで調べた情報だと、垂井総理がシャイタンと「友好関係」を築くために定期的にここを訪れてるらしい。
国会機能は京都に移動して、皇居も京都御所に移ったってさ。
……マジで、大変なことになってんな。
胸の奥で、怒りと焦りがぐるぐる渦巻いてる。
この国が、俺たちの世界が、ナラッカたちにボロボロに壊されていってる……。
シャイタンを倒さない限り……絶対に戻らない……!
そう思っていたら。
とうとう
「見えてきましたよ、瀬名さん」
ガルザムの声。
俺はそれで我に返る。
フロントガラス越しに、国会議事堂のシルエットが浮かんでる。
あの重厚な建物が、今はシャイタンの城だ。
そのとき、複数の影がこっちに近づいてくるのが見えた。
全部人外のシルエット……ナラッカだ。
こっちが敵対者である可能性を警戒してるのか、それともすでに俺たちの正体がバレてるのか。
「……どっちでもいい」
俺は呟き、ガルザムとゼルノスに視線をやった。
2人がこちらを見て頷く。
……覚悟は決まっている。
「玲瓏ーッ!」
3つの光がバンの中で弾け、俺たちは聖戦士の鎧に身を包む。
俺の紫の鎧、ガルザムの青い鎧、ゼルノスの赤い鎧が同時に輝く。
ガルザムがアクセルを踏み込み、バンが一気に加速した。
ドンッ!
ナラッカの数体がバンに撥ねられ、叫び声を上げながら吹っ飛ぶ。
そのままバンは国会議事堂の敷地近くの壁に激突し、派手に大破した。
大事故だが、事前に玲瓏して鎧を着装している俺たちには関係ない。
俺はドアを蹴り飛ばし、勢いよく外に飛び出した。
……これでもう、車は使えない。
退路が無いから、勝つ以外俺たちに道はもう無い。
「行くぞ!」
「はい!」
「ええ!」
ナラッカたちが群がってくるが、俺はメギドセイバーを右手に発現させて薙ぎ払う。
紫光の手刀が弧を描き、奴らの体を粘土細工の人形のように切断する。
「グエエ!」
「ビア!」
奴らの腕が飛び、首が吹っ飛び、上半身と下半身が分断される。
それで死を迎えた奴が爆散していく。
……まるで伝説の暗殺拳だ。
ガルザムの蛇腹剣が鞭の軌道でナラッカを叩き伏せ、奴らを激痛で悶絶させる。
身体が壊れずとも、無効化できない痛みはどうしようもない。
「ウギャアアアアア!」
ナラッカたちの悲鳴が響き渡る。
そしてゼルノスが弓を引き絞り、メギドブラストの矢を連射して次々とナラッカを仕留めていく。
「グアアアッ!」
「グオッ!」
その一撃で死を迎え、爆散していくナラッカたち。
俺たちは息を合わせ、国会議事堂の入り口へと突き進んだ。
俺は心の中で叫んだ。
……シャイタン! お前を倒して絶対にこの国を元に戻してやる!
そして敷地内に足を踏み入れた瞬間だった。
議事堂の中央玄関の扉が開き、中から純白の長い髪と六枚の白い翼を持った薄絹の美少女が飛び出してきたのだ。
……天魔王シャイタン!
あの会議室での圧倒的な力を、俺は今でも忘れていない。
「……これ以上、我が臣民を傷つけることは許さぬぞ。聖戦士」
シャイタンの赤い瞳が、凄まじい威圧感で俺を射抜く。
体が一瞬硬直しそうになるが、俺は歯を食いしばって耐えた。
「お前に勝つために、この1カ月、死にものぐるいで修行してきたんだ」
裏庭で木を引き抜いたあの瞬間を思い出す。
俺の念動力は、シャイタンにだって負けたりしない……!
市子の涙、ガルザムとゼルノスの信頼、取り戻したい世界──全部背負って、俺はここに立ってるんだ。
……市子。
俺は今、聖戦士の組織の支柱になってる企業「メイコ食堂」本社ビルで俺の勝利を祈っている幼馴染を想った。
……負けられない!
「絶対にお前を倒す!」
俺は右手のメギドセイバーを構え、シャイタンを見据えた。
奴の唇がわずかに歪む。
……それが何故かまるで
試すように俺を見つめてるみたいに思えた……。