聖戦士シャーロイル~名探偵になりたかったのに、何故かヒーローになってしまった~ 作:XX(旧山川海のすけ)
国会議事堂の敷地で、俺たちは天魔王と対峙していた。
純白の髪を風に揺らし、六枚の翼を羽ばたかせ空中に存在している。
その赤い瞳は、まるで俺の心臓を握り潰すような威圧感で俺を射抜いていた。
「……聖戦士ども。これほど我が臣民を殺めた以上、許さぬ」
シャイタンの声には本気の怒りが込められている。
激しい殺意が溢れていた。
そして
「死ぬがいい」
シャイタンの声が、冷たく響く。
凄まじい威圧感を伴うその言葉。
俺は自分を鼓舞し、地を踏みしめて耐えようとして……
だけど
「……と言いたいところだが」
……突然、変わった。
怒りに震えていたのに、急にトーンが変わったんだ。
「ここから引き返し、2度と我が前に現れぬと誓うなら、見逃して遣わすぞ。……どうする?」
……見逃すだって?
鎧の中で俺は思わず眉をひそめた。
……何だそれ?
シャイタンの声には、怒りと矛盾が混じってる。
まるで、俺を殺したいのに、殺したくないみたいな。
「……何故だ? 前もわざと俺を逃がしたよな?」
あの会議室の戦い。
シャイタンは俺をボコボコにした後、最後のトドメを刺さなかった。
明らかに刺せたのに、だ。
あのとき、なんか違和感あったんだよな……。
俺の言葉にシャイタンが一瞬、目を細める。
そして、静かに口を開いた。
「我にも、我が不肖の姉のメギドと同じく未来予知の力があるのだ……。ただし、姉ほどの正確性はないがな」
シャイタンは言う。
自分の行為が後に致命打に繋がるとき、たまにそれが分かる、と。
俺は息を呑んだ。
未来予知……だって?
「あのとき、我がこの世界に帰還した日。お前を討ち取ろうとした瞬間、我は知ったのだ。その行為は破滅に繋がる、と……何故そうなるかは分からぬ。だが……お前を殺すことは、我を破滅させるらしい」
シャイタンの声は、どこか苦しげだ。
まるで、自分でもその予知を信じたくないみたいに。
「だから、我はお前を殺せぬ。故に……生きて、我から離れるなら……それでいい」
俺はシャイタンの目を見つめた。
あの赤い瞳に、嘘はなさそうだった。
でも、頭の中でいろんな考えがぐるぐる回る。
俺が死ぬことで、シャイタンに降り掛かる何らかの破滅的災厄?
……何だそれ?
市子のことか? それとも、もっとでかい何かか?
だけど、すぐに結論は出た。
「お前がこの国にいると、この国はこの世の地獄になる」
SNSで見た魔女狩りの投稿。
人間が人間を密告して、ナラッカに差し出す日常。
そして、バイルがシャイタンを呼ぶためにどれだけの子供を犠牲にしたか。
あの会議室での絶望が、頭をよぎる。
「シャイタン……お前が何を予知しようが、俺の結論は変わらない」
俺はメギドセイバーの手刀を突きつけて、シャイタンに宣言する。
「折角だけど、断るよ。悪いな」
シャイタンの瞳が、一瞬揺れた。
そして、ゆっくりと翼を広げ、こちらに右手を向ける。
「……そうか……ならば我も容赦せぬ!」
次の瞬間、すさまじい力が俺を押し潰そうとした。
シャイタンの念動力だ。
空気が重くなり、地面がひび割れる。
ガルザムとゼルノスが「ぐっ!」と呻いて膝をつく。
だが──
「……何!?」
シャイタンの声に驚愕が混じる。
俺は平然と立っていた。
念動力の圧力が、俺の周りで霧散してる。
「……1カ月も経てば、人間は大きく変わるんだ、天魔王!」
俺は裏庭での修行を思い出す。
木を引き抜き、念動力を極限まで高めたあの瞬間……
シャイタンの力だって、俺にはもう通じない!
「人間を舐めるな!」
俺はメギドセイバーの手刀を袈裟の軌道で振り。
その紫に輝く右手を真っ直ぐに突きつけて。
シャイタンに宣戦布告のように言葉を叩きつけた。
戦いが、今、始まった!