聖戦士シャーロイル~名探偵になりたかったのに、何故かヒーローになってしまった~ 作:XX(旧山川海のすけ)
国会議事堂の上で、俺とシャイタンが激しくぶつかり合っていた。
俺は念動力で体を浮遊させて。
シャイタンは六枚の白い翼を羽ばたかせて。
共に飛行状態で、空中戦を行っていた。
メギドセイバーの手刀を振るい、シャイタンと戦う。
俺とシャイタン、一騎打ちだ。
ガルザムとゼルノスは地上で動かず、俺たちを見上げてる。
彼女らには分かってるんだ。
ここで手を出せば、シャイタンに一瞬で仕留められるって。
俺はシャイタンを睨み、叫んだ。
「アンタらのせいで魔女狩りが起きてんだよ!」
シャイタンの赤い瞳が一瞬揺れる。
「魔女狩りだと!? それは何だ!?」
どうやら知らんらしい。
俺は説明してやった。
戦いながら。
「人間が相互で監視をし合い、自分が密告される前に他人を密告して、抹殺する社会だ。誰を信じていいか分からない、恨みと不信、疑いで繋がる地獄絵図だよ!」
SNSで見た投稿。
隣人が隣人を売る、友達が友達を裏切る。
そんな世界が、お前のたちのせいで広がっているんだ!
それを戦いながら聞き終えたシャイタンが答えた。
「我はナラッカの帝王である」
羽ばたき、魔光波を乱射しながら
続けて
「我には我が臣民全てを幸福にする使命がある」
俺はシャイタンから発射された魔光波を高速飛行で躱した。
シャイタンはそれを冷静に観察。
さらに
「1万年もの間、我が民を飢えさせ、そして我の帰還のために無理をさせた」
俺の回避に合わせて魔光波発射のタイミングを調整しながら
彼女はその後
「……故に我はもう2度と民を苦しめるわけにはいかぬのだ!」
言い終えたシャイタンのその声には、揺るがない信念があった。
俺は心の中で思う。
……こいつ、ナラッカの帝王としては確かに神だ。
どいつもこいつも、ナラッカはシャイタンを崇めてる。
あのクズ野郎のバイルですら、躊躇わず命を差し出した。
すごい帝王だよ……
ナラッカじゃなけりゃな。
「それでも、お前のせいで人間の世界が壊れてんだ!」
人間には人間の事情がある。
俺も譲れないものがあるんだ!
俺の言葉にシャイタンの翼が一瞬震えた。
だが
「それでも我らはヒトのプシュケーが無ければ生きられぬ!」
その言葉には、どこか苦しみが混じってる。
人間を苦しめてしまうことに対する負い目と、でもそれしか道がないっていう葛藤。
シャイタンの信念が、俺の胸に突き刺さる。
次の瞬間、シャイタンの突き出した両手から眩い光が迸った。
魔光波だ!
彼女は俺の回避が不能になるタイミングを計っていた。
すさまじいセンスだ。
シャイタンの決断の青い稲光を見て、全て躱して来たけれど、これを同じ対処でやり過ごすことはできない。
核ミサイルをも消滅させたすさまじい魔光波がシャイタンの構えた両手のひらから撃ち出される。
そして帝王の魔光波が俺に直撃し、俺は一瞬でこの世から消え去る──はずだった。
「……馬鹿な……!」
シャイタンとしては自分の勝利を確信させる一撃だったのか。
呆然としていた。
……俺は
生きていた。
回避が不能だと判断した瞬間、俺は決断したんだ。
一か八かやってみたら。
出来たよ……!
捻じ曲げられたシャイタンの魔光波は、俺の眼前で2つに割れて後ろに流れ
地面を抉って消滅する。
「……アンタ、光を念動力で捻じ曲げる技は身に着けて無いだろ?」
メギドセイバーを生み出す技術を、防御に応用したんだ。
光そのものに念動力を働かせる、俺にしかできない技だ。
「これでもう、アンタの魔光波は俺に通じない!」
シャイタンが歯をギュッと噛み締める。
その顔に、初めて動揺が浮かんでる。
そのときだった。
「動くな、シャイタン!」
ガルザムの声が響いた。
その声を聞いたシャイタンの表情が強張る。
……何だ?
俺は視線を下に向けた。
そして俺は目を疑った。
『ちょっと待て!』
俺と同じものを目にしたタケルさんの声には怒りが混じっていた。
地上に何があったのか……?
地上で、ガルザムたちが……
ガルザムが蛇腹剣を巻きつけて、ナラッカ1体を拘束していたんだ。
そいつの姿は、人間のパーツがタコみたいに組み合わさった気持ち悪い奴だった。
名前は知らん。出会ったことが無いから。
その、拘束されたナラッカに
ゼルノスは弓を引き絞り、メギドブラストの矢を射掛け、その8本の腕を1本ずつ射貫いていく。
射貫かれたナラッカの腕は爆散し、ナラッカが「ぐあああっ」と苦しみの声をあげる。
……ナラッカを使用した射的……!
明らかに、拷問だ。
戦いが始まる前、シャイタンは他のナラッカを全員下がらせていた。
ガルザムとゼルノスは、その中から適当な奴を拉致して来て、シャイタンを脅してるんだ。
的になっているナラッカが苦しげに呻く。
泣き声で。
「申し訳ありません、陛下……見捨ててください……お願いします……!」
自分の主君の迷惑になっていることを嘆いている。
その様子に俺は、相手がナラッカでも悲痛なものを感じた。
「ガアアアッ!」
その間も、無慈悲にゼルノスの矢が飛び。
それで射貫かれた腕の1つが爆散する。
悲鳴が空に響く。
ゼルノスはまた次の矢を番える。
そして呟く。
「……もう少し矢の威力を落としてみようかしら」
その瞬間
シャイタンが叫んだ。
「この外道どもがあああああ!!」
その声は、怒りと絶望に満ちていた。